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蒼い吸血鬼  作者: 不可思議
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第22話 鏡の世界(前編)

お久しぶりです、不可思議です。

いやぁ、前の投稿から3ヶ月も時間が経ってしまいましたね。

まぁサボってたのもあるんですけど、かなり詰まってたというのもあって、本当は9月に投稿するはずのものが10月になってしまいました。

「私を…! 私をっ! 人形と言うなぁッ! 【鏡の国(ミラー・ワールド)】!」


 先に動いたのはミラ、スペルを発動し、手の中に球体を出現させる。

 そしてその球体は、恐ろしい程の速さで膨張してフランの部屋を一瞬で飲み込んでしまった。


「っ…!」


 フランも球体に飲み込まれ、中の異空間に落とされてしまった。


「随分と乱暴なのね。 まぁ、こんな綺麗な場所に連れてこられて悪い気はしないけど」


 一瞬だけ驚きはしたものの、動揺することは無い。

 ここはただの敵が作った異空間。

 なら、作った本人を倒して出ればいいだけ。


「いい場所ね、鏡の国(ミラー・ワールド)、本当に童話のアリスみたいね」


「うるさいっ!その名で私を呼ぶなァ!【罰】!」


 どうやら、人形の他にも、童話のアリスが大嫌いだったのか、未だに怒りに染ったままの顔でスペルを発動させる。

 スペルを発動すると、フランの周囲に大量の鏡が出現する。


「あははっ!綺麗な技ね、関係ないけどっ!」


 フランはその現れた鏡ごと、ミラを切るためにレーヴァテインを振り下ろす。


 だが。


「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぐぅぅうッッッ!!!」


 先にダメージを喰らったのはフランであった。


「ぐっ…! はぁ…はぁ…ガバッ…! 確かに当たった感触はあったのに…壊れてないっ…!」


 当のミラには傷一つ、いや、鏡にさえも傷一つ付いていない。


「(当たった時の感触は硬かった、そこで止まった、つまり…)」


 あの鏡にカラクリがある。


「(何も仕掛けがないはずがないのに、迂闊だったなぁ)」


 自分の軽率な行動を戒め、フランは鏡のカラクリを暴くために、思考を巡らせる。

 結論は、すぐに出てきた。


「…鏡と罰、か。なら…」


 一つの仮説を立て、それを実証するために、フランは一つの鏡に弾幕を放つ。

 放った弾幕は、鏡に当たり、フランに(・・・・)返ってくる。


「やっぱりね」


 ただ単に跳ね返るだけなら、どうということはない。ただフランは、横向きの(・・・・)鏡に弾幕を放ったのだ、それなのに、弾幕は奥に流れず、フランに返ってきた。


 鏡単体の性能は、おそらく反射のみ、ミラがその鏡にプログラムを加え、攻撃を加えた相手に向かって返るように設定したのだろう。


「レーヴァテインはこの後は一切使えないかなぁ」


 これも仮説だが、レーヴァテインでの攻撃は、罰だろうがなんだろうが、鏡の単体性能による反射で自分に返って来るであろう。

 これはレーヴァテインだけでなく、全ての近接での攻撃で言えることであろう。


「(能力は…試すには危険すぎるかなぁ…)」

「ほんっと、最初からそっちの姿でやった方が楽しかったと思うよ?」


「五月蝿いッッッッ!!!」


 未だに正気を失っているミラは、闇雲に弾幕を放つ。

 放たれた弾幕は、鏡に当たってもミラに返る事はなく、鏡が光を反射するように、入射角と反射角が比例する形で反射する。


 そして、ミラの本領はここから発揮される。

