教会にて②
真継は、背中の鎧箱を教会の裏に運ぶと地面に無造作に置く。
そんな所に置くと危険ではないかと心配するノエルであったが、人間の力では鎧箱を盗むことなど不可能だし、何より、鎧箱を中に持ち込めば床板は抜けるし、真継としても、鎧箱を背負ったままでは座ることもできないし、木の床に負担をかけないまま、居座る事は難しい。
真継は、黄金の下駄も脱ぎ建物に入ると、2階のテーブルに招かれる。
この教会以外に2階建の建物のない村の様子は窓からよく見えるそれほど広くない村の端には、この国の軍人と思しき人たちが巡回いしているが、他にほとんど村に人は見受けられない。
一方この教会の中は騒々しく、あちらこちらから子供たちの声が聞こえる。
「ここには何人暮らしているんだ?」
「今?今はちょうど9人だよ」
「それを君一人で?」
「ううん、大人は私と、もう一人ヘレンがいるわよ。後は仕事でめったに帰ってこれないけどミヒャエル君、あぁそれをいれると10人か、子供たちは7人よ」
「今は、か増えてそれなのか、減ってそれなのか?裏にはかなりの新しい墓があるが?」
「ここで暮らしていて死んじゃったのは一昨年に1人。裏のお墓は前にこの村が戦場になった時に、死んでしまった身寄りのない人たちのものよ」
「ノエルさんは今いくつなんだ?」
「私?正確には分からないけど、たぶん17,8かな、」
「それでこれだけの子供たちを守っているのか、先程の事といい若いのに感心するな」
「好きでやってるんだからそういういい方しないで、それに私大人が死ぬほど嫌いなの、
皆が大人の都合で振り回されるような事はしたくないし、見て見ぬふりなんてできないよ。
結果が今の状況、後先考えない私の選んだ私の生き方。さ、できた。どうぞ召し上がれ」
真継に出された温かい食事。真継は食べられれば何でもいい人なので、まともに調理してあるものを口にするのは久しぶりだ。
それにはじめて見るたべものだが、匂いがおいしそうだ
「いただきます」
「両手を合わせるそれ、真継さんの国のお祈り?」
「そうだな、でもちょっと違うのは神様に感謝するというよりも、この食材に感謝するのと、作ってくれた人に感謝するためのものだな。俺の国では命を頂くという意味でいただきますという」
「ふーん、変わってるわね。で、どう?おいしい?」
「あぁ、初めて食べる味だけど、おいしい」
「そう、よかった。隠し味は私の愛情」
「そうか、結構隠れてないぞ?」
「や、やだ何言ってんのよ」
「心のこもってない上辺だけのもかどうかくらいは分かるさ、武も料理も何であれ、思いは伝わる物だぞ。ちゃんと感謝した甲斐のある物だよ」
「そ、そう、おかわりもあるから、遠慮せずに言ってね」
まともな食事を食べた真継。言葉に甘えお代わりを要求し、結局全部平らげた。
そして食後の慣れない紅茶を飲んでいると、後ろに小さな女の子がノエルに何かを言いたそうに立っている
「お姉ちゃん。私のは」
「ナナイ、こっちに、、、」
ノエルは真継に気づかれないように、ナナイを連れ出そうとするが、
それがどういう意味か分からないほど真継は鈍感ではなかった。
「この食事、あの子のだったのか」
「大丈夫、食べられない事なんてよくあることだから、今日の夜には駐留軍の人に少し食料を分けてもらえるように約束したし、、、それに、明後日にはヘレンが帰ってきたらそれなりに食糧持って帰ってこれるはずだから、真継さんは気にしないで」
ノエルは、お腹を空かせたナナイをなだめながら抱きかかえ、気を紛らわせようとする。
そんな中、一階からアルノーが慌てて、駆け上がってくる。
「どういう事だよ!ヘレン姉ちゃんが戦場にいっただなんて、」
「どうかしたか」
「真継さんは気にしないで、アルノー後でちゃんと説明するから、今は下に行ってなさい」
「僕たちの為だよ、アル」
「ロイズ、、」
「ハンネさんが言ってたよ。お金が無くなって、治療をしようにも薬草も取れなくなってまともな治療もできなくなって、それで戦場に行ったって、戦場なら薬もあるし、免許を持っていないヘレンお姉ちゃんでも十分な稼ぎになるって」
「なんでだよ!せっかく俺たちが薬草そってきたのに」