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スケープゴート  作者: 山本正純
事件編
13/36

第十三話

 午後二時。合田は戸谷信助が暮らすマンションシックスシャトーを訪れる。

 このマンションは五年前の殺人事件の現場でもある。免許証に記された住所によれば戸谷は五年前同マンションで遺体を発見したにも関わらず引っ越しをしていないことが分かった。

 合田が小さなマンションの階段を昇り二階にある戸谷に部屋のインターフォンを押す。

 すると玄関のドアが開き一人のスポーツ刈りの男が出て来た。

 合田は男に警察手帳を見せる。

「警視庁の合田だ。戸谷信助か」

「そうですが、警察が何の用です」

 その男。戸谷信介が警戒しながら刑事に尋ねる。

「五年前この部屋で身元不明の遺体が発見されたことは覚えているな。その殺人事件の関係者が先程殺された。その遺体発見現場となった地下道にあなたは午前十時五十三分に入り午前十時五十六分の間に出入りしている。なぜ地下道を通ったのか。その時地下道で何かを目撃していないのか。それを教えてくれ」

「友達の家へ向かって歩いていました。友達の家にはDVDを借りに行ったんですよ。その時地下道を通ったら誰かが立っていましたね。暗くて誰かは分からないけど」

「因みに職業な何をやっている」

「自宅勤務のゲームプログラマーです。プログラミングの専門学校に通って専門知識を身に着けて今はスマートフォン向けのゲームを開発しています」

「気になっているのだが、なぜ引っ越さない。五年前の殺人事件がトラウマではないのか」

 合田の問いに戸谷は失笑する。

「関係ありませんよ。僕はただこの部屋から身元不明の遺体を発見しただけですから。面識のない男性の遺体を発見したくらいで引っ越すほどメンタルが弱いわけではないからね。それでも当時はイジメられました。お前が殺したんじゃないかって。だっておかしいでしょう。塾から帰ってきたら部屋に身元不明の遺体が転がっていたんですから」

「五年前マスコミは遺体を発見した少年Aが真犯人ではないかという憶測も報道したな。そのことで世間から叩かれたのならなぜ引っ越さなかった」

「アメリカの日本大使館で働く外交官の父親とフランスのファッションデザイナーとして活躍する母親。その二人が両親なので中学校から一人暮らしでした。とは言っても二十歳になるまでは一週間に五回は近くに住む親戚が親代わりとしてやってくるから厳密には一人暮らしではない。長期間このマンションで暮らしたら引っ越せなくなった。ただそれだけです。僕はこの部屋を愛してしまったのかもしれませんね」

「分かった。それではその友達の住所をこの紙に書いてくれ」

 合田は手帳の紙とボールペンを戸谷に手渡し住所を書かせる。戸谷が住所を紙に記し、手帳を合田に返す。それから合田は頭を下げ戸谷の元から去った。


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