復讐者
機人の装甲の強度も、大きさも、技量も、技術も、何もかもが無意味。ただの一瞬、ここに存在していた時点でこれから起こる敗北の未来は既に起こった事実となっていた。
「、、、、」
「やった、、のか?、、、、、サスケ」
「そ、そんな馬鹿な、今の声、、、馬鹿なありえない」
『ほう、朱揃え小僧の所の影か、、』
またどこからともなく声が聞こえる
「ば、馬鹿な、なぜあなたが、そんな事は彼らにも不可能だ」
『何、ただの物見湯山よ。この器、狂楽たちか、狂楽たちはどうした、殺されたか』
「い、今は、姫と殿の元で、く、国の為、太平の世の為に、尽力されています。か、彼らだけではありません。かつての皆が、ようやく訪れた平和のために生きております」
『そうか、ならば我もお前を殺せぬな。で、お前と、あれはまだにこのようなところで、戦いを求めているのだな。ふふふ、変われぬのだな。どれ、人の世に生きられぬ鬼の戯れをこれもまた一興よ』
「サスケ、、、今のは、、姿は見えなかったが、さっきまでの冷たい雰囲気が」
『真継!!逃げろ!!!』
聞こえるわけない、そう無意味と分かっていても、叫びたい。
だが、恐怖のあまりサスケはその声を発する事すら許可されない。
そんな事が山頂付近で起こっているとは知らず地上では、まさに地獄、母艦の墜落によりあらゆるところから火の手が上がり、その中に真継は一人、炎の中を見つめている。
「あ、、、そういえば、あやめ、、、は大丈夫か、、後で忘れてたの謝っとこう」
「よくもやってくれたな、化け物め、」
真継が見ていると別の方向からマントをつけた派手な装飾の機人が現れる。
「我がケレスの航空母艦が落とされたのは後にも先にも貴様が始めてだ」
「失せろ」
「は?」
「お前大将首だろ、その恰好と言いバカ殿か、武人ですらない貴様に興味はない。
見逃してやる鬼ヶ島にでも帰って鬼の総大将に伝えておけ、殺すつもりならお前が来いと」
「な、なめるぅぅな!私は、ケレスの伝説の武人ヘラクレス=アベルのしそ、、」
真継は横にあった鉄骨を掴むとそれを投げ、機人の腕を突き飛ばす。
「先祖の七光り何ざ興味はねぇんだよ。何だ?殺されたいのか?だったら処分するぞ。
「ひ、ひぃ、だ、だが私の知略を甘く見るな私にはまだこのような事態に備え我が腹心が、、、」
「8匹だろ」
「は?」
「いるのは分かっている、だが、だからなんだ。あれでは俺の相手にはならない。もう面倒だ、貴様を処分、、、いや、実にお前は運がいい。来たな」
真継が前方の炎にもう一度目をやり笑う。
すると炎の中から咆哮が聞こえ、母艦の外壁が飛んでくる。真継はそれを弾き飛ばし、
それに向って構える。
「な、なんだ?どうなっている」
炎の中から現れたそれは全身を鎖で蔽われ、その鎖の先に大型の機人4体を引き連れている。いや、正確には彼らはそれを抑えるためのパワー型の機人だが、それですら抑えられず、それに引きづられている。
「ば、馬鹿な、、、あれは覇機。なぜあれが動いている。それに形が、、、」
「も、申し訳ありません、総督、、」
「そこの声、、、ハインツかどうなっているそれは禁断の機人!
使える物がいないはずだ。それがなぜ動いている」
「せ、先日、この国の能力者の中で適応を持つ被検体が現れました」
「それは聞いている!だが、それを乗せた!」
「覇機自身が、求めたのです。そして被検体自身も自らパーツになることを望み、、」
「お前の目的はその被検体の回収、おとなしく回収だけをして、本国に帰投していればいいものを!研究所につく前に乗せたのか!」
「申し訳ありません」
「この馬鹿者が!己の名誉に目がくらみ追って!お前などは本国の研究員の足元にも及ばぬ!それでこの結果か!」
「先日まではコントロールは出来ないまでも何とか制御は出来ておりました!
ですが、先ほど、その男が現れてからは、、」
「当たり前だ。そいつは俺を殺しても殺したりない、そうだろ、ユーリエ」
真継の前に現れた大型の機人。それはユーリエが自ら人である事も捨てた姿。
復讐に取りつかれ、正気を失い、自我を失った姿。
彼自身が彼の力に飲まれ、彼自身の恐怖心が形となった。
本来動かすことのできないはずのこの機人を、
恐怖の化身となった彼だったものにより動いている。
「邪魔をするな」
真継は、その身の丈の数倍はある機人用の剣を手に取ると、ユーリエの機人の拘束を切り裂いた。剣は真継の斬撃に耐えきれず、へし折れる。
「何をしている!これがなければもう誰にもこの覇機を止める事は出来ないぞ!それに、なんだこれは、形が違う、あれじゃまるで悪魔じゃないか、、」
「もともと制御できてないだろうが、それにせっかく、俺を殺しに来てくれたんだ。全力で来なければ倒し甲斐がないだろ」
「い、イカれている」
「そんな事はお前なんぞに言われるまでもない。
来いよユーリエ、お前の力を見せろよ」
拘束を解かれたユーリエが真継にその拳を向け、
真継もそれにこたえ、真正面から拳で受ける。