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二人の距離

体調崩していて長い間更新できなくてすいませんでした!

「あ。」


視線の先には靴を取り出そうとする桜井さんがいた。


「あ、朝はごめん!...なんか変なこと言っちゃって...」


顔が赤くなるのがわかった。恥ずかしい。その気持ちが体全体に染み渡るようだ。


そんな俺を横目にごそごそと携帯を取り出した桜井さんは


『いいのよ。』


そう打った画面を見せて微笑んだ。

俺が読んだのを確認して


『今、帰るところ?』


また字を打ち込んで話を続けてくれた。

優しい、男女共にいろんな人から慕われている理由はこういう気遣いからくるのだろう。


「そうだよ。いつも一緒にいる田中とは今日は別かな。」


そう桜井さんの優しさに感謝しながら答えた。


桜井さんはちょっと迷ったように考えてまた携帯に何か打ち始めた。


こうして見るとよく不便な日常に耐えられるなと思った。普通に喋るのと比べて、打つのが早いといってもやはり差はある。それでも人と話すことを止めない桜井さんはやっぱりすごい。小学生みたいな感想しかでないがそれが素直な気持ちだった。


『今から暇かしら?時間があるならちょっと付き合ってほしいの。』


俺は一も二もなく即座に答えた。


「大丈夫だよ!」



..........


連れてきてもらったお付きの人の車から降りて、


「うわ、すげぇ。」


そこがどこか考えるまでもなくその圧倒的な大きさに驚いた。


「ここ、桜井さんの家...?」


隣の少女が頷くのを感じられた。


でけぇ、すげぇ、やべぇ。

これならうちの家族が引っ越してきてもまだまだ.........ん?どっかでこんな感想....


クイックイッ


俺の思考は袖を引っ張る感覚で中断された。


「あ、ごめんごめん。どうしたの?」


『家、入ろ?』


「ああ、うん。そうだね。」


さぁ男三島。挙動不審にならずに耐えきれるか。

密かに拳を握って気合いをいれた。


.....


「どうぞ。」


お付きのメイドさんだろうか。

世界が違う家の中でひたすらにドキドキしていた。

たまらず出された紅茶を飲んでみる。仄かに甘く少し緊張が和らぐような香りがした。


「桜井さんはどうして俺を家に?」


一息ついて何か喋ろうと口を開いた。


『三島くんとお友だちになりたいと思ったから。』


紅茶を吹くかと思った。

落ち着け三島。どうどう。


「あー、えっと...気、使わせちゃったかな?」


朝のことだ、何を血迷ったか自分すら意味不明な事を言ってしまったのだった。


『ううん、元々思ってたの。』


え.....っと。

どうしよう、俺。


「ど、どうして俺だったの?」


なんだ、その返し方はぁぁぁ!!


心の中で絶叫する。

対女子スキルがないとはこのことか....


一方の桜井さんは、ふふふと面白そうに笑って


『三島くんは、私とは仲良くなりたくない?』


そう打った携帯を見せた。


「いや!むしろお願いしますと言いたい所!」


『なにその婚約を受けたときみたいな。』


ついに堪えきれなくなったのか喉を鳴らしながら桜井さんは笑った。


「やー、えーっとそのーー、」


『三島くんって面白いのね。』


笑いすぎて浮かんだ涙を拭いながら画面をこちらに向ける。


ええい、乗り掛かった船だ!



「....おほん、それではこの三島と友達になっていただけないでしょうか。」


座っていたソファーから降りて片膝をたてて、身ぶり大きく手を差し出してみた。


『よろしくお願い致します。』


桜井さんはそう画面を見せたあとスカートをつまんで少し持ち上げた。


それからお互い顔を見合わせて、


「何やってんだろうね」


大笑いした。



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