WAR②
「あー、あれは間違いないね。あんなバカみたいなの、世界中さがい下って、一人しかいないね。やっぱそうか、少し面倒だね。ところで今あやめは?」
ケレス軍本陣近くでその様子を観察していたサスケが、先ほどの一撃を見てその姿こそ見えぬが、真継の存在を確信にする。
「……す、すみません。お、おそらく、ユーリエ殿の所に、」
双眼鏡でサスケと同じ景色を目の当たりにした兵士が夢でも見ているのかと頭で状況を理解できず、サスケの言葉に遅れながら返事をする。
「ユーリエの布陣は、、、、ここか、どうせ最初の内はやる気ないだろうから、しばらく気づくまでに時間がかかるね」
「さてどうするかね。今から近づいても意味はないし、もう少しテンションが上がって周りが見えなくなるまで待つかね」
サスケは慌てるわけでもなく、遠方から真継を監視し続ける。
そして3時間後、60機もの機人撃破し、息が上がり致命傷は避けているものの、それなりにダメージを受け、ちょくちょく、休憩を入れながらも、興奮状態で自分の疲労を認識できないほど自制ができなくなっている事を確認すると、慌てることなく、歩いて戦場へ向って行く。
気持ちを落ち着けろ、悟られるな、周りは見えていないが、その分人の感情には敏感になっている。僅かな心の揺らぎも悟られる。
サスケは何度も自分に言い聞かせ、上がりかけた自分の心拍数を抑える。
他の人間に紛れ、殺気を消し、気配を消し真継に近づいていく。
そして真継が大型の機人を壊し、悦に浸り笑う瞬間、完全な死角から、真継の心の臓をめがけ、攻撃範囲外から、最高速度で殺を入れる。
だが、真継は全くサスケの事を確認せずにサスケの刀を手甲で防ぐ。
「ハロー、元気でした?お久しぶりです。相変わらずばけものですね。残念また殺せなかった。いい加減世界のために死んでくれませんか」
「自分のためだろ、サスケ。」
「どうして気づきました、完璧だったはずなのに、」
「途中まではな、俺も気づかなかった見事な気配立ちだ。が、俺への憎悪が強すぎる、殺そうとする瞬間、それでは、俺でもなくても気づくさ。お前の腕前は信用している、お前なら間違いなく、俺が反撃できないタイミングで、俺の反応できない速度で攻撃してくる。だからだ。軌道もタイミングも読める。お前の強すぎる殺意がなければ俺は死んでいた。はるか攻撃範囲外からでも感じられる殺意は忍として致命的だ。」
真継は小馬鹿にするように口にする。サスケも内心ムカついていたが、ここでこれに反応しては真継の思うツボ、サスケは自分の感情を殺し、その笑いに笑いで答える。
そして続けざまに攻撃を入れるわけでもなく、刀を収めた。
「なんだ、もう終いか?」
「残念ですけど、不意打ちでなければ勝てる可能性は0なので、そちらに寝返らさせてもらいます。殺すのはまた今度ということで、」
「なんだつまらんな」
「でしょ、だからですよ。これが一番あなたが嫌う。」
寝返ったとは言っても、戦闘に関しては加勢をすれば邪魔とみなされ真継から嫌がられるため、自分にかかる火の粉だけ払い口を動かす。
「なんで、あなたがそっちに、あなたが親書を持たされたのは、今はケレスに占領されて、なくなってしまいましたが、僕たちの国と交易のあったこっちのフロッカス公国でしょう」
「それがな船なんだけどな。砂漠の国の運河を超える際にな、海賊に襲われて」
「それで、暴れて自分で船をぶっ壊したと、」
「正解、よく分かったな」
「何となくヴァイジャ運河の水門が壊れてた時点で嫌な気がしてたんですよ。
あれだけ価値ある物を壊すほどケレスも馬鹿じゃないだろうし、その価値を理解できない馬鹿が壊すにしても、あの規模のものを壊せるだけの馬鹿がどこにいるかってね。
めっちゃ悪魔扱いされてましたよ。まぁ、僕たちが入った時には尾ひれはひれついて、最初は真継のことだってわかりませんでしたけど、」
「それで、仕方なく陸路で、鬼ヶ島はずっと北西だ言われたからな」
「はぁ、歩いてですか?で、今はなんでアラビス軍に、あ、大丈夫ですかとどめ刺しましょうか?」
真継はサスケが死角をつくりだし、消えるように躱したため、躱しきれず、機人から一撃を喰らい吹き飛ぶ、サスケはそんな真継のとどめを刺してやろうかと提案する。
「馬鹿を言うな、この程度でとどめをさせるなど、思うなよ。この程度、魔王軍に比べてば、比べるまでもない」
ガードは出来なかったものの、吹き飛ぶ過程で、見事に力を逃し、流血にとどめた。
「比べるの、比べないのどっちなんだよ馬鹿が、って感じですね。で、なんでアラビス軍に?」
「敵が鬼なら理由はそれだけ十分だろうが、」
「いや、そうじゃなくてどうもあなたは命令に従って動いている節があるんでね。
そんなに気に入りました、あのミヒャエルって人の事」