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消滅

Twitter始めました!是非フォローしてください!!@yu_reizou

『緊急速報です、情報によると8時15分現在を持ちまして南半球の全ての国家の消滅が確認されたそうです。』


こんな街頭テレビの異常な内容の放送すら気にならなくなってしまったか。


三島悠は桜井さんが学校に来なくなってから2週間、宛もなく桜井さんを探していた。


「どこにいるんだよ、桜井さん....」


可笑しいほどの日常が流れているこの街を否定するかのように三島は人混みをかき分けて歩き始めた。



―――――一週間前


「あ、ちょっと!...桜井さん、見てない?」

「?三島くん、だっけ?桜井さんならここのところずっと休んでるわよ?どうかした?」

「あ、いや....ありがとう!」


やっぱり来てない....

一度家にいってみるか...


三島は最後に見た桜井さんの顔が忘れられないでいた。それなのに桜井さんは学校に来ていない。なんだかわからないけど嫌な予感がした。


三島は教室に戻るなりバックを掴んで


「わり!田中、先帰るわ!!」

「え!?おいまだ帰るじかんじゃないぞ!?」


友人何人かとババ抜きをしていた田中が振り返る。


「どうせいても変わんないだろー、じゃあなー」


手をひらひら振って教室をあとにする。


さて、桜井さんの家までタクシーで行くか。


手にした財布の重みを確認したあとタクシーを捕まえるべくよくタクシーが止まっている学校裏の道路に向かった。



「お?あんちゃん、学校サボってどこいくんだい?」


早速にやっと笑う愛想の良さそうなおじちゃんがタクシーの中から手を振ってくる。


「あ、〇〇区まで行きたいんですけど...」

「お、じゃあ俺のに乗ってくか?」

「お願いします!」

「まいど!」


タクシーに乗り込むとちょっとだけ煙草の臭いがした。


「悪いね、最近商売上がったりなもんで車の中でタバコ吸っちまってるわ。」


はっはっはと愉快そうに笑いながらタクシーを進める。


「ところであんちゃん、〇〇区まで何しにいくんだい?」

「まぁ、ちょっと...人に会いに...」

「おお?思い人かい?いいねぇ、青春だねぇ」

「ち、違...わなくはないですけど...」


相変わらずニヤニヤ笑うタクシーのおじちゃん。だがなんだかその笑顔に少し助けられた気がした。


...


「ほい着いたぞ。」

「えっと、お代は...?」

「いいからいいから!早く行ってやんなって!!女を待たせる男は紳士失格だぞ?」

「え、でも...」

「...なぁ、俺ぁほんとはもう稼ぐ必要なんて無いからタクシーになんて乗り続けなくていいんだ。だがやっぱりこの仕事が好きで、お客さんが好きで...だからあんちゃんとの会話がお代だ。...ああ、ほら早くいけよ!」


照れ隠しでもするかのようにおじちゃんは帽子を目深に被りなおす。


「あ、ありがとうございます!」


何も言わずに手だけ振ってタクシーは急ぐようにその場をあとにした。



「さて...」


目の前は桜井家の道。

気合いを入れ直して歩き始めた。


.....


カンカンカン

大きな扉が乾いた音をたてた。


「失礼しまーす!誰かいませんかーーー!」


カンカンカン

返事がない。


「失礼しまーーす!誰か、おわ!?」


何気なく押した扉が簡単に開いてしまった。


「あのーー、すいませーーん。」


扉の隙間から顔をいれて声をかけてみる。


誰もいない。予想外のことで、しかも扉が閉まっていなかったという事実が心をざわつかせた。


「失礼しますーー、お邪魔しますよーー。」


メイドさんも誰も出てこない。


「桜井さーーーん!」


自分の声が広い屋敷にこだまするだけだった。


思い付く限りの部屋に入ってみた。

桜井さんの部屋とおぼしき場所にもキッチンにも客間にも、誰もいなかった。


強盗...?いや、それはない。部屋がどこも綺麗すぎる。ならなんで...


考えてもわからない。

事実として、誰もいないのだ。


ゴーンゴーンゴーン

見上げると大きな柱時計が5時を指していた。


「今日は...帰るか...。」


帰ろうと扉の方を振り返ってみてみると床に何か落ちていた。


「髪留め...?」


ピンク色の髪留めだった。


「どっかで見たことが.....あ、桜井さんが毎日つけてるやつか。」


光にかざしたりしてそう結論付けるとポケットにしまった。


「今度あったら渡そう。」


その今度がいつになるか考えるのはやめてその日は家に帰ることにした。


――――――――


「桜井さん、どこにいるんだよ!!」


街をふらふら歩いたところで見つからないのはわかっていた。だけどいてもたってもいられなかった。


「桜井さん...」


ポケットの中の髪留めを触ってみても、現実は何も変わらなかった。

そんな三島を嘲笑うかのように太陽は光輝いていた。

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