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Valentine Edition

本編とはたぶん、関係がないお話です!

たぶん、時間軸が違うお話です!

たぶん、です。


鏡の前にたつ。

今日は前髪を流してセットしてみた。

無駄に服を叩いて埃を落としてみる。


「よし、オッケー....かな?」

「いいんじゃないかしら?」

「うわぁぁ、母さん....ビックリさせないでよ....」


驚いて振り向くと口に手を当てて微笑む母さんが、いつの間にか立っていた。


「あら、驚かせたつもりはないんだけど、悠が一生懸命鏡を見てたから.....」

「もう!母さん!!」


気恥ずかしくて声を荒げると、年齢を気にさせないウインクと


「いってらっしゃーい。」


と妙に間延びした挨拶とで学校に送り出された。


......................


「おうおう、三島よ。今日がなんの日か...わかってるよな?」


家を出てすぐのところで田中に肩を組まれた。


「さぁ、なんだろ。特別な日なのか?」


適当に話を流してみる。


「おいおい、この田中を欺こうなんざまだまだ早いぜ、悠さんよ?そのキメた頭、わかってんだろ?」


やはり田中、ずっと一緒にいるだけある。


「田中も充分キメキメだけどな.....もちろんあれ、だろ?」

「そう、あれだよな....戦いの日...」


「「バレンタイン!!」」



チョコを何個貰えるか、本命が貰えるか。そわそわが収まらない日、バレンタインデーである。


「そういや悠は去年何個貰ったんだ?」

「あー、俺はえっと..7?いや、8だったかな?」

「げ、やっぱりお前隠れモテキャラだよな~。敵だ敵!!」


田中が俺から離れてカンフー風に構える。


「お?やるのか?」

「いやすいませんすいません、どうやったらチョコそんなに貰えるんすか。」


勝った....俺は今日は勝ち組かもしれん。


「なぁに、田中よ。こういうのはちょっとしたコツでな...」




肩を組んで小声で話ながら登校する男二人の様は、回りから引かれ気味だったのは三島と田中は知らない話であった。



...........................


「おおお!なんか今年は貰えるような気がしてきた!!」

「しっ!....お前ここ靴箱だぞ!!」

「ああ、わり...」


あれから田中としっかり学校につくまでチョコをいかに貰えるか話した。


今年は目指せ10越え。なんて目標を立ててみたが果たしてどうなるのか。



.....................



「おはよー!」


教室のドアを勢いよく開けて元気に挨拶をする。


「おっす、悠。」

「今日は気合い入ってんな!」


「うっせ!」


案の定俺と同じくそわそわしている男子数名。


「あ、三島くん。おはよ、はいこれ!」


教室に入ると委員長の山本さんから早速チョコを貰った。


「あ、委員長。おはよ!チョコありがとう!」


振り返って冷やかしてきた男子達にドヤ顔をする。


「くっそ、悠かよ....」


一気に恨みがましい視線を注がれる。


「いいんちょー、俺たちにはー。」


「あ、皆にもあるよ!はいこれ!」


形勢逆転。今度は俺がドヤ顔をされる番だ。


「さすが委員長。三島だけじゃないんだよなー、これが。」


「あーはいはい。わかったって!」


まず一個目か。悪くない出だしだ。




.......................


お昼休み


「まずい.....まずいぞ、田中。」

「あ?どうしたんだ?」


紙パックのお茶を飲みながら田中が答える。


「お前今日チョコ何個貰った?」

「えーっと....5つ!新記録だぜ悠さんよ、今度ジュースおごってやるよ。」

「そうかそうか.....」

「?どうしたんだ?」

「いや...」



実はチョコがひとつも貰えていないのだ。


いや、正確には委員長から貰っているのだがあれはクラスの男子全員にあげていたから実質ノーカンだ。

毎年友チョコを作ってくれていた女子からも尽く受け取っていない。


約束した訳でも、あげると言われた訳でもないのだが、0は無いだろうと思っていた。

が、実際貰ってないのだから何とも言えない。


放課後、放課後に期待しよう。



...................


