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アラビス本陣④

「取引とは同じ立場で成り立つ」

「男と男。対等だ。君は武において無双、僕は智において無双、何か不足かい」

「、、、、そうか、少し自信家なところが違うが、似ているな」

「何の話だ?」

「、、お前のその感じが、俺の死んだ友に似ていると言ったんだ」

浮雲半兵衛。真継が唯一認め、尊敬した少年。飄々としているがその目ですべてを見透かし、人の悪意も、人の善意もすべてを知りつくしそれを利用した軍師

まるで悟りの様に過去を知り未来を見通し、救いようのない人の悪意、汚い部分ばかり見てきた。それでも彼は人を愛し、人の幸せの為に、無理だと確信している未来を変えるために足掻こうとした。

そしてその道半ばで、自ら見透かした自らの病に運命に負け、その命を落とすことになる。

そしてその意思を真継が継いだ。瑠璃姫を守り抜き、そして今はその友との約束。

この世界の人の希望を守るためにケレス帝国に真継は戦いを挑んでいる。

戦闘狂は真継の自前だが、彼がそれ以上に戦う理由があるとすればその死んだ友との約束を果たすため、

この化け物を唯一、自らの刀として自在に使った浮雲半兵衛。

タイプも容姿も、才も違うが、それでも真継は恐れることなく自分を利用しようとするこの青年にその姿を重ねていた。

「知りもしない、死人と一緒にするな」

「当たり前だ同じじゃない。お前はあいつほど頭もよくなければ、人の心をおもちゃにできる程冷酷に自分の心を御せもしないさ。だが、いいだろう、お前はあいつではないが、お前という人間は嫌いではない。故にその提案に乗ってもいい、だが、一つだけ確認する」

「なんだ?」

「、、、お前国取がしたいのか?」

「国取?」

「あぁ、今言っただろ、自分の評価が上がると、お前は偉くなって国を手に入れたいのか?」

思わぬ言葉、真継の国では当たり前のこと、誰もが天下をとれる可能性がある。

だが、王政の国に暮らすミヒャエルにしてみればそれは理解のできない事だった。

だから、ミヒャエルは真継から国取の意味を聞く過程で、真継の世界を少しだけ理解した。

「なるほど、そういう国もあるのか、王は飾り、政事は別。宗教も政治には干渉しない」

「あぁ、俺たちの国では神様なんて分からないくらい沢山いるんだ。もちろん信じる神様によっていう事も違う。だからそんなもの持ち込めば、まとまるものもまとまらん。

で、どうなんだ、国取がしたいのか?」

「答えはノーだ。僕は国が欲しいんじゃない。筋の通らない社会を変えたいだけだ。

僕が欲しいのは、君が出会ったあの孤児院の子供たちの笑顔だ。

そしてそこから続く新しい命の明るい未来だ。飢えることなく、怯えることなく、正しい事を貫ける世界が欲しい。その為に僕はこの国の役人になった。

そしてもし、その為に王になる必要があるのならそれもいいだろう。だが、何が欲しいという意味では僕は世界が欲しい。俺は神になりたいそういう事になる」

「世界を変えるか、、笑えるほど大きな夢だな」

「その夢を笑える君には無理かもしれないけど、僕にとっては叶えるための理想さ。

かなわないかもしれないじゃない。いつかの理想はここより続く、道の先。

人の夢を笑うものに、夢をかなえる力はない。

でも、笑われても進む事が出来る人間だけが、たどり着ける。

そして僕の理想はそういう世界を作ってその中で生きていく事だ。

ある一瞬ではなく、死ぬまで続きどんどん進化する終わらない夢さ」

「怒らせたのなら、謝ろう。別に笑ったわけではないさ。そういう夢を、

この貧しく、生きるに苦心する世界で語れる人間を見れる事が珍しかっただけだ。

俺は好きだぞ、そういうの、

姫さんは幸せも夢は大小ではなく、その大きさや、中身を競うものではないというが、

俺はそういう夢を持った人間が好きだ。

高い理想は人をさらなる高みへと進めることが出来る。

諦める?分不相応?別の幸せを見つけた?

下らない。妥協、満足、ふざけるな。

止まらず、迷わず、揺るがずそれでもなお足りぬ、及ばぬ。

俺の場合、もっと強くもっと強く。ただそれだけを求めた、鬼を喰らい、魔の王を捻じ伏せ、神仏、妖魔を屠る。狂気を超え、我を超え、無を超え、万物事象を超える武、ただそれだけをともめる事こそが俺の理想。俺がお前の夢を笑うのなら、それは俺が俺自身の信念を笑うという事。

ミヒャエルと言ったな、いいだろう、お前に利用されてやろう、だが、気をつけろ。俺を従えるという事を、俺に認められる存在であり続けるという事、お前がお前に負けたと判断すれば俺は何の躊躇いもなく、貴様を切るぞ」

「あぁ、いいだろう。だがもし、君が僕の求める強さに及ばなければ、君はまるで虫けらのように死んでもらうぞ」

「当然だ。人の死に方など望むべくもない。

ならばどうする?子供たちとの約束を果たし、すぐにでも狩りに行くか?」

「冗談じゃない。それでもしフロッカスからケレス軍を追い出したところで、それでは何にもならない。君の武のみが評価され、支配の対象ケレスから君に変わるだけだ。

僕がいいというまで勝手に動かないでくれ」

「、、、急げよ」

会話を終え、沈黙する二人の元に、真継に引き渡す金銭の用意が出来たと、怯えながら、騎士が知らせに来る。真継はやっとかと重い腰を上げる。

「あぁ、そうだ。お前はあの子たちをよく知っているんだろう?」

「まぁ、ほとんど帰れていないけど、、それなりには、」

「あの子たちは何が好きなんだ?あと、食いものはどこで買える?」


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