休息
首都脱出から36時間、ほとんど休みなく続いた逃亡劇で、彼らはようやく一息つくことが出来た。気丈に振舞っていた大公も安心したことで、心身ともに疲労が現れ、そのまま、基地の奥の特別室で倒れるように寝込んでしまった。
ミヒャエルもすぐにでも休みたい所であったが、彼らを追うように伝令がやってきた。
首都は陥落現在、母艦はどこかに消えたとの事。
「、、、海岸線の部隊は?」
「申し訳ありません。そこまでの情報はまだ、ただ、私同様に伝令が各地に散っておりますので、今頃は首都に向かっているかと」
「そうか、、、」
首都での戦いが終わった。サスケは無事なのか、サスケだけではない、あそこに民間人はほとんどいないとはいえ、主戦力がいないとはいえ、役人、軍人合わせ少なくとも2000人はいた。どれだけの人間だ脱出できたどれだけの人間が、無事でいてくれるか、
もちろんその責任がミヒャエルにあるわけではない。
だが、それでもこの敗北はミヒャエルの心に大きな闇を落としている。
「落ち込むのは分かるが少し休んではどうですかな」
基地入口、近くに設置された見張り小屋で待機しているミヒャエルに
この基地の責任者であるスノーがミヒャエルに話しかけ、ハーブディーを渡す
「スノーさん、これ、お酒、、、」
「以前お会いした晩餐会でもお酒を手に出されてませんでしたから、もしかして思いましたがやはり、」
「分かっているのなら、なんでですか」
「なに、弱い方が眠れますぞ、
それにもしも死ぬにしても酒の味も知らずに死ぬべきではない」
「僕は別に、、、」
「子供のまま死なれるのは、私としてもあまり気分は良くない」
「僕は子供じゃありません。いや、、、そうですね、僕は子供です。だから死なせないようにしてください。それに僕は好きな人に気持ちも伝えていないんです。こんなので死んだら、スノーさんの事を恨みますよ」
「ふ、ははは、言ってくれますな。なるほどそうですな、ここにはあなたも、それに大公様もいらっしゃいます。ならばここでもし負けるようなことがあれば私の名誉に傷がつくというものだ。ですがミヒャエル殿、戦場で女の話はするものではありませんぞ。戦いの女神が他の女に気を取られていると知れば、機嫌をの損ねますからな」
「それはご心配なく。僕は軍人ではありません。」
スノーは、ハーブティーを入れなおし、もう一度ミヒャエルに差し出す。
「そういえば、以前頼まれていました例の箱、先日より山頂に置かせていますが、あれは何なのですかな?かなりの重量のようですが」
「いや、僕も詳しくは、ただ、サスケからは最後の切り札だと、天候が荒れるようならできるだけ高い場所におくようにと、奇跡が起きれば状況が一変出来る代物だとだけ、、奇跡になんて本来頼りたくないんですけどね」
「この事態は予想外、ですが、それでも貴方は私たちにここで待機するように命じ対抗策を用意させた。あなたあってこそ、大公は無事でいらっしゃる」
「最悪の事態に備えてだけの事。正直ここまでやられるとは思いませんでしたよ。それにあの船ならここだって」
「敵の空飛ぶ船はこの風と雨ではこの山脈には近寄れませんよ。
それにここは山と山の間、あの巨体では入ってこれません」
「あれを知っているんですか?」
「えぇ、直接見たわけではありませんが、報告を聞く限り、あれは我が国を最初に侵攻してきた際に現れた者と同じかと。一度この近くまでやってきましたが、ラディア山脈の突風に煽られ、山脈に接触し、何もせずに撤退していきました」
「ここがばれている可能性は!」
「ありえません。あの悪魔共の偵察も入りましたがこちらの場所までは、」
「そうですか、、、」
ここに来ることが難しいと知ったミヒャエルは一安心し、睡魔が襲ってくる。
あの空母はミヒャエルにとって恐怖の象徴であった。
あんなものが空を飛び、あの中から大量の機人が出てくる。
ミヒャエルは夢の中でその悪夢に襲われる。だが恐れていては勝てるものも勝てやしない。
だからミヒャエルは必死に悪夢と戦い、思わず目を覚ました。