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スケープゴート  作者: 山本正純
事件編
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第七話

 午後一時。警視庁捜査一課四係の一室に合田達が集まる。

 部屋には大きなホワイトボードが設置されていて、それに被害者の写真と遺留品と謎のメールの写真が貼られている。

「まずは俺から話そう。被害者が現場に辿り着くまでの過程が分かった。午前九時被害者は中央区にある自宅を出発。それから電車で移動して午前十時に新宿区にあるリゼというカフェで黒いスーツを着た一人の男性と会っているのが確認された。店の防犯カメラの映像を鑑識に渡して解析してもらっている。それから三十分後被害者は店を出て行き地下道の階段で足を踏み外し転落死した。これが一連の流れだろう」


 合田がホワイトボードに被害者の足取りを書き込みながら刑事たちに報告する。その後で合田は木原たちの顔を見る。

「現場周辺での聞き込みの結果は」

 合田が現場周辺で聞き込みを行った木原と神津に尋ねると木原が手帳を広げる。

「現場周辺で聞き込みを行ったのですが、不審者は誰も目撃していませんでした。被害者と誰かが一緒に歩いているところを目撃した人もいません。だから犯人はあの地下道の中で被害者と会い、口論の末被害者を突き落したと考えた方が自然でしょう」

 木原の推理を補足するように神津が言葉を続ける。

「因みにあの地下道の内部には防犯カメラが設置されていないが、地下道の入り口と出口には防犯カメラが設置されている。その映像を借りているからそれを調べたら容疑者を絞り込める」

「そうか。それでは被害者周辺の身辺調査を行った大野と沖矢はどうだ」

 合田が大野と沖矢に振ると、大野がスーツから一枚の写真を取り出す。

「被害者の郷里忠吾は東京地方裁判所に勤務しています。被害者の上司は佐藤高久。郷里忠吾は今日仕事が休みで瀬戸内平蔵検事を訪ねる予定だったそうです」

 大野は佐藤高久の顔写真を見せそれをホワイトボードに貼り、報告を続ける。

「被害者の上司の佐藤高久に被害者を恨んでいる人物に心当たりがないのかを聞いたら、被害者が関わった裁判の関係者の中の誰かだろうと言っていました。裁判所から彼が関わった裁判の関係者リストを預かっています」


 大野の報告に続き沖矢はもう一枚の写真をホワイトボードに貼った。その写真には長髪の女が映っている。

「名前は田中冨喜子。被害者と同じ東京地方裁判所に勤務する裁判官でスケープゴートという言葉に反応したんだよ。裁判所から預かったリストには当時の裁判官や弁護士、検事の名前も記載されていて、被害者の郷里忠吾と田中冨喜子が裁判官として裁判に参加したケースが二十件あったことが分かったよ」


 大野は裁判リストを合田達に配る。そのリストを合田が捲る。そして一瞬見覚えのある名前が合田の目に映ると彼は声をあげる。

「菅野聖也と瀬戸内平蔵か。裁判リストには必ず両者の名前が記載されている。これは偶然だと思うか」

 合田が木原たちに問いかける。その問いを聞き刑事たちの脳裏に二人の顔が浮かぶ。

 菅野聖也はどんな罪でも軽くしてしまう司法の悪魔と呼ばれる弁護士として有名である。

 一方瀬戸内平蔵はどんな手段を使ってでも真実を暴き裁判所に戦慄を走らす司法の天使と呼ばれる東京地検の検事である。

 二人はライバルであり、二人が裁判所で激しい頭脳戦を繰り広げる様を人々は聖戦と呼ぶ。


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