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スケープゴート  作者: 山本正純
事件編
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第八話

「まさかあの菅野が事件に関わるとは。菅野聖也とは面識があるから聞きやすい。だから木原と神津は菅野弁護士の事務所に出向き話を聞いてこい」

 合田の指示を聞き、木原と神津は菅野弁護士事務所へと向かう。その二人と入れ替わる形で、北条が報告書を持ち捜査一課三係に顔を出す。

「合田警部。鑑定の結果が出ました。被害者の衣服からは犯人の物と思われる指紋や服の繊維は発見されませんでした。次に遺体の近くの階段が濡れていたでしょう。なぜ濡れていたのかは分かりませんが、階段にばら撒かれていた液体は鑑定の結果東京都内にあるコンビニエンスストアグロリアスマートで限定発売されたミネラルウオーターの成分と一致しました。遺体の靴底に付着していた水滴も同一のミネラルウオーターです」


 北条は報告書のページを捲り四種類の画像が印刷されたページを合田たちに見せる。

「この画像は地下道の入り口に設置された防犯カメラの画像です。一番上の画像は被害者が地下道に入る様子。画像の右端に時間が表示されているでしょう。時間は午前十時四十五分。この画像に映っているのは被害者だとしたら、死亡推定時刻が限定されますよ」

「間違いないのか」

「間違いありません。一応顔認証システムで被害者の顔と防犯カメラに映った被害者らしき男の顔を照合したところ見事に一致しました」

「それで残りの二枚の画像は何ですか」

 合田の右隣りにいた大野が北条に尋ねる。北条は淡々と質問に答える。

「容疑者です。正確には次のページにも二枚画像が乗っているのですが。この画像に映っている四名の人物は問題の時間帯に遺体が発見された地下道を通過した人物です。二ページ先に防犯カメラの画像から顔認証システムで検索した自動車免許証の顔写真が載っています」


 合田は報告書のページを捲る。次のページには二枚の画像が貼られ、それぞれに一名ずつの男女が映っている。その顔は印刷が不明瞭のため分からない。

 さらに次のページには北条の報告のように四名の自動車免許証の画像が貼られている。

 その画像を合田の隣で見た大野は見覚えのある顔に驚く。

「最初の免許証の写真。髪の長い女は田中冨喜子です」

 大野の言葉に続くように北条は画像が印刷された写真を免許証の写真の横に置く。

「田中冨喜子は午前十時四十七分に地下道に入り午前十時四十九分に地下道の出口から出ています」

 この北条からの報告を聞き大野は右手を挙げる。

「なるほど。田中冨喜子は新宿区にある紅茶店に行ったそうです。おそらくそれは紅茶店へ行く道中なのでしょう。裏を取らなければ分かりませんが」

 大野の話を聞きながら北条は写真を次々と置く。

「二番目。午前十時四十九分地下道に入り午前十時五十一分に出ていったのは黒色のスポーツ刈りの男。名前は戸谷信助。三番目は午前十時五十三分に入り午前十時五十六分に出たお河童頭に眼鏡の男。名前は柳楽新太郎。そして四番目は午前十時五十七分に入り午前十一時三分に出ていったベージュ色のミディアムカットの女。北川律。あの地下道には遺体を隠すようなスペースがないので犯人は北川律の可能性が高いと思われます」

 北条が写真を免許証の画像が印刷されたページの横に置くと合田の左隣にいた沖矢はページの上に裁判のリストを置く。

「田中冨喜子。北川律。戸谷信助。そして被害者の郷里忠吾。この四名が関わっているのは五年前に発生した殺人事件だよ。戸谷信助は遺体の第一発見者。北川律は被疑者岸野吉右衛門の被害者遺族として裁判に参加した」

 容疑者たちの繋がりを知った合田は沖矢たちの顔を見る。

「つまり容疑者と被害者には五年前の殺人事件の関係者という繋がりがあったということか。このことは木原たちにも伝えた方がいいだろう」

「すみません」

 北条が合田の話の骨を折り、報告書の上に一枚の写真を置く。

「被害者とカフェで会っていた人物の身元が判明しました。検事の瀬戸内平蔵です」

 報告書の上に瀬戸内の写真が置かれると合田は再び大野たちに指示する。

「俺はこれから免許証に記された容疑者の現住所に向かって事情を聞きに行く。大野と沖矢は瀬戸内平蔵検事に話を聞きに行け」


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