エピローグ
三年後。
ミミが行ってしまって数カ月の後、私は取引先に勤務している帰化希望者のイギリス人男性と出会い、半年後には結婚をした。
そして女の子が生まれ、先日、初めてのお誕生日をお祝いした。
社長が戻って来て欲しいと言ってくれたので、保育所に入園の手続きを済ませ、来週から会社に復帰することになっている。
驚いたのは、あの恵美子がフランス人男性と婚約を果たし、パリに移住したことだ。もしかするとパリの支社で、ミミと一緒に働くかもしれないらしい。
代わりに事務所には若い女の子が入社したけれど、扱い方が分からず困っているそうだ。
社長は相変わらずのお人好しだけれど、会社の経営は上手く行っている。それは加藤が依然と変わりなく、よく頑張ってくれるからと電話の向こうで嬉しそうに笑っていた。
私が気になるニュースを訊きあぐねていると、社長の方から話してくれた。
「ミミがね、つい最近日本の女の子と結婚したらしいよ。それで、近く新婚旅行を兼ねて日本へやって来るそうだ。『ケイを事務所に呼び戻そうと思っている』と言ったら、再会できるかもしれないと、とても喜んでいた」
私は、そっと胸元のペンダントを掴んでみた。
あれから長い間、雨が降る度にミミのことを思い出し、このペンダントを眺めていた。
そうして痛みが薄れた頃に今の夫と出会い、大事な娘の母親になることができた。
大丈夫。
ミミがペンダントに託してくれた通り、私は幸せになっている。
そしてあの頃には切なかったミミへの愛情が、しっかり友情へと変化していることを確かめてから「私も再会を楽しみにしています」と受話器に向かって告げた。
了