ナイトノッカー
ふと眼を覚ました。
時間は分からないが部屋は暗く、どこかに小さな光源があるためか、ほんの少しだけ薄ぼんやりと明るかった。
仰向けにのまま、わずかな光を頼りに部屋を見渡すと、この暗い部屋に光を供給しているものが見つかった。寝る前に音楽を聴くのに使っていたCDコンポの光りだった。
いつの間に寝たのだろうか? 枕元に手を伸ばし携帯を探しだし時刻を見た。ディスプレイが少し強い光と今の時刻をこの部屋にもたらす。
2時40分か・・・
いつの間に寝てしまったのだろうか? 覚えているのは夕方バイトを終えてこの部屋に帰ってきて、シャワーを浴び途中買ってきた弁当を食べ布団に横になった・・・そこで記憶は終わっている。
ふと奇妙なことに気づいた。
「電気つけてたよな?」
起きた時に部屋はほんのわずかな光しかなく暗かった、寝ているあいだに自分で消したのだろうか?
いや、そんなはずはない……
これはいったい……どういうことだ?
急に恐怖に襲われ金縛りになったかのように身動き一つ取れなくなってしまった。
早く部屋の照明をつけなければ……言いようのない恐怖が全身を蝕み息をするのも難しくなってきた。
早く何とかしないと!! 早く部屋に光を!! 早く助けてくれ!!
完全にパニックになり大声で泣き叫びだしてしまった。ただし、体だけでなく声を出すことも、瞬きをすることもできないため、部屋は静寂が支配したままだった。
不思議と涙は流れていた。目から流れだした涙は目頭を伝い頬を横断して枕を濡らした。
コン…… コンコン……
ノックする音がした。
パニックがおさまり、急に現実に引き戻された。枕の冷たさが後頭部をつたって頭を冷静にさせた。
こんな時間に誰だ…… なんでノックなんだ…… なぜ、インターホンを押さない……
コンコン!! コンコンコン!!
遠くで聞こえていたノックの音が急に近くで聞こえた。
ドアをノックしているんじゃないのか? いったいどこで何をノックしているんだ…… 再び恐怖が全身を支配し始めた……
どこだ!! どこにいるんだ!!
動かない目を無理やり動かそうとしながら、視界の隅々を確かめる。
薄ぼんやりとした部屋の中、正面の天井でそれを見つけた。
コンコンコン!! コンコンコン!! コン……
音のしているところを見たとたん、ノック音がしなくなった。
そして、枕元…… いや、枕の中から
「み~つけた~」
しゃがれた声がした……




