Z村の恐怖
日本には、まだ解き明かされていない、多くの謎がある。謎の中には、ほんわかとした明るい謎もあるが、大半は、恐ろしい謎。僕は、そんな謎を解き明かすのが好きだ。呼ばれたら、全国各地、何処でも行く。報酬なんて要らない。但し、交通費と宿泊費はいただく。交通費と宿泊費を自腹にしたら、この活動は成り立たなくなる。
僕は、大阪市に住んでいる。梅田にも難波にも割と近く、お気に入りの場所。勿論、普段の活動があるので、謎を解き明かしに行くのは、依頼があった時だけ。それも、たま~にしか依頼が来ない。最近、依頼が全然来ない。元々、僕は有名ではなく、知る人ぞ知る探偵のような人といった位置付け。今日も、やる事が無く、暇な一日を過ごしている。
―あ~あ、最近さっぱり依頼が来ないなぁ。暇や~!そろそろ依頼来てくれよ~!―
その時、僕のスマホのバイブが鳴った。ディスプレイを見ると、知らない番号から着信。普通の人は、知らない番号からの着信を見ると、警戒するものだが、僕の場合、謎を解き明かす依頼の電話かなと、ウキウキした気分になる。
―お!知らない番号からの着信や!これは、久々の依頼かな~―
ルンルン気分で電話に出て、声を出す。
「はい。お電話ありがとうございます」
僕が名前を名乗った後、暫く間が空き、相手が話し始めた。
「あの~、私、野木坂と申します。ネットで検索したんですけど、謎を解き明かす探偵さんでいらっしゃいますか?」
電話の相手は女性で、可愛らしい声に、僕のテンションが上がる。
「はい。そうです。まぁ、探偵なんて大袈裟なもんじゃないですけどね。ご依頼ですか?めっちゃ嬉しいです!」
「あ~、合ってた~!良かった~!実は、私、奈良県の田舎にある村に住んでるんですけど、私の村で、以前から不思議な現象が起こっておりまして、私を含めて、村民が不気味がってるんです。もし良かったら、私の村に来て、謎を解き明かしてもらえませんか?」
「はい!勿論です!久し振りの依頼、張り切って頑張りますよ~!ところで、お住まいの村は、奈良県の何処にあるんですか?」
「ありがとうございます!私の村は、通称、Z村と言われている村です。村の名前を言っても、ご存知無いと思います。ところで、謎を解き明かしていただく報酬は無いという事で、間違いないのでしょうか?私の家、旅館でして、三食付きで宿泊費を無料にさせていただきますし、ご指定の場所まで、車でお迎えに行かせていただきます。一応、温泉もございますよ」
「お~!温泉旅館にタダで食事まで付けてくれるんですね~!至れり尽くせり、めっちゃ嬉しいです~!勿論、謎を解き明かす報酬なんて要りません。いつお伺いしましょうか?」
「早い方がいいので、明日でもいいでしょうか?迎えに行く時間と場所を指定していただけますか?」
「分かりました!ありがとうございます!よろしくお願いします!」
時間と場所を指定し、電話を切った。僕のテンションが爆上がり。
―お~!久々の依頼や~!しかも、温泉旅館にタダで食事付きで泊まれるし、依頼主は、可愛い声の女性や~!めっちゃ嬉しいわ~!よ~し!頑張るで~!―
明日に備えて準備を整え、ベッドに横になって眠りについた。
翌朝、目が覚め、朝の準備を整え、少しグレードを上げた朝御飯を食べ、いよいよ出発。指定の場所に指定の時間の五分前に到着すると、既に赤色の車が止まっていて、僕が車に近付くと、車から女性が出て来た。
「初めまして。野木坂です。どうぞよろしくお願い致します」
その女性がお辞儀をし、挨拶して、僕のテンションが爆上がり。
―お~!めっちゃ綺麗な女性や!声を聞いて、期待してたけど、期待以上や!―
「こちらこそ、よろしくお願いします!お迎えに来て頂き、ありがとうございます。野木坂っていう名字、アイドルみたいですね!」
「あはは。よく言われるんですけど、漢字は、野原の野って書きます。読み方の、のぎさかと、漢字の木と坂は同じです。下の名前は萌える美って書いて、もえみと読みます。よろしくお願いします」
「萌美さんですか~。いい名前ですね~!めっちゃお綺麗なので、緊張します~!」
「ウフフ、お世辞が上手いですね。ありがとうございます。では、行きましょうか。どうぞ車に乗って下さい。途中で、ランチにしましょうか。美味しいお店があるんですよ」
「はい。分かりました。美味しいランチ、めっちゃ楽しみです!」
二人で車に乗り、野木坂萌美が運転席に座り、僕が助手席に座る。野木坂萌美が車を発進させ、暫く走り進み、高速道路に入った。
「ところで、ご依頼の内容は、どのような事なのでしょうか?」
「あ~、依頼の内容ですね。簡単に言うと、消えた村人を探して欲しいという事なんですけど、今、運転中ですし、事故を起こしたらいけませんので、ランチの時に詳しくお話しますね」
「分かりました。確かにそうですね。安全運転お願いします」
「はい。大丈夫ですよ。ところで、良かったら、教えていただきたいんですけど、年齢は、おいくつですか?」
僕が年齢を言うと、野木坂萌美が一気に笑顔になり、ハイテンションで僕に言う。
「わぁ~!私と同い年ですよ~!嬉しいです!同い年だし、敬語使うのを止めましょうよ。その方が、打ち解けられますし」
「へぇ~!同い年なんや~!分かった!敬語使うのを止めよう!呼び方は、何て呼べばいいかな?」
「ウフフ、萌美って呼んでよ!私、自分の名前、気に入ってんねん!」
「うん!分かった!萌美、よろしくね~!」
「うん!萌美って呼ばれると、嬉しいわ!こちらこそよろしく!」
奈良県に入り、萌美お勧めの店でランチを食べる。確かに美味しく、会話が弾む。楽しくおしゃべりしている時、僕が訊ねる。
「萌美、そろそろ詳しい依頼内容を教えてや。消えた村人を探して欲しいって、どういう内容なの?」
「あ、そうや!依頼内容やな。実はね、ここ何ヶ月かで、何人もの村人が、姿を消したんや。必死に探したけど、どうしても見つからへんねん。で、不思議な事に、誰も警察に捜索をお願いしないんや。私がいくら言っても、そんなに大した事じゃないって言われるんや。たまりかねて、私が警察に行って、消えた村人の捜索をお願いしたんやけど、そのうち見つかるって言われて、捜索してくれへんねん。それで、二進も三進も行かなくなって、ネットで検索してたら、あなたがヒットしたって訳やねん」
「そうなんや~。確かに、不思議な現象やな。なんで警察は動いてくれへんのかな。普通に考えたら、動かなあかん話やけどな~」
「そうやねん。おかしいやろ。村全体が、異様な雰囲気になって、旅館の客足が鈍くなってるし、何処かから噂を聞きつけたのか、キャンセルが増えて来てるんや。旅館の経営も、苦しくなってきてるし、何とかしてこの謎を解明して、消えた村人を探し出さなあかんねん。その人の家族も可哀想やし」
「うん。分かった。ほんまに不思議な現象やけど、消えた村人を探し出す為に、知恵を振り絞って、必死に頑張るわ!」
「ありがと~!ほんまに頼りにしてるで!」
ランチを完食し、店を出て、再び僕が助手席に座り、萌美が車を発進させる。萌美がどんどん車を走らせ、かなりの距離を走行した後、萌美が笑顔になり、勢い良く僕に言ってきた。
「Z村が見えてきたよ!田舎だけど、ポツポツと建物があって、情緒溢れる風景でしょ~。私、この村で生まれて、この村で育ったんだよ~。今は微妙な雰囲気だけど、普段はほんまに温かい雰囲気の村なんやで~」
「うん。確かに風情のある風景で、いい村って感じやけど、今は雰囲気が微妙なんやな~。ちょっと緊張してきたわ~」
車がZ村に入り、萌美が車をゆっくりと走らせる。村人がちらほらといて、皆、穏やかな雰囲気を醸し出している。建物も、情緒のある建物で、見ていてほんわかした気分になる。自然豊かで、正に田舎の村という感じ。
「萌美、Z村、のどかでいい村~って感じやんか~!車から見えた村人、皆、いい人そうやけど、そんなに微妙な雰囲気なの?」
「そうやねん。確かに、いい人が多くて、のどかでいい村なんやけど、村人が次々といなくなって、今は微妙な雰囲気が漂ってるんや。もうすぐ、私の家の旅館に着くで。着いたら、両親を紹介するわ」
「うん。両親を紹介してもらえるなんて、結婚のお願いをするみたいで、緊張するわ~」
「あはは。あなた、やっぱ、めっちゃ面白いね!どうやったらそんな発想になるんや~。聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるわ~」
萌美が更に車を走らせ、いよいよ萌美の旅館の前に到着。萌美がニッコリ笑顔になる。
「着いたで~!ここが私の家の旅館やで~!なかなか雰囲気のある、いい旅館やろ~」
「お~!これが萌美の旅館か~。大きくて雰囲気のある、いい旅館やな~。中に入るの、めっちゃ楽しみやわ~!」
萌美が車を駐車スペースに止め、二人で車から降り、旅館に入る。中には、情緒溢れるロビーがあり、萌美がニッコリ微笑む。
「さぁ、あなたが泊まる部屋に案内するよ!付いて来てね!」
「うん!ありがと~!めっちゃ楽しみや~!」
萌美の後に付いて歩き、エレベーターに乗って上がり、エレベーターから降り、廊下を暫く歩き、萌美が足を止め、僕に言ってきた。
「着いたで。ここが、あなたが寝泊まりする部屋やで。いい部屋やから、期待していてね~」
「うん。部屋を見るの、ワクワクしてきたわ~」
萌美が鍵を使ってドアを開錠し、二人で部屋に入ると、思ったよりも広くて綺麗な部屋が、僕と萌美を迎えてくれた。
「萌美、めっちゃいい部屋やな~!広いし綺麗やし、最高やわ~!ありがと~!」
「ウフフ、気に入ってもらえて、良かったわ。布団はあの押し入れの中に入ってるけど、旅館の人が敷いてくれるで。私が敷くかもしれへんで~」
「お~、ほんまに至れり尽くせりやな~。ありがと~!めっちゃ嬉しいわ~!」
「ウフフ、景色も綺麗やで。窓の近くに行って、見てみてや」
二人で窓の近くに行き、外の景色を見る。
「お~!確かに綺麗な景色やな~。村の自然溢れる景色と、情緒のある建物がマッチして、最高の景色やわ~!」
「うん!私もこの景色、大好きやねん。気に入ってもらえて、私も嬉しいわ」
「うん。良かったら、綺麗な景色をバックに、一緒に写真撮ろう!」
「うん。いいで~。撮ろう!いい写真が撮れると思うで~」
二人でピッタリと寄り添い、萌美のおっぱいが僕の身体にムニュッと当たり、僕が最高の笑顔になる。
―お~!萌美のおっぱいが僕に当たってるわ~!柔らかくて、弾力があって、めちゃくちゃ気持ちいい~!最高~!―
そんな僕の様子を見て、萌美がニコニコしながら僕に言ってきた。
「ウフフ、私のおっぱいが当たって、気持ち良くて、最高の笑顔になってるで~」
「あはは。ばれたか~。萌美のおっぱいが僕に当たって、めっちゃ気持ち良くて、思わずニヤニヤしてしもうたわ~」
僕がスマホを手に取り、右手を伸ばして角度を調整する。
「う~ん、なかなか僕と萌美と景色が上手く入らへんな~。もうちょっと下に傾けるか~。お、ちょっと良くなった。もうちょっと右に傾けるか~。お、いい感じや。さぁ、撮るで!はい、チーズ!」
僕がシャッターボタンをタップし、パシャッとシャッター音が鳴った。撮れた写真を二人で確認し、僕も萌美も満面の笑顔になる。
「お~!めっちゃいい写真が撮れた~!僕も萌美も景色も、ちゃんと綺麗に写ってるわ!最高やわ~!あ、そうや!写真送ってあげるから、萌美のスマホの番号とメールアドレスを教えてよ。僕のスマホの番号は知ってると思うし、メールアドレス教えるで~」
「うん!ほんまにめっちゃいい写真やわ!ありがと~!私のスマホの番号とメールアドレス、教えるで~」
萌美が僕にスマホの番号とメールアドレスを教え、僕が萌美にスマホのメールアドレスを教え、僕が撮れた写真を萌美のスマホに送信。萌美が届いた写真を見て、ニッコニコの笑顔になる。
「じゃあ、私は行くね。ゆっくり寛いでや。晩御飯の前に、大浴場に行って、温泉に浸かってよ。めっちゃ気持ちいいで~。この旅館、私の家やし、私、旅館の何処かにいてるから、何か用事があったら、いつでも電話してや~」
「うん!ありがと~!温泉も晩御飯も、めっちゃ楽しみやわ~!」
萌美が部屋から出て、僕は座布団に座り、テレビをつけて、放送されている番組をボ~ッと観る。チャンネルを回すが、面白い番組が無く、テレビのスイッチを切る。
座布団を三つ敷き、ごろ~んと横になり、目を閉じると、ふっと眠ってしまった。
暫くの間、気持ち良く寝て、目が覚めると、もう夕方近くの時間。大浴場の温泉に行く準備を整え、部屋から出て、エレベーターに乗り、廊下を少し歩き、大浴場の前に到着。中に入り、脱衣所で服と下着を脱いで裸になり、引き戸を開け、大浴場に入ると、雰囲気たっぷりの温泉が、僕を迎えてくれた。長い間温泉に浸かり、のぼせそうになったので、温泉から出て、しっかりと身体を洗い、もう一度温泉に入り、大浴場から出て、脱衣所で下着と浴衣を着て、脱衣所から出て、部屋に戻ると、もうすぐ晩御飯の時間。
―確か、晩御飯はこの部屋に運ばれて来るんやな~。そろそろ運ばれて来るな~。どんな晩御飯なんやろ~。めっちゃ楽しみやわー
暫くスマホをいじりながら待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。僕がドアの前に行き、ドアを開けると、びっくり仰天!二人分の晩御飯を運んで来ている萌美が、僕の前に立っている。
「エへへ、あなたと一緒に晩御飯を食べたくて、来ちゃった~!一緒に食べよう!」
「萌美!まさか萌美が晩御飯を運んで来てくれるなんて、びっくりしたわ~!ありがとう!めっちゃ美味しそうやわ~!しかも、萌美と一緒に食べられるんやな~!めっちゃ嬉しいわ~!」
萌美が部屋に入り、二人分の晩御飯をテーブルに並べてくれた。
「飲み物は何にする?ビールも日本酒も焼酎もあるし、ソフトドリンクもあるで!私は、ビールを飲むわ~!」
「え~!萌美と一緒にビールを飲みたいけど、仕事中にお酒飲んでいいの?」
「エへへ、私、旅館で仕事してる訳じゃないんやで~。手伝ってるだけやで~。しかも、今日の手伝いは、もう終了やで~。ビールを一緒に飲もうよ!」
「そうなんや~。分かった!僕も萌美と一緒にビールを飲むわ」
「うん!ビール注いであげるわ。楽しみや~」
萌美が瓶ビールの栓を抜き、僕のグラスに注いでくれた。僕が瓶ビールを持ち、萌美のグラスに注ぎ、ニッコリと微笑み合う。
「じゃあ、乾杯しよう!かんぱ~い!」
「うん!かんぱ~い!」
萌美が乾杯の発声をして、二人でグラスをカチ~ンと合わせ、グイッとビールを飲む。
「うん!美味しい~!あなたと一緒に飲むビールは、格別に美味しいわ~!」
「うん!ほんまに旨いわ~!温泉上がりで、しかも綺麗な萌美と一緒に飲めて、最高や!」
晩御飯は、すき焼きや刺身の盛り合わせ等、色とりどりで豪華。まずは刺身をパクッと食べ、満面の笑顔になる。
「お~!刺身めっちゃ美味しい!新鮮で深みのある味で、最高や!」
「ウフフ、褒めてくれて、ありがと~!確かに美味しいね~!すき焼きも美味しいと思うで~。火をつけてあげるわ」
萌美がすき焼き鍋の下に火をつけてくれた。どんどんすき焼きが熱くなり、そろそろ食べ頃になる。
「もうすき焼き食べられるで~。食べて~」
「うん!見ただけで美味しそうやし、匂いを嗅いで、更に美味しそうに感じるわ~」
僕が箸を使って、すき焼きの牛肉を掴み、卵と絡めて口に入れると、牛肉の旨味と卵の味が絶妙にマッチし、口の中に広がる。
「お~!萌美、すき焼きの牛肉、めっちゃくちゃ旨いわ~!最高の味やわ~!こんなに美味しい肉、初めて食べたわ~!」
「ウフフ、そんなに喜んでくれて、私もめっちゃ嬉しいわ!このすき焼きの牛肉、何回食べても、めっちゃ美味しいわ~!」
二人で楽しくおしゃべりしながら、どんどん食べて飲み進める。いつの間にか、瓶ビールを一本空け、次は焼酎を飲み、更に日本酒も飲む。いろんなお酒を飲み、僕も萌美もすっかり酔いが回っている。お酒に酔った御機嫌の萌美が、満面の笑顔で僕に言ってきた。
「ねぇ、あなた、付き合ってる人いる?」
「え!今はいないわ。萌美はどうなん?」
「お、いないんや!私も、今はいないよ~。どんな人がタイプなん?」
「え~!そうやな~。綺麗で優しくて、出来ればセクシーな人がいいなぁ。なんでそんな事聞くん?もしかして、僕の事、気になってるとか?」
「エへへ、どうやろうね。会ったばっかりやしな~。私、あなたの好みに合ってるかな~。綺麗かどうかは分からへんけど、自分では優しいと思ってるで~。セクシーな人か~。私、一応、自分ではボン・キュッ・ボンのスタイルやと思ってるけどな~。どうかな?」
萌美の言葉を聞き、萌美の身体を、上から下まで見てみる。
―う~ん、あんまり気にしてなかったけど、言われてみれば、萌美、おっぱいとお尻が大きくて、腰がくびれてるな~。僕好みのスタイルやわ~。顔もめっちゃ綺麗やし、更に優しいとなると、最高の女性やわ~!―
暫くの間、じ~っと見つめていると、萌美が、恥ずかしそうに僕に言ってきた。
「も~!そんなに見つめられると、恥ずかしいやんか~。そんなに私のスタイルいいと思うん?」
「あはは。萌美にボン・キュッ・ボンのスタイルって言われて、じ~っと見てしもうたけど、確かに、おっぱいもお尻も大きくて、腰がくびれていて、スタイルいいわ~!顔もめっちゃ綺麗やし、優しいし、最高の女性やで!」
「ウフフ、そんなに褒められると、照れちゃうな~。ありがと~!あなたも、いい男やと思うで。もしかしたら、私、あなたの彼女に立候補しちゃうかも。まぁ、この話はこの辺にして、食べて飲もう!」
「うん!萌美と一緒に食べて飲んでると、美味しい料理とお酒が、より美味しく感じるわ」
「ウフフ、ありがと~!私も、美味しい料理とお酒がより美味しく感じるわ~!」
二人で更にどんどん食べて飲み、料理もお酒も平らげた。萌美が満面の笑顔で言う。
「あ~、めっちゃ美味しかったし、めっちゃ楽しかったわ~!後片付けして、布団を敷いて、食器類を持って行くわ。あなたは、ゆっくり寛いでいてね~!」
「ほんまに美味しかったし、めっちゃ楽しかったわ~!後片付けと布団敷き、手伝うで~」
「ありがと~!助かるわ~。優しいね~」
「あはは。手伝う位で、優しいなんて言ってくれて、嬉しいわ~」
二人で後片付けをして、布団を敷き、萌美が笑顔で僕に言う。
「ちょっと眠くなってきたわ~。ちょっとだけ、布団に寝転んでいい?あなたも、一緒に寝転ぼうよ!」
「うん!そうやな~!お酒に酔って、ちょっと眠くなってきたし、一緒に寝転ぼう!」
二人で布団に寝転び、少しの間、微笑み合っていると、萌美が目を閉じて、眠ってしまった。暫く萌美の寝顔をじ~っと見つめる。
―萌美の寝顔、めっちゃ可愛いな~。もしかして、萌美、僕の事、好きになってくれたかな~。僕は、萌美の事、どう思ってるのかな。まだ好きまではいってへんと思うけど、ドキドキ感はあるな~。いつか、萌美と恋人同士になっちゃうんかな~。あ~、恋人同士になったら、めっちゃ幸せやろうな~!―
更に萌美の寝顔を見ていると、段々、眠くなってきて、僕も眠ってしまった。
どれ位時間が経っただろうか。ふと、僕が目を覚ますと、萌美はまだ気持ち良さそうに眠っている。相変わらず、寝顔がめっちゃ可愛い。暫くの間、萌美の寝顔に見入っていると、徐々に、萌美のぷっくりとした唇が気になってきた。僕が我慢できずに、どんどん唇を萌美の唇に近付ける。あと数ミリで、唇と唇が重ね合わさる、その時、萌美が急に目を覚ました。僕がびっくりして、すぐに顔を後ろに動かす。そんな僕の様子を見て、萌美がニコニコ笑いながら、僕に言ってきた。
「ウフフ、おはよ~!めっちゃ気持ち良く眠れたわ~!ねぇ、ところで、あなた、私にキスしようとしたでしょ?」
「おはよ~!え!やっぱ、そう思うん?萌美の唇を見てたら、思わず僕の唇をどんどん近付けてしもうたんや。あのまま萌美が目を覚まさんかったら、キスしてたかもしれへんな。もしかして、気分を害した?」
「そんな訳ないやんか~。寧ろ、目を覚まさんかったら良かった~って思ったで~」
「え~!そうなんか~!萌美、嬉しい事を言ってくれるわ~!」
「ウフフ、ありがと~!まぁ、お互い、自分の気持ちをしっかり考えてみよっか。じゃあ、そろそろ行くわ。まだ温泉開いてるし、入って来てや。温泉にゆっくり浸かって、気持ち良く寝てね~。明日は、朝御飯を、私が部屋に運んで来るで~。で、いよいよ、本格的に謎を解き明かして頂くで。じゃあね~。おやすみ~」
「うん。ありがと~!頑張るわ。おやすみ~」
萌美がニッコリ微笑みながら、食器類を持って、部屋から出た。
温泉に行く準備を整え、部屋から出て、大浴場に行き、温泉に肩まで浸かると、予想通り、ほろ酔いの身体に温泉が染み渡り、極楽の気持ち良さを感じる。
極楽の気分で、暫く温泉に浸かり、温泉から出て、身体を洗い、脱衣所で下着と浴衣を着て、部屋に戻り、歯磨きとトイレを済ませ、布団に寝転がって目を閉じると、すぐに心地良い眠りについた。
翌朝、目が覚めると、もうすぐ朝御飯の時間。慌てて布団から出て、部屋に運ばれて来た朝御飯を食べ、外出の準備を整え、部屋から出て、萌美と待ち合わせているロビーに行くと、既に萌美がいて、満面の笑顔で僕に手を振ってきた。僕も手を振り返す。
「おはよ~!よく眠れた?朝御飯どうやった?美味しかった?」
「おはよ~!うん。よく寝れたわ。朝御飯、旨かったけど、昨日の晩御飯、萌美と一緒に食べたし、昨日の晩御飯の方が旨かったわ~」
「ウフフ、そうやな~。私も、昨日食べた晩御飯の方が美味しかったわ~。じゃあ、いよいよ、今日は、消えた村人を探し出す為に、頑張ろうね~!」
「うん!もっちろん!必死に知恵を絞って、頑張るで~!」
二人で旅館から出て、晴天の空の下、意気揚々と歩き出す。田舎道を歩いていると、ふと、萌美が口を開いた。
「まずは、いなくなった村人の家族に話を聞いてみる?案内するで」
「そうやな~。まずは聞き込みから始めるか。何か有力な情報が得られるかもしれへんな」
萌美に案内されながら歩き、古い家の前に到着。
いよいよ、恐怖の謎解き物語が、本格的に幕を開ける・・・。
萌美がインターホンを鳴らすと、お婆さんが一人、ドアを開けて出て来た。
「こんにちは。野木坂です。今日は、旦那さんがいなくなってしまった件について、お話をお聞かせ願えないかなと思って、来させていただきました。こちらの方は、謎解きのプロの方ですので、安心してお話していただいて大丈夫ですよ」
「初めまして。謎解きのプロと言われると、ちょっと恥ずかしい気もしますが、今まで、数々の謎を解き明かしてきましたので、今回も、いなくなった村人や、ご家族の為に、必死に頑張りますので、どうかお話を聞かせて下さい。よろしくお願いします」
萌美と僕の言葉を聞き、お婆さんが、悲しげな表情で口を開く。
「萌美ちゃん、うちの主人の事を気に掛けてくれて、ありがとうね。思い当たる場所は、全部探したんやけど、どうしても見つからなくてね~。なんでなんやろうね~。主人がいなくなった日、二人でスーパーに買い物に行ってたんやけど、私がレジで会計をしてる時、主人が先に行っていて、会計が終わって、辺りを見回すと、いなくなっていて、すぐに見つかると思ったけど、何処にもいなくて、携帯電話に電話したけど、電源が切られていて、留守電にメッセージを入れて、メールを送ったけど、未だに反応が無くて、まだ見つかってないねん。もう、何が何やら、訳が分からへんわ。このまま見つからへんかったら、どないしようかな」
「お婆ちゃん、話してくれてありがとう。悲しいよね。辛いよね。私達、お婆ちゃんの旦那さんを見つけ出す為に、必死になって頑張るからね」
「お婆さん、話を聞かせて頂きました。聞いた話を基にして、しっかり考えて、ご主人を見つけ出す為に、一生懸命頑張ります」
「そうか。ほんまにありがとうね。早く主人に会いたいわ」
お婆さんが涙を流しながらそう言うと、萌美の目からも涙が零れる。僕は真剣な表情でお婆さんの言葉を聞いている。僕と萌美が、お婆さんの家の前から歩き出し、次に何をするか話し合う。
「萌美、これから、お婆さんの旦那さんがいなくなったスーパーに行って、聞き込みをしようと思うんやけど、そのスーパーに案内してもらえるかな?」
「うん!この村には、スーパーが一つしかないから、何処のスーパーなのか、すぐに分かるわ。じゃあ、行くで!付いて来てや!」
「うん!萌美、頼りになるわ~!ほんまに心強いわ~!」
「ウフフ、ありがと~!さぁ、行くで~!」
二人で並んで歩き進む。田舎の風景が続き、のどかで、空気が爽やかで、歩いていて気持ちいい。更に歩き進み、ふと、この村にしては大きい建物が見えてきて、萌美が笑顔で僕に言う。
「着いたで!あれが、この村唯一のスーパーやで。生活必需品は何でも揃っていて、村人が頼りにしてるスーパーやで」
「お~、確かに、品揃えが良さげなスーパーやな~。中に入るの、ちょっとドキドキするわ~」
二人でスーパーに入り、中を見渡すと、いかにも田舎のスーパーという雰囲気が漂っていて、ありとあらゆる生活必需品が置かれていて、確かに、村人が頼りにするスーパーという感じがする。
