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スケープゴート  作者: 山本正純
事件編
14/36

第十四話

 木原と神津は東都新聞社のデスクに顔を出し、新聞記者たちに警察手帳を見せる。

「警視庁捜査一課の神津だ。北川律に話がある」

 神津の声を聞きベージュ色のミディアムカットの女が立ち上がる。

「今度は警視庁の刑事を使って説得しようとしているのかな。迷惑よ」

 その女。北川律が独り言のように呟きながら二人の刑事に歩み寄る。

 その独り言に反応した木原は首を横に振った。

「北川。これはまだマスコミに公表されていないことですが、実は新宿区の地下道で裁判官の郷里忠吾の遺体が発見されました。郷里は五年前あなたの父親が被疑者となった殺人事件の裁判官の一人」

 木原の言葉を聞き北川は激情する。

「父親を有罪判決にした裁判官が許せなかったという犯行動機があるから私が犯人とでも言いたいの。私は殺人犯の父親なんて大嫌い。菅野弁護士に父親の遺体を引き取れと言われたと思ったら今度は殺人事件の容疑者扱い。私は父親のことを忘れたいだけなのに、どうして思い出させようとするの」

 北川の怒りを木原たちは止めることができない。彼女の怒鳴り声は新聞社のフロア中に響き、何事かと思った無関係な新聞記者たちが北川と木原を囲むように集まる。

「落ち着け。俺たちはお前の話を聞きたいだけだ。まず菅野弁護士と別れた後の行動を教えろ」

「答えたくない。帰ってよ」

 

 北川が神津の質問に答えず強い口調で二人に言い放つ。それから北川は集まっている野次馬のような新聞記者たちを押し飛ばし、刑事たちの前から姿を消した。

 木原は一瞬北川を追いかけようと思い一歩を踏み出したが、今の北川から話を聞くのは難しいと感じ断念する。

 木原は新聞社から去る前に周囲に集まった新聞記者たちに呼びかける。

「裁判官が亡くなった事件に関しては改めてマスコミの皆さんに報告します。それまでオフレコにしてください」

 木原が警告すると、二人は新聞社から立ち去る。


 新聞社の駐車場の停車した自動車の助手席に神津が乗り込むと、運転席に座った木原がハンドルを握る。

「木原。お前が地雷を踏んだのがマズかった。お前が地雷を踏まなかったら話を聞けたかもしれない。おかげで収穫はゼロ」

 木原が自動車を走らせながら神津の言葉を否定する。

「いいえ。収穫はあったでしょう。北川律の父親嫌いは演技ではない。あの怒りは本物でした。即ち父親を有罪判決にした裁判官が許せなかったという犯行動機は成立しない」

「だが容疑者を怒らせて情報を聞き出せなかったことを合田警部に知られたら大目玉を食らうことになる。連帯責任だから俺も怒られる。お前のミスだ」

 その時だった。神津の携帯電話に合田警部からの電話がかかってきたのは。神津が携帯電話に耳を当てると合田警部は単刀直入に報告する。

『合田だ。早く警視庁に戻ってこい。事件が解決するかもしれない』


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