アラビス本陣②
ミヒャエルは危険が迫っているのではないかと、戦地に近い丘陵に上り目をやるが、既に戦闘は行われていない。
「君!」
「なんだ?」
緊張感からか、見下すように答える兵士にミヒャエルは政務官の証を見せ、
立場を理解させ、状況を喋らせる
「、、、で、その突然現れた化物が今は本陣に?」
「はい、そのようです。詳しくは知りませんが誰かを探していると」
ミヒャエルは、状況を把握するため、本陣のテント群に特権を使用し割り込む。
するとそこには黒のマントに異国の文字を金で刻んだ男が、将軍たちを相手に恫喝しているようにみえる
「だから何度も言わせるな!ヘレンという女性を探している。それ以外は分からないからこうして、大将のあんたたちに聞いているんだ。分からんのか自分の軍の事だぞ」
「ヘレンに何の用ですか?」
ミヒャエルの声に反応し、真継が振り向く
「知っているのか?」
「えぇ、ヘレンは僕の大切な家族です。
で、何の用事だ?事と次第では悪いが答えられない」
ミヒャエルはこの悪魔のような容姿の危険で不吉な男を前に、ヘレンを探しているという事実がミヒャエルを怯えるという選択肢を与える前に、対等な立場で対峙するという選択を選ばせた。
「そんなに警戒するな。俺はヘレンという人を迎えに来ただけだ。頼まれたんだ少年にな」
「少年?」
「確か、アルノー、いやロイズだったかどっちがどっちかはっきり覚えてないからな、」
「、、、うるさい方がアルノー、おとなしい方がロイズだ」
「じゃあロイズだ」
「なるほどそういう事か、おおよそ理解できた。敵ではないと仮定しておこう。名前は?」
「何度目の自己紹介だよ。俺は黒漆真継。東の国から鬼退治に来た、それでいいか」
「あぁ、名前が聞きたかっただけだ。では、彼女の元に案内しよう。ただ彼女は少し立て込んでいてね。少し待ってもらえるか?」
「あぁ、面倒だが、多少は仕方がない、了解した。ただ夕暮れまでには戻りたいんだが、、
あぁ、それとこれ、敵の大賞首だ。
俺は軍のものじゃない。そいつと引き換えに褒美でも貰いたいんだが?」
そういって真継は金属の首を投げ捨てる。間近に見る機人の首。それはまさしく悪魔の首を取ってきたように見える。
「ここは言う通りにした方がいいじゃないんですか?
彼のおかげで、負け戦で負けることなく
無駄な犠牲者は出さなくて済んだんでしょう」
「お前は話が分かるな」
「時間の無駄はしたくないだけだよ。それより浮いた時間を僕の為に使わないか?」
ミヒャエルは、すぐそばにいた兵士に何かを指示すると真継を連れて、医療テントに戻る。