「さぁ、聞き込みしよう。店長を紹介してあげるで」
「うん!そうやな。ここに来た最大の目的は、聞き込みやもんな。しっかり店長の話を聞くで~!」
萌美に連れられながら歩き、ドアの前に到着。萌美がノックすると、ドアが開き、男性の店長が姿を現した。
「こんにちは。野木坂です。店長、今日は、この前、このスーパーでいなくなった、お爺さんの事で、お話をお聞かせいただきたく、来させていただきました。こちらの方は、謎解きのプロの方です。安心してお話して下さいね」
「初めまして。謎解きのプロというのは、ちょっと大袈裟ですけど、今まで数々の謎を解き明かしてきましたので、いなくなったお爺さんを探し出す為に、力になれると思います。何でも結構ですので、お爺さんがいなくなった日の事を、お話していただけますか。些細な事でも構いません」
「そうですか。萌美ちゃん、旅館の事だけでも大変なのに、人探しまでして、偉いね~。初めまして。このスーパーの店長をしております、堀沢と申します。些細な事でもいいんですね。そうですね~、あの日、お爺さんが突然姿を消した時、僕は、店長室にいて、事務作業をしていましたので、あまり詳しくは知らないんですけど、従業員からの報告では、特に怪しい人物はいなくて、突然、お婆さんが、旦那さんが何処にもいないと騒ぎ出して、僕も従業員も皆で探し回ったんですが、どうしても見つからなかったんですよね。不思議なんですけど、僕が知ってるのは、それで全部なんですよ」
堀沢店長の話を聞き、僕がいろいろ考える。
―店長、お爺さんがいなくなった時、現場にいなかったんやな~。それなら、店長にこれ以上話を聞くより、現場にいた従業員に話を聞く方がいいかな~―
「店長、話は分かりました。その時、現場にいた従業員に、話を聞きたいんですけど、その方、今、スーパーにいらっしゃいますか?」
「あ~、その従業員、今日は休みなんですよね~。名前は遠山っていうんですけど、電話して、来てもらいましょうか?」
「そうですね。是非、その方に話を聞きたいです。呼んでもらえると助かります」
「分かりました。電話してみます。少しお待ち下さいね」
堀沢店長が、従業員の遠山に電話をかけたが、電源が入っていないのか、電話が繋がらない。
「遠山、スマホの電源を切ってるのか、電話が繋がりません。すぐに来てもらうのは、難しいですね」
「分かりました。仕方ないですね。ところで、お爺さんが突然いなくなって、警察には相談されましたか?」
「それなんですよね~。お婆さんに、警察に言いましょうかと言ったんですけど、そこまでしなくていいって言われて、相談しませんでした。まぁ、お婆さんの考えを尊重しましたが、なんで警察に相談しなくていいのか、不思議でしたね~」
「そうですか。分かりました。ご協力、ありがとうございました。大変参考になりました。聞いたお話を基に、しっかり考えます」
「店長、ご協力ありがとうございました。また何かありましたら、来させて頂くかもしれませんので、その際は、ご協力下さいね」
「うん。分かった。萌美ちゃん、いろいろ大変やね。頑張ってね。謎解きのプロの方、どうぞよろしくお願いします」
「はい。分かりました。ありがとうございます。精一杯頑張ります」
堀沢店長が、店長室に戻って行った。僕と萌美が顔を見合わせる。
「萌美、遠山っていう従業員に話を聞くのは、また今度にするとして、もう一回、さっきのお婆さんに話を聞いてみよう。なんで警察に相談しないのか、気になるわ」
「うん。そうやね。私も気になってたんや。ほんま、不思議やわ~」
二人で歩き進み、先程のお婆さんの家に到着。萌美がインターホンを鳴らしたが、今度はお婆さんからの反応が無い。萌美が大声で呼んでみるが、やはり反応が無い。
「萌美、諦めて引き返すか。ところで、もう一回スーパーに行っていい?ちょっと気になる事があって」
「うん。いいで。気になる事って何?」
「何か、あの店長、ちょっとぎこちない動きをしてる感じがして。僕と萌美が立ち去ったと思って、何か隙を見せるかもしれへん」
「そうかな~。まぁ、謎解きのプロの直感やし、当たりそうな感じもするわ。行こう!」
二人で並んで少し早足で歩き、スーパーに到着。中に入ろうとする萌美に、僕が手を差し出して止める。
「どうしたの?早く中に入ろうよ」
「待って。店長に気付かれへんように、外から店内を見て、店長が何かするのを、見逃さんようにしよう」
「うん。分かった。さすが、謎解きのプロやな。私には到底思い付かへんわ」
「あはは。褒めてくれてありがとう。じゃあ、しっかり見るで~!」
僕と萌美が、外で隠れながら、こっそり店内をじ~っと見る。お客さんが何人かいて、店員がお客さんの数以上にいる。店長は、店長室に入っているのか、姿が見当たらない。
「萌美、店長が見当たらへんな。店長室にいてるのか、外出してるのか、どっちかやろうな~」
「そうやね~。あの店長、怪しい人には見えへんけどな~。でも、私よりもあなたの方が、こういう事については長けてるやろうし、あなたの直感を信じるわ」
「え~、そこまで言われると、プレッシャーを感じるわ~。何も出て来ない可能性の方が高いで~」
「あはは。まぁ、その時はその時で、気にしなくていいで~」
そんな会話をしながら、店内をじ~っと見る。特に変わった様子は無い。更にじ~っと見る。やはり変化は無い。時間がどんどん経ち、萌美が僕に言ってきた。
「なかなか尻尾を出さへんな~。店長の姿が見当たらへんし。いつまで見るん?」
「う~ん。やっぱり、店長の姿が見当たらへんのが、引っ掛かるわ。一体、何処にいるんやろうな~」
「そうやな~。姿が見当たらへんのは、確かに怪しいな~」
二人で更に店内を見ている時、ふと、僕が人の気配を感じ、急いで萌美に言う。
「萌美、あっちに移動しよう」
「え!急にどうしたん?」
「誰かが近くに来る!あっちに隠れて、こっそり見てみよう」
僕と萌美が、小走りでスーパーの建物の陰に隠れ、少し顔を出して見ていると、堀沢店長が、裏口から出て来て、少しイライラしながら、誰かが来るのを待っている様子。更に見ていると、向こう側から、一人の男性がやって来た。
「おい、遠山!遅いで!すぐに来いや!緊急事態やぞ!」
「店長、すみませんでした。急に来いって言われて、用意に手間取りました」
「ったく。まぁええわ。あの爺さんが姿を消したのを、嗅ぎ回ってる奴がいるんや。遠山、何か訊かれても、ひたすら知らへんって言っとけよ」
「分かりました。でも、実際、あの爺さんが、何処にいるのかなんて、知らないんですよね。誰かと電話しながら、何処かに行っちゃったんですよ」
「そうか。ところで、来てもらったのは、お前が、あいつらに見つからないに越した事は無いし、暫くの間、かくまってやるから、こっちに来てくれ」
「分かりました。もし遭遇しても、知らないって言いますけどね」
堀沢店長と遠山の会話が終わり、隠れるように去って行った。
堀沢店長と遠山の会話を、何とか聞き取る事ができ、一連の行動を見て、僕と萌美が顔を見合わせ、話し合う。
「萌美、あの二人の会話、聞こえたよな?やっぱり何か隠してるで。村人がどんどんいなくなってるの、何か根深い謎がありそうやな。また店長に話を聞きたいけど、めっちゃ警戒されてる感じやし、なかなか聞く事ができひんかもしれへんな。あと、あのお婆さんが、警察に相談しないのも、気になるわ。なんでなんやろうな~。一体、裏で何が行われてるんやろ~」
「そうやな~。店長と遠山って人、怪しさ満点やな。あのお婆ちゃんも、何かを隠してる感じやし、村人がどんどんいなくなる現象、一体、何なんやろうな~。それにしても、やっぱり、あなたの直感、凄いね~!私、ぜんっぜん気が付かんかったわ~。あなたに謎解きをお願いして、大正解やったわ!これからも頑張ってや!めっちゃ期待してるで!」
「ははは。そんなに褒めてもらえて、照れるけど、嬉しいわ。ありがとう。精一杯頑張るわ!」
お腹が空いてきて、二人で旅館のレストランで食事し、話し合う。
「萌美、これから何をするかやけど、また、あのスーパーに行ってみようよ。さすがに、あの店長、姿を現すと思うねん。で、見つけたら、さっきの遠山って人との会話を聞いたって言って、どう反応するのか、見てみようや。何かボロを出しそうや」
「うん!それでいいで。さっきのあなたの直感に基づいた行動、ほんまに凄いと思ったし、また当たりそうで、ワクワクするわ!」
「ははは。あんまり期待されると、プレッシャーに感じるけど、自分を信じて、しっかり頑張るわ!」
二人で旅館から出て、暫く並んでベチャクチャ話しながら歩き、再びスーパーに到着。店内を見ると、思った通り、堀沢店長がいて、店内の商品をチェックしながら、歩き回っている。遠山の姿は無い。
「萌美、やっぱり店長がいるで!思った通りや!行くで!店長に、遠山って人との会話を聞いたって言ったら、顔色が変わって、ボロを出すはずや」
「うん!分かった!行こう!何か新しい事が分かりそうやな~」
二人でスーパーに入り、わざとらしく店内を歩き回る。店内をキョロキョロしながら見回すと、向こうの方に、商品をチェックしている堀沢店長が見える。偶然を装いながら近付き、二人で堀沢店長の前に立つと、堀沢店長が驚いた表情を浮かべながら、僕と萌美に言ってきた。
「うわっ!びっくりした!萌美ちゃん、またこの方を連れて来たんやな。今度はどんな用件なの?」
「店長、また来ちゃいました。謎解きのプロの方が、また店長にお話があるという事なので、聞いていただけますか」
「そうなんですよ~。堀沢店長、どうしてもお話したい事がありまして、また来させていただきました。少しだけ、お時間よろしいでしょうか?」
「そうなんですね。仕事中なので、あまり時間は取れないですけど、少しだけなら、構いませんよ」
「ありがとうございます。では、早速、お話させていただきます。さっき、見てたんですけど、遠山さんを呼び寄せて、何を訊かれても、知らないって言えって言ってましたよね。で、遠山さんを、何処かに、かくまってますよね。遠山さんは、何処にいるんですか?遠山さんと話をさせて下さい。お願いします」
僕の言葉を聞いてから、少し時間が経ち、堀沢店長が口を開いた。
「は?何の事なのか分かりませんね。人違いじゃないですか。もういいですか?忙しいんですよね~」
その時、怒り狂った萌美が、堀沢店長にまくし立てた。
「店長!とぼけないで下さい!私もこの方も、店長が遠山さんと話してるところを、見てたんですよ!話もちゃんと聞こえてましたよ!ちゃんと誠実に言って頂かないと、警察に言いますよ!」
「フン、警察に言いたければ、勝手に言えばいいやろ!どうせ、取り合ってくれへんわ!萌美ちゃん、その謎解きのプロの方と、せいぜい頑張ってや。もうほんまに話は終わりや。ほんまに忙しいねん!」
堀沢店長が、吐き捨てるようにそう言うと、向こうを向いて、歩き去って行った。僕と萌美が顔を見合わせる。
「萌美、めっちゃ興奮してたな。びっくりしたわ。でも、あの店長、ほんまに焦ってたわ。ここに来た成果があったわ。遠山さんは、お爺さんが、誰かと電話しながらいなくなったって言ってたな。有力な情報を掴めたわ!」
「うん。私、ほんまに煮えくり返ってるんや!有力な情報を掴めたし、絶対にお爺さんを探し出してやる!」
「その意気やで!今はここにいても仕方ないし、今度は、あのお婆さんの家の前に行って、あのお婆さんが何か行動を起こすかもしれへんし、暫くの間、見張ってみるか!」
「うん!分かった!あなたの直感、当たりまくってるし、今回も当たりそうやな~!お婆ちゃん、何かしそうやな~」
二人でスーパーから出ると、ふと、僕が、落ちているハンカチに気付き、拾い上げた。
「萌美、このハンカチ、突然いなくなったお爺さんの物かもしれへんな。奥さんに確認してみよっか」
「うん。確かに、その可能性あるね~。それでいいと思うで」
暫く歩き、お婆さんの家の前に到着。二人で隠れながら、お婆さんが入口のドアを開けて出て来るか、外から帰って家に入るかを確認する為、じ~っと見る。更に二人でお婆さんの家の入口を見張っていると、お婆さんが、家の前の道を、向こう側から歩いて来た。
「萌美、お婆さんが来た!タイミングを見計らって、話し掛けるで!」
「うん!分かった!やっと来てくれたか~。ほっとしたわ~。待った甲斐があったわ~!」
どんどんお婆さんが家に近付いて行き、もう少しでドアの鍵を開けようかというシチュエーション。
「萌美、今や!お婆さんに話し掛けるで!」
「うん!今を逃したら、家に入ってしまって、出て来ないかもしれへんな~」
二人で走って、お婆さんの前に立つと、お婆さんが目を見開きながら驚き、固まってしまった。
「お婆ちゃん、また来ちゃった。この方が、どうしてももう一度話したいって言ってきて、話を聞いて欲しいの」
「はい。お婆さん、ちょっと話したい事があるんです。時間は取らせませんので、少しだけお時間よろしいでしょうか?」
お婆さんが、暫くの間、黙って立っていると、ふと、真剣な表情になり、僕と萌美に言ってきた。
「急に来られて、びっくりしたけど、時間は大丈夫やで。話って何?」
「ありがとうございます。このハンカチ、スーパーの前で拾ったんですけど、ご主人の物ですか?ご主人の物なら、お返ししますよ。それと、ちょっと聞きたいんですけど、ご主人が突然いなくなって、いくら探しても見つからなくて、どうしようもない状態になってるのに、なんで警察に相談しなかったんですか?警察に相談したら、すぐに見つかったかもしれませんよ」
僕の話を聞き、お婆さんが少し考えた後、少し笑顔になってから、真剣な表情で言ってきた。
「これ、確かに主人の物やわ。落としてたんやな。ありがとう。で、私、警察が嫌いやねん。前に、泥棒に入られた時も、全然親身になってくれなくて、結局、犯人が捕まってないんやで。警察に頼る位なら、自分の力で何とかしようと思ってるんや。どうせ警察に相談したって、主人は見つからへんで。まだ探してない場所もあるはずやし、自分でしっかり考えて、探し回って、主人を見つけ出すで!」
お婆さんがそう言って、ハンカチを受け取り、家に入って行った。僕と萌美が顔を見合わせる。
「お婆さん、前に警察から酷い扱いを受けて、警察に相談したくないって言ってたけど、ちょっと引っ掛かるな。疑ってる訳とちゃうけど、ある程度、話を作ってる感じがするわ。何かを隠してると思うわ。何を隠してるのか、徐々に分かってくるといいんやけどな。お爺さんがスーパーの前でハンカチを落としたのも、気になるわ」
「そうやね~。私はお婆ちゃんの話を聞いてただけやけど、あなたが直感的にそう感じたのなら、ほんまに何かを隠してる感じがするわ。堀沢店長といい、遠山さんといい、お婆ちゃんといい、Z村の謎、ほんまに根深い感じがするわ。お爺さんの件は、今日はこの辺にして、別のいなくなった村人を探し出す為に、聞き込みをしたいんやけど、また案内してくれる?」
「うん!もっちろん!次は、若い人で、いなくなった人の家族に会いに行って、話を聞こう。村役場で働き始めたばっかりの男性が、突然、村役場の中で、いなくなっちゃったの。その男性、まだ独身なんやけど、付き合ってる女性がいて、その女性も、村役場で働いてるんや。今、村役場で仕事をしてると思うし、会いに行って、話を聞いてみよう!」
「オッケー!村役場に行って、その女性に話を聞きに行こう!何か有力な情報を掴んで、いなくなった若い男性を探し出すで~!」
「お~、めっちゃ頼もしいわ~!めっちゃ冴えてるし、いなくなった若い男性、あなたがすぐに見つけてくれそうやな~」
「すぐには無理やと思うけど、頑張るわ!村役場は、ここから遠い?」
「急で長い坂道はあるけど、そんなに遠くないで。綺麗な川に架かってる橋を渡るで。その橋、吊り橋で、高い所にあって、長さが結構長いから、なかなかの有名な橋なんやで」
「風情がある面白い吊り橋って感じやな。めっちゃ楽しみやわ!」
二人で楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進み、まずは急で長い坂道が見えてきた。坂のてっぺんを見上げると、思ったよりも急で長い坂に、少し驚いたが、頑張って上り切った。
「この場所、めっちゃ高い所にあるし、あそこ、展望台みたいになってるんやで。あそこに行って、景色を見渡してみようよ!」
「うん!確かに、高い場所にあるし、景色綺麗なんやろうな~!めっちゃ楽しみやわ!」
二人で展望台のような所に行き、一緒に景色を眺める。
「お~!確かに綺麗な景色やな~!Z村の雄大な自然と、情緒溢れる建物が、絶妙にマッチして、最高の景色やわ~!」
「うん!そうでしょ~!私も、何回見ても、この景色、見飽きひんわ~!ほんまにめっちゃ綺麗な景色やわ~!」
暫くの間、二人で綺麗な景色を堪能し、景色をバックに、二人で一緒に写真を撮った。その際、ピッタリくっついた事により、また萌美のおっぱいがムニュッと僕の身体に当たり、僕が最高に笑顔になり、萌美がそんな僕の様子を見て、ニッコリ笑う。
再び、二人で綺麗な景色を見る。ふと、僕の手が少し萌美の手に触れた。僕が、萌美と手を繋ぐかどうか迷っていると、なんと、萌美が僕の手を握ってきた。
「ウフフ、急に、あなたと手を繋ぎたくなって、思わず握っちゃったわ!もうちょっとだけ、このままでいてもいい?」
「うん!勿論やで!僕も、萌美と手を繋ぎたかったんや!」
更に暫くの間、僕と萌美が、手を繋ぎながら、綺麗な景色を眺めていると、萌美が満面の笑顔で僕に言ってきた。
「じゃあ、そろそろ行こっか。ここから暫く歩くと、有名な吊り橋があるで。最初は、渡る時、ドキドキすると思うで」
「うん。行こう。有名な吊り橋か~。ドキドキしてきたわ」
そ~っと手を離し、二人でどんどん歩き進むと、萌美が満面の笑顔で僕に言ってきた。
「あれが、有名な吊り橋やで!結構高い所にあるし、長い吊り橋やろ?!下を流れてる川、綺麗やろ?」
「うん!想像以上の吊り橋やわ。川も綺麗やし、有名な吊り橋っていうのが分かるわ。ドキドキするわ~」
萌美が前、僕が後ろで歩き、有名な吊り橋に到着。二人で並んで歩くスペースはギリギリで、並んで歩いて渡るのは、少し危険なので、そのまま萌美が前、僕が後ろで渡る事にした。
萌美が吊り橋を渡り始め、僕が後に続いて渡る。少し吊り橋が揺れ、ちょっとだけスリルを感じる。下を見ると、綺麗な川が見えるが、吊り橋が高い所にあり、落ちたら危険なのは明らか。
「萌美、結構スリルあるな~!景色はめっちゃ綺麗な景色やけどな」
「うん。私はこの吊り橋を渡るの、慣れてるけど、あなたは初めてやし、新鮮に感じるよね」
二人でゆっくりと吊り橋を歩き進み、吊り橋を渡り切った。
二人で談笑しながら、暫く並んで歩いていると、自然たっぷりの景色から、それなりの数の建物が見える景色に変わってきた。更に歩き進み、ふと、萌美が足を止め、満面の笑顔で僕に言う。
「あそこに見える大きな建物が、村役場やで。Z村の建物にしては、立派な建物やろ。一応、村役場やからな」
「うん!あれが村役場か~。しっかり話を聞いて、いなくなった若い男性の村人を見つけ出すで!」
二人で並んで歩き、村役場に到着。中に入ると、いきなり目の前に、受付のような場所があり、萌美が受付に行き、事情を話す。
「こんにちは。野木坂です。今日は、突然、村役場でいなくなった男性の事について、こちらにいる謎解きのプロの方が、いなくなった男性と付き合ってる女性に話を聞きたいという事で、お伺いしました。その女性をこちらに呼んで頂けませんか?」
「謎解きのプロっていうのは、ちょっと大袈裟ですけど、突然いなくなった村人を探し出す為に、この村に来ています。今回、こちらの村役場でいなくなった男性を見つけ出す為に、その方と付き合ってる女性から話を聞かせて頂きたく、こちらに来させて頂きました」
「そうですか。分かりました。萌美ちゃん、頼りがいのある方を呼んでくれたんやね。少々お待ち下さいね」
受付の女性がそう言うと、電話をかけ、暫く話した後、僕と萌美に向かってニッコリ笑顔。
「間もなく、その女性職員が来ますので、もう暫くお待ち下さい」
「分かりました。ありがとうございます」
二人で少しの間、待っていると、若くて綺麗な女性が、少し急ぎながらやって来た。
「お待たせしました。私、星野菜摘と申します。星野は星に野原の野、菜摘は菜の花の菜に摘むと書いて、ほしのなつみと読みます。よろしくお願いします。突然姿を消した男性と、お付き合いさせていただいております。今日は、あの人の話を聞く為に、来られたとお聞きしました。何からお話すればよろしいでしょうか?」
「お忙しい中、お時間を取って頂き、ありがとうございます。私、野木坂と申します。温泉旅館の経営者の娘です。今日は、突然いなくなった村人を探し出す為、こちらの謎解きのプロの方に来て頂きました。是非、お話して頂ければと思います」
「初めまして。謎解きのプロと言われると、少し恥ずかしいですけど、今までいろんな謎を解き明かしてきました。突然姿を消してしまった、こちらの村役場の男性職員について、お話を聞かせて頂きたく思います。まずは、その時の状況を、詳しく教えて頂けますか?」
僕がそう言った際、名前を名乗った。続いて星野菜摘が言う。
「そういう事でしたか。分かりました。あの人が急にいなくなった日、私もあの人も、朝からこの村役場で仕事をしていました。お昼御飯の時間になり、私とあの人で、二階にある、お弁当を食べる為の広い部屋に行って、私が作ったお弁当を、一緒に食べてました。その時は、いつもと全く変わらない様子で、満面の笑顔を見せながら、美味しそうに食べてたんですけど、食べ終わった後、トイレに行って戻って来るって言ってきて、私は引き続きお弁当を食べて、食べ終わったんですけど、あの人、全然戻って来なくて、トイレの前に行ったんですけど、全然出て来なくて、トイレから出て来た男性職員に、あの人がどうしてるのかを訊いたら、トイレにはいないって言われて、慌てて、村役場中を探し回ったんですけど、何処にもいなくて、電話も出なくて、メールの返信も無くて、結局、お昼休みが終わってしまって、仕方なく仕事に戻ったんです。仕事中も、あの人から連絡が来るかもしれないと思って、時々スマホをチェックしてんですけど、全然連絡が無くて、その日の仕事が終わってから、村役場の中も外も、思い付く場所は全て探したんですけど、結局、何処にもいなくて、連絡も無くて、今に至るんです。警察に相談したんですけど、心配いらないと言われて、何故か取り合ってくれなかったんです。お願いします。あの人を探し出して下さい」
「そうやったんですね。ほんまに辛かったと思います。何が何でも、突然いなくなった、星野さんの大切な人を、探し出してみせます。まずは、トイレの前で、星野さんに、いなくなった大切な人がトイレにいないと言った、男性職員に話を聞きたいと思いますので、どなたなのか、教えて頂けますか」
「分かりました。ほんまにありがとうございます。頼りにしてます!」
「はい!星野さんの大切な人を探す出す為、精一杯頑張ります!」
「星野さん、この方は、今日も鋭い直感で、私には到底思い付かない事を、どんどん考え出してました。星野さんの大切な人についても、何か名案を考え出してくれると思います。私も微力ながら、お手伝いさせて頂きます」
「はい!ありがとうございます!そう言ってもらえて、めっちゃ嬉しいです!では、早速、トイレの前で話した男性職員のところに案内させて頂きますので、付いて来て下さいね」
「はい。ありがとうございます!」
星野菜摘と萌美と僕の会話が終わり、星野菜摘が歩き出し、僕と萌美が後に付いて歩く。ふと、萌美が小声で、僕に言ってきた。
「ねぇ、星野さん、めっちゃ綺麗な人やな。あなた、鼻の下を伸ばして、やたらと張り切ってたで。やっぱり、謎解きのプロとはいえ、美人には弱いって事なん?」
「え!そんな事ないで!僕は誰に対しても、謎解きに関しては張り切ってるで!星野さん、綺麗やけど、萌美の方が綺麗やで!」
「ウフフ、口が上手いね!でも、嬉しいわ!ありがと~!」
萌美と僕の会話が、星野菜摘に聞こえているかどうか、気になったが、星野菜摘はこっちを振り返る事なく歩き進んでいるので、気にしない事にし、引き続き萌美と一緒に、星野菜摘の後に続いて歩き進む。エレベーターに乗って上がり、エレベーターから降り、廊下を少し歩き、ある程度の広さがある部屋に入ると、星野菜摘が、一人の男性職員に話し掛け、その男性社員と共に、僕と萌美のところに戻って来た。
「こちらの職員が、私がトイレの前で話した男性職員です。お二人の事と、ここに来ている事情は、説明しましたので、どうぞいくらでも話を聞いて下さい」
「私、森川と申します。何でも訊いて下さいね。ちゃんと答えます」
「ありがとうございます。こちらの方は、謎解きのプロの方ですので、いろいろお話下さい」
「謎解きのプロと言われるの、なかなか慣れませんけど、いなくなった村人を探し出す為に来ました。早速ですが、あの日のトイレの中での状況を、詳しくお話していただけますか。お願いします」
