第21話 鏡写し
この前の投稿からかなり日にちが空いて本当に申し訳ありません。
かなり書いていなかったこともあり、かなり手直ししたり詰まったりしてたりでかなり書くのに時間がかかってしまいました。
✲ 望海辰巳
春消失の事件から3日が経った。
結果的に異変は収まったものの、何故その異変を起こしたのかは聞けずじまい。
幽々子は「なんのことかしら〜?」としらばっくれ、妖夢はそもそも内容を聞かされてない、紫は知っているが自分の口からは言えないと言っている。
結局の所、この異変は謎な部分が大半を占めながら終結した。
「辰巳さん、気になるのは分かりますけど今は仕事中ですよ」
そして、異変が終わると何時もの日常が帰ってくるわけで、辰巳は紅魔館で執事の仕事を全うしていた。
「…すみません」
「気にするな、と言うのは無理な話かも知れませんが、今は判断材料がかなり少なく、そこから結果を割り出すこともほぼ不可能なのですから、新しい情報が入るまでは頭から追い出してくださいね」
「…分かりました」
この注意は、今日までで7回目、気を付けてはいるのだけど、何かが引っかかるのと、背後に迫るような不気味な感覚があり、どうしても放っておくことができない。
「多分、今辰巳さんが感じている異様な不気味さは、他の人も感じていますよ」
異変解決に赴いた者、後から見物に来た1部の上位の妖怪全員が感じている異様な存在感。
それは、あの桜の木、いや、桜の下の土の中から感じた膨大な妖力。
「僕の世界では、桜の木の下には死骸が埋まっていると言う都市伝説があるのですが、もしや…」
「ええ、そうでしょうね」
「そして、もう1つ死骸から感じられたのは、大きな憎悪、もしかしたら何者かに憑かれている可能性もあります」
その場合が1番厄介なのだ。
幽々子達の知る人物であれば、対話による抑制が可能になる、だがあの憎悪の持ち主は、話など一切通じないであろう。
そして、戦うとなれば、この世界のルールなどなんの枷にもならない、本気の殺し合いが始まる。
思えばこの異変は最初からおかしかったのだ。
この世界、《幻想郷》は、弾幕ごっこを主とした戦い、相手を殺さないようにする戦いのルールがある。
だが今回の異変はどうだっただろうか、僕は重傷を負い、魔理沙も足を砕かれていた。
そして何よりもおかしいのが、紫さんがそれを許容していることだ。
霊夢の話によると、紫さんはこの地上における実力では限りなく頂点に近い実力を有している。
その紫さんが今回の事態を許容している、その事実が事の重要さに拍車をかけている。
…重大な事態なのは分かったけど、それ以外のことが分からない、情報量が少なすぎる。
これ以上考えても意味がなさそうなので、仕事が終わったあとに幽々子の側近である妖夢に聞きに行くことにし、今は仕事に集中することにした。
「それでは僕は2階の掃除を……?」
「どうかしましたか??」
「いえ、ちょっとお客様がいらっしゃったみたいです」
ほんとに小さい、小さい音が地下、細かく言うと、フランの部屋から聞こえてきた。
音は2つ、1つはフランの声、もう1つはフランと同じぐらいの幼い声。
その声らしき音は、遠すぎるせいか何を話しているのかが分からない。
「そうですか、ではちょっと行ってきますね」
そう言って咲夜さんは懐中時計を片手に消えてった。
「さ、僕は」
透視【エコロフィスト】
今まで数える程しか使ったことのないスペル、使い所は少ないが便利ではある。
《探知範囲が狭い…か、なら…》
透視【エコロフィスト α】
今までネックだった探知範囲を広げるために、範囲ギリギリの所で音を集め、弾けさせることで無理矢理範囲を拡大した。
この技は膨大な集中力が必要となるので、動きながらの使用が不可能と言う点と、最大範囲になるまでにかなりの時間が必要になるという2つのデメリットがある。
そのデメリットがありながらも、今までの1.5倍の範囲を探知できるのはいい点だろう。
練習すればもうちょっと範囲は大きくなるだろうが、今の状態でも能力の届く射程がギリギリのためやる必要はないだろう。
《み…つけた…》
パリンッ
侵入者と、その他のトラップが見つかった所で、スペルを強制解除した。
咲也さんは先に侵入者を見つけたのか、探知で見つけた時には既に侵入者とと対峙していた。
《戦い始めるのも時間の問題かな、さっさとトラップ解除して向かわないと》
トラップのある場所は、7階のお嬢の王座付近に1つ、2階の調理場に1つ、そして1階の図書館に3つの合計5つ。
明らかに少ないのが気がかりだが、今は気にしている暇はなさそうだ。
まず優先すべきは図書館の3つ、他の場所はトラップが発動して壊れてしまってもさほど問題はないが、図書館には世界に2つと無い魔導書が沢山ある、それを壊させる訳にはいかない。
音の護符【スピード】
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「あなただぁれ?」
「私は私だよ?」
フランドール・スカーレット、彼女は、スペルを使い分身することができる。
そして分身できる人数は、最大4人、最低4人。
そして、この部屋の中にいるのは、フランと、フラン。
フランが2人しかいない現状は、フラン本人からしたら異常でしかないだろう。
「あなたは私の分身?」
「私は私だよ?」
質問を投げかけても、同じ言葉しか繰り返さない。
