約束
ケレスとの決戦から半年、
あやめの献身的な介護の甲斐あって、真継は2か月後には何とか多少は歩けるようになったが、未だに腕が動くことがなく、あやめが握った手を感じる事も出来なかった。
そんな状況下だ。ケレスの襲撃に真継の戦力を期待する事は出来ない。
サスケとミヒャエルは対ケレスの為の戦力を作り出すための、あわただしい日々は続き、約4か月ぶりに、ミヒャエルが、真継の元を訪れていた。
「やぁ、久しぶりだね。真継。悪かったね、見舞いが遅くなって、いやー毎日大変だよ。今じゃ、僕は大公様の懐刀。カークの事もあって、大公様は今までの人間関係を信用できなくなって、他国の役人である僕のいいなりだよ。おかげでアラビスでも僕の評判と信頼は鰻登りさ。それにアネット王女の能力の事も教えてくれたおかげで、適切な接し方が分かっているおかげでアネット王女も僕には特別の信頼をおいてくれている。
いや、何もかもが順調、全部が僕の計画通り、君のおかげだよ真継」
「、、、、、、」
無意味に明るく振舞うが真継はまるでミヒャエルの事など見えていないかのように窓の外から教会の方を見つめている。
ミヒャエルが病室を見回すと沢山のものが置かれている。
すべてはあやめの買い込んだものだろう。気を紛らわすためのもの、栄養をつけるためのもの、トレーニングに使える物、さまざまなものが置かれている。
そしてあやめの献身は物にはとどまらない、西洋医学に加え東洋医学、
果ては治癒の能力者まで見つけてくる始末。
最近では真継の腕を治すために、こちらの世界の神様にまで頼ることまで本気で考え、今も礼拝に参加するため教会に行っているのだという。
自分の国から持ってきた資産も、技術も提供し、そのすべてを真継の為に費やした。
ミヒャエルは何となくここに来た体を取り繕っているが、
その実、あやめを見ていられない為、あやめのいない時間を見計らった。
「、、、、柄にもなく、シリアスだね。あらぶったり、攻撃的になっているかと思った。
それか、生きる糧を失って、もうすべてを諦めて、絶望に沈んでいるのかとも思ったりしたけど?」
「馬鹿を言うな。そんなの最初にやりつくしたさ、いつまでもそんな事をしたらあやめが悲しむだろ」
「、、、、、これからどうするつもりだ」
「船が出来次第鬼ヶ島に」
「まだ、諦めていなかったのか!」
「死んだ友との約束だ。、、、、半分は冗談だ。そりゃその気になりゃ、両足と頭だけでも、何とかするつもりだけど、それでも最低弥助がいるんだ。
それじゃ何ともならない事は分かっている。
俺はいくら化け物だといっても、どこまで行ってもただの人間だ。
奇跡が起こるわけでもなければ、思いだけで何とかなるわけでもない。、、、実はな、あやめの伝手で、というより、ユーリエの伝手でだが、ケレスの医術で見てもらった。
俺の両手は既に神経が完全に切れていて、ケレスの医療でも治すことはできない。
それどころか、あやめが毎日何時間もマッサージしてくれなけりゃ、壊死する物らしい」
「真継、お前」
感謝と、悔しさが入り混じった涙が頬を伝うが真継はそれをぬぐう事も出来ない。。
すべては自分のせいだ。
全部自分で決めて勝手にやって。
揚句、自分の力を制御できずにこうなった。
後悔できるような生き方か、悔いていい様な立場が今までどれだけ同じような人間を躊躇いなく傷つけた、奪ってきた、懺悔も後悔も許されるわけがない。
ずっと前から死など怖くない、腕の一本や二本。戦いの為ならくれてやる。そう覚悟していたのに、いざこの状況になれば日々弱っていく自分自身に耐える事すらなく。
あやめが励ましてくれなければ、あやめが希望を見せてくれなければ、そして無理をしてでも笑っていてくれなければ、不安で押しつぶされそうになる。
「昨日は、久しぶりにサスケ来てさ。殺してやろうかっていったんだ。
これ以上俺が惨めなさまをさらすのが、我慢ならないんだと、
真面目な顔で本気で言ったんだ。
それを俺は怖いって思ってしまった。
でも、そうすればあやめは俺から解放されるとも思った」
「お前本気でそんな事!!」
「分かってるよ。どんなに情けない俺でも、あやめは慕ってくれる。こんな俺でも死ねば悲しんでくれる。俺はそんなあやめに慰めてもらってばかりだ。なぁ、ミヒャエル。俺はどうしたらいい。俺は、、、」
「俺なんかに頼るな。お前はいつだって、戦闘狂で、最強で、そして俺や、アルノー達の英雄なんだ。死のうなんて思うな、諦めようとなんて思うな。
今、今日もこの時もアルノーはお前を超える為に努力をしているんだ。
お前は待っているんだろう武の頂で。ここで諦めるようなことは俺が許さない。
真継、お前の道はここまでか、ここで終わりなのか」
ミヒャエルの目からは強い怒りを感じる。ここで終わりじゃないだろ、
絶望には早すぎる。諦めるには早すぎる。そして死に希望を抱くには遅すぎる。
そう今さらだ止まる事も許されない進むことだけが、唯一の道だ。
「、、、、いいや、まだだ。俺はまだ何も終わってなんかいない。
俺は全てを終わらせて、
姫様に土産話を聞かせると約束した。
ケレスから世界を守ると友と約束した。
全てが終わったら君を幸せにするとあやめと約束した」
「おま、いつの間に、、、あぁ、その通りだ。
だから諦めるな、すすめ真継、俺もサスケもみんなそうだ。
前に進むしかないんだ俺たちは」
ミヒャエルは、土産にと真継に一枚の紙をおいていった、そこに記されていたのは、はるか北の希望の光。