「分かりました。あの日、トイレに入った時は、突然いなくなった男性職員は勿論、他にも誰もいなくて、私一人でした。トイレから出たら、星野さんが急に血相を変えて僕に話し掛けてきて、星野さんの彼氏の男性職員が、トイレの中にいるはずやと言ってきて、いないと言ったら、慌てて向こうの方に走って行ったんです」
「分かりました。洋式トイレのスペースは、確認してませんか?扉は全て開いてましたか?」
「全て開いてたと思いますけどね」
「もういいですよ。ありがとうございました。萌美は、何か訊く事ある?」
「うん。その時、トイレの中で争われた形跡はありませんでしたか?」
「特に変わったところは無かったと思いますね」
「分かりました。ありがとうございました」
「いえいえ、とんでもございません。他に何かご質問はありますか?」
「いえ、もう大丈夫です。本当にありがとうございました」
「そうですか。では、私、仕事に戻りますね。頑張って下さいね」
「はい。精一杯頑張ります。ありがとうございます」
森川が仕事に戻って行った後、星野菜摘が僕と萌美に言ってきた。
「まだ聞き込みをするなら、案内しますけど、どうしますか?」
「できるだけ多くの情報を得たいので、いろんな部署に案内して頂けると、助かります」
「分かりました。ご案内します。一緒に来て下さいね」
「ありがとうございます。有力な情報を得られるよう話を聞きます」
「あなたの直感、めっちゃ冴えてるし、いい情報を得られそうやな」
「いっぱい話を聞いたら、その中にいい情報が、一つはあるやろ」
星野菜摘に案内され、様々な部署に行き、話を聞いて回る。
星野菜摘がいる部署には、たくさんの職員がいて、何か些細な事でも、有力な情報が得られそうな気がしたが、特に気になる情報は無く、森川がいる部署に再び行き、森川以外の職員に話を聞くが、やはり有力な情報は無かった。他の部署の職員にも、次々と話を聞くが、有力な情報を得られない。ふと、星野菜摘に訊いてみる。
「いなくなった星野さんの大切な人は、どんな人なのか、教えて頂けますか」
「え~!間違いなく言える事は、私をめっちゃ愛してるって事ですね。とにかく、めっちゃ優しいんですよ。あの人が急にいなくなった日の、一緒にお弁当を食べた時も、私の大好物の卵焼きを私にくれましたし、しかも、あ~んって、食べさせてくれましたし、二人っきりで、一緒に部屋で過ごした時なんて、めっちゃ優しかったんですよ!キャ~!こんな事、言っていいんかな~」
「もういいです。こんなにも星野さんにとって大切な人が、急にいなくなって、寂しい気持ち、お察しします」
「そうなんです。今はめっちゃ寂しくて、早くあの人に会いたいんです。どうにかして、探し出して下さい!」
「分かりました。見つけ出す為に、精一杯頑張ります。では、星野さんの大切な人がいる部署に案内して頂けますか」
「はい!あの人、プライベートも仕事も真面目な人なので、褒める言葉を、いっぱい聞けると思いますよ」
「それは楽しみです。ところで、星野さんは、いなくなった大切な人と付き合って、どれ位経つんですか?」
「三ヶ月位ですね。部署が違うし、飲み会で初めて話して、意気投合して、付き合う事になったんですよ」
「そうなんですね。星野さんの為にも、絶対に見つけ出します!」
「ありがとうございます!頼りにしてます!」
―星野さん、大切な人のいいところばっかり見えて、悪いところは全く見えてなかった感じやな。星野さんの大切な人がいる部署の人に、しっかりと話を聞かなあかんわ―
僕と星野菜摘の会話を聞き、萌美が少し、ムッとした表情で僕に、ヒソヒソ声で言ってきた。
「あなた、星野さんと、めっちゃ楽しそうに話してたな。やっぱ、美人と話せて、嬉しくて浮かれてるんやろ」
「ちゃうわ!僕は、萌美からの依頼で、この村の、突然いなくなった村人を探す出す為に来たんや!楽しく話す事によって、星野さんから、何か手掛かりになる情報が得られるかもしれへんと思って、楽しそうにしゃべってたんや。萌美の方が、星野さんより綺麗やで!」
「ウフフ、相変わらず、口が上手いな。でも、やっぱり嬉しいわ!ありがと~!さぁ、星野さんの大切な人がいる部署に行こう!」
僕と萌美の会話は、星野菜摘には聞こえていなかった。三人で歩き進み、突然いなくなった、星野菜摘が付き合っている人がいる部署に到着。早速、星野菜摘が、その部署の職員に事情を説明してくれて、僕が次々と話を聞いて回る。何人もの職員に話を聞いたが、どの話もビビッと来ず、話を聞く人が残り少なくなってきた。
―ここでも有力な情報を得られへんかな。あ、さっきまではおらへんかったけど、この部署の長が、席に戻ってるわ―
「星野さん、この部署の長と話したいんですけど、案内して頂けますか」
「分かりました。さっき戻って来られたようです。こちらへどうぞ」
星野菜摘が、この部署の長のところに行き、事情を説明すると、この部署の長が、笑顔で僕に言ってきた。
「初めまして。山川と申します。何でも訊いて下さいね」
「初めまして。実は、Z村の村人が、どんどん急にいなくなったという事で、探し出す為にこの村に来ております。こちらの村役場でも、男性職員が突然いなくなったという事で、職員の方に話を聞いて回ってます。突然いなくなった男性職員について、どのような方なのか、教えて頂けませんか」
「分かりました。あいつは、真面目に仕事を頑張っていて、私としても助かっていて、あいつを頼りにしてたんですけど、突然、姿を消してしまって、戸惑ってるところなんですよ。早く見つけ出して頂けると嬉しいです」
「分かりました。真面目な方なんですね。特に変わったところは、ありませんでしたか?」
「無いですよ。何か引っ掛かるところでもあるんですか?」
「いえ、そういう訳ではないんですが、ちょっと気になって、訊いてみただけです。気にしないで下さいね。萌美は、何か質問ある?」
「特に無いで。あなたが質問した内容で十分やわ」
「うん。分かった。じゃあ、行こっか。ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をし、僕と萌美と星野菜摘が、歩いて部屋から出た。
「星野さん、ちょっと野木坂さんと話したいので、待っていてもらえますか?」
「分かりました。ここで待ってますね」
僕と萌美が、少し歩き、人目に付かない場所に移動。
「萌美、大した情報は得られへんかったけど、収穫はあったわ。星野さんの大切な人がいる部署の、山川っていう長と、いなくなった日に星野さんがトイレの前で話した、森川っていう職員、何かを隠してるで。話してる時に、いかにも何かを隠してる表情をしてたわ」
「そうなんや!さすが、謎解きのプロやな!やっぱり冴えてるわ!」
「ありがとう。この事は、まだ星野さんには言わんとこう。まだ味方かどうか、はっきりとは分からへんし」
「うん。分かった」
「じゃあ、星野さんのところに戻るで」
僕と萌美の会話が終わり、クルッと後ろを向いた、その時、心臓が飛び出そうな位、驚いた。なんと、目の前に、星野菜摘が、真剣な表情をしながら立っている。
「ほ、星野さん!なんでここに?あそこで待っていてくれてると思ってたわ。もしかして、僕と萌美の会話を聞いてたん?」
「星野さん!違うねん!別に星野さんの事が信用できひんって訳とちゃうねん!突然いなくなった、星野さんの大切な人を、早く見つけ出す為に、ありとあらゆる事を、疑って掛かってしまうねん!この人、ほんまに冴えてるし、直感が当たるんやで!」
僕と萌美の言葉を聞き、星野菜摘が、怒りを抑えながら、真剣な表情で、声を荒げて言ってきた。
「あなた達が、コソコソと何を話すのか、気になって仕方がなかったんや!少し距離を開けながら、あなた達に気付かれへんように、こっそりと後に付いて歩いたんや!野木坂さん、私の事、信用できひん訳とちゃうって言ってたけど、私の事、信用してへんやんか!そっちの謎解きのプロの方なんて、私の事、味方かどうか分からへんって、はっきりと言ってたで!私、恋人が突然姿を消してしまって、ただでさえ精神的に辛くて混乱してるのに、あの人を見つけ出してくれると信じてる、あなた達に、信用されてへんなんて、もう誰を信じていいのか分からんわ!折角、村役場の職員に事情を説明して、あなた達が話し易いように取り計らったのに、あなた達から、こんな仕打ちを受けて、めっちゃ悲しいわ!もう、どうしたらいいのか分からんわ!」
「星野さん、僕等への信用を無くすような事をしてしまって、ほんまにごめんなさい!悪気は全く無かったんです!まさか、星野さんがこっそり後をつけて、僕と萌美の話を聞いてたなんて、思いもしなかったんです!とはいえ、話を聞かれてしまったんやし、開き直るっていうんとちゃうけど、腹を割って話すと、僕は、あの森川っていう職員と、星野さんの大切な人がいる部署の長である、山川っていう職員は、何かを隠してる気がします。確かに、僕の直感で、外れてるかもしれへんけど、僕はそう思います。徐々にでもいいから、あの二人の牙城を崩していきたいと思ってます。どうか、引き続き協力して頂けませんか?お願いします!」
「星野さん、ほんまにごめんなさい!でも、星野さんの事、信用してない訳とちゃうんやで!私もこちらの方も、星野さんの大切な人を、少しでも早く見つけ出したいって、強く思ってるんや!私達の事を信じてって言うのは、図々しいかもしれへんけど、それでも言わせて!私達を信じて!お願い!」
「あなた達がそこまで言うなら、分かったわ。私も少し言い過ぎたと思う。ごめんなさい。あなた達の事、信じるけど、条件があるの。もう敬語は止めて、私の事、菜摘って呼んで。野木坂さんの事、萌美って呼ぶけど、萌美は、私に対して、いつの間にか敬語が無くなったね。謎解きのプロの方も、私に対して、敬語を使わないでよ。菜摘って呼んでや。お互いの距離を縮めるのが、あの人を見つけ出すのにいい事やと思うで」
「うん!分かったわ!菜摘、これからは私達、友達や!よろしくね!」
「菜摘、僕も菜摘に敬語を使うのを止めるわ。菜摘の大切な人を探し出す為に、必死に頑張るから、協力してや!」
「うん!ありがと~!萌美とは、いい友達になれそうやわ!皆で一致団結して、私の恋人も含めて、突然いなくなった村人を、全員見つけ出そうね!これからどうするの?まだ村役場の職員に話を聞きたいなら、案内するけど」
「いや、十分話を聞いたし、もうええわ。次は、菜摘の大切な人がいなくなった日に、その人が行ったトイレの中を調べてみたいから、そのトイレの前まで連れて行ってくれる?」
「うん。分かった。早速、行くで!」
菜摘が歩き出し、僕と萌美が、後に付いて歩く。エレベーターに乗って移動し、エレベーターから降り、少し廊下を歩くと、菜摘が足を止め、僕と萌美に言ってきた。
「着いたで。ここが、あの人が入って、その後いなくなったトイレやで。勿論、私は入れへんし、一人で頑張って調べてや」
「うん!ありがとう。何か手掛かりを掴んで来るわ!萌美、菜摘と仲良くしゃべりながら、待っていてや!」
「うん!分かった。あなたが必死に手掛かりを探してる間、私は菜摘といっぱいお話して、交流を深めるわ」
僕がトイレに入ると、萌美と菜摘が楽しくおしゃべりし、すぐに意気投合した。
「私と菜摘、めっちゃいい友達になれそうやな。今日、うちの旅館に泊まってってよ。一緒の部屋で過ごそう」
「いいの~!泊まる~!めっちゃ嬉しいわ!ありがと~!楽しみ!」
一方、僕はトイレを隅から隅まで調査していた。洋式トイレのドアが全て開いていて、洋式トイレのスペースも、しっかりと調べる。何か手掛かりが見つかりそうな気がしていたが、菜摘の恋人の形跡を掴めないでいた。そろそろトイレから出ようとした、その時、一番端の洋式トイレのスペースの一部分が、光っている気がした。行ってみると、一本の、高価な感じのボールペンが落ちている。丁度、洋式便器の陰になっている所で、取りづらく、拾うかどうか迷ったが、ボールペンに手を伸ばし、漸く掴む事ができた。拾い上げ、トイレから出る。
トイレの前では、萌美と菜摘が、楽しそうに話しながら、僕を待っている。僕の姿を見るなり、萌美が僕のところに来た。
「結構長い間、調べてたな~。何かいい手掛かりが見つかったん?」
「う~ん。手掛かりかどうか分からへんけど、高そうなボールペンが落ちてたんや。トイレの床に落ちてたし、汚いかもしれへんけど、もしかしたら、菜摘の大切な人のボールペンかもしれへんと思って、手を伸ばして拾ったんや。菜摘、このボールペン、彼氏の物?」
僕が拾ったボールペンを菜摘に見せると、菜摘が驚きながら、僕に言ってきた。
「これ、私があの人にプレゼントしたボールペンやわ!あの人、こんな大事な物を、よりによってトイレなんかに落としていったんか~!何考えてんねん!でも、見つけてくれてありがと~!これで、あの人があの時、トイレに入ってた事が証明されたわ。森川さん、あの人が洋式トイレに入っていて、気付かんかったのかな。それとも、いたのを知ってたのに、いなかったって嘘をついたんかな」
「やっぱり菜摘の大切な人のボールペンやったんやな。しかも、菜摘がプレゼントした物やったなんて、見つけて拾って、ほんまに良かったわ!後で、森川って人に、話を聞きに行こう!」
「お~、さすがやな~!しっかり手掛かりを見つけてきたやんか!どんな状況でも、一つは手掛かりを掴むところは、さすがやわ!」
三人で森川のところに行き、到着。森川は集中しながら仕事に取り組んでいるが、気にせず、菜摘が森川に声を掛ける。
「ちょっと、森川さん!トイレで、あの人のボールペンが見つかりましたよ!森川さん、あの人がいなくなった日、トイレにあの人がいたのを知ってたのに、いなかったって嘘をついたんですか?それとも、洋式トイレの扉が閉まっていて、気付かなかったんですか?」
菜摘の言葉を聞き、森川が、やばいと感じたのか、少し青ざめた感じの表情で、暫く黙った後、口を開いた。
「え~、俺は気付かへんかったわ。謎解きのプロの方、信じて下さい。今、思い出しました。洋式トイレの扉は閉まってました」
「そうですか。お尋ねしますけど、どの扉が閉まってましたか?」
「え~と、そうや!扉は全部閉まってました。思い出しました!」
「なるほど。分かりました。もう結構です。菜摘、萌美、行くで」
「え!もういいの?もっと詳しく話を聞く方がいいんとちゃうん?」
「そうよ。私の大切な人が何処にいるか、森川さんが知ってるかもしれへんで」
「もういいって。よく分かったし。さっさと行こうや」
僕が森川にお辞儀をし、三人で部屋から出たところで、菜摘が不満そうに僕に言ってきた。
「も~!なんであっさり部屋から出たの?」
「森川って人が、間違いなく嘘をついたって事が分かったからや。まだ、一番端以外の、どれかの扉一つを指して、閉まってたって言う方が、嘘をついたかどうか分からへんかったわ。全部の扉が閉まってたなんて、嘘に決まってる。もしほんまに閉まってたら、さすがにインパクトあるし、覚えてるはずや。森川って男、何かを隠してるけど、あの場で問い詰めてたら、何も言わんかったやろうし、周りの職員が変な目で見て、今後一切何も言わんようになりそうやから、さっさと出たんや」
「お~!冴えてるね!頼りになるわ!」
「ほんと、鋭い~!頼りになるわ!早くあの人を見つけ出してね」
「そんなに褒められると、照れてしまうわ。後は、森川って人と、山川って人が、何処かで話し合うところを見たいから、僕と萌美でブラブラ歩いて、チャンスを窺うわ。菜摘は、仕事あるやろうし、もう仕事に戻っていいで」
「うん。分かった。今日は旅館に泊まる事になったし、お互い、連絡先を教え合おうよ。仕事が終わってから、合流しよう!」
「うん!連絡先を知ってたら、何かあった時、対応し易いね」
「うん!僕も同意見やわ。交流も深まるし、いい事ずくめやな」
僕と萌美は、お互いの連絡先を既に知っているので、菜摘と連絡先を教え合い、菜摘が仕事に戻って行った。僕と萌美が話し合う。
「萌美、こっそり森川を監視して、山川に会いに行きそうな感じになったら、僕に電話してよ。まずは、職場の部屋にいるかどうかを確認してや。僕は、逆に山川をこっそり監視して、森川に会いに行きそうになったら、萌美に電話するわ」
「うん。分かった。でも、部屋には入れへんよな。部屋の外で見張ってたらいいの?」
「うん。それでいいで。森川が部屋から出て来たら、こっそり監視して、山川の方に向かったら、僕に電話してよ」
「オッケー。任せてよ!頑張るわ」
「うん!頼りにしてるで!」
僕と萌美が、それぞれ山川の部署の部屋、森川の部署の部屋の前に向かい、到着。まず、少しドアを開けて、それぞれ山川と森川が部屋にいるのを確認した。続いて、陰に隠れて、出て来るかどうか見張る。当然の事ながら、すぐには出て来ない。引き続き待つ。まだ出て来ない。時々、人が出て来て、僕と萌美に気付く人がいて、不思議そうに見てくるが、僕も萌美も気に掛ける事なく、それぞれ、山川と森川が出て来るかどうか、しっかりと見張る。
更に暫く時間が経ち、僕も萌美も、粘り強く待っていると、森川が部屋から出て来た。萌美が隠れながら、森川の行先を見守る。森川が廊下を少し歩き、辿り着いた場所は、職場の近くにある男子トイレだった。
森川が、男子トイレに入って行き、早速、萌美が僕に電話する。
「もしもし、萌美。森川が山川に会いに行ったの?」
「いや、そうじゃないけど、森川が職場の部屋から出て、同じフロアにある男子トイレに入ったんや。念の為、電話してん」
「そうか。分かった。こっちは、山川に動きは無いわ。普通に用を足すだけなら、すぐに出て来ると思う。まぁ、大きい方なら、時間がかかるかもしれへんけど、それでもそんなに長い時間はかからへんやろうし、暫く、男子トイレので見張っていてや。何か変わった事があったら、すぐに電話して」
「うん。分かった。引き続き見張るわ」
電話を切り、萌美が男子トイレの近くで見張る。すぐには出て来ない。更に見張る。一方、僕は山川がいる部署の部屋の入口を、陰に隠れて見張る。暫くの間、見張っていると、ふと、山川が少し急ぎながら部屋から出て来た。
山川が廊下を早足で歩き、エレベーターに乗った。僕はエレベーターに乗る訳にはいかず、どのフロアで降りたのかを確認してから、大急ぎで階段を使って移動。そのフロアに着くと、山川が少し離れた所を歩いているのが見えた。すぐ近くには、男子トイレがある。足音を立てないように急いで歩き、山川が男子トイレに入ったのを見届け、男子トイレの前に着くと、驚いた事に、萌美が僕のところに駆け寄って来た。
「お~、萌美!もしかして、森川もこの男子トイレに入ったん?」
「うん。そうやねん。山川が来て、びっくりしたけど、山川も男子トイレに入ったし、あの二人、男子トイレで何か話してると思うわ。私は男子トイレには入れへんし、あなたが入って、確認して来たら?」
「そうやな~。僕は顔を知られてるし、男子トイレに入って、山川と森川の会話を聞いてたら、絶対に怪しまれるから、話し掛けられたら、偶然を装って、適当に返事して、可能な限り会話を聞くようにするわ」
僕が男子トイレに入ると、予想通り、山川と森川が、端の方で、小声で話し合っているのが見えた。さりげなく僕が近付き、丁度、用を足したかったのもあり、小便器の前に立ち、用を足す。山川と森川は、僕に目を向ける事なく、会話を続けていて、僕が聞き耳を立てる。
「森川、あの急にいなくなった職員の事、何か知ってるやろ?」
「何も知りませんよ。その人がいなくなった日、洋式トイレのスペースで、誰かに電話して、何かメモをとってましたけど、何処かに行くような感じの電話でしたね。場所を言ってたと思うんですけど、覚えてないですね」
「そうか。あいつ、俺の部下やし、最近、顔色悪くて、何か思い悩んでる事があるんかな~って思って、悩み事があるんなら、相談してくれよって言った事があったけど、大丈夫ですって言われて、それっきりなんや」
山川と森川の会話を聞いていたが、とっくに用を足し終わり、そのままの恰好で暫く立っていた為、さすがに山川と森川が、僕の方を向いてきて、怪しみ出した。
「おい、森川、あの人、さっき話を聞きに来た、謎解きのプロの人やろ。さっきから、長い間、あの体勢でいてるけど、俺等の話を聞かれてるんとちゃうか?」
「ほんまですね。さっきから、僕等の話を聞かれてる感じがしますね。ちょっと話し掛けて来ますわ」
僕が慌ててチャックを上げ、ズボンを整え、手を洗う為に動こうとした時、森川が僕に話し掛けてきた。
「あの、謎解きのプロの方ですよね?さっきから、わざと便器の前にいつまでも立って、僕等の話を聞いてましたよね?」
「あなた達になんて、気付いてませんでしたよ。話なんて、勿論聞いてませんでしたよ。何か知ってる事があるなら、言って下さいよ」
「何も無いですよ。いつまでもそんな所にいるから、不思議な感じがして、言っただけですよ」
森川と僕の会話の後、山川がこっちに来て、少し強面の表情で、僕に言ってきた。
「おい、ふざけんなや!人の話を盗み聞きするなんて、姑息な事をすんなや!こっちはこっちで、いろいろ考える事があるんやからな」
「だから、何も聞いてませんよ。何か知ってる事があるんなら、どんな些細な事でもいいから、言って下さいよ!」
「うるさい!あんたにこれ以上言う事なんか、何も無いわ!もうええわ。森川、もう行くで。そろそろ仕事に戻らなあかんわ」
「はい。分かりました。では、失礼します」
山川と森川が、ムッとした表情のまま、トイレから出た。僕が手を洗い、トイレから出ると、早速、萌美が僕のところに走って来た。
「ねぇ、あの山川って人と、森川って人、怖い表情をしながらトイレから出て来たけど、何かあったん?」
「手掛かりと言えるかどうか分からへんけど、山川と森川が話してたのを、盗み聞きしてたんや。森川は、やっぱり、あの日、菜摘の大切な人を、トイレで見てたんや。菜摘の大切な人は、誰かと電話しながら、メモをとってたらしくて、その後、ボールペンを落としたみたいやわ。何処かの場所に行く感じの話をしてたみたいけど、場所までは聞き取れへんかったって言ってたわ」
「そうなんや。いなくなった菜摘の彼氏、トイレで誰かと電話してたなんて、何処に行くって言ってたんやろうな。その電話の相手が、重要人物って感じがするね」
「そうやな。菜摘の大切な人が、いなくなった日に、トイレで誰かと電話で何処かに行く話をしてたのが分かったし、十分やわ」
「うん。菜摘、今日はうちの旅館に泊まる事になったし、更に交流が深まるな~。楽しみ~!」
「そう言ってたな~。菜摘の部屋、どうするん?」
「勿論、私と一緒の部屋に泊まってもらうで。まさか、あなた、一緒の部屋に泊まるとでも思ったん?」
「ははは。そんな訳ないやろ!」
僕と萌美が、暫くの間、菜摘が来るのを待っていると、仕事を終えた職員が、どんどん僕と萌美の前を通り、更に待っていると、菜摘が満面の笑顔で、僕と萌美のところに駆け寄って来た。
「待っていてくれたんやね!ありがと~!」
「うん!一緒にうちの旅館に行くで~!気持ちいい温泉もあるし、美味しい料理もあるし、楽しみにしていてや!」
「うん!萌美の旅館、まだ泊まった事なくて、いつか泊まりたいと思ってたの!温泉も料理も、めっちゃ楽しみやわ~!」
三人で楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進み、吊り橋を渡り、更に歩き進み、萌美の旅館に到着。
中に入り、三人でエレベーターに乗っている時、萌美が笑顔で僕に言ってきた。
「じゃあ、私達の部屋は、このフロアにあるから、ここでエレベータから降りるね。後で、晩御飯をあなたの部屋で一緒に食べようね!それまで、温泉にゆっくり浸かっていてや」
「温泉も晩御飯も、めっちゃ楽しみやわ!後であなたの部屋に、萌美と一緒に行くで!」
「うん!温泉も楽しみやけど、萌美と菜摘と一緒に晩御飯を食べるのは、もっと楽しみやわ!」
萌美と菜摘がエレベーターから降り、僕が更に上に上がり、エレベーターから降り、廊下を歩いて僕の部屋の前に到着。部屋に入り、温泉に行く準備を整え、大浴場に行って温泉に入る。温泉から出て、ササッと下着と浴衣を着て、急いで部屋に向かい、部屋の前に着くと、まだ萌美と菜摘は来ていない。部屋に入り、座布団に座ると、ドアをノックする音が聞こえた。ドアを開けると、三人分の晩御飯を運んで来ている萌美と菜摘が、満面の笑顔で立っている。
「ウフフ、晩御飯を運んで来たで!ステーキとお寿司、豪華やで!さぁ、一緒に食べよう!お酒も持って来たで!」
「さぁ、いよいよ晩御飯やな!お酒を飲んで、いっぱい楽しくお話しながら、美味しい晩御飯を食べるの、楽しみやわ!」
「うん!ステーキにお寿司、最高やな!楽しみや~!」
萌美と菜摘が、僕の部屋に入り、三人で楽しくおしゃべりしながら、どんどんステーキと寿司を食べ進め、ビールを飲み進める。瓶ビールを一本空け、次は焼酎と日本酒と赤ワインを、どんどん飲み進める。僕も萌美も菜摘も、どんどん酔いが回ってきて、すっかり御機嫌状態。菜摘が、ハイテンションで僕と萌美に言ってきた。
