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教会にて④

フロッカス奪還から4日、あの日から休みなく働いていたサスケとミヒャエルは一時的な休息を取るためと真継を迎えに行く為に教会を訪れていた。

ミヒャエルは到着してすぐ眠りについたが、元々睡眠時間も少なければ、この程度疲労にも入らないサスケはなぜかエプロンをつけて一人でキッチンで作業している真継に世間話がてら無意味だとわかっているが状況を説明する。

「……というのが現状です。分かりましたか」

「細かい話だとか、会ったこともない人間がどうなっているかなんか知らん、

俺はとりあえず、次に攻め込んで来ればぶっとばせばいいだけだ」

「作戦、、あるんですけどね」

「ミヒャエルの作戦は聞くさ、気に入ればな」

「まったく、でもま、ここでこうしている事自体、だいぶましはマシになりましたね、昔だったら、勝手に突っ込んでいったのに、ところで幻手甲と迅飛脚のチャージは?」

「今の所殆ど空だ。まともに使えるようになるまではあと数か月はかかるんじゃないか?」

「幻手甲はまだしも迅飛脚は痛いですね。鎧の方は?」

「あっちは一度も、おそらく何かきっかけが必要なんだろうな」

「まぁ、強いエネルギーがいると言ってましたらね。あれ暫く借りていいですか?

これでもそれなりに狂楽から知識は得てるので、もしかしたら多少わかるかも、」

「好きにしろ、俺も手詰りだ。藁に縋ってやるよ」

「……しかし聞けば聞く程、ずいぶんとまぁ喋り方が変わりましたね」

「あぁ、今は俺たちの国の言葉でしゃべってたか、もうわからなくなっているな」

「この間興奮してた時は地に戻ってましたけど」

「この一年、ずっと異国の言葉でしか話してないし、

しかも、いろんな国の言葉を理解するために金田兄さんのカラクリを使っていたら、

自分の国の言葉まで、このようになってしまってな。

俺も正直、どこの言葉をどういう風に話しているのかよく分かっていない。

まぁ、俺はこれでも意思の疎通ができるんだ。構わないがな」

「まぁ、北の出身の俺としてはそっちの方が聞き取りやすくて助かりますが、で、さっきから、何してるんですか」

「あぁ、この間、国の役人が何か欲しいものはないかと言ったから米をよこせと言ったんだ。そしたらこっちでは米は作っていないって言われてな。

輸入が滞っている今は手に入れる事も出来ないらしい。

で麦ならあると、粉にしたのをもらったんだが、どうもうまくうどんが作れない。ちゃんと作り方を習っておくべきだったな」

「まぁ、原因はおそらく、麦の種類が違うのと、後は水が違うからでしょ?」

「水?そう言えば変な味がしたな」

「僕たちの国とは水の質が違う。水が違えば食の環境も違う。というか、あなたはここの水でも何ともないんですか、僕とあやめは訓練を受けているから平気ですけど、」

「まぁ、味が気になるがそれほどでもない。やはり生まれ育った地のものが一番うまいただそれだけだと思っていた。どうしよう、それじゃつくるのは無理か」

「うーん、まぁ、やってみるだけやってみたらどうですか、真継の馬鹿力でこねれば何とかなるかも、もうここまでやったんだから、最後までやったらどうです。ちなみに、出汁どうするんですか?」

「あ!」

「ここイリコも鰹節も醤油もないですよ、そっちはアゴ出汁でしたっけ昆布?椎茸?いずれにせよないでしょ」

「俺、出汁の作り方知らない、、、、」

「そこからですか、、、まぁ、いいですよ。やれるところまでやってください。

後はこっちで食べられるように何とかしますから、とは言えこっちの水は煮込むには適しているけど、硬いから出汁取りにくいんだよな」

「サスケ!恩に着るぞ、チビどもに異国の料理を食べさせてやると言った手前、できなかったじゃ恰好がつかないからな」

「なんだかホント、変わりましたね」

「俺がか?」

「あいも変わらず単細胞で、猪武者で、戦闘狂いですが、少なくとも彼のような未完成で未熟な人間の言う事を聞く玉でも、瑠璃姫以外に戦うような人でもないし、こうして子供の為に何かをしてあげるような人間でもなかったでしょ」

「俺の始まりは復讐だ。そして姫さんに出会って、戦う理由をくれた。でも、こうして一人になって、多くの人間を見て、他人の価値観を理解するという事を覚えたんだ。

どこにいても、どの人も、何も変わらない。恨んで、争って、でも、愛して、感謝して、」

この1年間に渡る旅の真継は多くの人に出会ってきた理解できない人がいた、共感できる人がいた。好感を持てる人がいた。そして理解しあえる人がいた。

力だけではどうにもならない事がたくさんあった。瑠璃姫や半兵衛の助言ない状況で、自分の選択が間違える事がたくさんあった。だから彼は山脈を渡った。

人と接するのが怖くなったわけじゃない。人を嫌いになりそうなのが、自分が弱くなっていくのが許せなかった。

狂気を維持するために、人の心を知るために、考える為に一人になった。

「それから、俺が子どもに優しいのは元々だ。

ただ、その今までは、俺の顔見るだけで、泣く子も泣き止み、

山の一つくらい先まで逃げ出していただろ」

「そりゃ、有名人でしたからね。鬼よりも怖がられていましたから、この世で最も恐ろしい、閻魔大王、魔王と並ぶ扱いでしたからね」

「まぁ、、こういうのも悪くないとは思っている。

ずっと一人で旅して分かった。俺は別に一人が好きなんじゃないみたいだ」

「ずっと瑠璃姫がいましたからね。あれ、もしかしてケレスに行くって言ったのって瑠璃姫が取られて逃げ出したとか」

「馬鹿にするな。猿は猿だが、信用できる。それに姫さんのあんな表情は俺には作れない。

『さだめの楔を解き放て、全てを力でねじ伏せろ』」

「半兵衛さんの末期の言葉ですね」

「俺はあいつの恨みを憎悪を引き継いだ。供養位してやらねばならんだろ。

それに、戦いは俺が望むものだ。俺が変わるならそれからだ。それまで俺は前には進めない。途中で朽ちるか、思いを果てるか二つに一つ」

「本当に楽しそうに笑いますね。そういう所は変わっていない。

さて、どうですか、出来そうですか?」

「あぁ、どうだろう」

真継はサスケに生地を渡す。

「まぁ、いいんじゃないですか?あとは少し寝かせてからですね。

それじゃ、その間に、、出汁なりつゆなり、こっちの人にあうように何とかしますか。あ、そうだ天麩羅、それなら材料ありそうですよ」

「俺は、あんな高いものは食ったことないし、油は好かん。はねるから」

「躱せばいいでしょうが、何わけのわからないこと言っているんですか、」

結局その試行錯誤で3時間。予定を大きく上回り、何とか料理は完成した。


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