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スケープゴート  作者: 山本正純
推理編
29/36

第二十九話

 午前十一時。警視庁の鑑識課の部屋に合田達が集まった。木原と神津の二人と共に北条へ呼び出された合田はノートパソコンを操作する北条に聞く。

「それで話というのは何だ。鑑識課に呼び出して」

「北川律が所持していたUSBメモリの解析が終了しました。このUSBには面白い仕掛けがあるんです」

 北条がノートパソコンにUSBを刺すと、突然画面が暗くなり、緑色のプログラム言語が画面に表示される。

 そして北条がキーボードで『4L5>』と打ち込むと画面が切り替わり、数字が羅列された表が表示された。

「東京地方検察庁の裏金に関するデータのようです。後で捜査二課にも解析を依頼しますが、これは東京地方検察庁の不祥事の証拠になります。この記録によれば裏金造りには佐藤高久が関わっているそうです」

「北条。なぜこんな短時間でパスワードが分かった」

 合田が疑問を口にすると北条が頬を緩める。

「こんなシステム。朝飯前ですよ」

 北条はお茶を濁し具体的な解答を避ける。その答えに合田たちが困惑すると、北条が続けざまに北川が所持していたもう一つの遺留品のロッカーの鍵を合田達に見せる。

「この鍵は東都デパートのロッカーの鍵の用です。この鍵からは当たり前ですが複数の指紋が検出されています。もちろん柳楽と北川の指紋も検出されていますが、もう一人気になる人物の指紋が検出されたんですよ」

「気になる人物だと」

 神津が首を傾げると北条は一枚の紙を合田たちに見せる。その紙には指紋鑑定の結果が記されていた。

「瀬戸内検事ですよ。偶然同じロッカーの鍵を使っただけとも考えられますが、事件関係者の指紋が検出されたとなると奇妙な話になるでしょう」


「それで凶器となったカッターナイフの鑑定はどうなった」

 合田が鑑定結果を尋ねると鑑定書を北条が渡す。

「指紋は両方とも柳楽の指紋しか検出されませんでした。カッターナイフに付着していた血液について。北川の近くに落ちていた物からは北川の血液のみが検出され、柳楽が所持していた方からは柳楽の血液しか検出されませんでした」

「つまり柳楽は自分が暮らすマンションの一室で北川を呼び、彼女を殺害。だがその直後木原たちが自分の家を訪れたことを知り、慌てて寝室のクローゼットに隠れて自殺を図ったということか」

 合田の推理に北条が納得する。

「その可能性が高いでしょう」

 その時北条の携帯電話が鑑識課の部屋に鳴り響く。

 北条がスーツのポケットから携帯電話を取り出すと、電話がかかっていることが分かる。

 その電話の相手は北条の部下の鑑識課の刑事の清原ナギである。

『清原です。東京都警察病院に搬送された北川律と柳楽新太郎を見てきました。両者共に命に別状がありませんが、現在意識不明の重体です。北川は腹を刺された時咄嗟に腹を触ったようです。それは彼女の両手に付着した血液が証明しています。一方柳楽の左手の手首には真新しい躊躇い傷があります。おそらく柳楽は自殺しようとしていたのでしょう』

「そうですか。分かりました」

 北条が電話を切る。彼はそのまま合田に報告する。

「合田警部。やはり柳楽による無理心中の可能性が高いと思いますよ。これは鑑識課の見解ですが」

 北条の報告を聞き、合田は鍵を木原たちに渡す。

「東都デパートに行きロッカーの鍵を開けて来い。それとデパートの防犯カメラの映像もチェックしてこい」


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