 大量に出現した鏡が、動き出し、フランに避けられた弾幕や、外れた弾幕などをフランに向かって反射させる。

 全てをフランに向かって反射させる訳じゃなく、きちんと鏡と弾幕で退路もできる限り塞ぎながら反射させてくる。


「あははっ♪楽しい踊りね。 でも、私一人じゃ楽しくないわ、あなたも一緒に踊りま…しょ!」


 そう言ってレーヴァテインをミラに向かって振り下ろす、さっき自分でもう使えないと言ったレーヴァテインを。

 勿論そのレーヴァテインの振り下ろす先に鏡が割って入ってくる。

 また、レーヴァテインのダメージが返ってくる。


「ぐっ…があ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛っ!!!!」


 だが、レーヴァテインのダメージはフランに返ることはなく、ミラの肩を抉る。


「かふっ…!ちゃんと鏡を割り込ませた…のに…なんであっちは…あぐっ…」


「あら、鏡に当たったのかまでは分からないのね、なら教えてあげる。 私、鏡には一切当ててないわよ」


 一切当たっていない。

 そんな事あるはずない、ミラはそう思っていた。

 ただ、もしかしたら、と思う事は一つだけあった。


「能力…ね」


「あははっ、流石に気付くよね。 能力でどうやったかもちゃんと考えてねっ!!!」


 考えてと言っても、考えさせる隙を与えない。フランは鏡の裏に隠れているミラに向かってレーヴァテインを振り続ける。


「くっ…!めんど…くさい!」


 ミラの放っている弾幕は、既にレーヴァテインと振った時の熱風で消え去っていた。

 新しく弾幕を放っても意味はなし、ミラは守ることしかできなかった。


「あぐっ…ぎぃっ…!!」


 そして、その守りすらも意味をなさず、次々とミラの体に傷がついていく、そして抉られた傷口に熱風が当たり、ジリジリと燃えていく感覚が流れてくる。


「…あなた、防御魔法を使ってたのね。 普通ならもうこの熱で壊れてるのに」


 人間だろうが妖怪だろうが、これだけレーヴァテインの攻撃を近距離で受けていれば、少なくとも全身大火傷はしていてもおかしくない。

 恐らく、防御魔法により熱に対する耐性を強化しているのであろう。


「当たり前でしょ、こっちは生身の人間よ」


「ふふっ、やっと頭が冷えたみたいね」


「うるさい、今からその軽口を叩く憎たらしい口をぐちゃぐちゃしてあげるから覚悟しなさい」


「わぁこわい。 まぁ、できるなら、だけどねっ!」


 中断していた攻撃を再開する。

 ミラはレーヴァテインによる攻撃が再開しても、未だ反撃に移ることは無い。

 いや、移る気がない。

 ミラはフランの攻撃を見ている、妖怪の力で全力で振られる視認するのも厳しいレーヴァテインの剣先を。

 そして見つけた、レーヴァテインが鏡に当たらない理由を。


「あなた、サラッと嘘をつくのね」


 ポツリと呟いた。

 その言葉にフランはニヤッと笑う。


「あはは、情報戦に嘘は付き物よ?」


「それもそうね…全く憎たらしい。 まさか、能力を使ってないなんてね」


 能力不使用。


 フランは能力など一回も使っていなかった。

 響く轟音の中、集中してその音を聴き分けると、どこにも爆発音が鳴っていなかった。

 フランの能力の使用には必ず爆発音が鳴る、鳴っていないと言う事は使っていないということ。


 そして、高速で振られるレーヴァテインを見ていると、鏡に当たる直前のレーヴァテインに少し違和感を覚えた。

 そこで今度は鏡に当たる瞬間のレーヴァテインを注視していると、当たる直前のレーヴァテインが歪んで見えた。

 最初は自分の動体視力が足りなく、ただ歪んで見えると思っていたが、鏡に差し掛かるまで、鏡を通り抜けた後のレーヴァテインには何も違和感を感じず、歪みなども見えなかった。