「そっか、あなたはお人形さんなのね、なら、壊してもいいよね?」
禁忌【レーヴァテイン】
フランの宣言により、炎の剣【レーヴァテイン】が2本現れた。
「ふ〜ん…ほんとに私みたいだ…ね!」
同じスペルを発動した偽物に対しレーヴァテインを振り、炎の影に隠す形でスピード重視のクナイ型弾幕を撃つ。
だがその攻撃は全て防がれた。
一見、炎に隠れて何が起きたのか見えないだろうが、フランには見えていた。
「同じ動き…ならっ!」
このまま戦っていても体力と魔力の無駄使いと判断し、レーヴァテインを偽物に投げつける。
勿論偽物も同じ動きでレーヴァテインを投げ、レーヴァテイン同士がぶつかり合い爆発がおきる。
その爆風に隠れて、次のスペルを宣言する。
禁弾【スターボウブレイク】
同じ動き、同じスペルを使う相手にパターンの決まっているスペルでは全て無効化されてしまう、そこでフランが選んだのは、たまの全てがランダムであるスターボウブレイクを発動した。
偽物もスターボウブレイクを発動し、密度はかなり上がっているが、避けられない量ではない。
「これなら…!」
ランダム弾幕の中では、同じ動きをしているだけでは絶対避けられない。
そしてフランの予想通り、偽物は愚かにもこちらの動きを真似して動くだけであった。
「チェックメイト」
相手の頭上に大量の弾幕が迫っているのを見て、フランは勝ちを確信した。
弾は、着実に偽物に近付き、確実に倒せる。
と、思っていた。
「そんな単純なわけないじゃないかぁ」
「っ…!」
当たるはずの弾は、偽物には当たっていなかった。
正確に言うなら、避けていた、鏡写しの行動じゃなく、自分の意思で。
「あなた、ただの人形さんじゃないのね」
少し驚きはしたものの、焦りはしない。
自分の意思で動けると分かったところで、自分の負けが確定したわけではない。
少し、倒すのが面倒くさくなっただけ、それだけの事だった。
「ただのお人形さんなら、今のでやられてただろうねぇ。私はオリジナルだからねぇ」
今までと違う、鼻につくような喋り方。
「それが、あなたの本性なのね」
「そうだよぉ、もう演じる必要はないしねぇ」
喋りながらも、未だにスペルによる弾幕は続いている。
それでもまだ喋る余裕があるということは、ある程度の実力はあるということ。
「ふふ…ランダム攻撃も終わったし、また、楽しいダンスを踊りましょう?」
スペルが終わり、偽物はまたフランの動きを真似する、まるで鏡越しの自分だと勘違いしそうなほど、同じ動きをしている。
「私、ダンスは嫌いなの。だからもっと楽しい遊びをしましょう?」
フランはそういい、徐ろに小石を宙になげ、右手を伸ばした、偽物も、本物の動きを真似し、左手を伸ばし、握り潰す。
ボンッ!
「ちっ…」
すると、投げた小石が爆発して粉々に砕け散った。
これは、フランの【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】による現象である。
そしてこの爆発により、フランはある確信めいた事実に至る。
「あはは…やっぱり…。あなた、能力までは真似っ子できないのね」
さっき起こった爆発は音が多数聴こえたわけでも、いつもより威力が大きかったわけでもなかった。
そう、この偽物は、同じ動きが出来、同じスペルを使えるとしても、同じ能力までは使えないのである。
「…案外、気付くのが早いんだねぇ、もっと子供だと思ってたよぉ」
「これでも私、495歳だよ?」
「…そうだったねぇ、妖怪共はほんと、見た目と年齢が噛み合わないなぁ」
偽物は、これ以上フランの真似をしても無駄と判断したのか、変身を解いて、本当の姿に戻っていく。
「てっきり姿を見せずに帰ると思ってたのだけれど違うのね、私はそっちの姿の方が好きだよ?」
「私は大っ嫌いだよ、こんな姿」
偽物のフランだった人物の本当の姿は、白銀の宝石のような髪をした、可憐な幼い少女だった。
その姿は、髪の色は違えど、まるで鏡の国のアリスの様であった。
「ほんとにお人形さんみたいね、あなた」
「この姿は人形なんかじゃないッ!」
人形と言う言葉に反応して、顔を怒りに染め怒鳴る。
他人を真似た姿を人形と言われるのはいいが、本当の自分の姿を人形と言われるのは我慢ならないらしい。
「私はっ…!ミラ、ミラ・レイン!私はっ…人形なんかじゃないッ!!!」
ミラと名乗る少女は、そのまま怒りに身を任せ、フランに攻撃をしかける。
「………」
フランは、怒り狂ったミラを見て、コンマ数秒間だけ、昔の自分を思い出していた。
「…あなたも、愛してもらえなかったのね」
かつて、家族から幽閉されていた自分の姿を。
禁忌【レーヴァテイン】
もうすぐ自分に届く攻撃を最小限の動きで避け、レーヴァテインを取り出す。
「それでも、あなたは敵。手加減は一切しないよ」
止まない攻撃の中、フランは独り言のように呟き、レーヴァテインを右手持ちから左手持ちに切り替える。
「私の新しい戦い方見せてあげる」
最後の敵の攻撃ですが、次回に書くためにあえて細かくは書きませんでした。
今回書くために、今までの話を見直しましたが、それでもやはり見比べると違和感を感じるような文ばっかりですね。
なんとかした方がいいのか、この方針で行った方がいいのか分かりませんが、とりあえず全力を尽くそうと思います。
次回の投稿はいつも通り未定です、まだ調子を取り戻してないので。




