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スケープゴート  作者: 山本正純
事件編
15/36

第十五話

 木原と神津が警視庁捜査一課三係の部屋に戻ると机を囲むように合田達が集まっていた。

 二人が集団に加わると机の上に透明な袋に入れられたペットボトルが置かれているのが見えた。

 捜査員が集まったことを確認した北条は透明な袋に入れられた空のペットボトルを手にしながら説明する。その隣にはもう一個のペットボトルが置かれている。こちらは空ではなくお茶が入っているようだった。

「このペットボトルは地下道から一番近い公園のゴミ箱に捨てられていました。おかしなことにこのペットボトルからは人の唾液が検出されなかったんです」

 北条は空のペットボトルの隣に置かれたお茶が入ったペットボトルに手を伸ばし、キャップを開ける。そしてペットボトルの飲み口を唇に近づけ一口お茶を飲んだ。

「このように普通ペットボトル飲料を飲む場合は必ず飲み口に唇が付着するため、唾液が検出されないとおかしいんです。さらにこのペットボトルからは一種類の指紋が検出されました。そしてこのペットボトルに微かに残った水滴とはコンビニエンスストアグロリアスマートで限定発売されたミネラルウオーターの成分が一致。もちろんラベルも一致しています」

「それで誰の指紋が検出された」

 神津の質問を聞き北条が写真を机の上に置く。それは戸谷信助の顔写真だった。

「合田警部の手帳に付着した指紋と現場周辺のゴミ箱から発見されたペットボトルから検出された指紋は戸谷信助の物と一致しました。事実確認をするために大野警部補と沖矢巡査部長をコンビニエンスストアグロリアスマートで聞き込み捜査を依頼したところ、今日の午前十時四十分に戸谷がミネラルウオーターを購入したという店員からの証言と防犯カメラの映像を入手することに成功」

 北条がコンビニの防犯カメラの画像を机の上に置くと合田は戸谷の写真を持ち上げる。

「犯人は戸谷だ。証拠も出揃っているから間違いないだろう。これから逮捕状を請求して戸谷を逮捕する」


 午後三時。合田は木原たちを連れ再び戸谷の自宅を訪れる。合田がインターフォンを押すと戸谷が警戒することなく玄関のドアを開けた。

「刑事さん。今度は何ですか」

 戸谷が迷惑そうに刑事たちに聞くと合田は戸谷に逮捕状を見せる。

「戸谷信助。殺人の容疑で逮捕する」

 突然の出来事に戸谷は唇を噛み、玄関のドアを閉める。戸谷は素早く玄関のドアを施錠すると、靴を脱がずにベランダへと向かい、柵を跨ぎ二階から飛ぶ。

 地上に着地した戸谷は刑事たちから逃げるように走る。だが彼がしばらく道路を走っていると、周囲をパトロールしていた沖矢に遭遇する。沖矢が警察手帳を見せると戸谷はポケットに仕舞っていたナイフを取り出す。

「そこをどけ。刑事」

 戸谷はナイフを持ち沖矢に襲い掛かった。だが一瞬でナイフが折れ、戸谷の体がアスファルトの壁にぶつかった。

 沖矢が一瞬で戸谷を蹴り飛ばした。その光景を少しだけ離れた位置から見ていた大野が拍手する。

「素晴らしいですね。まさかそんな特技があったとは思いませんでした」

「格闘技は全般的に得意なんだよ」

 沖矢が気絶している戸谷に手錠を掛け、二人は警視庁に戸谷の身柄を移送した。


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