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帰宅①

「アルノー、もう家に入りなさい。それにロイズも」

すでに3時間前には陽が暮れ、辺りが闇に包まれる中、アルノーは一人家の前に立ち続け、ロイズは屋根の上の鐘楼塔からお手製の双眼鏡で監視を続けていた。

最初はすぐに飽きると思っていたノエルだったが、二人はずっと待ち続けている。

気温も下がってきている、風邪を引かないようにとなんとか家に入れようとする。

「嫌だ約束したんだ!ヘレン姉ちゃんを連れて帰ってくるって」

「アル!来たよ!!真継さんだ!それにミヒャエルさんもヘレンお姉さんも一緒だ!」

ロイズは、飛び降りるように階段を駆け下り、アルノーと共に3人の元に走っていく。

「よう待たせたな。約束通り、連れて帰ったぞ」

真継はロイズの頭を首がおれるかというような力でなでる。

「本当に連れ帰ってくるだなんて、、、、それにミヒャエル君も、、、久しぶりだね」

後を追いかけてきたノエルが久しぶりに見るミヒャエルに話しかける。

「あぁ、、、ごめんずっと帰れなくて。こんな事になっているなんて知らなかった、、、」

「仕方がないよ。ここはあまり重要な拠点じゃないから、報告もないし、知らなくても」

「手紙でも何でも言ってくれればよかったのに、、、」

「そんなのできないよ。だってミヒャエルは自分の夢の為に頑張っているんだもの私たちなんかのことで、余計な気を使わせたりしたくないよ」

「僕は、、、いや、なんでもない」

自分の夢だけど君がいなくちゃ意味がないんだ。だけどその思いを伝えてはいない、そしてそれは伝えた所で、重荷になるかもしれない。だからミヒャエルは口をつぐむ。

「なんだお前、ノエルが好きなのか、意外に人間らしい、一面があるじゃないか」

「ばっ、ぼ、僕は、、」

「否定せんでもよかろうに、それにノエルもこいつが何のために頑張っているのかわからんわけでもないだろう、こいつの夢はお前含めたここにいる人たちの幸せだ余計な心配をかけたくないなら、素直に助けてと言ってやるんだな。こいつは守る者を重荷に感じるタマじゃない。というより誰かの為じゃないと行動できないタマだ」

「お前は俺の何を知っているんだ!」

「これでもいろんな人間は見てきた。自信はあるぞ、お前がノエルの事が好きなのと、お前が守る方があった方が強いタマだという事はな」

「なぁ!真継兄ちゃん、これ何でっかい荷物だな!」

話を割ってアルノーが真継が引っ張ってきた馬に載せられた大荷物に興味を持つ

「おお、そうだった。飯を食わせてもらった恩義だ。好きなものを食え」

荷物の中身は大量の食料に、服や生活雑貨、最初は食料だけを買うつもりだったが、ヘレンから保存が利かないものをそんなに買うよりも、という事でヘレンチョイスで、服やらおもちゃ屋ら自分の服やら容赦なくもらったお金を使わされ、

揚句言葉巧みに、残ったお金もヘレンに奪われた。

「アル!見てよ!肉だよ肉!それにこれ凄い!!お菓子だ!!!」

「俺!ナナイたち呼んでくる!」

「あぁ、慌てんでもどっちにしろそっちに行くんだ」

真継達は周囲の注目を浴びながら、村の通りを抜けて行く。

村人は彼らの様子を物陰から見守るが、真継が怖すぎて出てくる事が出来ない。

「結構いるんだな、、なぁ、ヘレン、この人たちはいいのか?」

真継は改めて周りを確認していく。彼らも決してまともな食事が取れているようには見えない。

「えぇ、後から、分けますよ。その為に大量に買ってきてるんですから」

「ヘレン!なんで、こんな奴らに、、」

「ノエル。あなたが皆さんの事が嫌いなのは分かります。ですが、もしもの時は、村の人たちが助けてくれるかもしれません。仲よくしていて損はありませんよ」

「冗談じゃないわ。こいつらが何をしてきたか分かっているの!」

「私たちはよそ者、子供たちが守るためとはいえ、ノエルみたいに眉間にしわを寄せて、大人たちを寄せ付けず、毛嫌いするというのでは何にもなりませんよ。

彼らは卑怯で臆病で、自分のことしか考えられない人ばかりです。

環境がそうしたというより、そういう生き方しか選べなかったクズです。

だからこそ物で釣るのが一番なんです。幸い、今は権利を身につけたミヒャエルくんや、見ての通りのならず者の真継さんがいます。私たちを利用しよう、奪おうというより、仲良くした方が得策、力を恐れさせ、物で懐柔させ、従わせるのが一番です」

ヘレンは周りには聞こえない声で笑いながらそう語る

「怖いねぇちゃんだな、ヘレンは」

「まぁ、ヘレンは、僕やノエルとはくぐってきてる修羅場の数が違うから、、」

「聞こえていますよ?年下の女の子に失礼ですよ。その言い方、そうだ、なんでしたら、仲良くする為にも、真継さんお礼の一つに晩酌にでも付き合いましょうか?」

「断固として断る。俺は自我を弱める酒は好かんしに、何より俺はあんたの事は嫌いだ。あんたは怖い、容赦なく目的の為なら自分さえも殺せる人間だ」

「そうですか?私は真継さんの事は好きですよ」

ヘレンは真継に笑いかける。

「そういうところだ。俺が苦手なタイプだ」

「そうですか、それは残念ですが、苦手が嫌いにつながっているのなら、関係改善の余地はありますね。今日はここに泊まるのでしょう。仲良くしましょう」

真継は目をそらす。この手合いの女性はどう接していいか分からないから苦手だ。

真継の精神は戦闘狂でイカれているが、基本的な接し方は『していい事と、して悪い事が分からない』元気な子どもと同じでいい。強く攻めるのではなく、見守り、興奮が解けたところで、優しく順番にちゃんと理解できているか確認しながら諭していけばいい。

そうすれば真継はおとなしく従う。


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