プロローグ
『死に神とダンスを』
遺書
ごめんなさいと言えばあなたはわたしを許してくれるでしょうか。てっこんな書き方したらよけい怒るよね。最後ぐらいは湿っぽくしようかなと思ったんだけど。らしくないか、うん、素直にいこう。
わたしはね、死ぬことにしたんだ。多分、この手紙が届く頃には死んでると思う。ごめん、勝手だよね、でも、もうわたし耐えられないから、だから、最後にあなたにお願いがあるの。
過日
遺書を書き終わって、わたしはすぐに封筒に入れて糊をつけた。封を丁寧に閉じて机に置く椅子に体重を預けて伸びをすると背凭れがギッギッと軋んだ。いつもこの音を煩わしく思っていたけれど今は何故か愛おしく思えた。改めて見回して見ると生まれてから十六年過ごしたわたしの部屋はなんだか暗く沈んでいる。
(あっそうか)日が暮れ掛けているんだ。遺書を書くのに熱中して時間の感覚が狂っていた。夏の暑さに炙られて肌が赤く染まっている。滲み出た汗が衣服を張り付かせ、べたべたして気持ち悪い。よっこらせと立ち上がりクローゼットを開く。服が汚れたらすぐ着替えるのがわたしの習慣だ。クローゼットの中を入念に検分する。死に装束になるのだからきちんとした服を着たいのだ。あとで警察の人も見るだろうし。
さんざん悩んだあげく、恥ずかしくて一度も着た事の無い服を選んだ。死に装束としてはこの服が相応しい。わたしは手早く着替えて誰にも受け止められない一歩を踏み出した。