「ねぇ、お二人さん、付き合ってるの?」
「急に何を言ってくんねん!残念ながら、まだ付き合ってへんで」
「残念ながらって言ってくれたね。私と付き合いたいと思ってくれてるん?」
「萌美と付き合えたら、めっちゃ楽しそうやけど、萌美の気持ちも大切やろ」
「私は、どうなんやろうな~。付き合うとなると、いっぱいいろいろイチャイチャするんやし、私もあなたも、勢いで付き合うっていうんじゃなくて、しっかり考えてから、付き合う方がいいと思うで。付き合うなら、あなたからか、私からか、分からへんけど、ちゃんと告白しなあかんやろ」
「そうやな。さすが萌美!酔っ払っていても、しっかりしてるわ!」
「私の何気ない質問から、白熱トークになっちゃったね!仲良くしゃべってるし、付き合ってるのかなって思っただけなんやけどね」
「まぁ、私達の話はこの辺にしとこうよ。でも、菜摘、大切な人が急にいなくなって、寂しいよね。私とこの人で、元気付けられてれば、いいんやけどな。少しは、気分が紛れてるかな?」
「めっちゃ楽しいで!あの人の事なんて、忘れちゃいそうやわ」
「あはは。彼氏の事を忘れてしもうたらあかんで~」
「そうやな。まぁ、聞こえてる訳ないし、あの人は無事でいてくれてると、信じてるわ。実は、明日、休みを取ったから、私も一緒に、あの人も含めて、突然いなくなった村人を探すで!」
「明日休みを取れたんや。それは心強いわ!」
「うん!三人で力を合わせて頑張ろうね!さぁ、まだまだ食べて飲もう!」
「うん!今日はいっぱい飲めそうやわ!料理も最高に美味しい!」
三人で更にハイテンションで楽しくおしゃべりしながら食べて飲み進め、料理を完食し、お酒も飲み干した。
先に菜摘が部屋を出たところで、僕と萌美が、いい雰囲気になり、じ~っと見つめ合う。僕が唇をどんどん萌美の唇に近付け、もうちょっとで重ね合わさる。更に近付け、僕の唇が萌美の唇に重ね合わさった。暫くの間、唇と唇を濃厚に重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、二人で微笑み合う。少し間を置き、萌美が笑顔で僕に言う。
「私、あなたの事、好きやわ。あなたは、どう?私の事、好き?」
「うん。僕も、萌美の事、好きやわ。僕の恋人になってくれる?」
「うん!めっちゃ嬉しい!ありがと~!これからよろしくね!」
「うん!やった~!僕もめっちゃ嬉しいわ!萌美、愛してるで!」
「うん!ありがと~!私も愛してるで!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。そのままの勢いで、二人で熱く激しく時間が経つのを忘れて無我夢中でひたすら愛し合いまくった。
萌美が部屋を出た後、布団に横たわり、目を閉じると、すぐに心地良い眠りについた。
翌朝、僕が目を覚まし、朝の準備を整え、朝御飯の到着を待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。ドアを開けると、朝御飯を三人分運んで来ている萌美と菜摘の姿が見えた。
「萌美、菜摘、おはよ~!朝御飯を運んでくれて、ありがと~!」
「うん!おはよ~!今日の朝御飯は、刺身と茶碗蒸しとだし巻き卵と納豆と味噌汁やで!一緒に食べようね!」
「おはよ~!あなたと萌美が付き合う事になったんやね!おめでと~!朝御飯を一緒に食べながら、お祝いするで!」
「うん!ありがと~!朝御飯、美味しそうやな!楽しみ~!」
萌美と菜摘が部屋に入り、三人で楽しくおしゃべりしながら、どんどん食べ進めている時、ふと、菜摘が真剣な表情で言ってきた。
「今日、私の母校の中学校に行こうと思ってるの。実は、私がいじめに遭ってた時に、助けれくれた担任の先生が、中学校で突然いなくなったんや。その先生には、めっちゃ感謝してるし、一日でも早く見つけ出したいねん」
「そうなんや。分かった。菜摘、彼氏も恩師の先生も、突然いなくなって、ほんまに大変やな。悲しいよな。菜摘の心の傷を、早く癒せるように頑張るわ!」
「うん。ありがとう。あなたにそう言われると、すぐに見つかりそうな気がしてきたわ。頼りにしてるで!私も頑張るわ!」
「そうやね。菜摘の為に、その人達の為に、一日でも早く見つけ出せるよう、私も頑張るわ!」
引き続き、三人で楽しくおしゃべりしながら食べ進め、完食。萌美と菜摘が自分の部屋に戻り、僕が外出の準備を整え、部屋から出て、一階に行くと、既に萌美と菜摘が椅子に座って、僕を待っていてくれている。萌美と菜摘が、僕を見つけると、満面の笑顔で手を振ってきた。僕も笑顔で手を振り返す。
「じゃあ、行こっか。私が母校の中学校に案内するから、付いて来てね!そんなに遠くないで~」
「うん!分かった!いい運動になるし、しっかり付いて歩くで~!」
「うん。ちなみに、私の母校の中学校でもあるから、場所は勿論知ってるで」
「あ、そうか!この村、中学校一つしかないんから、当たり前やな!」
三人で旅館から出て、楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進むと、ふと、菜摘が足を止めた。
「着いたで!この学校が、私の母校の中学校やで!雰囲気のある校舎やろ。生徒数はそんなに多くないけどね」
「ここがZ村唯一の中学校か~。確かに、雰囲気のある校舎やわ。萌美の母校でもあるし、中に入るの、緊張するわ!」
「久し振りの我が母校や!私がお世話になった先生、まだいるよな。久々に会えるの、楽しみ~!」
三人で少し緊張しながら、萌美と菜摘の母校の中学校に入り、少し歩いて職員室の前に到着。菜摘が職員室のドアを開け、三人で職員室に入ると、先生は数人しかおらず、一斉にこっちに目を向けてきた。萌美が先生を見て、一気に満面の笑顔になる。
「あ~!杉山先生!お久し振りです!お元気そうで、嬉しいです!」
「お~!野木坂やんか!すっかり綺麗になって、スタイル良くなって、見違えたな!」
「杉山先生、褒め過ぎですよ!実は、昨日、彼氏ができたんですよ!私の隣にいる、この人です!謎解きのプロなんですよ!突然いなくなった村人を探し出す為に、来て頂いたんですけど、仲良くなって、意気投合して、付き合い始めたんです!」
「野木坂に彼氏ができたんや!初めまして!野木坂が中学生の時に、英語を教えておりました、杉山と申します。よろしくお願いします」
「初めまして!謎解きのプロという程ではないですが、今まで数々の謎を解き明かしてきました。野木坂さんから依頼を受けまして、昨日から本格的に、いなくなった村人を探してるんですけど、野木坂さんと、めっちゃ仲良くなって、付き合う事になったんです。今日この学校に来たのは、ここにいる星野さんの恩師の先生が、突然いなくなったと聞きまして、探し出す手掛かりを得る為なんですよ」
「吉澤先生ね。私もびっくりしたわ!いなくなった場面に、私がいた訳とちゃうから、どういう状況やったんか分からへんけど、いなくなったって騒ぎになって、私も必死に探したんや。それでも見つからへんかったわ。吉澤先生、今、何処にいるんやろうな」
僕等の会話を聞き、菜摘が会話に参加してきた。
「私、星野菜摘です。杉山先生に教えて頂いた事はなかったんですけど、少しお話させて頂いた事がありましたね。実は、突然いなくなった吉澤先生、実は、私が中学生の頃、いじめに遭ってた時、私をいじめてた中学生や、その人の親に、いろいろ話してくれて、私がいじめられないように取り計らってくれた、私の恩人なんです。吉澤先生が突然いなくなったって聞いて、私、本当に心配で、何が何でも見つけ出したいんです。その時の状況を知ってる先生を、紹介して頂けませんか?」
「あ~、星野さんね!覚えてるわ!野木坂に負けず劣らず、すっかり綺麗になって、セクシーになったね!その時の状況、坂口先生が知ってるわ。坂口先生を紹介するのは、構わへんけど、今、坂口先生、国語の授業中やわ。吉澤先生も、国語の先生やし、授業の事で、いろいろ話してたみたいやわ。あと少しで授業が終わって休憩時間になるし、職員室に戻って来るはずやから、戻って来たら、紹介するわ」
「ありがとうございます。ここで待たせて頂きます」
暫くの間、萌美と菜摘と杉山先生で談笑し、僕は時々会話に参加。どんどん時間が経ち、授業終了のチャイムが鳴った。どんどん生徒が教室から出て来て、先生が職員室に入って来る。少し時間が経ち、坂口先生が、職員室に入って来た。
「坂口先生!ちょっとこっちに来て。この中学校の卒業生の野木坂と星野さんと、こちらの謎解きのプロの方が、突然いなくなった吉澤先生の事について、話を聞きたいんだって」
「そうなんですか。分かりました。そっちに行きます」
坂口先生が、僕と萌美と菜摘のところに、小走りで来た。
「初めまして。坂口と申します。まだこの中学校で働き出してから、そんなに経ってませんので、初めてお会いしますね。吉澤先生について、どのような事を聞きたいのでしょうか?」
「初めまして。星野と申します。実は、吉澤先生は、私が中学生の頃、いじめに遭ってた時に助けてくれた恩人なんです。突然いなくなったと聞いて、めっちゃびっくりして、悲しい思いをしました。吉澤先生がいなくなった時、坂口先生がその場にいらっしゃったとお聞きしました。その時の状況を教えて頂けませんか?こちらの方は、いなくなった村人を探し出す為に、野木坂さんが呼んでくれた、謎解きのプロの方なんです。この方に、知ってる事を言って下さい」
「謎解きのプロという言葉に慣れませんよ。初めまして。事情は星野さんが説明した通りです。知ってる事を教えて頂けませんか?」
「初めまして。野木坂と申します。いなくなった村人を探し出す為、私が、こちらの方をお呼びしました。この方、私では到底思い付かない事を、どんどん思い付く鋭い人なんですよ。吉澤先生がいなくなった時の事を言って下さい」
「そんなに凄腕の方なんですね。僕は、ただ吉澤先生に、国語の授業の事で相談してただけなんですよね。吉澤先生が、ちょっと電話がかかってきたって言って、スマホを持って向こうの方に行って、なかなか戻って来ないから、見に行ったら、何処にもいなくて、その時は、深く考えてなかったんですけど、吉澤先生が授業に現れへんって、騒ぎになっていて、僕も一緒に必死に探したんですけど、何処にもいなかったんですよね。誰かに呼び出されて、そのまま連れ去られたなんて事、あるんですかね。どうなんでしょうね」
「電話ですか。吉澤先生が電話で話してた人が、キーパーソンって感じがしますね。その時の吉澤先生、どんな様子でした?」
「まぁ、ちょっと困ってる感じはしましたけどね」
「困ってる感じですか。その電話の相手に、呼び出されて、そのまま連れ去られた可能性がありますね。いなくなった現場に案内して頂けますか?」
「分かりました。こちらへどうぞ」
坂口先生の案内で、僕と萌美と菜摘が歩き進む。暫く歩き、坂口先生が足を止めた。
「ここで、僕と吉澤先生が話してた時、吉澤先生のスマホが鳴って、電話しながら向こうの方に曲がって行って、そのままいなくなっちゃったんです」
「そうなんですか。あっちの曲がり角の先に行ってみましょうか」
坂口先生の後に付いて、僕と萌美と菜摘が歩き進み、曲がり角を曲がった所に到着。特に変わった感じの場所ではなく、吉澤先生が連れ去られた形跡は無い。
「ここには、何も手掛かりは無さそうですね。吉澤先生が、電話で話してた相手が、吉澤先生の居場所を知ってる感じがします」
「吉澤先生、電話で話して、追い詰められてしもうたんかな。何処にいるんやろ」
「菜摘、恩人が急にいなくなったんやし、悲しいよな。頑張って一日でも早く見つけ出すで!」
そんな会話をしていると、ふと、一人の先生が通り掛かった。
「あれ、坂口先生、何してんの?いっぱい人がいるやん。何か大切な打ち合わせでもしてんの?」
「あ~、藤村先生。実は、この前、吉澤先生が急に姿を消した件で、こちらの謎解きのプロの方が、現場を見て話を聞きたいと言ってきて、案内してるところなんですよ」
「吉澤先生か~。急にいなくなって、びっくりしたな。吉澤先生、電話しながら走って、何処かに行ってしもうたんや」
「吉澤先生が、走って何処かに行くのを、見てたんですか?あ、申し遅れました。私、先程、話題に出た、自分で言うのもなんですが、謎解きのプロです。吉澤先生、どんな表情で走ってたんですか?どっちの方向に向かって走って行きましたか?」
「血相を変えてという程とちゃいますけど、なかなかの形相で走ってましたよ。あっちの方向に向かって走って行きましたよ。そのまま、出口から出たんやと思います」
「良かったら、ここから出口に向かうルートを、教えて頂けますか?」
「もうすぐ授業なので、時間が無いです。坂口先生、案内できる?」
「僕も、次に授業が入ってるんですよ。もう行かないといけません。藤村先生、言葉で説明してあげて下さいよ」
「そうやな。案内する事はできませんけど、口で説明するという事でいいですか?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
藤村先生が、ここから出口に行くルートを説明してくれた。
「では、失礼します。早く吉澤先生が見つかるよう願ってます」
「ありがとうございます。頑張ります」
藤村先生と坂口先生が、授業の為、小走りで去って行った。
「じゃあ、藤村先生から教えてもらったルートを、歩いてみよっか。吉澤先生が走って行った状況が、少しは分かるかもしれへんし」
「うん。中学生の時、何回も通ったルートやわ」
「それでいいで。同じルートを歩く事で、何か分かるかもしれへん」
三人で、藤村先生に教えてもらったルートを歩く。途中、階段もあり、急な曲がり角もあり、急いで走ると危ない感じのルート。暫く歩き、出口に到着。
「思ったよりも、距離が長かったし、階段もあったし、急な曲がり角もあったな。こんなルートを、電話しながら走るの、危ないよな」
「生徒ならともかく、生徒の模範にならなあかん先生が、こんなルートを電話しながら走ったんなら、生徒に示しが付かへんよな」
「確かに、電話しながら走るのには、危険なルートやわ。吉澤先生、ちゃんとした人やし、こんなルートを電話しながら走ったなんて、信じられへんわ!」
「まぁ、吉澤先生が、電話での会話で、精神的に追い詰められて、何処かに急いで行ったのは、間違い無さそうやし、一旦、職員室に戻って、先生がいたら、話を聞いてみよう」
三人で職員室に向かおうとした、その時、僕が、出口の床に、キラリと光る物を発見。見ると、一本のボールペンが落ちている。
「あれ、ボールペンが落ちてるわ。吉澤先生のボールペンっぽいな。菜摘の大切な人も、ボールペンを落としてたよな。吉澤先生も、電話しながら、メモを取ってたんかな。そんなに覚えられへん内容なんかな」
「菜摘の彼氏も、吉澤先生も、ボールペンを落としたという点が、重要な感じがするわ」
「今思い出したけど、そのボールペン、父親から貰った大切なボールペンって言ってたと思うわ。そんな大切な物を落とすなんて、吉澤先生、よっぽど焦ってたんかな」
「よし!吉澤先生のボールペンっていうのが分かったし、拾っとこう!これから職員室に戻るか~。新たな情報を得られるかも」
僕が吉澤先生のボールペンを拾い、三人で歩き進み、職員室の前に到着。中に入ると、先生が数人いるが、もっと注目すべき人物、この中学校の校長がいた。
「校長!お久し振りです!今日は、私達が、吉澤先生がいなくなった件で、話を聞きに来るのを認めて頂き、ありがとうございます」
「お~、星野さん、久し振りに会えて、嬉しいわ!吉澤先生の事は、僕も心配してるし、見つけ出す為に、尽力してくれて、ありがとう!」
「御礼なんて、恐縮です。こちらの方が、急に姿を消した村人を探し出す為に、来て頂いた、謎解きのプロの方です」
「あなたが、謎解きのプロの方ですか!来て頂き、ありがとうございます。吉澤先生を含め、突然姿を消した村人を見つけ出す為に、我々も協力を惜しみませんよ」
「初めまして!謎解きのプロだなんて、恥ずかしいですけど、吉澤先生や、他のいなくなった村人を探し出す為に頑張ります」
「校長、私は、会うのは中学生以来ですね!御無沙汰してます。野木坂です。ご元気そうで、何よりです。私も頑張りますよ!」
「お~、野木坂さん!めっちゃ久し振りやな。ちゃんと覚えてるで!すっかり綺麗になって、見違えたわ~!」
「校長、教えて下さい!突然いなくなった吉澤先生は、どんな先生だったんですか?真面目とか、面白いとか、何でもいいですよ」
「真面目ですけど、羽目を外す時は羽目を外していて、バランスの良い、メリハリがある先生でしたね。あと、自分が正しいと思った事や、間違ってると思った事は、ズバズバ言ってきました」
「吉澤先生、素晴らしい先生ですね。突然いなくなる前、吉澤先生に何か変わったところはありませんでしたか?」
「全然無いですよ。いつも通りという感じやったので、急に姿を消した時は、ほんまに驚きましたよ」
「分かりました。ところで、警察には相談されたんですか?」
「警察に相談しましたけど、あんまり相手にしてくれなくて、すぐに現れますよ~って、軽く言われました」
「Z村の警察、評判悪いですね。ちゃんと警察の仕事をしてもらわないと、困りますよね」
「この村の、のどかな雰囲気で、警察もほんわかした感じになっちゃうんですよね」
「萌美、菜摘、この村の警察、全然仕事をしてへん感じやけど、萌美と菜摘は、こんな警察に納得してるの?」
「納得なんかしてる訳ないやんか!警察には、ほんまに腹が立ってるんや!こんな警察、あっても無くても一緒やわ!」
「そうやで!この村の警察、ほんまに終わってるわ!私の彼氏が急にいなくなって、探してもらえるように頼んだのに、全然相手にしてくれなくて、探してくれへんねんで!」
「そうか。二人は警察に全然納得してへんねんな。校長は、腹が立つというより、諦めてるという感じですか?」
「そうですね。だいぶ前から、この村の警察は、ほとんど機能してませんし、もう警察には愛想をつかしてますよ。じゃあ、私はこの辺で失礼します。頑張って下さいね」
「警察には、ほんまに困ったものですね。ありがとうございます」
校長が職員室を出た後、用意された美味しい給食を食べた。
「そろそろ次の場所に行くか。菜摘、次は何処に行くの?」
「次は、この村唯一のクリーニング店に行くで!そのクリーニング店の看板娘の女の子が、突然姿を消したから、話を聞きに行こう!」
「クリーニング店の女の子が、突然いなくなったのか~!その子の事、知ってるわ。ほんまに可愛い女の子やで」
三人で食器類を片付け、職員室から出たところで、僕が言う。
「校長室から校長が出て来るのを、こっそり見よう」
「校長を怪しんでるん?どういうところが、怪しく見えたん?」
「やっぱ、表情やな。校長が話してる時の表情、何かを隠してるなって感じがしたんや」
「さすが謎解きのプロ!ほんまに怪しい行動をしたら、尊敬やわ!」
三人で、校長が校長室から出て来るのを、じ~っと待つ。まだ出て来ない。更に待つ。すると、校長が校長室から出て来た。僕も萌美も菜摘も、目を光らせて、校長が何処に行くのかを見る。校長がどんどん歩き進み、階段を進む。三人で校長にばれないように、後をつける。更に校長が歩き進み、人気の無い場所に到着。そこで待っていたのは、驚くべき人物。坂口先生と藤村先生。僕も萌美も菜摘も、驚く声を抑え、陰に隠れて、どんな会話をするのか、耳をそばだてる。距離は離れているが、何とか校長と坂口先生と藤村先生の会話を聞き取れた。
「おい、坂口、藤村!吉澤先生の事で、何か変な事を言ってへんやろうな!あの謎解きのプロ、相当勘が鋭いらしいぞ!」
「大丈夫やと思います。実際、吉澤先生が、何処に行ったかなんて、知りませんし、吉澤先生が電話しながら向こうに行ったというのは、嘘とちゃいますし」
「そうですよ。僕も、吉澤先生が何処に行ったかなんて、知りませんよ。ただ、見た事ない険しい表情をしながら、走って行ったのを覚えてます。只事ではないですね」
「俺も、吉澤先生が何処に行ったかなんて知らんけど、誰かに呼び出されて、何処かに行かされた事は間違いない。俺達ではどうしようもない、警察でも無理な位、強大な力が働いてるんや。これから先、何を訊かれても、勘ぐられる事を、絶対に言うなよ!」
「はい!分かりました!」
「勿論です!任せて下さい!」
校長と坂口先生と藤村先生の会話を聞き、僕と萌美と菜摘が、ヒソヒソ声で話し合う。
「やっぱり、あの三人、重要な事を隠してるわ!特に、あの校長やな!あの校長、まだまだ重要な事を隠してる感じがするわ!」
「ほんまにあなたの直感は、いつも当たるよな!どうする?あの三人の前に行って、厳しく問い質す?」
「そうやで!ここで一気に問い質したら、重要な手掛かりを掴めそうやで!」
「いや、ここは、この辺にしておこう。今、あの三人の前に出て行ったら、あの校長の形相を見てると、ブチ切れて、とんでもない暴挙をしてくるかもしれへん。あの会話で、いろんな情報を得られたし、今はこれで十分やわ。もうあの三人の会話が終わったようやし、そろそろ次の場所、クリーニング店に行くか!」
中学校を出て、菜摘が先頭を歩き、僕と萌美が後に付いて歩く。どんどん歩き進み、菜摘が足を止めて、僕と萌美に言う。
「着いたで!ここが、言ってたクリーニング店やで。花園クリーニング店っていうんやで。さぁ、中に入って、急にいなくなった看板娘の母親に、話を聞くで!」
「うん!看板娘の女性が、急にいなくなって、その女性の母親、めちゃくちゃ心配してるやろうし、少しでも力になれるように、しっかり頑張るわ!」
「そうやな。頑張って早く見つけ出すで!」
三人で花園クリーニング店に入ると、急に姿を消した看板娘の母親が、カウンターの向こうから、笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。ようこそお越し下さいました」
「私、村役場から来ました、星野と申します。今日、ここに来たのは、クリーニングをお願いする為ではありません。実は、急に姿を消した、花園さんの娘さんの事について、話を聞かせて頂く為に、来させて頂きました。こちらの方は、謎解きのプロの方です。どうか、この人に、娘さんの事について、お話して頂ければと思います。
「初めまして。謎解きのプロとまではいきませんけど。今日は、急にいなくなった娘さんの事について、話を聞かせて頂こうと思いまして、来させて頂きました。お話して頂けませんか?」
「私は、温泉旅館の経営者の娘で、野木坂と申します。こちらのクリーニング店は、うちの旅館で、しょっちゅう利用させて頂いておりまして、急にいなくなった娘さんとは、よくお話させて頂いてました。ほんまに仕事熱心で、外を駆けずり回って、めちゃくちゃ可愛い女性ですよね!ほんまに、早く見つかるように、精一杯頑張りますよ」
「もしお分かりでしたら、娘さんが急にいなくなった時の状況を、教えて頂けませんか?」
「謎解きのプロの方ですか。頼もしいですね。娘の事を、こんなに褒めて頂き、ありがとうございます。娘が急にいなくなった時、恥ずかしながら、私は店にいなくて、上の部屋で寛いでたんですよ。この店、私が経営してるんですけど、実際は、店の事は全て娘に任せておりまして、私は、たまに店に行って、少し手伝う程度なんですよ。この店、もう閉めなあかんかなとも思うし、娘が無事でいてくれてるかどうか、めちゃくちゃ心配やし、おかしくなりそうです」
「お気持ち、全てとは言いませんがお察しします。娘さんは、どういう人なんですか?」
「娘の名前は、香りの香と織物の織と書いて、かおりと読みます。私が言うのも何ですが、確かに、香織、めっちゃ可愛くて自慢の娘です。仕事熱心というのも、その通りで、毎日休み無く、カウンターの所に立って、満面の笑顔で接客して、クリーニングした洗濯物を、お客様に届ける為に、走り回って、遅くまで働いて、めっちゃ大変やと思うのに、健気に頑張ってたんです」
「分かりました。娘さんがいなくなって、警察には相談されました?」
「勿論、警察に相談しましたけど、大丈夫ですよとか、適当な事を言われて、全然まともに取り合ってくれないんですよ」
「分かりました。この村の警察は、ほんまに評判が悪いですね。僕達が必死に頑張りますよ」
「ありがとうございます。私も出来る限りの協力をします」
「はい。それでは、次に、クリーニング店の中を、見せてもらってよろしいですか?」
「はい。こちらへどうぞ」
花園香織の母親が、カウンターの端の部分を開け、僕と萌美と菜摘を、中に入れてくれた。作業室に入り、じっくりと見回す。
「これがクリーニング店の作業室か~。クリーニング用の道具がいっぱいあるし、大きな洗濯機や乾燥機があるわ!見た事ない液体がいっぱいある!アイロンも高性能って感じがする!でも、感心してる場合とちゃうわ。しっかりと、何か手掛かりになる物を探さなあかんわ!」
気を取り直し、手掛かりを探す為に、作業室を見て回ると、一枚の写真が目に入った。めっちゃ可愛い女性が、クリーニングをした物を入れる大きなバッグを背負って、走っている姿が写っている。