「ん?悠じゃん、どうだ?今年はチョコ貰えたのか?」


田中とご飯を食べ終わって校内をうろうろしていたら木村さんに出くわした。


日焼けした顔にニヤッとした表情で話しかけてくるのが何とも木村さんらしい。


「いやーそれがさー、0なんだよなぁ。」

「ほほーそれで校内をうろついてるって訳だ。」

「ちがっ...わなくもないけど...。」


この木村さんも毎年チョコをくれていた人のひとりだ。

...お察しの通り、板チョコをまんまくれるようなタイプの人間である。


「わりぃな!今年はうちからもなしだ!....放課後に期待しとけ?」

「あ、だめだよ!みさちゃん。それ秘密。」


向こうから手を拭きながら一人女子が歩いてきた。


「あ、神田さん。」

「ごめんね、三島くん。私からも今年は無しなの。」

「いやいや、良いですよ。そんな気を使わなくても。」


笑って返すけど欲しかったのは事実である。


「で、なんかあるの?放課後。」

「あーいやー....」


木村さんの視線の先には口の前で×を作る神田さん。


「ってな訳だ。すまんな悠。」

「えーなんだよそれー。いいこと?悪いこと?」

「かなり。」

「かなり?」


え、悪いことか?


「良いこと。」

「お!なにそれ!?」


「はいそこまで!みさちゃんすーぐ喋っちゃうんだからー、いくよ!.....楽しみにしといてね、三島くん。きっと良いことだよ!!じゃねー。」

「ってことらしいわ、じゃあな悠。」


「あ、じゃあー。」


背の高い木村さんが背の低い神田さんに怒られるのを見ながら手を振る。


なんだ。放課後になにがあるんだ?


............................


放課後


「よーし、悠帰ろうぜー。」

「はいはい、今日は悠じゃなくて俺達と帰るぞ田中。」

「お!?いいけど、悠はどうすんだ?」


教室の入り口で男子数名が戯れている。


「悠は用事。」

「そうそう!じゃあな悠!」

「頑張れよー。」


「お、おおー。じゃあなー。」


なんの話だ。皆知ったようにニヤニヤしながら教室を出ていく。


「三島くん!頑張ってね!!」


女子も同様だ。

みんな教室を早々にでていく。


残るは委員長だけになった。


「なぁ、委員長!何がある....」

「はい三島くん!!後ろの黒板向いてー。」


勢いに乗せられて後ろを向く。


「絶対に前向いちゃダメだからね!!....それじゃあ三島くん、また明日ね。」

「ちょ、ちょっと委員長!!」


ついに誰もいなくなった。

なんなんだこれ。

いつまでこうしておけばいいんだ。


話がわからなくて、もう帰ろうかと思っていると、


ガラガラ



前のドアが開く音がして、人が入ってくる気配がした。


何が始まるか分からなくて妙に生唾を飲み込む。


『誰か』が近づいてきた。緊張に拍車がかかる。


トントン


肩を叩かれた。


なんとなく振り向いていい、という合図だと思って振り向くと、


「桜井さん...どうしたの?」


俯き気味の桜井さんがいた。

下唇を噛んでいるのが見える。


変に心臓がドキドキする。


「あ、あの。桜井さ....」


突然桜井さんが顔を上げた。


視線がバッチリ合う。


真っ赤になった頬と潤んだ目に心臓が爆発しそうになった。


「え、ど、どうしたの?」


取りあえず声をかけてみたが、その声には答えてくれず代わりに後ろ手に持っていた物だけを押し付けられた。


俺が持ったのを見ると桜井さんは教室から走って出ていってしまった。



「なんなんだ....。」


一言発して落ち着くと手のなかにあったのは赤いリボンでラッピングされたハート型の入れ物だった。


見ただけで確信した。


今日、チョコを貰えなかった理由を。

皆の意味深な顔の理由を。



「なんだよ、それならそうって言ってくれたらいいのに。」



一人になった教室で三島はまたドキドキし始めた心臓の音を沈めようと無駄な努力をしていた。

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