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「所詮は、能力者とは言え、猿を使っては欠陥品か、」

今まで隠れていた指揮官がいつの間にか部下を従え、

手甲と具足を失った真継になら勝てると踏んだのか、ここぞとばかりに強気で口をはさむ。

「俺が言えた手前じゃないが、口には気をつけろよ。死者を冒涜するようなまねをするなよ罰が当たるぞ」

真継が自ら天の名を冠した技で天罰を与えようとした時だ。

『天下天上の覇道を求め、地の獄に落ち、巡り巡りて戻りたるわ、人の世なり、』

圧倒的な威圧が上から押し潰してくる。それがなんなのか理解した真継は。

ケレスの指揮官に向けるはずだった拳を天に向ける。上空から押し寄せる悪意の一撃。

真継の抵抗むなしく、真継は地に顔をつけられ、

ケレス指揮官はその辛うじて真継がはじいた攻撃の衝撃を受け仲間ともども機人が壊れて吹き飛ばされていく。

そしてその攻撃を放った主はゆっくりと真継の前に現れる。

黄金の龍を模した全身鎧のその姿、黒を好んだ男の見る影もない姿。

だがこのどす黒い悪意、間違いない。

「久しいな、真継」

「この悪意、魔王か」

「いかにも、」

「そんな金ピカが好みだったと初耳だぞ」

「金色も悪くはないが、主張が過ぎるこのセンスは、猿か」

「まぁ、当たらずとも遠からずか、だが、なぜおまえがそこにいる」

「我を思うもの執念が宿ったか、その者の力の影響を受け、我が顕現したか。理由は知らぬが、お前が我を我だと思うのなら、我なのだろう。

だが、我は所詮は我の影、我を思う者たちが作り出した幻影にすぎぬ、

故に我はより純粋に魔であり王であり、ただの人ぞ」

真継は立ち上がろうとするが、先ほどの圧倒的な攻撃を前にまともに体を動かすことすらできない。まるで別次元、真継にあらゆる者が感じていたものを真継は感じている。

「満身創痍と言った所だな」

「真継様!!」

この状況であやめは真継に近寄り真継に肩を貸す。

「ほう、貴様が、、、、化けて出てみるものだな。貴様が人の真似事を、、」

魔王は真継の心の変化を感じ取る

「貴様に言われたくはない、あやめ大丈夫だありがとう。離れていてくれ」

真継はあやめを逃がすと、己の意思で魔王に対峙する。

「久しぶりだな、しかしこの感じ、あの時よりも強いんじゃないのか?」

「貴様に殺された時すでに齢は50を過ぎておるとうに衰えた肉体よ。

これには齢は関係ない故。魂こそないとはいえ、貴様は狂気を感じ、我が悪意を感じるその程度の意思はあり、我が記憶は死後のものぞ」

「最高の体に、最高の技。なるほどそれは強いな」

「さて、我が意志が偶然宿ったとはいえ、この器はお前を殺すために作られたもの、そろそろ座興には飽きたところだ。では始めるか。どうだこれを使うか?」

そういって魔王は黄金刀をかざす。

「それは俺を殺すの為に作られたものだ。それに俺は喧嘩は素手ゴロが好きなんでね」

「そうか、ならば死ね」

真継は、既に枯れ果てた力を振り絞る。

対する、魔王は悠然と刀を鞘に納め、構える。

「貴様は、その人外の力を、天の名をかたりまるで自らが天であるかのように語る」

「あぁ、その方が箔がつくし、強い奴が息巻いてくるだろ」

「だから我も貴様に倣い、名をつけるようにした」

「それがさっき言っていた人撃か、ふざけた事だな、魔の王が人を語るとは」

「なに、天を語る貴様と変わらぬさ。お前は力に憧れ、天を求めた。同じ事だ。

我はいつとて人の意志、人の世に恋い焦がれる。それだけの事」

「あれだけの人間を殺しておいてよく言う」

「貴様には言われとうないわ、善悪合わせ持ってこその人ぞ、人を愛し、人を憎む。

貴様の様に武のみを求め、迷わぬものに何の意味があるか」

「まぁ、いいさ、俺とあんたは似た者同士だが相容れない。地獄から蘇ったのならもう一度地獄に落としてやる。行くぞ、いざ尋常に、勝負」

真継は今この瞬間に成長しなければこの目の前にいる魔王に殺される。

先ほどの一撃で理解出来る目の前にいる魔王はそれほどまでに圧倒的だ。

「武の頂、無の無限の追及、その先にある物をただそれだけを追い求め、

その為に生も死も超えるつもりだったんだが、今は死にたくないと思うよ。

ノエル、あんたのお守り効くかな。

あーそう言えば、あれからノエルの料理食べてないな。あれ、おいしかったからな。

ま、やれるまではやるさ。今更この狂気を変えたところで負けるだけ。

だったら進むだけだわな、俺が信じた道を。

でも力を貸してくれ、思いが力なら、いくらでも縋るさ、」

真継は心穏やかにいつのまにか増えていた大切な人の顔を思い浮かべる。

「天には二つ及ばず、及ばざるが劣るに非ず。人撃 夢現」

真継も魔王の悪意に呼応するように、精神を高める。

「ふ、やっぱり最後は、お前たちだよな」

生れてからずっと強く、ただ強く、それだけを願った。

そんな真継が誰かの為に、そう思って強さを求めたのは

今思えば始まりはあの日だ。

瑠璃姫、そしてあやめに出会った時、

あの時この右手を瑠璃姫はおびえながら握ってくれた。

あの時この左手をあやめが両手で縋るように掴んでくれた。

強くなろう、守れるくらいに、幸せになってもらうために。

「天撃:終の技 天帝黒神撃」

2人の体がすれ違い、互いの一撃がお互いの体に命中する。

そして訪れる沈黙、沈黙を終わらせ、先に口を開いたのは魔王だ。

「神と帝の名を冠するとは、貴様はいつから虎の威を借るようになったのだ?

全てを飲み込む総和を示す∑(漆真)を継いだものよ」

「お前こそ、結局、人でなくなっても人を称するのかよ」

真継が膝をつく

「真継様!!!」

「ここで、あいつが倒れてくれれば、俺も恰好がつくんだがな、まさか全盛期がここまで強いとは、終の技、その名を帰させてもらう。俺はまだ武の極みには程遠い」

真継が倒れ込み、魔王は何事もなかったかのように刀を鞘にしまう。

「いやーーー!!!!」

あやめの悲鳴がこだまする。

「喚くな女。ふん、下らん」


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