「この写真に写ってる、笑顔が素敵で、めっちゃ可愛い女性、娘さんですか?」
「そうです。写真を見てると、あの子の思い出が頭にどんどん浮かんできて、もうすぐあの子が見つかると思えてくるんです」
花園香織の母親の涙ながらの言葉を聞き、萌美も菜摘も涙を流す。僕はというと、冷静になって考えていた。
―あれ?そういや、写真に写ってる、クリーニングした洗濯物を入れる大きなバッグが、見当たらへんな。ここに無いって事は、この女性、電話で呼び出されて、何処かに行ってしまったんじゃなくて、クリーニングした洗濯物を届けてる時に、誰かに連れ去られたんかな。さすがに、電話で何処かの場所に呼び出されたのなら、こんな大きい荷物、店に置いて行くやろ―
「ねぇ、私達が泣いてる時に、何を考え事をしてるん?」
「写真に写ってる、クリーニングした洗濯物を入れる大きなバッグが、この作業室に無いから、花園香織さんは、電話で何処かの場所に呼び出されたんじゃなくて、クリーニングした洗濯物を届けてる時に、誰かに連れ去られたのかもしれへんって、考えてたんや。作業室は十分見たし、話をしっかり聞いたし、そろそろ行こっか」
そろそろ行こうとした、その時、一人のお客さんが、花園クリーニング店に入って来た。
「いらっしゃいませ!お越し頂き、ありがとうございます」
「このスーツ、クリーニングお願いします。香織ちゃん、いないんですね。やっぱり、香織ちゃんが急にいなくなったっていう噂、ほんまやったんですね。そういや、前に、女性の悲鳴が聞こえて、行ってみたら、誰もいなかったっていう事があったんですけど、まさか、香織ちゃんが誰かに連れ去られてしまったんかな」
「え!それ、たぶん花園香織さんの悲鳴やと思います。その場所に案内してもらえませんか?僕、突然姿を消した村人を探し出す為に、この村に来てるんです。今は、急にいなくなった花園香織さんを探し出す為の手掛かりを見つけようとしてるんです」
「そうなんですか。勿論、案内しますよ!私も、早く香織ちゃんが見つかって欲しいんです。香織ちゃん、可愛い上に、腕がいいし」
「ありがとうございます。早速行きましょう」
花園クリーニング店を出て、そのお客さんに案内されながら、僕と萌美と菜摘が、女性の悲鳴が聞こえた場所に向かって歩き進み、ふと、案内してくれている女性が、足を止めた。
「私がここにいる時に、向こうの方から、女性の悲鳴が聞こえたんです。次に、私が行ったら、もう誰もおらへんかった場所に行きますね」
「はい。行きましょう」
女性に案内され、その場所に着くと、少し広いスペースになっていて、人目に付きにくい場所だった。
「私がこの場所に着いた時は、もう誰もいませんでした。そもそも、香織ちゃんが、この場所で連れ去られたかどうかですけど」
「分かりました。ちょっとこの場所を点検してみますね」
僕がそう言ってから、萌美と菜摘に言う。
「萌美、菜摘、この場所に、花園香織さんがいた形跡が残ってるかもしれへん。探してみようや」
「うん。分かった。あなたの直感が働き出したんやな。また当たりそうな気がするわ」
「そうやな~。私と萌美だと、絶対に気付かへん事に、どんどん気付くんやから、今回も何か見つかりそうな気がするわ~」
案内してくれた女性に御礼を言って、その女性は歩き去って行った。三人で、何か花園香織がいた形跡が残っていないか、探し回る。特に荒らされた様子は無く、ゴミがいろいろな所に落ちているが、目立った物は、なかなか見つからない。ゴミを拾いながら、花園香織がこの場所にいた形跡を探していると、萌美が手を止めて言った。
「ねぇ、この兎のキャラクターのストラップ、一見、ゴミのようにも見えるけど、もしかしたら、花園香織さんの物かもしれへんな」
「うん。確かに、そんなに汚れてへんし、ゴミには見えへんな」
萌美が兎のキャラクターのストラップを拾い上げ、三人でじ~っと見る。表面は、何も変わった点は無い。クルッと回し、裏面を見ると、小さい字で、「KAORI」と書かれている。
「これは、花園香織さんのストラップやろ!よくある名前とはいえ、このシチュエーションやし、間違いないで!」
「そうやな!この場所で、誰かに連れ去られたんやで」
「花園香織さんが何処に連れて行かれたのかという事やけど、警察に行って、事情を話してみるのがいいと思うわ。この村の警察のやる気の無さが気になるし」
「うん!私も、この村の警察には、言いたいことがあるねん!」
「賛成~!私も、彼氏の事も含めて、いっぱい言いたい事があるで!」
「僕も言いたい事があるし、まずは僕にしゃべらせてや~」
三人で意気揚々と歩き進む。歩いている時、萌美と菜摘が警察に対する不満を言いまくり、僕が聞きまくる。どんどん歩き進み、いつの間にか、Z村唯一の警察署の前に着いた。
「着いたで!ここが、この村唯一の警察署やで!」
「うん。まずは僕が、花園香織さんが連れ去られて、ストラップが現場に落ちてた事を言うで」
三人で警察署に入ると、当然の事ながら、警察官がウロウロ歩き回ったり、机に向かって仕事をしたりしている。菜摘が、カウンターの向こう側に立っている警察官の前に立ち、真剣な表情で言う。
「こんにちは。私、村役場で働いております、星野と申します。今日は、突然いなくなった村人を探し出す為に、Z村に来て頂いた、こちらの謎解きのプロの方が、話したい事があるという事なので、こちらに来させて頂きました」
「そうですか。謎解きのプロとは、珍しい肩書ですね。どのようなお話ですか?」
「初めまして。謎解きのプロです。冗談ですよ。今日は、突然いなくなった、花園クリーニング店の看板娘である花園香織さんの事で、お話したい事がありまして、来させて頂きました。実は、今日、花園クリーニング店に行って来まして、たまたま来たお客さんが、女性の悲鳴を聞いたとおっしゃってましたので、現場に行ってみたら、花園香織さんの物と思われる、兎のキャラクターのストラップを発見したんです。裏面にKAORIと書かれているので、間違いないと思います。花園香織さんは、誰かに連れ去られたんやと思います。花園香織さんを探し出す為に、是非とも警察に動いて頂ければと思います。萌美、そのストラップを、警察の方に見せて」
「うん。私は、温泉旅館の経営者の娘で、野木坂と申します。これが、そのストラップです」
萌美が、花園香織の物と思われる、兎のキャラクターのストラップを、目の前の警察官に見せ、裏面の「KAORI」という文字も見せる。警察官が真剣な表情で見た後、僕と萌美と菜摘に向かって、信じられない事を言ってきた。
「花園香織さんね~。ストラップが落ちてたからといって、誰かに連れ去られたかどうかなんて、分からないですよ。警察が動く為には、もっとはっきりとした証拠が必要ですわ。花園香織さん、クリーニング店の仕事があるんですから、すぐに戻って来ますよ」
その警察官の言葉を聞き、僕も萌美も菜摘も、憤りながら、まくし立てる。
「はぁ?あんた、本気で言ってんのか!警察が動くには、十分過ぎる証拠やろ!花園クリーニング店には、クリーニングした洗濯物を入れる大きなバッグが無かったんや!お客さんに届けに行ってる時に、何者かに連れ去られたんや!女性の悲鳴を聞いた人がいるんやで!花園香織さんの件だけとちゃうで!あんたら警察、他のいなくなった村人の件でも、全然動いてへんそうやな!警察がそんな事でいいはずないやろ!さっさと動いてくれや!」
「この人の言う通りや!なんで警察は動いてくれへんねん!おかしいやろ!急にいなくなった村人の件、いくら動いてくれって言っても、動いてくれへんなんて、理解できひんわ!この村の警察、絶対におかしいで!前からダラダラしてる感じやったけど、今回の村人がいなくなった件については、ほんまにさっぱり動いてくれへんなんて、酷過ぎるで!早く動いてや!」
「そうやで!ほんまにふざけんなや!あんたら警察の体たらく、目に余るで!村役場に勤めてる、私の彼氏が急にいなくなった時も、私が一生懸命説明して、動いてもらえるように頼んだのに、適当な理由を言われて、結局、動いてくれへんかったやんか!今でも、すぐに動いて欲しいと思ってるんや!さっさと動けや!」
僕と萌美と菜摘の、迫力満点のまくし立てを聞くと、警察官が怒りの表情で大声で言ってきた。
「うるさい!何を言われても、警察はこれ位じゃ動けへんねん!こっちは忙しいんや!とっとと帰れ!」
僕と萌美と菜摘と警察官の、物凄い言い合いにより、周りの警察官がこっちに注目し、一人の警察官が、こっちにやって来た。
「おい、どうしたんや。この人達、何者なんや。さっきから騒ぎまくって、うるさいぞ」
「す、すみません。この程度じゃ警察は動けないって言ってるんですけど、どうしても分かってもらえなくて、騒ぎまくって、大変なんですよ。この人達の事、お任せしてもよろしいですか?」
「ったく、しょうがないなぁ。分かったわ。あ~あ、めっちゃ忙しいのに、こんな変な連中に来られて、ツイてないわ!」
その警察官が、こっちを向いて言う。
「どうもどうも。こいつの上司の警察官です。あんたらの声がでかいから、話の内容は聞こえてました。まぁ、こいつの言う通りですわ。この程度の事では、警察は動けません。もうこれ以上話しても、時間の無駄なんで、お引き取り下さい。あんまりしつこいと、何か理由を探して、あんたらを逮捕しますよ」
この警察官からの、とんでもない発言を聞き、萌美と菜摘が更にヒートアップし、その警察官に向かって怒鳴る。
「はぁ?あんた正気か?村民が困って、必死に相談してるのに、逮捕やと?なめてんのか!ふざけんなや!逮捕できるもんなら、してみろや!ボケ!」
「そうや!ふざけんなや!こっちは真剣に相談してんのに、ろくに話を聞かず、あんまりしつこいと逮捕するやと?こんなんで逮捕できる訳ないやろ!逮捕できるもんなら、してみろや!アホ!」
「萌美、菜摘!言い過ぎやぞ!ここは、もうこの辺にして、一旦、引き揚げよう」
「そ、そうか。そうやね。冷静さを無くしてしまって、ごめん」
「うん。分かった。ヒートアップしてしもうて、ごめん」
僕が二人の警察官に、内心は申し訳ないなんて、これっぽっちも思っていないが、申し訳なさそうな表情を浮かべながら言う。
「言い過ぎました。申し訳ございません。今回は帰らせて頂きます」
「まぁ、我々も言い過ぎた面がありましたし、今回は不問にしましょう。以後、言動には気を付けて下さいね」
「こっちも言い過ぎましたが、やはり、この程度では、警察は動けませんので、次に来るなら、もっとはっきりとした証拠を持って来て下さい」
「はい。分かりました。では、失礼します」
僕と萌美と菜摘が、怒りに満ちた表情で、警察署から出た。
「何やねん!あいつら!やる気の欠片も無いやんか!あんな連中、全く当てにならへんわ!僕達で頑張るしかないで!」
「ほんまやで!突然姿を消した村人を探し出そうという意識が、全く無いやんか!」
「ほんま、この村の警察は最悪やわ!全くやる気無いし、急にいなくなった村人を、探す気が全然無いやんか!」
「まぁ、僕と萌美と菜摘の意見が一致したし、もう警察は当てにできひんわ。Z村の警察は、なんであんなにダメダメなんやろうな。今日はもう遅いし、この辺にしよう。菜摘は、今日はどうするん?また萌美の旅館に泊まるん?それとも、家に帰るん?」
「あ~、今日も、萌美の旅館に泊まりたい~って思うんやけど、さすがに、今日は家に帰るわ。洗濯物が溜まってるし、家でやりたい事もあるし」
「分かった。そりゃ、家でやりたい事あるわな」
「ウフフ。今日は、私とあなたで、うちの旅館に泊まるという事やわ!晩御飯、あなたの部屋で一緒に食べようね!今日の晩御飯は、刺身の盛り合わせと、焼肉やで!」
「お~!聞いてるだけで、よだれが出そうな位、美味しそうやな~!食べるの、めっちゃ楽しみやわ~!」
「ほんまに美味しそうやな~!めっちゃ羨ましいわ!明日は仕事に行くけど、仕事が終わってから、あなた達に合流するから、ちょっとでも、いなくなった村人を探すのを手伝うで~!」
「ありがと~!嬉しいわ!菜摘が一緒やと、百人力やわ!」
「大袈裟やな~。で、明日は、萌美の旅館に泊まらせてもらっていい?明日の夜は、三人でワイワイ楽しく過ごしたいわ!ちゃんと着替えを持って行くわ」
「うん!勿論いいで!私も、明日は、菜摘と一緒に楽しく過ごしたい気分やったんや。」
「ウフフ、ありがと~!私も嬉しいわ!」
三人で談笑しながら暫く歩き、ふと、菜摘が足を止めた。
「私の家、あっちの方向やから、今日はここから別行動やわ。また明日ね~。お熱い夜を~!」
「うん!ありがと~!また明日~!」
「ウフフ、ありがとうね!また明日ね~!」
菜摘が満面の笑顔で手を振りながら、向こうの方に歩いて行った。僕と萌美も、手を振り返す。菜摘がどんどん歩いて行き、姿が見えなくなった。
「じゃあ、私の旅館に戻ろっか。実はね~、貸切風呂があるんやで!露天風呂やで~!晩御飯の前に、一緒に入ろうよ~!」
「お~!貸切露天風呂か~!もっちろん、一緒に入るで!うぉ~!めっちゃくちゃ楽しみやわ~!めっちゃ嬉しいわ~!」
「ウフフ、そんなに喜んでくれて、私もめっちゃ楽しみやし、嬉しいわ!さぁ、行くで~!」
二人で手を繋いで楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進み、萌美の旅館に到着。僕の部屋に入り、貸切露天風呂に行く準備を整え、部屋を出て、貸切露天風呂に行き、二人で熱く激しく時間が経つのを忘れてひたすら濃密に愛し合いまくり、温泉を満喫し、僕の部屋に戻り、暫くの間、イチャイチャして過ごしていると、ふと、萌美が満面の笑顔で僕に言ってきた。
「じゃあ、そろそろ晩御飯を運んで来るね。刺身の盛り合わせに、焼肉、楽しみにしていてね!」
「うん。ありがと~!楽しみやわ~!」
萌美が満面の笑顔で手を振りながら、部屋を出た。僕も満面の笑顔で手を振り返す。
暫くの間、テレビを観たりしてのんびり寛いでいると、ドアをノックする音が聞こえた。僕がドアを開け、萌美が部屋に入り、二人でテーブルに晩御飯を並べ、食べ始める。刺身の盛り合わせと焼肉が特に美味しく、楽しくおしゃべりしながら、どんどん食べ進め、完食。お酒もかなりの量を飲み、僕も萌美もすっかり出来上がった。
御機嫌の萌美が、僕に抱き付き、唇を僕の唇に重ね合わせてきた。暫くの間、濃厚にディープキス。舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。そのままの勢いで、二人で熱く激しく時間が経つのを忘れて無我夢中でひたすら濃密に何度も何度も愛し合いまくった。
「ウフ、めっちゃ熱くて幸せな時間を過ごせたわ。ありがと~!愛してるで!眠くなってきたし、そろそろ寝よっか。いい夢を見れそうやわ。おやすみ~」
「うん!僕もめっちゃ熱くて幸せな時間を過ごせたわ。ありがとうね~!愛してるで!僕もそろそろ寝るわ。萌美の夢を見れそうやわ。おやすみ~」
唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合いながら、幸せな気分で眠りについた。
どれ位の時間が経っただろうか。僕は気持ち良く熟睡している。一方、萌美は、ふと、目を覚まし、スマホを手に取り、ゆっくりと歩き、トイレに入った。
萌美が、誰かに電話をかける。相手が電話に出て、萌美が、ヒソヒソ声で話す。長い時間をかけて話す。
時間が経ち、萌美が電話を切り、トイレから出て、布団に戻って横になり、僕をぎゅ~っと抱き締め、唇を僕の唇に重ね合わせる。僕は眠っている。唇をそ~っと離し、萌美が目を閉じ、心地良い眠りについた。
翌朝、僕が目を覚ますと、僕をぎゅ~っと抱き締めながら、萌美が気持ち良さそうに眠っている。僕が唇を萌美の唇に重ね合わせ、舌を萌美の口の中に入れ、萌美の舌と絡め合わせる。暫くの間、濃厚にディープキス。ふと、萌美がまだ眠そうに目を覚ました。
「ウフ、おはよ~!王子様のキスで目覚めたような感じで、最高の目覚めやわ!」
「うん!おはよ~!王子様なんて言われて、照れてしまうわ!」
「そろそろ朝御飯を食べよっか。私、朝御飯を二人分取りに行って、部屋に持って来るわ」
萌美が部屋を出て、僕が暫く朝の準備をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。萌美が部屋に入り、二人で美味しく朝御飯を食べ、外出の準備をする。
「今日、何処に行けばいいんかな。萌美、当てはある?菜摘から、何か聞いてる?」
「エへへ、今日はね、私が案内するで。実はね、Z村には、通称、Z山って呼ばれてる山があって、普段は人がめったに行かない、不気味な山なんやけど、そのZ山に行って、いなくなってしまった村人が二人いるんや。今日は、その二人の家に行って、その人達の家族に話を聞こうと思ってんねん。どう?」
「うん。いいで~。萌美の案内で、Z山でいなくなった村人を探し出す為に頑張るで!」
萌美が、服に着替え、化粧を始めた。スッピンの萌美も綺麗だが、化粧をしている萌美は、更に妖艶さと煌びやかさが備わり、極上の美しさを身に付けている。萌美の化粧が完了し、僕も準備完了。
「さぁ、今日も頑張ろうな~!萌美の案内、頼りにしてるで!」
「うん!任せてや!しっかり案内するで!私も一緒に頑張るで!」
唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。
二人で旅館を出て、手を繋いで楽しくおしゃべりしながら歩き進み、萌美が足を止めた。
「着いたで。この家が、Z山で突然いなくなった人の家やで。まずは一軒目やわ。いなくなった人は、男性やねん。その人の家族がいると思うし、話を聞くで!」
「分かった。雰囲気が悪くなったら、フォローしてや~」
「うん!まぁ、雰囲気が悪くなるなんて、ないと思うけどね」
萌美がインターホンを押す。呼び出し音が何度か鳴り、応答を待つが、応答が無い。
「いなくなった人の家族、おらへんのかな。何処かに出掛けてるのかもしれへんし、もう一回、インターホンを鳴らして、出て来んかったら、もう一軒の方の家に行ってみよっか」
「そうやな。外出してるかもしれへんな」
萌美が再度、インターホンを鳴らす。呼び出し音が何度か鳴る。応答を待つ。やはり応答は無い。
「やっぱり、誰もおらへんみたいやな。何回も鳴らしても仕方ないし、次の家に行こっか」
「うん。そろそろ行くか。その家に行ってから、また来よう」
僕と萌美が歩き出す。手を繋ぎたくなり、萌美の手をそっと握る。萌美も僕の手を握り返す。ふと、家の窓の方を振り返ると、人が家の中から、こっちを見ているのが見えた。僕がジッと見ると、その人がカーテンを閉め、見えなくなった。
「萌美!あの家、誰かいるで!さっき、人がこっちを見てるのが見えたわ!」
「え!そうなの!なんでインターホンを鳴らした時に出て来んかったんやろ~」
「分からへん。叫んでみるか。まず萌美が叫んでや」
「うん。分かった。出て来んかったら、次はあなたが叫んでや」
二人でさっきの家の前に戻り、萌美が、家に向かって叫ぶ。
「ごめん下さ~い!お話を聞かせて頂きたいんですけど、どなたかいらっしゃいませんか?」
暫くの間、二人で待っていると、ドアが開き、一人の女性が出て来てくれた。
「こんにちは。出て来て頂き、ありがとうございます。私、この村の温泉旅館の経営者の娘で、野木坂と申します。突然いなくなった村人を探し出す為に、活動してます。今回、探し出す為に、こちらの謎解きのプロの方に、来て頂きました。こちらの家の方が、Z山に行って、そのままいなくなったと聞きました。何としても見つけ出したいので、是非ともお話を聞かせて頂きたいと思ってます」
「初めまして。謎解きのプロという程の者ではないですが、お話して頂ければと思います」
「あなた達、ほんまに私の息子を探し出す気あるの?」
「勿論です。私達、真剣に、突然いなくなった村人を探し出す為に頑張ってるんです!特に、こちらの謎解きのプロの人は、鋭い勘で、私だと到底思い付かへん事を、どんどん思い付くんです」
「僕からもお願いします!まずは、息子さんがいなくなった日の、息子さんの行動について、教えて頂けませんか?」
「そうなの。警察に相談しても、すぐに現れますよ~って、軽くあしらわれて、もう、不満が爆発してたところに、あなた達が来て、また冷やかしか~って思って、さっき、インターホンを鳴らされた時、出なかったんや。でも、また来て、叫んでたし、熱意があるな~って思って、近所の目もあるし、出てみたんやけど、信用できそうで、良かったわ。あ、そうそう。息子がいなくなった日の、息子の行動やな。あの日、息子は、誰かと電話した後、突然、Z山に用事があるから行って来るって言ってきて、私が、何しに行くのか訊いたら、言えへんけど心配せんでいいって言ってきて、変な感じがして、危ないから行くなって言ったんやけど、どうしても行かなあかんって言ってきて、ほんまに行ってしもうて、そのまま帰って来てないんや。何が何でも止めれば良かったって後悔してるわ」
「そうなんですか!警察、ほんまに酷いですね!息子さん、なんで危険と分かっていて、Z山に行ったんでしょうね。どうしても行かなあかんって、何かしないといけない事があるんですかね。何か知ってますか?」
「全然見当も付かへん。Z山に行く前なんて、そんな素振りは全く無かったんやけどな。誰かにそそのかされたんかな」
「分かりました。ところで、息子さんの部屋を見させて頂いてもよろしいですか?」
「ごめんなさいね。家に入れる事はできひんわ。息子に無断で、部屋をいろいろ調べられるのは、息子に申し訳ないねん」
「いいですよ。気にしないで下さいね。いろいろお話して頂き、ありがとうございました。萌美、何か聞きたい事ある?」
「え!いや、もう大丈夫やで」
「うん。そろそろ行こっか。ご協力ありがとうございました。失礼します。息子さんを早く見つけ出せるよう頑張ります」
僕と萌美が歩き出す。歩いている途中、僕が萌美に言う。
「萌美、さっきの人、どう思う?」
「息子さんの事を心配していて、いろいろ話してくれたと思うけど、何か引っ掛かる事でもあるの?」
「そうやな。まず、萌美がインターホンを鳴らした時に、出て来なくて、僕があの人が家にいる事に気付いて、萌美が叫んだら、出て来たやんか。あれは、僕と萌美の熱意を感じたからじゃなくて、気付かれて叫ばれて近所の目が気になるから、出て来たんやと思う。で、息子さんの部屋を見せてもらえるように頼んだら、見せてくれへんかった。ほんまに息子さんを見つけ出したかったら、藁にも縋る思いで、僕と萌美に、部屋を調べてもらうと思うんや。何か隠してる感じがしたし、変な感じがしたわ」
「え~!私、ぜんっぜん気が付かへんかったわ!言われてみれば、変な感じがしたかな~って思うわ」
「うん。じゃあ、次の家に行こう。萌美、案内してや!」」
「は~い!任せてよ!」
二人で手を繋いで、楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進む。ふと、萌美が足を止め、笑顔で僕に言う。
「着いたで。ここが二軒目の、Z山に行って、そのままいなくなった村人の家やで。今回のいなくなった村人は、女性やわ。その人の家族が、たぶん家にいてると思うんやけど、今度はすんなり出て来てくれるんかな。インターホンを鳴らしてみるわ」
萌美がインターホンを押した。何回か呼び出し音が鳴る。僕も萌美も応答を待つ。すると、今度は、インターホンに出てくれた。
「はい。どちら様でしょうか?」
「こんにちは。私、この村の温泉旅館の経営者の娘で、野木坂と申します。突然いなくなった村人を探し出す為、活動してます。今日は、こちらの家の方が、Z山に行って、そのままいなくなってしまったと聞きまして、話を聞かせて頂きたく、来させて頂きました。こちらの方は、謎解きのプロの方でして、今回、突然いなくなった村人を探し出す為、来て頂きました。この人に、お話して頂ければと思います。物凄く勘が鋭い人で、私だと到底思い付かへん事を、どんどん思い付くんですよ」
「初めまして。謎解きのプロというのは言い過ぎですが、直感は鋭いと思ってます。Z村の突然いなくなった村人を探し出す為、頑張ってるところです。今回、こちらの家の方が、Z山に行って、そのままいなくなったとお聞きしまして、お話を聞く為に来させて頂きました。よろしくお願いします」
「分かりました。今、行きますので、少しお待ち下さい」
インターホンを切り、少しの間、待っていると、一人の女性が、ドアを開けて出て来た。
「こんにちは。野木坂です。いなくなった方の事で、お話を聞かせて頂く為に、来させて頂きました。こちらの謎解きのプロの方に、お話して頂けますか」
「初めまして。早速、お話を聞かせて頂ければと思います。いなくなった方は、女性とお聞きしましたが、その方は、娘さんですか?」
「初めまして。そうです。いなくなったのは、私の娘です。どんな事を話せばよろしいでしょうか?」
