心の力
ノエルから教えてもらった。
信じる神様なんかいなくても祈る事で、自分の気持ちを落ち着ける。
ノエルも時々神様を思い描くよりも大切な人を思って祈る事があると。
あやめが祈る時心にあるのはただ一人。
それはユーリエにとって耐えられない現実だった。
恐怖心を実体化させる力、今機人と一体化し暴走したにユーリエのその力は、
あやめの心そのものに触れてしまった。
自分が助け出そうとした人には欠片も自分なんかいない、そして少しの恐怖心もない、そこにあるのは目の前にある男への思いだけ。
自分を支えていた最後のもの、それは彼女を助け出すという思い。
だが、彼女はそれを心から望んでなんかいない。それを知ってしまった。
ユーリエの心の最後の堰が崩れていく。心を黒く塗りつぶす。
目の前にいる男が憎い、ただそれだけの感情が支配していく。
「天撃:絶技黒閃撃。我が太刀に斬れぬものなし」
真継がゆっくり上から振り下ろした手刀が黒い刃となり、ユーリエの腕を切り落とす。
真継は金属の塊の落下する腕を受け止め、ゆっくりと地面に下すと、あやめを拘束する指をもぎ取りあやめを助け出す。
「悪かったな、怖い思いをさせて、」
「いえ、信じていましたから」
「さて、それじゃ、ユーリエ思う存分やろうか、、、腕は問題なしか」
切り落とされた人気の腕が再生し、より禍々しくまるで生き物のような動いている。
「グガァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ユーリエの獣そのものの咆哮
「泣いているのか、情けない男だ。自分で選んだんだろ、俺と殺しあうために、」
「サ、サダツグ!!!!!!!!!!!!!」
「あの、真継様、お願いがあります」
「なんだ、」
「もう、終わらせてあげてください」
「なんでだこれから楽しい所だ」
「先ほど捕まった時、ユーリエ君の心が私の中に入ってきました。能力は違えど能力者源で繋がっている。狂楽の言葉を信じるなら、あれが本当のユーリエ君の思い。
ユーリエ君は本当は戦いたくない。ずっと暴力に怯えて、従わされて、手にした力でしかそれから解放されなかった。本当は優しい人です」
「だったらどうした?その男が俺を殺すためだけに全てを捨ててまでも手にした力だ」
「ユーリエ君は真継様のおもちゃではありません!」
初めて真継に見せる表情に真継は思わず言葉を失う。
「、、、、、、」
「す、すみません。ちょっと私どうかしていて口答えを、ただ、、、」
「、、、分かった。終わらせよう」
そういって真継は構え、精神を集中させる。
「あやめ、」
「はい、」
「こうしてしまった俺の事、恨んでくれて構わないぞ」
「いいえ、私はそんな真継様をお慕い申しております」
「ありがとう」
ユーリエもまた、全身全霊を込めた一撃で真継を殺そうと限界を超えて力を発揮する。
全身を覆う黒い装甲が信じられないエネルギーで輝き、黒い翼が変化し光の羽が瞬く。
あまりに強すぎる集約された光のエネルギーでユーリエの体が瓦解を始めている。
だが、初めから退路などない。半機半魔の拳が真継に向けられる。
「なぁ、半兵衛。こういう事なんだな、人から思い思われることっていうのは、やきもちっていうのはこういう気持ちか、悪いなユーリエ、俺がもっとまともなら、言葉で済んでたんだろう。
こんなにお前を狂わせることもなかったんだろう。
俺にできるのはこれだけだ、この拳で終わらせる。
あやめは俺に任せろ!お前は安心して死んでいけ、
天撃:黒振撃!!!!!!!!!!」
再びの拳の激突、機人の光の拳と黒い雷を伴う禍々しい拳。
本来壊せぬはずの、幻手甲が衝撃に、迅飛脚が踏込に耐えられず崩れていく。
「勝ってください!真継様!!!!!!!!」
その言葉が明暗だ。
『言葉は力だよ。誰かに為にだとかそういうのも悪くないよ。
真継、いつか君にもわかる時が必ず来るよ、これは僕の望みじゃない。
僕がもう少しすれば死ぬのと同じようにこれは確定的な未来だ。
誰かの為にという思いと、
自分の為にという思いが重なった時、人は自分の限界を超えられる。
真継そうなった時が初めて君は本当の強さにたどり着ける。
要はね、愛だよ愛。
獣だってそれを知っている。
戦うための戦いはね、限界が来るんだ虚無と孤独と老いに負ける時がね。』
「おう!当たり前だ。俺はまだ強くなる。今もそしてこれからも!!」
真継の拳の闇が広がり光を飲み込んでいく。
「あやめ!!お前の言葉が力になる!半兵衛見てるかこれが俺の武だ!!」
真継の拳の衝撃が黒い雷と共にユーリエを飲みこんでいく
「これで終わりだ!!!天撃:黒神撃」
真継がもう片の手で掌底を機人のボディーに打ち込む。
たった今真継が自身の限界を超えた