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スケープゴート  作者: 山本正純
事件編
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第五話

「その根拠は何だ」

 合田が聞くと北条は遺体が着ているスーツを指さす。

「遺体の胸倉のシャツに掴まれたような痕があるでしょう。亡くなる直前に誰かに胸倉を掴まれたのではないかと考えただけです。それとワイシャツの裾にコーヒーのような液体で汚れています。そこから真実を導き出すとしたら、犯人は現場の周辺でコーヒーを飲み被害者とトラブルに遭った。そして犯人はこの現場まで被害者を追い詰め階段から被害者を突き落とし現場を離れた。仮にこれが殺人事件だったらこのようなシナリオになりますね。でもシャツのしわは亡くなる直前にできた物だとは断言できても、いつできたのかは分かりません。ここではないどこかで因縁を付けられて、その後階段から足を踏み外して転倒。とも考えられます。遺体の靴底も濡れていますし、間違いないでしょう」 


「それで遺体の身元は分からないのか」

 北条の推理を聞き神津が尋ねる。すると北条は鞄から財布を取り出し、免許証と名刺を合田に見せた。

「被害者は郷里忠吾。五十歳。職業は東京地方裁判所で裁判官を務めているようですね。顎が硬直しかけているので死後一時間から三十分くらいです」

「遺体が発見されたのは午前十一時五分。俺たちが現場に臨場したのが午前十一時十五分頃だから亡くなったのは午前十時十五分から午前十一時までの四十五分間に限定されるということだな」

 合田が推理を述べると北条は首を縦に振る。

「おそらくそうですね」

「被害者が裁判官ということは裁判絡みの犯行動機が隠されているかもしれませんね」

 北条の近くに立っている大野警部補が意見を述べると合田と北条が首を縦に振る。


「そうだな。一班は現場周辺の聞き込み。二班は被害者周辺で被害者を恨んでいる人物の捜索。三班は……」

 合田が刑事たちに指示を与えようとした時被害者の遺留品の鞄に入っていた携帯電話が鳴り響く。

 北条が慌てて遺留品の携帯電話を開くとメールが一通届いているようだった。

「スケープゴート」

 北条が唐突に呟くと警察官は彼に注目する。

「それは何ですか」

 木原が尋ねると北条は携帯電話の画面に表示されたメールを見せた。

「先程被害者の携帯電話に届いたメールです。メールアドレスが被害者の携帯電話に表示されているので、おそらく電話帳に登録されていないアドレスで誰かが送ったメールということでしょう。一応メールアドレスの解析をします」

 北条が現場から警視庁に戻るために階段を昇ると合田は第一発見者の警察官たちに尋ねる。

「ところでスケープゴートというメッセージはこの街で頻発に発生しているイタズラと関係あるのか。例えば現場近くにスケープゴートという落書きが書かれていたとか」

 合田の問いに警察官たちは首を横に振る。

「そんなことはありませんよ。一連のイタズラには犯人からのメッセージは残されていません」

 その頃非常線が張られた新宿の地下道に回りに野次馬たちが集まる。その中に一人。黒いコートを着た丸坊主に黒縁眼鏡の男が手にしていた携帯電話を閉じ、野次馬たちの中から姿を消した。


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