「よろしければ、娘さんが突然いなくなった日、娘さんがZ山に行った時の事を、お話して頂けませんか?」
「分かりました。あの日、あの子、スマホをいじってたかと思うと、急に顔色が悪くなって、私に、Z山に行かなあかんようになったって言ってきて、私が、なんでZ山に行かなあかんのかを訊いたら、理由は教えられへんけど、行かなあかんっ言ってきて、ちゃんと帰って来るから心配しないでって言ってきたんです。あの子、目が真剣で、私が止めても、行っちゃうんやろうなって思って、仕方なく、あの子がZ山に行くのを認めたんです。それで、そのまま、帰って来てないんです。止めてれば良かった。後悔していて、胸が張り裂けそうです」
「そんなに真剣な感じで、娘さんに言われたら、Z山に行くのを、認めざるを得なかったと思いますよ。そんなに自分を責めんといて下さい。ところで、何か分かるかもしれませんし、娘さんの部屋を、見させてもらってよろしいですか?」
「はい。いいですよ。何か手掛かりが見つかると、いいんですけど」
「ありがとうございます。それでは、見させて頂きますね」
僕と萌美が、その人の家に入り、案内され、いなくなった人の部屋に入り、見て回と、僕の目に、一枚の写真が入った。写真立てに入れられていて、大事そうに飾られている。
「この写真に写ってる女性が、娘さんですか?綺麗な人ですね」
「はい。私の娘です。ありがとうございます」
「いえいえ。思った通りの事を言っただけですよ。ところで、娘さんの隣に、男性が写ってますけど、この男性は、娘さんの彼氏ですか?」
「はい。娘からは、彼氏だと聞いてます。でも、あの子、付き合ってる人の事、話してくれないんです。教えて欲しいんですけどね~」
「分かりました。二人共、幸せそうに笑ってますね。娘さんの彼氏、娘さんが急にいなくなって、心配してるんでしょうね」
「どうでしょうね。そもそも、娘の彼氏、あの子が急にいなくなった事を、知らへんかもしれません。私は、あの子の彼氏の連絡先を知りませんし、誰かが伝えてるかもしれませんけど、分かりません」
「あ~、なるほど。確かにそうですね。でも、娘さんの彼氏、娘さんに連絡を取ろうとしてるでしょうね。娘さんは、スマホを持って、Z山に行っちゃったんですよね?」
「はい。スマホを持って行ってました。私も娘に連絡を取ろうとして、何度も電話してるんですけど、電源が入ってへんのか、電波が届いてへんのか、電話が繋がらへんのですよ。ほんまに心配ですわ。無事でいてくれると、いいんですけど」
「大丈夫ですよ。娘さん、絶対に何処かで無事に過ごしてますよ。早く娘さんを見つけられるよう、精一杯頑張ります」
引き続き、僕と萌美が、部屋の中を見て回るが、これといって、手掛かりになりそうな物は見つからなかった。
「萌美、だいぶ見て回ったし、そろそろ出よっか。次に行きたい所があるんや。萌美が知ってる所やと思うし、案内してや」
「うん。私が知ってる所なんやな。ちゃんと案内するで」
「今日は、いろんな話をして下さり、ありがとうございました。そろそろ失礼させて頂きます。娘さんを一日でも早く見つけ出せるよう、一生懸命頑張ります」
「はい。ありがとうございました。よろしくお願いします」
僕と萌美が、いなくなった人の家から出て、手を繋いで暫く歩く。
「萌美、さっきの人は、特に怪しい感じではなかったわ。ほんまに娘さんの事を心配していて、僕と萌美の事を信用してる感じやったわ。その前の人、なんでこんなに印象が違うんや!」
「そうなんや。私も、さっきの人は、全然変な感じがしなかったわ」
「これから行きたい所なんやけど、Z山に行きたいねん。危険なのかもしれへんけど、二人もZ山でいなくなってるんやし、Z山で何があったのか、確かめたいねん」
「うん!分かった!Z山に案内するで!」
「うん!Z山、危険な山みたいやけど、萌美の事、ちゃんと守るで!」
二人で手を繋いで、楽しくおしゃべりしながら、自然豊かな道を歩き進むと、萌美が足を止め、元気な声で言ってきた。
「Z山の入口に着いたで!危険な山やけど、あなたと一緒やし、心配してへんで!」
「うん。とうとう着いたな!緊張するけど、危険が迫っても、絶対に萌美を守るで!」
二人で覚悟を決め、Z山の入口から、ゆっくりと歩き、少しずつZ山を上って行く。ギリギリ道と言える程度の道で、歩きにくいが、二人で手を繋いで、しっかりとした足取りで歩き進む。ふと、歩きながら、僕が気になっている事を、萌美に尋ねる。
「萌美、ところで、Z山は、なんで危ないって言われてるの?」
「あ、そうや!それ言ってへんかったな。Z山には、たくさんの動物がいるんや。その中には、熊もいて、熊に襲われた人がいるっていう話やねん。それは、恐ろしい話やけど、熊が人を襲うっていうのは、別に驚く話とちゃうやん。もっと恐ろしいのは、普通は全然人を襲わへん動物まで、Z山の動物は、人を襲うっていう話やねん。普通は人を襲わへん動物なだけに、どうやって人を襲うのか、謎な部分があって、対処法が分からへんねん。後は、突然大きい穴が開く事があるっていう話もあるんや。もしかしたら、他にも恐ろしい事があるかもしれへん。でも、何となくやけど、あなたなら、大丈夫な気がするわ。もし私が危険な目に遭ったら、守ってや!」
「Z山って、確かに恐ろしい事があるんやな。なんで、普通は人を襲わへん動物やのに、Z山にいる動物は人を襲うんやろうな。突然大きい穴が開くっていうのも、不思議やな。でも、大切なのは、Z山で突然いなくなった人を探し出す事やし、少しでも手掛かりを掴む為に、必死に頑張るで!もし萌美が危険な目に遭ったら、絶対に守るで!」
「ありがと~!頼りにしてるで!もうちょっとで頂上に着くで!」
二人で手を繋いで、楽しくおしゃべりしながらどんどん上って行き、頂上に到着した。
「着いたで!ここが、Z山の頂上やで!ちょっとした展望台があそこにあるから、行ってみよう!」
「うん!恐ろしい山という話やけど、頂上から見る景色は綺麗や!」
小走りで展望台に行き、手を繋ぎながら、景色を堪能する。
「めっちゃ綺麗な景色や!こんな綺麗な景色を見てると、ほんまは恐ろしい山って事を、忘れてしまうわ!」
「ほんまにめっちゃ綺麗な景色やわ!大好きなあなたと一緒に見てるから、より一層綺麗に見えるわ!愛してるで!」
「ありがと~!僕も、こんなに綺麗な景色を、萌美と一緒に見れて、めっちゃ幸せやわ!愛してるで!」
「ウフ、ありがと~!一緒に写真を撮ろう!いい写真が撮れそう」
「うん!萌美の腕の見せ所やな」
二人でピッタリと身体をくっつけ、萌美が上手く写真を撮り、最高の写真に大満足。引き続き、二人で手を繋ぎながら、綺麗な景色を眺め、大自然に魅了される。更にグルッと見渡すと、ふと、僕の目に、少し気になる建物が入った。
「萌美、あそこに見える、高い建物は何?」
「あれは、この村には珍しい、ビルと言っていい建物やねん。一応、会社や店が入る予定で建てたみたいなんやけど、結局、ほとんど使われてなくて、困ってるみたいやわ」
「建物の材質や形状からなのか、太陽の光に照らされて、眩しいな」
「そうやな。言われてみれば、眩しいな。何か気になるん?」
「ちょっとだけ気になるけど、ま、いいわ。それにしても、綺麗な景色やわ。でも、萌美の方が綺麗やで!」
「ありがと~!ほんまに褒め上手やな!嬉しいわ!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、萌美が満面の笑顔で僕に言う。
「ねぇ、そろそろランチにしよっか。実は、お弁当を作って来てん!レジャーシートを持って来たから、座って食べよう!」
「うん!ありがと~!萌美の手作り弁当か~。めっちゃ美味しそうやな~!めっちゃ楽しみやわ~!」
二人で萌美手作りの弁当を美味しく食べ、少し休憩。
「そろそろ動こっか。これから、Z山の何処に行く?」
「そうやな~、Z山の何処に何があるのか、分からへんな。萌美は、Z山の地理に詳しい?」
「あんまり詳しくないけど、あなたよりは知ってるかな。少し下りて行って、手掛かりがありそうな場所を調べるか~」
「分かった。萌美を頼りにしながら頑張るで!」
二人で手を繋いでゆっくりと歩き出すと、いきなり鳥が僕と萌美に向かって物凄い勢いで飛んで来た。僕が何とか追い払い、二人で驚きながら再び歩き始め、少し下った所で、細い横道を見つけた。
「この道、めっちゃ狭いけど、行ってみる?」
「うん。萌美の提案通りに行くで!」
二人で細い横道に入り、歩き進む。暫く歩き進むと、ふと、萌美が足を止めた。
「萌美、急に立ち止まって、どうしたん?」
「ねぇ、あそこの森の奥の辺りに、二つの光が見える。動物の目かな。動物に襲われる前に、先制攻撃する?」
「確かに見えるわ。動物の目やわ。でも、先制攻撃は止めとこう。返り討ちに遭ったら、大変やし、こっちに向かって来たら、僕が絶対に萌美を守るで!」
「分かった。襲って来たら、頼りにしてるで!」
暫くの間、二人で動物の目を見ていると、ゆっくりと、その動物が、こっちに近付いて来た。その動物とは、初めて見る位、大きな猫。二人で待ち構える。とうとう、大きな猫が、僕と萌美の目の前に来た。少しの間、正対する。更に時が経ち、大きな猫は、向こうの方に歩き去って行った。
「あの猫、さっきの鳥と違って、私達を襲って来なかったね」
「そうやな。ま、襲って来なかったのは、いい事やし、前に進もう」
再び二人で歩き出す。大きな木や草花が、生い茂っていて、辺りは暗いが、雄大な自然に魅了されながら歩き進む。見た事ない蝶が、飛んでいたり、色鮮やかな虫が、大きな葉に止まっていたり、可愛いリスのような動物が、木の枝を走り回っていたりと、見ていて飽きない光景が続く。この暗い場所では、どの生き物も襲って来ない。
「今のところ、私達を襲って来たのは鳥だけやな。Z山に関する危険な話は、大袈裟なんかな」
「確かに、この暗い場所では、どの生き物も襲って来ないな。鳥が僕と萌美を襲って来たのは、たまたまなのかもな」
更に二人でどんどん歩き進むと、暗いエリアを抜け、太陽の光が眩しい場所に出た。手を繋いで、楽しくおしゃべりしながら、どんどん歩き進む。暫く歩いた所で、ふと、暗い場所で遭遇したのと同じ種類の、大きな猫が、僕と萌美の前に現れた。
「さっきと同じ種類の大きな猫がいるで。僕と萌美を襲って来る事は無いやろうし、素通りするで」
「オッケー。それにしても、全然可愛くない猫やな」
二人で大きな猫を気にせず、テクテクと歩き進む。大きな猫の横を通ろうとした、その時、びっくり仰天!なんと、大きな猫が、僕と萌美に、大きな鳴き声を上げながら、飛び掛かって来た。
「猫が襲って来た!さっきは襲って来なかったのに!」
「何や、この猫!萌美、屈んで!」
萌美がその場に屈み、僕が大きな猫に、思いっ切りキック!見事にヒットし、大きな猫が、痛がりながら鳴き声を上げ、地面に叩きつけられた後、向こうに走り去って行った。
「あの大きな猫が、襲って来るなんて、びっくりしたわ!」
「うん。びっくりしたわ!なんで今回は襲って来たんやろ」
グルッと周りを見回してみる。開けた風景で、自然豊かで、ポツリポツリと建物が見える。少し前に見た、高いビルのような建物も見える。その建物が、太陽の光に照らされて、光り輝いている。
「萌美、普通なら人を襲わへん動物が、Z山やと襲うという謎なんやけど、自分なりに考えが思い浮かんだんや。あの大きな猫、木や植物が生い茂ってる暗い場所やと、僕と萌美を襲って来んかったけど、太陽の光がある明るい場所やと、急に襲って来たやんか。あれは、太陽の光が、あの高いビルのような建物を照らして、めっちゃ眩しくなって、大きな猫が、その眩しさによって、めっちゃ大きなストレスを感じ、気が荒くなって、攻撃的になって、僕と萌美を襲って来たと思うんや。僕の考えが当たってたら、太陽の光がある明るい場所よりも、太陽の光がほとんど無い暗い場所の方が、動物が襲って来ず、安全という事になるんや」
「そういう事か!そんな事、全然思い付かんかったわ!」
「まぁ、ただ単に太陽の光に照らされるだけやったら、そんな狂暴化する事なんかないけど、あの高い建物が太陽の光に照らされると、あの高い建物の構造や材質によって、めっちゃ眩しく輝いて、それを見た動物が、凄まじいストレスを感じて、狂暴化して、人を襲うと思うんや」
「確かにそうやな。動物を狂暴化させて、何の為に建てられたんやろうなっていう感じやわ」
「そうやな。じゃあ、どんどん歩いて行こう!この先に、突然いなくなった村人を探し出す為の手掛かりがありそうな気がするわ」
「うん!あなたの直感、よく当たるし、ほんまに手掛かりを掴めそうな気がするわ」
二人で歩き進むと、ふと、急な下り坂に差し掛かり、二人で一緒にゆっくりと慎重に下って行く。地面が滑り易く、いつ転んでもおかしくない感じがする。どんどん下って行くが、まだ急な下り坂の半分を過ぎた、その時、後ろから動物の気配を感じ、振り返ると、見た目は可愛らしい猿のような動物が、僕と萌美をじ~っと見つめている。更に急な坂を下って行く。そろそろ平らな場所に着くと思った、その時、後ろから、猿のような動物が、一気に近付いて来た。
「萌美、先に行ってや!僕はあの猿みたいな動物を何とかするわ!」
「うん!分かった!気を付けてや!あなたの事、信じてるで!」
萌美が急いで急な下り坂を駆け下り、平らな場所に到着。猿のような動物が、僕に向かってジャンプし、僕が身構える。さっきまで可愛らしかった、猿のような動物の表情が、狂暴な表情に変わっていて、目を見開き、口を大きく開けている。手を振りかざし、僕が腕を使って防御。猿が僕の腕を引っ搔いた瞬間、僕が腕を大きく強く前に振り、猿のような動物が、衝撃で後ろに吹き飛ばされ、急な下り坂の地面に叩きつけられ、悲鳴のような鳴き声を上げながら、逃げて行った。
僕がやれやれといった感じで、急な下り坂を下り、萌美のところに到着。萌美が僕にぎゅ~っと抱き付いてきた。僕も萌美をぎゅ~っと抱き締める。
「私を守ってくれて、ありがと~!愛してるで~!」
「うん!無我夢中で猿のような動物と戦ったわ!僕も愛してるで!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。
唇をそ~っと離し、萌美が僕の腕を見て、心配そうに言ってきた。
「さっきの猿みたいな動物に、ちょっと引っ掛かれてしもうたんやな。血が出てるやんか」
「ほんまや~。まぁ、これ位、ほっといたら治るで」
「ダメやで!治療せんとあかんで!ちょっと待っていてや」
萌美がそう言うと、鞄から消毒液とガーゼと絆創膏を取り出し、ガーゼに消毒液を浸み込ませ、僕の傷口にポンポンと当て、傷口に絆創膏を貼ってくれた。
「はい!これで大丈夫!すぐに治るで!」
「ありがと~!萌美、用意いいな!」
「ウフフ。私を守る為に、勇敢に戦ってくれて、嬉しかったわ!」
二人で手を繋いで、楽しくおしゃべりしながら歩き進む。太陽の光が思いっ切り照りつける道が続くが、暫く歩き進むと、木や植物が生い茂っている森が、目の前に現れた。更に歩き進み、太陽の光がほとんど差し込まない森の中に入る。一気に辺りが暗くなり、たくさんの虫が飛んでいたり、歩いたり、止まったりしている。上空には鳥が気持ち良さそうに飛んでいて、時々、小さくて可愛らしい動物が見え、見た事ない植物や花が生えている。更にどんどん歩き進むと、ふと、萌美が立ち止まった。
「ねぇ、何か、怖い感じの鳴き声が聞こえへん?いかにも、恐ろしい動物って感じの鳴き声やわ」
「どうやろ。ちょっと耳を澄まして聞いてみるわ」
二人で静かにして、注意深く耳を澄ます。鳥や小さい動物の鳴き声が聞こえる。その中で、確かに、低音の迫力ある鳴き声が聞こえ、二人で顔を見合わせる。
「も、萌美!ほんまに聞こえるわ。しかも、段々大きくなってきてる感じがするで!」
「うん。同感。この鳴き声、やばそうやな。全速力で走る?」
「そうやな。止まっていても仕方ないし、全速力で走るか。ちゃんと萌美に合わせて走るから、心配せんでいいで」
「オッケー。あなたの足の速さに、頑張って合わせるようにするけど、限界があるし、そうしてくれるの、助かるわ~」
そんな会話をしていると、いきなり、鳴き声の主が現れた。なんと、初めて見る位、大きくて黒い熊!僕と萌美をじ~っと見て、興味津々という雰囲気を醸し出している。
「萌美!熊や!めっちゃでかい!これは、死んだふりする方がいいかもしれへんで」
「え~!そんな事をして、もし襲われたら、一溜まりも無いで!ここは、一目散に逃げるが勝ちやで!」
「そうやな。僕もそれがいいと思うわ。じゃあ、走るで!萌美は全速力で、僕は萌美に合わせて走るで!」
僕と萌美が、血相を変えて走り出す!そんな僕と萌美を見て、熊が物凄い勢いで追い掛けて来た。迫力ある鳴き声と足音が聞こえ、僕も萌美もビビりまくる。
―あかん!追い付かれそうや!そうや!いい事を思い付いた―
僕が近くに落ちている石を拾い上げ、思いっ切り投げた。石は熊の上を、物凄いスピードで飛んで行き、木の枝に当たり、木の枝が折れ、ポッカリと隙間が開き、そこから、強烈な太陽の光が差し込んで来た。強烈な太陽の光を浴び、熊の動きが止まる。その隙に、二人で全速力で走り、何とか逃げ切った。
「何とか逃げ切れたね。なんで石を熊に投げずに、木の枝に向かって投げたん?」
「それはね~、逆転の発想やで!石を熊に当てたところで、一瞬動きが止まるだけで、すぐに復活して、襲って来ると思ったんや。咄嗟の判断やけど、Z山では、普段人を襲わへん動物が、強烈な太陽の光によって、狂暴化して、人を襲うんやから、逆に、普段人を襲う動物は、強烈な太陽の光によって、大人しくなると考えて、石を木の枝に向かって投げて、木の枝を折って、強烈な太陽の光を差し込ませたんや」
「なるほど!めっちゃ冴えてるね!凄過ぎるわ!」
「褒めてくれて、ありがと~!嬉しいわ!じゃあ、熊の脅威は去ったし、引き続きどんどん歩いて行こう!」
二人で手を繋いで、更に歩き進み、暗い森を抜け、再び太陽の光に照らされた。更にどんどん歩き進むと、だだっ広い土のグラウンドのような場所に着いた。
「ちょっとこのグラウンドが気になるわ。歩き回ってみよう」
「うん。あなたの直感、よく当たるし、何かありそうやな」
二人で手を繋いで、ゆっくりと歩き回る。割としっかりとした地面で、変わったところは無い。
「萌美、ここには何も無さそうやし、そろそろ行くか」
「うん。次に何処に行くかを考えながら、先に進むか~」
二人で手を繋いで、同時に足を踏み出した、その時、なんと、突然、地面にヒビが入り、あっという間に、地面が無くなり、大きな穴が開いた。僕も萌美も、穴に吸い込まれるように落ちて行く。
「キャ~!」
「うわ~!萌美~!」
二人で叫びながら、落ちて行く。穴の底に達する直前、僕の脳裏にある、萌美を守るという強い意志が働き、萌美の身体の下に潜り込み、穴の底に叩きつけられた。萌美の身体は、僕の身体の上にあり、僕の身体が、クッションのような役割を果たし、萌美は怪我一つ無く、無事。僕は穴の底に叩きつけられた衝撃で、その場にうずくまった。
「大丈夫?私をかばって、私の下敷きになってくれたんやね。ありがとう。ごめんね。怪我しちゃったかな?」
萌美が、目に涙を浮かべながら、僕にそう言って、僕の頭を太腿に乗せる。少し時間が経ち、僕の痛みが落ち着いてきた。
「萌美、何とか守れて良かったわ。穴の底に叩きつけられた時は、痛かったけど、だいぶ痛みが落ち着いたわ。大丈夫やで」
「良かった!一時は、どうなるかと思ったわ!でも、痛かったでしょ?私を守ってくれて、ありがとうね!愛してるで!」
「うん!僕も愛してるで!それにしても、こんなに大きな穴が突然開くなんて、よっぽどの原因があるはずや。穴を上るの、大変そうやし、ちょっとの間、休憩がてら、穴の壁面を調べていい?」
「うん。私も微力ながら、協力するわ」
二人で穴の壁面をじ~っと見て調べる。時々壁面を指で触り、どんな色や質なのか考える。何回も繰り返していると、ふと、萌美が僕に言ってきた。
「この穴の中、土にまみれてる割には、変な臭いはせぇへんけど、穴の中にいるってのは、気分的に良くないよね」
「そうやな。そろそろ頑張って上って、穴から出よっか」
そんな会話の後、僕がはっと気づく。
「も、萌美!今、変な臭いはせぇへんって言ったよな。調べたい事があるんや。待ってもらっていい?」
「うん。私の発言で、何か気付いたようやね。嬉しい気分やわ」
僕が穴の壁面を指でなぞり、指に付いた物質を真剣に見る。暫くの間、じっくりと見て、僕が確信を持って萌美に言う。
「萌美!こんなに大きな穴が突然開いた原因が分かったで!この辺りの土壌には、石灰岩がいっぱい含まれてるんや。石灰岩があまりにも多いと、シンクホールっていって、突然穴が開く事があるんや!外国では、シンクホールによって、鍾乳洞ができた例もあるんや」
「シンクホールか~!全然知らんかったわ!頭いいな~!」
「褒めてくれて、ありがと~!これから、ああいう場所を歩く時は、気を付けながら歩かなあかんわ。さぁ、頑張って上に上がるで!」
「うん!頑張るで!」
二人でゆっくりと穴の壁面を上って行き、穴の上に到着。
「着いた~!次に何処に行くかやけど、この突然大きな穴が開く現象、Z山のいろんな場所で起こる可能性があるんやろうし、もしかしたら、突然いなくなった村人は、突然開いた大きな穴に落ちてしまったかもしれへんと思うんや。だから、この現象が起こりそうな場所に行けば、突然いなくなった村人が落ちた大きな穴に、出くわすかもしれへんで。萌美が知ってる限りでいいから、こういう土のグラウンドみたいな場所に、どんどん案内してや!」
「うん!分かった!それ、名案やわ!」
二人で意気揚々と歩き進んでいると、ふと、萌美が言ってきた。
「この先、暫く歩いた所に、土のグラウンドのような場所があると思うで。あと少しで着くけど、その場所の前に、地面に亀裂が入ってる所があって、危険やねん。でも、そこを超えんと、その場所には行けへんねん。どうする?」
「亀裂が入ってる所か~。勿論行くけど、どんな亀裂なん?」
「う~ん、ジャンプで越えられる位の大きさなんやけど、万が一、ジャンプに失敗して、亀裂に落ちたら、どうなるか分からへんねん」
「分かった。どんな亀裂なんやろ~。ドキドキしてきたわ」
二人でどんどん歩き進んで行くと、萌美が言っていた、地面に亀裂が入っている所に到着。二人で亀裂をまじまじと見る。
「萌美、確かに、ジャンプで簡単に越えられる亀裂やけど、めっちゃ深い亀裂やな。万が一、躓いて、亀裂に落ちたら、この深さやと、死ぬかもしれへんな。萌美がこの先に行きたくないなら、ここで引き返してもいいで」
「大丈夫!一緒に行くわ!勇気を出して、ジャンプするわ!もし私が亀裂の中に落ちそうになったら、助けてや!」
「うん!大丈夫やで!萌美が亀裂の中に落ちそうになったら、絶対に助けるで!ジャンプする前に、亀裂の前後にある地面を、観察してみるか」
「うん。何か分かったら、ジャンプする勇気が増すやろうな」
二人で亀裂の前後の地面をじ~っと観察するが、変わった点は見当たらない。
「別に変わった点は無さそうやし、ジャンプするけど、大丈夫?」
「大丈夫やで!勇気を出してジャンプするしかないわ!」
その時、ふと、僕が気付いた。
―あれ?亀裂の前後の地面の色、微妙やけど、他の地面の色と、違うなぁ。その中でも、この部分は、他の地面の色と同じやな―
亀裂の前の様々な場所の地面を触ってみる。そして、確信する。
「萌美、この亀裂の事が分かったで!この亀裂は、後でできたんじゃなくて、元々は、もっと大きな崖やったんや。それが、どんどん土が堆積していって、今の亀裂の姿になったんや!根拠は、地面の微妙な色の違いと、わずかな固さの違いや!固い地面の色は、黄土色っていう感じの色やけど、ちょっと柔らかい地面の色は、赤褐色っていう感じの色やわ!だから、この黄土色っていう感じの色の地面で助走してジャンプしたら、間違いなく、向こう側に行けるわ!」
「なるほど!確かにそうやな!めっちゃ冴えてるね!一気にジャンプする勇気が出て来たわ!」
「うん!ありがと~!まずは、僕がジャンプするわ」
まずは僕が助走を付け、一気にジャンプ!悠々と向こう側に着地し、萌美を激励する。
「萌美~、余裕やで!自信を持ってジャンプしてや!」
「うん!ありがと~!行くで~!」
萌美が助走を付け、思いっ切りジャンプ!亀裂を越え、僕のところに着地し、僕に抱き付く。萌美の勢いに、僕が少し後ろによろめいたが、しっかりと萌美を支え、僕も萌美を抱き締める。
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を濃厚に重ね合わせ、舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。唇をそ~っと離し、僕が笑顔で萌美に言う。
「じゃあ、土のグラウンドのような場所、目の前にあるし、行くで!」
「うん!あなたの直感、よく当たるし、手掛かりが見つかるやろ~」
