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狂信者

「あ、あやめ?」

「戦うのがあなたの仕事でしょう、死ぬとわかっていても戦うそれが男でしょ。それでも軍人の端くれ?幻滅だわ、あなたには、」

あやめは今までユーリエにも見せた事のないほど満面の笑顔で真継に近づいていく。

「お久しぶりです、真継様」

「おう、あやめ、久しぶり、また綺麗になったな。元気にしていたか?」

「なんというお言葉、このあやめその言葉だけで一生生きていけます」

あやめは思わずうれし涙を流し、腰から崩れおちる。

「あ、あやめ?なんで」

訳が分からない。ユーリエは何度もあやめの名前を呼ぶがあやめには一切届いていない。

「だから言ったのに」

サスケは同情するように、ユーリエから目をそらす。

しばらく自分の感情を抑制できなったあやめはなんとか正気を取り戻すと、まるで知らない人を見るかのような目でユーリエを見る

「最初から言っていたでしょ私は大切な人を探しに来ただけだって。

ユーリエ、あなたは一緒にいて楽しい人だったわ。でもそれだけ、私はあなたの母親でも、思い人の現身でも、人形でもないの、私はあなたのものでもない。

あなたの座興につきあうのも悪くはなかったけど、だから何って話。

私にとっては真継さまが全て、それ以外はどうでもいいのよ」

「あんなに笑ったり、一緒に、、、あの優しさも、全部嘘だったのか!!」

「違うわ。ただどうでもいいだけよ。でも、あなたの事も、あの子たちの事も嫌いじゃないし、死んでほしいとも思わない。

あなたは私と同じ過去と痛みを持った人だからこれは、貴方の為を思っての忠告。

逃げなさい。そして二度と真継様の前に顔を見せない事。

そうすれば、あなたはなたの世界で幸せに生きられる」

「申し訳ありません真継様、せっかくの真継様の遊興に水を差す形となってしまいますが、

もしよろしければ彼を見逃してはあげられないでしょうか。

彼には守らなければない人たちがおります、

あぁ、もちろん、真継さまにとって彼が殺す価値がある存在であるのなら、もちろん構いませんし、必要であればこのあやめ、微力ながらお力添えいたします」

そう言ってあやめは武器を手にし、躊躇いなくユーリエに向ける。

「あー、いいいい。俺も別にそいつを殺したいわけじゃない。熱も冷めたし、十分楽しんだ

それにあやめが世話になったんだろ。

その感じだと、まともに戦う事も出来なそうだし、それで終わりでいいよ。

だが、戦場で再び対峙するなら俺は加減はせんぞ」

緊張の糸が切れたのか、真継はその場に倒れこみ、興奮状態が解け再び出血が始まる。

あやめはこの世のものとは思えない悲鳴を上げ、

サスケに罵声を浴びせ、治療の為の道具を集めさせる。

あやめは全くユーリエの事など目に入らず、真継だけの事を考え、甲斐甲斐しく、治療を行い、何度も真継に心配する言葉だけをかける。

「分かったかい?これがあやめなんだ。病的なまでに真継の事しか見えていない。

絶望の中で彼女も瑠璃姫同様に真継に助けられた。

でも瑠璃姫のように再び自分の意思で立ち上がり、前に進む事はしなかった。

彼女にとって真継は神であり、彼という存在、行動すべてが善であり、絶対なんだ。

彼女、彼が死ねって言えば喜んで死ぬし、彼に殺されるのなら、それは彼女にとって彼の中で永遠になれると本気で信じている。

度し難いほどの狂信者だろ。これで分かったかい、最初から君の入る隙なんて

全くないんだよ。だから君はここで諦めろ、君は他にも守るものも大切なものも沢山ある。

俺とは違う、あやめは俺に任せて、君は全てを忘れて君の場所に帰れ」

「僕はまだ、、、」

「今頃、フロッカスの首都では、ケレスにくみした人間の見せしめが始まっている頃だ、

君の大切な人たちが無事だとも限らない。

これは友である君への箴言だ。君は僕たちとは違う。まだ戻れる場所にいるんだ。

ここで選択を誤るな、君のなすべき事をしろ」

サスケの必死な言葉に、ユーリエの頭の中には大切な人たちが再び暴力におびえている絵が浮かぶ。何のための力だ、何のための怒りだ。

「、、、覚えていろよ。僕は絶対にお前を許さない」

「おうよ、いつでも来い」

ユーリエは勝利の凱歌に沸き立つ、戦場を抜け、解放の喜びを分かち合うフロッカスの街も抜け、この状況を不安に思い、ただ息を殺し怯える家族に待つ家に、ただ、敗北と、屈辱を感じながら帰って行く。


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