 フランは、レーヴァテインを制御して、折り曲げていたのである。


「…私の情報じゃ、制御知らずの凶暴吸血鬼って情報なのだけれど?」


「それっていつの話?これぐらいなら30日前の私でもできてたよ」


 フランは、自分が暴走したあの日から、パチュリーに頼み込んで、技の制御や、細かい魔法を教えてもらっていた、おかげでパチュリーは日々過労死しかけていた。

 魔法は殆どが使わない方が強いと言う悲惨な幕閉じとなったが、技の制御は、このようにして結果を出している。


「…まぁ、分かっても防ぐことはできないんだけどね」


「そうだよ、避ける分剣の射程は短くなるけど、そこは距離を詰めるだけで簡単に対応できる。 それとあなた、つまらない嘘を付くのね」


「…なんのこと」


「さぁ?なんの事だろうねぇっ!!!」


 中断していた攻撃を再開する。

 ミラは反撃する訳でもなく、鏡の面積を少しずつ大きくしていく。

 フランは気付いていた、これが、守りのためだけに大きくしている訳じゃない事を。

 これは、私の視界の情報を削るため、その裏で何が小細工をしているのだろう。

 単純だけど、とても効果的な策ではある。


「(背後にある鏡も完全に消して…もう見えなくなっちゃった…、当たってはいるけど…手応えがどんどん薄くなる)」


 ミラもそこまで馬鹿ではない、ちゃんと自分の姿が映る鏡も、見えるかもしれない鏡すらも全て消した。


「(なら…あれ、試してみようかな…)」


 右手に力を集中させ、左手のレーヴァテインは逆手持ちで鏡に向かって垂直に持つ。

 そして、右手に集中させた力を握り潰し、左手に持っているレーヴァテインを鏡に向かって投げつける。


「っっ…!!?ガッ…アグッ…!」


 そして、そのレーヴァテインは、鏡に跳ね返されることなく、そのまま突き抜けていく。


概念破壊(・・・・)


 フランが魔法や技の調整の練習以外にもしてきた内容。

 フランの【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】の‘‘もの’’には、概念と言う不確定要素も破壊できることに、最近気付けたのだ。

 そして、今回破壊した概念は‘‘距離’’、鏡の手前からミラまでの距離の破壊。

 鏡自体に干渉すれば、その能力は跳ね返されるだろうが、○○から□□までの距離を破壊するような工程には鏡は一切干渉しない、鏡は、その間にあるだけで、工程には一切含まれない。

 ただ概念というものは捉えるのに少し時間がかかるため、この距離の破壊は動いている相手には効果は一切ない。


「これでトドメをさせていたらいいのだけど、ん〜…腕かなぁ」


 大量に滴り落ちる血と、ミラの苦しそうな声を聞き、冷静に判断する。


「まぁとりあえず…もう一発!」


禁忌【レーヴァテイン】


 距離を破壊した概念を破壊して、新たに距離の破壊をし、レーヴァテインを投げつける。


 だがそのレーヴァテインが相手を貫いたような音はならず、壁にぶつかったような音しか鳴らなかった。

 見ると、もう血は落ちておらず、声も聞こえなくなっていた。


「ふふ、そんなおバカさんじゃないよね」


 もう守る者がない鏡は、宛もなく漂い、数を増やす。

 マジックのように、鏡と鏡が重なって見えなくなる度に2個が4個、4個が8個に増えていく。

 そして、あっという間にフランを囲んでしまった。


旋律【Movement 1】


 ミラの第2スペル。

 たが攻撃の内容は、鏡から少量の白い弾幕が飛んでくるだけ、 。

 最初は耐久スペルでの時間稼ぎでの回復かと思ったけど、それだけではなさそうだ。

 これはMovement ‘‘1’’、恐らくこの数字が増える度に弾幕が増えていくのだろう。


 最初の白の弾幕は、積極的にフランを狙う動きなどはせず、まるで退路を防ぐかのように飛んでいる。


「なるほど…ねっ!」


 ある程度相手の考えが分かった所で、レーヴァテインを弾幕に振り下ろす。

 切られた弾幕は消えたが、剣の炎に当たった弾幕は残っていた。


「弾幕に耐性付与?」


 元々Movement1の弾幕に属性耐性があるのか、そもそもこっちに合わせて耐性を付与したのか、そんなことはどうでもいい、これでレーヴァテインが実質使えなくなった。


「(初級魔法も使えるけど…やっても意味はないかな)」


 魔力の消費も考えて、レーヴァテインを一旦仕舞う。


「こっちも耐久スペルを使って安全に回避はできるけど…ここで大量に魔力を消費しても無駄だし。 それに、楽しくないしねっ!」


 そう言って、翼を広げ、スペルを発言する。

 

「【魔装翼】!」


 フラン()の、新しいスペルを。

次の話の予定は未定です、未定が予定です。

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