二人で手を繋いで歩き進み、土のグラウンドのような場所に到着。
「萌美、この土のグラウンドのような場所、めっちゃ広いな!大きな穴が開きそうな雰囲気を感じたら、すぐに逃げなあかんで」
「うん!あなたと一緒にいてると、安心感があるわ!」
二人で手を繋いで、ゆっくりと慎重に歩きながら、土のグラウンドのような場所の地面を調べる。どんどん歩き回るが、変わった点は無く、大きな穴が開きそうな感じもしない。そろそろ別の場所に行こうかという感じになり、グルッと見回すと、ふと、僕の目に、気になるところが入った。
―ん?あの場所、下り坂になっていて、向こう側に窪みがある感じがするなぁ―
「萌美、行く前に、あの下り坂になってる場所を調べてみよう!そこに変わった点が無ければ、次の場所に行こう!」
「オッケー。直感がビビッと働いたんやね!」
二人で手を繋いで歩き、下り坂になっている場所に到着。慎重にゆっくりと下りながら、見て回る。暫く歩き進めると、僕も萌美も驚愕。なんと、下っている所に、大きな穴が開いている。
「も、萌美!大きな穴が開いてるわ!これも、シンクホールやで!この大きな穴に、突然いなくなった村人が、落ちてしもうたんかもしれへんで!」
「うん!変わった点があった時点で、あなたの直感が当たってるわ」
二人でゆっくりと大きな穴を下りて行く。さっき僕と萌美が落ちた穴よりは小さい穴だが、それでもある程度の深さがあり、足を滑らさないように気を付けて下りる。暫く下りて行き、穴の底に到着。穴全体を見回すが、特に気になる点は無い。手でなぞって土壌を調べると、やはり石灰岩が含まれているのが分かり、シンクホールだと確信する。
「萌美、やっぱりこの土壌にも、石灰岩が含まれてるわ。シンクホールで間違いないわ。ただ、この大きな穴が開いてから、再び土が崩落したという事は、この土壌の質から考えると、無さそうやわ。突然いなくなった村人が、ここに生き埋めになってる事は無いと思うけど、念の為、警察に電話して、調べてもらえるようにお願いしてみるわ。やる気の無い警察やけど、さすがに、人の命に関わる事やし、動いてくれるやろ」
「そうやね。さすがに、今回は警察が動いてくれるやろ」
僕がスマホを取り出し、Z村の警察署に電話すると、男性警察官が電話に出た。
「はい。警察です。どのようなご用件でしょうか?」
「私、昨日そちらに伺わせて頂きました、突然姿を消した村人を探し出す為に、Z村に来ている者なんですが、実は、今、Z山に来ておりまして、地面に開いた大きな穴を調べているところなんですが、大丈夫やとは思うんですけど、突然いなくなった村人が、生き埋めになってる可能性が、ゼロではないと思って、警察に協力をお願いしたくて、電話しました。今からこっちに来て、この大きな穴に、いなくなった村人が生き埋めになってないのを確認する為、調べてもらえませんか?」
「そうなんですか。ご用件の内容は分かりました。少々お待ち下さいね」
保留音が鳴り、暫くの間、待っていると、先程の警察官が再び話し始めた。
「申し訳ございませんが、そんな穴に、村人が落ちるはずがないという判断になりまして、警察は動けません」
警察官からの耳を疑う返答に、僕が憤る。
「はぁ?たぶん大丈夫やと思うけど、人の命が懸かってるんやぞ!もし生き埋めになってたら、どうするんや!さっさと来てくれや!」
「そう言われましても、上司に相談して、出た結論です」
「うるさい!早く来てくれや!」
僕の電話での声を聞き、萌美も憤り、僕に言う。
「ちょっと、私も言いたい事あるから、電話代わってや!」
「うん。言いたい事言っていいけど、言い過ぎたらあかんで」
「分かってるって。でも、言いたい事は言わせてもらうわ」
僕がスマホを萌美に手渡すと、萌美が鬼の形相になり、一気にまくし立てる。
「おい!突然いなくなった村人が、生き埋めになってるかもしれへんねんぞ!昨日そっちに行った時も、全然動いてくれへんかったし、今回の、突然いなくなった村人の事について、何人もの人が警察に相談したけど、全然取り合ってくれへんやんか!さっさと来いや!」
「あんまり滅茶苦茶な事を言ってると、あなたを逮捕しますよ」
「お前、なめとんか!逮捕できるもんなら、してみろや!」
僕が大慌てで、電話を萌美から取り上げ、警察官に謝罪する。
「申し訳ございませんでした!さっきの女性、悪気は無かったんですけど、めちゃくちゃ興奮して、我を忘れてしまい、言い過ぎてしまいました。許してやって下さい」
「私の態度も素っ気なかったと思いますし、反省して頂いてるなら、こちらとしては大丈夫です」
「はい!ありがとうございます!それでは、失礼します」
僕が電話を切り、萌美の方を向いて言う。
「萌美、言い過ぎた面はあったけど、警察に、物凄い勢いで言いたい事をいっぱい言いまくってくれて、スッキリしたわ!」
「あはは。言い過ぎちゃったけど、私もスッキリしたわ!」
「うん!まぁ、突然いなくなった村人が、生き埋めになってる事は無さそうやけど、僕と萌美で、出来る限り土を手で掘って、念の為、確認しとこっか。何か手掛かりが見つかるかもしれへんし」
「うん!あなた程は掘れへんと思うけど、一生懸命頑張るで!」
二人で手を使って、穴の土を掘っていく。石灰岩が混ざっていて、掘りにくく、怪我しないように注意しながら掘り進めるが、変わった物は何も出て来ない。
「萌美、結構いっぱい掘ったけど、変わった物は何も出て来ないな。そろそろ穴から出て、次の場所に行くか」
「うん。それでいいで」
二人で大きな穴から出る為に、上ろうとした、その時、僕が、ある物に気付いた。
「萌美、あっちに、光ってる物があるから、掘り出して、確認するわ。ちょっと待っていてや」
「うん。突然姿を消した村人を探し出す手掛かりになるかもね」
二人でゆっくりと歩き、光っている物の前に立つ。よく見ると、光っている物は二つある。慎重に手で周りの土を掘っていき、二つの光っている物が、どんどん姿を現す。更に掘り進め、慎重に二つの光っている物を取り出す。見ると、ペアのブレスレット。
「これ、有名なペアのブレスレットやで!夫婦やカップルが付ける物やで!持ち主、間違いなく夫婦かカップルやわ!」
「僕もそう思う。実は、考えてる事があるんや。Z山で突然いなくなった二人の村人って、恋人同士やと思うんや。Z山に行っていなくなった女性の家に行った時、写真を見たけど、その写真に写ってた男性って、その女性の彼氏という事やけど、たぶん、その人は、Z山でいなくなった男性で、その二人が、一緒にZ山に行って、いなくなってしまったんやと思う。その女性がスマホでやり取りしてた相手が、その彼氏である男性で、男性に強く言われて、Z山に一緒に行ったんやろうな。このペアのブレスレットを見て、ほぼ確信したわ」
「なるほど!それで合ってと思うで!さすがやわ!尊敬するわ!」
「そんなに褒めてくれて、嬉しいわ。ブレスレットを穴の中で落としたんなら、突然穴が開いて、落ちてしまったんやろうな。でも、ブレスレットが二つあったって事を考えると、落ちた衝撃とはいえ、二人共ブレスレットが外れたなんて、考えづらいし、大切な物なんやから、必死になって探すと思うんや。僕と萌美が見つけられたんやし、必死になって探したら、見つけられたと思うんや。だから、たぶん、上からわざと穴の中にブレスレットを落としたんやと思う。もしそうなら、なんでそんな事をしたんかな」
「なるほど!あなた、ほんまに凄いわ!この短い時間で、こんなに核心を突いた事をいっぱい考え付いて、驚きやわ!」
「ありがと~!じゃあ、手掛かりを得られたし、この大きな穴から、上に上がろう」
二人で上に上がり、次に行く場所を考える。
「次は何処に行く?何処か行く当てはあるん?」
「行きたい場所は無いし、段々暗くなってきたし、そろそろZ山を下りる方がいいかな」
「そうやな。そろそろ下りよう。そろそろ菜摘が仕事終わる時間になるし、菜摘と合流して、今夜は三人でうちの旅館でワイワイ楽しく過ごすで!」
「うん!今日も手掛かりを得られたし、三人で楽しく過ごせるで!」
二人で手を繋いで、楽しくおしゃべりしながら、Z山をどんどん下りて行くと、ふと、僕が気になる物を発見。
「萌美、あそこにあるのって、もしかして、風車?」
「ほんまや!風車や!噂には聞いてたけど、ほんまにあるんやな!私も、初めて見たわ!」
「萌美も、初めて見たんやな。どんな噂なん?」
「Z山の風車は、誰が作ったのかは分からへんけど、ある芸術家の所有物で、たまにその芸術家が、その風車で何か活動してるっていう噂やねん。でも、風車としての役割は果たしてへん感じやし、その芸術家が誰なのか、私は知らへんし、勿論、その人が風車でどんな活動をしてるのかも知らへんし、見た目がちょっと不気味やし、謎が多い風車やで!」
「興味深い風車やな。近くに行って、ちょっとだけ見てもいい?」
「うん。またあなたの直感が発動したんか~」
二人で歩いて風車の近くに到着。辺りがちょっと暗いだけに、風車が余計に不気味に見える。周りをグルッと歩き、風車を観察すると、入口らしきドアがある。
「今、この風車の中に、その芸術家がいるかもしれへんな。インターホンは無さそうやし、中に入る為には、このドアをノックして、中に人がいたら、その人にドアを開けてもらって、中に入るという事になるな。中に人はいないと思うけど、ノックしてみようか?」
「私は決められへんわ。あなたの判断に従うで」
「う~ん。結構遅い時間になってしもうたし、僕も萌美も、この風車に関する情報に乏しいし、今日、菜摘に会って、いろいろ話を聞いてから、明日、改めてこの風車に来よっか」
「それでいいで。じゃあ、帰ろう!うちの旅館での楽しい時間が待ってるで!」
二人で手を繋いで歩き出した、その時、僕の目に、風車よりも更に不気味に見える井戸が入った。
「萌美、あの井戸は何やろ。風車よりも不気味に見えるわ」
「分からへんな~。風車の噂は聞いた事あるけど、井戸の噂は聞いた事ないな。辺りがどんどん暗くなってきてるし、不気味に見えるな。まさか、今から井戸の中を覗き込みたいなんて、言い出さへんやろうな」
「この薄暗い時間帯で、あの井戸の中を覗き込むのは、不気味過ぎるわ!今は止めとこう。明日、改めて来る時、覗き込むか」
「それでいいで~!さぁ、うちの旅館に帰ろう!」
「オッケー!ところで、今日の晩御飯は何?」
「猪鍋やで!猪の肉、食べた事ある?」
「猪鍋か~!食べた事ないわ!楽しみや!」
二人で手を繋いで歩き出した、その時、僕が何かの気配を感じ、振り返ったが、人も動物もいない。
「どうしたん?誰か後ろにいたん?」
「いや、誰もおらへんし、動物もおらへんわ。何かの気配を感じたんやけど、気のせいやったみたいやな」
二人で手を繋いで、楽しくおしゃべりしながら歩き進む。風車と井戸から、長い距離ができ、僕も萌美も、風車と井戸の事を考えなくなり、談笑しながらどんどん歩き進み、菜摘と合流。三人でベチャクチャ話しながら歩き進む。
「明日は、休みを取れたから、私も一緒に、彼氏も含めた突然いなくなった村人を探し出す為に、必死に頑張るで!」
「明日、菜摘も一緒に探してくれるんやな!心強いわ!」
「私も、明日一緒に探し出すのを一生懸命頑張るで!」
「うん。じゃあ、萌美の旅館に行こっか。歩きながら、今日起こった出来事を話すわ。特に、Z山での出来事は、衝撃的な内容やで!菜摘に聞きたい事もあるし」
「は~い!私の知ってる事、全部話すで」
三人で萌美の旅館に向かって、どんどん歩き進める。歩きながら、今日起こった出来事を菜摘に説明し、菜摘が驚きながら、真剣な表情で聞き入る。僕から菜摘への説明が完了し、続いて、僕から菜摘に、聞きたい事を尋ねる。
「菜摘、菜摘に聞きたい事があるんや。Z山に、芸術家が所有してる風車があって、今日、萌美と一緒に、たまたまその風車を見たんやけど、その芸術家って、どういう人なのか、知ってる?その風車は、誰が作ったんかな?それに、ちゃんと風車の役割を果たしてるんかな?それと、近くに井戸があったんやけど、今日は、時間が遅くて暗くなってしもうて、中を覗き込めへんかったんやけど、明日、明るい時間に、井戸の中を見てみようと思ってるんや。井戸について、何か知ってる事ある?それで、明日、風車の中を見たいと思ってるんやけど、風車のドアをノックしたら、その芸術家、出て来てくれるかな?」
「風車ね~!噂で聞いた事あるけど、確かに、その風車、芸術家が所有してるで。その芸術家は、リアルな人の顔を描いた人形を作ってる人らしくて、全国各地のいろんな展覧会で、その人の作品が展示されてるらしいわ。それで、風車を作った人に関してやけど、チラッと聞いた話では、Z村として、最初は村のシンボルになるかなと期待して、上手くいけば、風力発電なんて出来るかなと考えて、この風車を作ったらしいんやけど、いざ作ってみると、Z山が危険という噂が広まってしまった事もあり、風車が村のシンボルの役割を果たす事は無く、風車をどうしようか困ってる時に、今の所有者である芸術家が、購入すると名乗りを上げて、所有するようになったんや。その芸術家が、風車をどう活用してるのかまでは、知らへんけどね。井戸については、私もほとんど知らへんけど、不気味な噂を聞いた事があるわ。その井戸には、人の死体が沈められてるとか、妖怪やお化けが住んでるとか、そういう噂や。まぁ、噂は別にしても、得体の知れへん、不気味な井戸という事は、間違いなさそうやわ。明日、明るい時間に、井戸の中を覗き込むんやな。あなたと萌美が、井戸の中を見るなら、怖いけど、私も勇気を出して、見るわ!それで、明るい時間に、風車のドアをノックするという事やけど、その芸術家は、いつ風車の中にいるのか、さっぱり分からへんし、夕方や夜よりは、朝や昼の方がいそうやなという感じがするから、いいと思うで!」
「分かった。いろいろ教えてくれて、ありがと~!」
「さぁ、今日は、うちの旅館で、決起大会や~!」
三人で談笑しながら、どんどん歩き進み、萌美の旅館に到着。
「ウフフ、実は、今日、部屋が満室で、あなたの部屋で、私とあなたと菜摘の三人で泊まるで!仲良し三人組やし、大丈夫やで!」
「萌美とあなたと一緒に泊まれるんや~!私は大歓迎やで!」
「萌美と菜摘と一緒に泊まれるんや!ドキドキするわ!」
三人で僕の部屋に入ると、菜摘が大はしゃぎ。
「この部屋に、三人で泊まるんやな!三人で一緒に写真撮ろうや!仲良し三人組、いい写真が撮れそうやわ!」
「いいね~!菜摘が撮るんやな!腕の見せ所やで!」
三人でピッタリとくっつき、満面の笑顔を作る。萌美と菜摘の大きなおっぱいが、僕にムニュッと当たり、僕が最高の笑顔になる。菜摘が、撮れた写真を僕と萌美に送信してくれた。
「じゃあ、晩御飯まで、まだ時間あるし、大浴場に行って、温泉にゆっくり浸かって、部屋に戻って、晩御飯を食べるで!猪鍋、楽しみにしていてね!」
「うん!猪鍋、初めて食べるし、楽しみや!」
「は~い!温泉にゆっくり浸かって、美味しい猪鍋を食べて、最高に贅沢やな!」
大浴場に行って温泉を満喫し、僕の部屋に戻り、少しの間、寛いでいると、萌美が満面の笑顔で言ってきた。
「そろそろ、晩御飯を取りに行って来るわ!」
「萌美一人で運ぶの、大変やろうし、僕も運ぶのを手伝うで」
「そうやで。私も一緒に晩御飯運ぶで」
「いいで~。私、この旅館の経営者の娘やし、これ位の事、ちゃんとするで!二人で談笑しながら、待っていてや!」
「うん。楽しみにしながら待ってるわ~」
「うん。ちゃんとこの人に手を出さずに待ってるで」
萌美が部屋から出て、晩御飯を取りに行った。部屋には僕と菜摘の二人だけになり、少しドキドキする。
「ウフ、今、部屋には、私とあなたの二人だけ。さっき、萌美には、あなたに手を出さへんって言ったけど、あなたが私に手を出すのは大丈夫なんやで!」
「手を出していいなんて言ってくれて、嬉しいわ!手を出しちゃおっかな~」
「キャ~!私、ほんまに手を出されるのか~!いいで~!私をメチャクチャにして~!」
―冗談っぽく言ったつもりやのに、菜摘、めっちゃノリノリやな。ほんまに手を出していいんかな―
僕が少し躊躇していると、菜摘が笑いながら僕に言ってきた。
「あはは。あなた、めっちゃ可愛いわ!顔が緊張しまくりやで。私に焚きつけられたからって、無理せんでいいで!」
「無理なんてしてへんで!馬鹿にせんといてや!いくで~!」
「キャ~!いよいよ手を出される~!私をメチャクチャにしていいで~!」
僕が菜摘に近付き、菜摘を抱き締める為に、菜摘の背中に腕を回した、その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「うわっ!」
僕が変な声を出し、パッと腕を引っ込め、ドアのところに行き、ドアを開けると、萌美が満面の笑顔を浮かべながら、猪鍋もある三人分の晩御飯を運んで来た。
「晩御飯を運んで来たで!さぁ、モリモリ食べよう!」
「晩御飯を運んで来てくれて、ありがと~!楽しみやわ~!」
「ウフフ、まさか、イチャイチャなんてしてへんよな?」
「当ったり前やんか!萌美という、めっちゃ綺麗でセクシーな彼女がいるのに、他の女性にちょっかいなんか出さへんわ!」
「じゃあ、晩御飯食べよう!猪鍋、めっちゃ美味しいで!」
三人で猪鍋を美味しく食べ、いろんなお酒を飲みまくり、すっかり酔っ払って大満足。
「料理もお酒も、めっちゃ美味しかったし、最高~!お腹いっぱいやわ!暫くは動けへんわ。後片付けしたら、三人で布団にごろ~んと寝転がろうや!」
「うん!そうしよう!僕もお腹いっぱいやわ!寝転がってから、大浴場に行くか~!」
「そうやな~!私もお腹いっぱいで、動けへんわ!後片付けして、布団にごろ~んと寝転がって、温泉に行くで~!でも、温泉は温泉でも、貸切露天風呂に行くで!三人で一緒に入るで!」
「え!僕と萌美と菜摘で、一緒に貸切露天風呂に入るの~!めっちゃ驚いてるで!萌美はともかく、菜摘、僕と一緒に貸切露天風呂に入って、いいの?」
「私も今、萌美から聞いて、めっちゃ驚いてるけど、楽しそうやし、勿論いいで!でも、萌美、この人が、私の裸を見ていいん?」
「裸でイチャイチャするのはあかんけど、一緒に裸で貸切露天風呂に入るのは、いいで!」
「分かった!これで、安心して、一緒に貸切露天風呂に入れるわ!」
「お~!三人で一緒に貸切露天風呂に入るんやな~!めっちゃドキドキしてきたわ!」
三人でテキパキと後片付けをして、三人分の布団を敷き、ごろ~んと寝転がる。三人分の布団を敷いているが、結局、真ん中に敷いた布団に、三人で寝転がる。僕が真ん中、左側に萌美、右側に菜摘という並びで、ごろ~んと寝転がる。ふと、萌美を見ると、いつの間にか気持ち良さそうに眠っている。
「ねぇ、萌美、寝てるで。今が私と愛し合うチャンスやで!」
「僕にも菜摘にも、恋人がいるのに、僕と菜摘が愛し合っていいんかな?ほんまはあかん事やろ」
「そんなん気にせんでいいで!大切なのは、気持ちや!あなたはどうしたいの?」
「今は、そりゃ、菜摘と愛し合いたいわ」
「それなら、思うがままに動けばいいやん。私も、今は、あなたと愛し合いたいで!」
「分かった。もうこの気持ち、抑えられへんわ!」
二人でじ~っと見つめ合う。菜摘が目を閉じ、口を少し開ける。僕が唇を菜摘の唇にどんどん近付ける。僕の唇が菜摘の唇に重ね合暫くの間、濃厚にディープキス。舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。そのままの勢いで、熱く激しく気が狂ったように無我夢中でひたすら濃密に愛し合いまくった。
僕と菜摘が余韻に浸っていると、萌美が動き始め、少しだけ、萌美の声が聞こえた。二人で大慌てで、体勢を立て直した直後、萌美がまだ眠そうに目を覚ました。
「すっかり寝ちゃってたわ!あなたと菜摘は、ずっと起きてたの?」
「萌美、おはよう。僕もさっきまで寝てたわ。目を覚ました時、萌美も菜摘もまだ寝ていて、先に菜摘が目を覚ましてから、すぐ後に、萌美が目を覚ましたわ」
僕がそう嘘を言った後、菜摘の方を向き、アイコンタクト。直後に、菜摘が微妙な笑顔で萌美に言う。
「うん。そうやで。私もついさっき目を覚ましたとこやねん。私が目を覚ました時、この人は既に起きていて、すぐ後に、萌美が目を覚ましたんやで」
「そうなんや~。私達三人、よく寝てたんやな。あ、もうこんな時間や!早く貸切露天風呂に行こう!時間が迫ってるわ!」
「そうや!貸切露天風呂や!三人で入るの、ドキドキするわ!」
「ウフフ、そうやね。貸切露天風呂に三人で入るの、楽しみやわ!」
三人で布団から起き上がり、テキパキと用意を済ませ、部屋から出て、貸切露天風呂に向かい、到着。
脱衣所で僕も萌美も菜摘も裸になり、僕の目が萌美と菜摘の裸に釘付けになっていると、萌美と菜摘が色っぽく笑い、僕のドキドキ感がどんどん高まる。三人で貸切露天風呂の温泉に入り、ドキドキしながらも、楽しくおしゃべりして過ごし、幸せな時間が流れる。
「セクシー美女と一緒に温泉に入れて、めっちゃ幸せやわ!ところで、萌美、なんで僕と萌美と菜摘の三人で貸切露天風呂に入る事にしたの?確かに、気持ちいい温泉で楽しく過ごしてるけど、僕と萌美、付き合ってるんやし、僕が菜摘の裸を見て、平気なん?」
「やっぱり気になってたんやね。確かに、菜摘、私に勝るとも劣らず、セクシーやもんね。平気とちゃうけど、あなたが菜摘の裸を見て、どんな感じになるのかを確かめたかったんや。今のところは、菜摘より私の方を見てくれてるし、愛されてるって思えるわ」
「そんな事を考えてたんやな。合格っていう感じで、ほっとしたわ」
「へ~!私の裸をこの人が見て、どれ位興奮するか、見てみたかったんやな~。びっくりしたわ~!私の裸をこの人が見て、嫌やったやろうし、そこまでして、確かめたかったなんて、よっぽどこの人の事、好きなんやな!私の行動次第で、この人、萌美よりも私に対して夢中になるかもよ~」
「ちょっと~、菜摘、変な事しないでね!もう確認できたし、後は、皆でおしゃべりしながら温泉を満喫しよう!」
三人でゆっくりと温泉を堪能する。萌美からは合格を貰ったが、菜摘の裸も気になり、どうしてもチラチラと見てしまう。萌美の身体も当たるが、菜摘がどんどん身体をくっつけてきて、興奮するが、何とか我慢する。
時間になり、温泉から上がり、僕の部屋に戻る。暫くの間、三人でワイワイ楽しくおしゃべりしながら過ごし、少し眠くなってきた菜摘が、笑顔で口を開く。
「眠くなってきた~。布団に寝転がるわ。そのまま寝ちゃうかもね」
「うん。おやすみ~。明日、頑張ろうな~」
菜摘が布団に仰向けになると、すぐに眠り出した。僕と菜摘は、暫くの間、楽しくおしゃべりして過ごし、寝る準備を整え、布団にごろ~んと寝転がった。
「じゃあ、明日頑張ろうね。おやすみ~」
「うん。萌美と菜摘と一緒やし、頑張れそうやわ!おやすみ~」
僕も萌美も、目を閉じる。徐々に、僕が眠気に誘われる。もうそろそろ、本格的に寝そうになった、その時、萌美が僕に言ってきた。
「ねぇ、まだ起きてる?ちょっと聞きたい事があるんやけど」
「うん。まだ起きてるで。どうしたの?」
「あなた、私が寝てた時、菜摘と何してたの?実は、途中から声を聞いてたんや。怖くて、見れんかったけど」
「え!声を聞いてたって、どの辺から聞いてたの?」
「あなたが菜摘とイチャイチャしてるのかなってところからや」
「イチャイチャなんかしてへんで!僕が愛してるのは、萌美だけやで!信じてや!」
「ふ~ん。完全には信じられへんけど、まぁいいわ。貸切露天風呂から、私、めっちゃ色っぽい気分になってんねん。あなたが菜摘にした事よりも、はるかに物凄い事を、私にしてや!熱く激しく私を愛しまくって!愛してるで!」
「うん!分かった!ありがと~!めっちゃ嬉しいわ!萌美、めっちゃ愛しまくるわ!愛してるで!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。色っぽい雰囲気のまま、二人で熱く激しく時間が経つのを忘れて燃えまくりながら無我夢中でひたすら愛し合いまくった。
二人で布団に横たわり、ぎゅ~っと強く抱き締め合いながら、余韻に浸っていると、いつの間にか心地良い気分で眠りについた。
どれ位時間が経っただろうか。僕も菜摘も、気持ち良く眠っている。萌美は、ふと、布団から起き上がり、トイレに入り、誰かに電話をかけ、ヒソヒソ声で話す。真剣で深刻な会話が繰り広げられている。長い時間、電話で話し、漸く電話を切り、再び布団に入り、眠っている僕にギュッと抱き付き、そのまま眠りについた。
翌朝、僕が目を覚ますと、菜摘はまだ眠っていて、僕と萌美が、抱き締め合っている。萌美と菜摘を見ると、可愛い寝顔で眠っている。萌美にチュッとキスすると、萌美がゆっくりと目を開け、濃厚にディープキスしている最中、いつの間にか菜摘が起きていた。
「おはよ~!お二人さん、朝から熱いね~!」
「な、菜摘、おはよう。起きてたんやな。びっくりした~!」
「ウフ、菜摘、おはよ~!菜摘も一緒にイチャイチャしようよ!」
「いいの~?じゃあ、私も参加しちゃお~っと!」
菜摘も加わり、暫くの間、三人で身体をくっつけながら、イチャイチャして過ごし、萌美が朝御飯を取りに行った。
菜摘と二人きりになり、今度は菜摘と愛し合っていると、ドアをノックする音が聞こえ、愛し合うのをストップし、僕がドアのところに行き、ドアを開けると、三人分の朝御飯を運んで来た萌美が、満面の笑顔で立っていた。
三人で和食中心の朝御飯をテーブルに並べ、どんどん美味しく食べ進めている時、僕が説明を始める。
「萌美、菜摘、今日は、昨日ちょっとだけ行った風車と井戸に行くで。井戸の中をしっかりと見るで!風車の中に入って、所有者の芸術家と会えればいいんやけどな~」
「うん。それでいいで。井戸の中を見るの、緊張するわ~!」
「私も賛成!いい手掛かりを掴めそうな気がするわ~!」
再びどんどん美味しく食べ進め、一気に完食。後片付けを済ませ、外出の準備を整え、旅館を出て、三人で意気揚々とZ山に向かって歩き進み、Z山に到着。暫く上って行くと、風車が見えてきた。風車の近くに、昨日は中を覗き込めなかった井戸がある。井戸に向かって歩き進み、井戸の前に到着。
「いよいよ井戸の中を覗き込むで!誰が最初に見る?僕が見よっか?それとも、三人で一斉に見る?」
「あなたが最初に見て!と言いたいとこやけど、三人で一斉に見るか~!怖い事は、サッサと済ませたいし!」
「私も賛成!あなたと萌美と一緒に見る方が、怖くなさそうやし」
三人で一斉に井戸の中を覗き込む。井戸の中は暗くて、目が慣れるのに時間がかかる。
「暗くて何も見えへんな~。下の方に、微かに何か見えるような気もするんやけどな~。スマホのライトで照らしてみるか~」
僕がスマホを取り出し、ライトをつけ、井戸の中を照らしてみる。さっきよりは、井戸の中が見え、三人でじっくりと目を凝らして、井戸の中を見る。すると、突然、菜摘が叫んだ。
「キャ~!井戸の底に、人の頭が見える~!」
「え!ほんまに?」
「え~!うっそ~!どうなんやろ」
僕と萌美が、じ~っと井戸の中を見つめる。すると、どんどん目が慣れてきて、菜摘の言う通り、人の頭が見えてきた。
「うわっ!ほんまや!ほんまに人の頭が見えた!」
「キャ~!ほんまに人の頭がある~!怖~い!」
僕と萌美と菜摘が、一旦、井戸の中を見るのを止め、話し合う。
「萌美、菜摘、確かに、人の頭が見えたな!あれ、本物なんかな」
「めっちゃリアルやし、絶対に本物やで!めっちゃ怖~い!」
「そうやで。絶対に本物やで!見た時、めっちゃ怖かったわ!」
「本物の人の頭という感じはしたけど、まだはっきりとは分からへん。井戸の底にある、人の頭の可能性が高い物を拾い上げる術が、今は無いし、Z村の警察、やる気全然無いし、警察に連絡する前に、風車のドアをノックしてみるか。所有者の芸術家がいたら、何か手掛かりを掴めるかもしれへん」
「うん。Z村の警察官と電話で話したら、ヒートアップしてしまいそうやわ。警察に電話する前に、風車の中を見るのがいいと思うわ」
「私も同意見やわ。風車の所有者の芸術家と話せたら、何か手掛かりを掴めるかもしれへんし、井戸の中にある、人の頭と思われる物も、その人が何か知ってるかもしれへん」
三人で風車のドアの前に移動し、僕がドアをノックする。まず三回ノックしたが、反応は無い。更に三回ノックしてみる。やはり反応は無い。
「ドアをノックしたけど、全然反応が無いな。呼んでみるか!菜摘、この風車の所有者の芸術家、名前何ていうの?」
「その芸術家の名前か~。確か、篠原っていうんやと思う」
「ありがと~!早速、呼んでみるわ!」
僕がドアの前に立ち、大きな声を出す。
「すみませ~ん!篠原さ~ん!いらっしゃいますか?いらっしゃいましたら、出て来てもらえませんか?」
暫くの間、出て来るのを待つが、出て来る様子は無い。
「風車の中に誰もおらへんのかな。井戸の底の人の顔の可能性が高いのについて、警察に電話してみよっか?」
「そうやな。出て来る気配が無いし、警察に電話するか」
「私もそれでいいと思うわ。たぶん誰もおらへんのやろうな~」
僕がスマホを手に取り、警察の電話番号を検索し、電話のボタンをタップしようとした、その時、ギギーッと、ドアが開く音が聞こえ、ドアの方を見ると、一人の男性が出て来ている。
「何や?お前等!さっきからうるさいわ!何しに来たんや?」
「初めまして。突然いなくなった村人を探し出す為に、この村に来てるんですけど、昨日、Z山を歩き回って調べてたら、この風車と井戸を見つけまして、今日、来させて頂きました。風車の中を見させて頂けませんか?」
「はぁ?全然知らへんあんたらを、風車の中に入れる訳にはいかへんわ!とっとと帰れ!」
「そう言わずに、お願いします!突然いなくなった村人の手掛かりが、あるかもしれないんです!」
「私からも、お願いします!この風車の中に、手掛かりがあるかもしれないんです!」
「お願いします!風車の中を見させて下さい!実は、私の彼氏も、突然いなくなってしまったんです!」
「風車の中になんか、入れられへんって言ってるやろ!いい加減にせんと、警察を呼ぶぞ!今、忙しいんや!早く帰れ!」
「篠原さん、忙しいって言ってましたけど、風車の中で、何をしていらっしゃるんですか?芸術家をされてるんですよね?今、作品製作に精を出してるんですか?是非、見てみたいです!風車の中に入れて下さい!」
「ほぉ、お前、俺の作品を見たいって、俺がどんな作品を作ってるのか、知ってんのか?」
「勿論、知ってますよ!リアルな人の顔を描いた人形を作ってるんですよね?是非見せて下さい!」
「よく知ってるやんか!知る人ぞ知るっていう感じで、自分では、あんまり有名とちゃうと思ってたけど、まあまあ有名なんかもしれへんな。人の顔を描いた人形は、俺の得意分野やわ!折角やし、風車の中に入れる事はできひんけど、作品を見るのはいいで!今、持って来るから、ちょっと待っていてや!」
「はい!ありがとうございます!」
篠原が風車の中に入り、三人でおしゃべりしながら、少しの間、待っていると、篠原が、製作した人形を持って、風車から出て来た。
「これが、今、この風車の中にある、俺の一番の自信作やで!」
篠原が持って来たのは、リアルに人の顔を描いた人形。
「めっちゃリアルで凄いです!素晴らし過ぎます!」
「お!この作品の良さが分かるか!お前、芸術センスあるな!」
「僕の芸術センスなんて、篠原さんの足元にも及びませんよ!雰囲気のある風車の中で、篠原さんが作った作品を見たいです!風車の中に入れて下さい!」
「どうしても入れられへんねん。その代わり、この風車の外側の部分を見てや!気になるところは、俺が詳しく説明してやるで!」
「はい!喜んで風車の外側を見させて頂きます!」
僕と萌美と菜摘が、風車の外側をじっくりと見る。大きな羽根のような物が、風によってグルグル回転している。
「風車というだけあって、羽根のような物が、めっちゃでかいな~!」
「うん。風車を間近で見ると、迫力があって、圧倒されるわ」
「この羽根のような物に巻き込まれたら、どうなるんやろうな~」
僕が、大きな羽根のような物をじっくりと見る。何かあると思いながら、じ~っと見る。すると、気付いた。大きな羽根のような物に、目立たないが、刃物のような物が付いている。
「この風車、大きな羽根のような物が風で回転して、めっちゃ迫力がありますね!素晴らしいです!」
「そうやろ~!この風車、一目見て、気に入って、村長に言って、安く購入させてもらったんや!風車の中で仕事をしてると、創作意欲がどんどん湧いてくるんや!」
「そうなんですか~!益々、風車の中を見てみたくなりました~!ところで、この大きな羽根のような物に付いてる、刃物のような物は何ですか?」
「それが、どうしても、風車の中を見せる事はできひんねんな~。刃物のような物?そんな物、付いてたっけな~。ちょっと見てみるわ。あ!ほんまや!前は付いてなかったで!」
「気付いてなかったんですね!誰がいつ、こんな刃物みたいな物を付けたのか、分からないんですね」
「この刃物みたいな物を、取り除きたいな~!何か風車の中にある工具を使って、取り除いてやる!」
「僕も協力しますよ!男手は多い方がいいですよ」
「お!ありがとう!ほんまは、この風車の中に入れられへんねんけど、特別に、ちょっとだけ入れてやるわ」
「はい!ありがとうございます!」
―やった~!風車の中に入る事ができるわ~!―
すぐに、萌美と菜摘が、ヒソヒソ声で僕に言ってきた。
「ねぇ、良かったやん!風車の中に入れるで!さすがやな~!」
「ほんまやで~!あなた、凄いわ~!持ってる男やな~!」
「あはは。偶然やで!まぁ、運も実力のうちって言うしな~!」
篠原に案内され、僕と萌美と菜摘が、風車の中に入る。風車の中は、こじんまりとしているが、篠原が作品製作に励んでいる作業場があり、リアルな人の顔を描いた人形が、何体も置かれていて、他にも、様々なオブジェや絵画等が置かれていて、正に風車の中のアトリエという感じがする。
「篠原さん、風車の中、いい感じです!篠原さんの情熱が籠った作品がいっぱいあって、いろいろ見ちゃいます!」
「そうですよ!いい作品がいっぱいあって、見栄えがいいですよ!」
「私もそう思います!芸術作品がいっぱいあって、素晴らしいです」
「ありがとう!でも、すぐに出てくれよ!あの風車の羽根みたいな物に付いてる、刃物みたいな物を取り除く為なんやからな!」
篠原が工具を探している間、僕と萌美と菜摘が、風車の中をテキパキと見て回ると、僕が気になる場所を発見。
―あれ?あそこの、本がいっぱい積まれてる床に、蓋みたいな金属の板があるわ。もしかして、あの板、地下に通じる通路の蓋なんかもしれへんで!―
僕がその板の近くに行こうとすると、工具を探し終えた篠原が、僕のところに小走りで来た。
「この工具で、風車の羽根のような物に付いてる、刃物のような物を取り除く事ができそうや。協力してや!」
「これなら、取り除けそうですね。どうやって、取り除きますか?」
「そこの梯子を上って行った所にある、窓みたいな物の蓋を開けると、外が見えるから、そこから手を出して、羽根のような物に付いてる刃物のような物を、この工具を使って取り除くんや。俺が外に出て、羽根のような物の動きを止めるから、その時に刃物のような物を取り除いてくれや。合図を送ってくれたら、羽根のような物を掴んで、動きを止めるわ」
「あんな所に、窓みたいな物があるんですね!やってみましょう!」
僕が篠原から工具を受け取り、梯子を上る。篠原が、大きな羽根のような物の動きを止める為、外に出る。僕が篠原に合図を送る為、頭と手を、窓みたいな物から外に出した、その時、大きな羽根のような物が、僕の頭と手に、どんどん下りながら近付いて来た。僕が慌てて頭と手を引っ込めた、その時、井戸の底にあった、人の頭の可能性が高い物について、ある考えが浮かんだ。
―待てよ!井戸の底にあった、人の頭の可能性が高い物って、まさか、この風車の、刃物のような物が付いてる大きな羽根のような物が、人の首に当たって、ザクッと人の頭を切り落としたという可能性があるで!こんな鋭利な物が、ドーンと人の首に下りて当たったら、首が切られて、頭が切り落とされる可能性、十分あるで!もしそうなら、めっちゃ怖い事やで!―
「篠原さん!ちょっと待っていて下さい!体勢を整えます」
「分かった!待ってるで~!」
僕が梯子を下り、萌美と菜摘のところに行き、僕の考えを説明すると、萌美も菜摘も、一気に青ざめた。
「その考え、当たってるかもしれへんな。当たってたら、めっちゃ怖いな。誰が、そんな事をしたんやろうな。凶悪殺人犯やんか」
「もしその考えが当たってたら、大変やで。凶悪殺人事件やで。」
「この考えが当たってるかどうか確かめる為に、もう一回、頭と手を、上にある窓のような物から出して、大きな羽根のような物と、付いてる刃物のような物を、見てみるわ」
僕が再び梯子を上り、窓のような物の前に到着。
「いつでもいいですよ!羽根のような物の動きを止めて下さい!」
「分かった!俺、腕力あるし、任せてや!しっかり止めてやるで!」
篠原が少し膝を曲げ、両腕を少し広げ、大きな羽根のような物を、掴みにかかる。集中力を増し、目を見開き、両腕で一気に掴むと、大きな羽根のような物の動きが、ピタッと止まった。
僕が大きな羽根のような物に付いている、刃物のような物を掴み、工具を使って外そうとした、その時、はっと気付いた。
―ん?この刃物のような物、明らかに刃物とちゃうわ!これ、プラスチックやわ!―
僕が工具を使って、テキパキとプラスチック製の物を、大きな羽根のような物から外し、風車の中に入れた。その後、篠原が大きな羽根のような物を、手から離すと、再び動き出した。僕が梯子を下りて行き、萌美と菜摘に、取り除いたプラスチック製の物を、萌美と菜摘に見せながら言う。
「萌美、菜摘、これ、刃物かな~って思ったけど、プラスチック製やわ!こんな物で、人の首を切れる訳ないわ!」
「ほんまやな~!誰が何の為に、こんな物を取り付けたんやろうな」
「こんなプラスチック製の物を、風車の大きな羽根のような物に取り付けたなんて、何の目的なんやろうな~」
この後、事件の真相が、次々と明らかになる・・・。
僕と萌美と菜摘が考え込んでいると、篠原が風車のドアを開けて叫んだ。
「おい、そろそろ出ろや!今回、中に入れてあげたのは、出血大サービスなんやで!ほんまは、村長から、他の人を風車に入れるのを、固く禁止されてるんやで!」
「あ、村長から禁止されてるんですね~。分かりました」
三人でそそくさと歩き、風車から出る。僕が取り除いたプラスチック製の物を篠原に見せると、篠原が驚きの表情になった。
「何やねん、これ!誰が付けたんや!ムカつくわ!」
「ほんまに知らなかったんですね。篠原さんに気付かれんと、こんなのを付けるなんて、確実に篠原さんがおらへん時間帯に付けたとしか考えられないですね」
―ん?待てよ!篠原さんのいろんな動向を知ってる人っていったら、思い当たる最有力候補は、あの人やろ!もしかして、こんな刃物に見せかけて、プラスチック製の物を付けたのも、その人の指示なんかな。なんでこんな事をしたのか、分からへんけど、井戸の中の、人の頭の可能性が高い物も、もしかして、その人の仕業って可能性あるんかな~。よし!確かめてみるで!―
「篠原さん、お願いがありまして。そこにある井戸の中を、覗き込んでもらえませんか?ちょっと見てもらいたい物がありまして」
「勘弁してくれよ!お化けとか、幽霊とか、苦手やねん!この井戸の中を、一回も見た事ないねん!」
篠原の意外な言葉に戸惑ったが、僕と萌美と菜摘が、粘り強くお願いして、篠原が観念した。
「そうか。分かったわ。お前だけじゃなく、綺麗な女性からも頼まれちゃ~、見ぃひん訳にはいかへんな!」
篠原が大きく深呼吸し、井戸の方に歩き、井戸の前に立つ。
「よ~し!見るで~!うぉ~!」
篠原がそう叫んだ後、意を決し、顔を井戸の上にして、井戸の中をじ~っと見る。
「う~ん。何も見えへんな~。お前達、何が見えたんや?」
「それは見て初めて分かって欲しいんで、今は言えないんです。まだ目が慣れてないだけやと思うんで、もう暫く見てもらえますか」
「そうなんか~。不気味な物が見えてきそうで、めっちゃ嫌やわ!」
篠原が、井戸の中を見続けていると、突然、篠原が大声で叫んだ。
「うわ~!あれ、人の頭やろ~!もうええやろ!」
篠原が後ろに飛び跳ね、尻餅を付いた。
「篠原さん、めっちゃびっくりしたようですけど、それ、ほんまに人の頭やと思いますか?」
「そりゃ、人の頭やろ。他に何があるっていうんや?」
「僕は、あれは人の頭とは思いません。あれ、篠原さんが作った、リアルに人の顔を描いた人形の頭でしょ~」
「井戸の中に、自分の作品である人形の頭なんか、入れた事ないで!」
「それはそうやと思いますけど、篠原さんが井戸の中に入れたとは思ってません。誰か他の人が、篠原さんの作品である人形の頭を、井戸の中に入れたんやと思ってます。誰か、篠原さんの作品である人形を、持って行った人を知りませんか?」
「前に失敗作の人形を、村長が、貰っていいかと言ってきたんで、いいですよって言って、村長に渡したんや。思い付く限りでは、村長だけやな」
「村長だけに渡したんですね。では、もう一回、井戸の中を見て下さい。今度は、篠原さんが作った人形の頭と思って、見て下さい」
「分かった!ほんまに俺が作った人形の頭なんかな~」
篠原が再び、井戸の上に顔を持って行き、井戸の中を真剣に見る。
「ほんまや!井戸の底にある物、俺が作った人形の頭やわ!」
「やっぱり、そうやったんですね。最初は、僕も、人の頭の可能性が高いと思ったんですけど、篠原さんの作品を見て、村長が失敗作の人形を持って行ったというのを聞いて、もしやと思って、篠原さんに見てもらったんですけど、僕の考えが当たってました。後は、なんで村長が、篠原さんの失敗作の人形を、頭を切り取って、井戸の中に落としたのかという事です。もう一つ、篠原さんに見て頂きたい物があります。今度は風車の中に入って下さい」
「風車の中にも、俺が知らへん、俺が見るべき物があるんか!」
僕と萌美と菜摘と篠原が、風車の中に入り、僕がその場所に案内し、指で差しながら説明する。
「この、本が積み上がっている所の床に、蓋みたいな金属の板があるんですけど、ほんまに蓋やったら、この蓋を開けたら、地下に行けそうな気がするんですよ。篠原さん、この蓋を知ってましたか?この蓋を開けた事はありますか?」
「いや、こんな金属の板、意識した事はなかったな。芸術の本を積み上げてるし、この金属の板の存在を忘れてたわ。という事で、勿論、開けた事なんかないし、そもそも、蓋かどうかも分からへんわ」
「分かりました。まずは、芸術の本をどけて、この金属の板を、全面に出してみましょうか」
篠原が、積み上がっている芸術の本を、空いているスペースにどんどん移動させ、蓋のような金属の板が、目の前に現れた。
「こんな金属の板、前にいつ見たのか忘れたわ!確かに、こうして見ると、蓋みたいやな」
「そうですね!開ける事ができたら、風車の地下に行けそうな気がするんですけどね。でも、ここに鍵穴みたいな穴が開いてますよ。鍵がかかってる感じがしますね」
「ほんまや!いかにも、鍵がかかっていて、地下に通じる入口の蓋って感じがするね!この金属の板、持ち上げられるかな~。ほんまに鍵がかかってたら、今は開けるのは無理やけど、かかってなかったら、このわずかな隙間に指を掛けて、上に持ち上げたら、開くかもしれへんな!」
「そうやな!鍵がかかってる感じがするけど、かかってなかったら、萌美が言った方法で、開けられそうな気がするわ!重そうな金属の板やけど、四人で一斉に上に持ち上げたら、開くかもしれへんで!」
「うん!その方法、やってみる価値あるで!やってみよう!篠原さん、一番力あるし、頼りにしてますよ!」
「おぅ!俺が一人でも開けられるかもしれへんけど、四人で一斉に持ち上げたら、開けられる可能性が高まるで!」
僕と萌美と菜摘と篠原が、金属の板と床のわずかな隙間に指を掛け、一斉に力を入れて、蓋のような金属の板を持ち上げようとしたが、どうしても持ち上げられない。
「こんなに力を入れて持ち上げようとしたのに、持ち上がらへんかったっていう事は、やっぱり、鍵がかかってる感じがするな。僕は、村長が鍵を持ってると思うんや。この金属の板、地下に通じる入口の蓋やと思うし、村長にここまで来てもらって、話を聞いた上で、この蓋を開けてもらおう。菜摘、村長は村役場にいてるの?」
「うん。村役場にいてると思うわ。村役場に電話して、村長と話す事はできると思うけど、誰が村長と話す?」
「僕が話すわ。菜摘、村長に取り次いでくれる?」
「オッケー!任せてや!早速、電話するわ!」
菜摘が村役場に電話し、受付の職員に頼んで、村長に電話を繋いでもらい、菜摘が村長と話した後、僕と電話を代わった。
「村長、初めまして。僕は、突然いなくなった村人を探し出す為に、依頼を受けまして、この村に来ました。村長に聞きたい事と、お願いしたい事があるのですが、今から、Z山にある風車に来て頂けませんか?今、風車の中にいます。篠原さんも一緒にいます」
「はぁ?篠原の野郎、俺があれ程、他の人を風車に入れるなって言ったのに、入れやがって!今から行ける訳ないやろ!」
「まぁそう言わずに、お願いします。はっきり言いますけど、村長には、突然いなくなった村人に関して、疑いが掛かってるんですよ。疑いを掛けられたままなんて、気分が悪いでしょ?下手したら、村長、逮捕されるかもしれませんよ。ここは、疑いを晴らす為に、風車まで来て、説明して、こっちからのお願い事を聞くのが、一番いいと思いますよ」
「ふざけんな!突然いなくなった村人の事なんて、俺が関わってる訳ないやろ!よ~し、そこまで言うなら、行ってやるわ!俺の無実を証明できたら、お前、タダでは済まさんぞ!」
「いいですよ。では、お待ちしてますね」
僕が電話を切り、事態を説明する。
「村長に頼んで、こっちまで来てもらえる事になったわ。僕は、村長が、突然いなくなった村人に関して、何らかの形で関わってると思ってるんや。村長としっかり戦うで!」
「分かった!村長に真相を吐かせる為に、私も精一杯頑張るわ!」
「了解!胡散臭いと思ってたんや!村長の化けの皮を剝がすで!」
村長が来るまで、三人で持って来た弁当をどんどん食べ進め、完食。後片付けをしていると、風車のドアをノックする音が聞こえた。僕がドアを開けると、目の前に、不機嫌そうな村長が立っている。
「忙しい中、わざわざ来てやったぞ。手短に頼むな」
「来て頂き、ありがとうございます。時間がどれ位かかるかは、村長のお話次第です」
村長が風車の中に入るとすぐに、篠原を睨みながら、言葉を放つ。
「篠原!あれ程、他の人を風車の中に入れるなって言ったやろ!」
「村長、勝手に他の人を入れたのは謝りますけど、突然いなくなった村人の件で、この人達の話を聞いてると、風車の中に入れたのは間違いじゃなかったと思ってます」
「何を偉そうに言ってるんや!俺は何も知らん!」
「その辺にしといて下さい。ここに、地下に通じる入口の蓋と思われる金属の板があります。鍵がかかってるようなので、開けてもらえませんか」
「そんな鍵、俺が持ってる訳ないやろ!そもそも、地下に通じる入口の蓋の金属の板なんか、突然姿を消した村人と、何の関係があるって言うんや!」
村長の言葉を聞き、僕が、してやったりの表情になる。
「村長、言っちゃいましたね。僕は、地下に通じる入口の蓋と思われる金属の板って言いましたけど、村長は、地下に通じる入口の蓋の金属の板って、断言しましたね!村長は、この金属の板が、地下に通じる入口の蓋という事を、知ってるんですね!という事は、この蓋の開け方も、知ってますよね?鍵がかかってるんなら、鍵の在り処を教えて下さい。鍵がかかってないんなら、どうやって蓋を開ければいいのか、教えて下さい」
「知らへんって言ってるやろ!人の揚げ足を取んなや!」
「待って下さいよ。聞きたい事もありますし。もうすぐ、他の人も来ますし」
その時、風車のドアをノックする音が聞こえ、僕がドアを開けると、何人もの人が、目の前に立っている。その人とは、中学校の校長、村役場の山川、スーパーの堀沢店長、スーパーでいなくなったお爺さんの奥さん、いなくなった花園クリーニングの花園香織の母親、Z山でいなくなったカップルのそれぞれの母親、僕と萌美と菜摘を軽くあしらった上司の方の警察官という、八人。
「ようこそ、いらっしゃいました。風車の中にお入り下さい」
風車に来た八人が、次々と風車に入る。
「萌美、菜摘、こっそり八人に連絡を取って、風車に来てもらうように言ってくれて、ありがとう。」
「どう致しまして!あなたの役に立てて、嬉しいわ!」
「うん!頑張って連絡を取ったわ!役に立てて、良かったわ!」
「なんでこいつらを呼んだんや!もう村役場に戻るわ!」
「村長、落ち着いて下さい。村長を呼んだのも、この人達を呼んだのも、突然いなくなった村人を探し出す為に、僕の考えと、答え合わせをする為です。もう逃げられませんよ!あなたは、この金属の板が、地下に通じる入口の蓋という事を知ってます。早く開け方を教えて下さい」
「村長!さっさとこの蓋を開ける方法を教えて下さい!」
「村長!これ以上、恥ずかしい行動を取らないで下さい!」
「うるさい!俺は何も知らへん!」
村長の言葉を聞き、中学校の校長と、村役場の山川と、スーパーの堀沢店長が、口々に諦めと説得の言葉を村長に放ち、僕が言う。
「村長、この三人も、こう言ってますし、あなたは、もう、地下に通じる蓋の開け方を、僕に教えるしかないですよ」
「うるさい!知らへんって言ってるやろ!」
「あ!ちょっとこれを使わせて下さい!」
僕の目に入ったのは、山川の胸ポケットに入っている、細くて先端が曲がっている、金属の棒。僕が、してやったりの表情で、山川から金属の棒を受け取り、隙間にしっかりと差し込み、思いっ切り蓋を持ち上げようとすると、ギギーッと音を立てながら、蓋が開いた。中を見ると、地下に通じる階段がある。
「やっぱり、地下に通じる入口の蓋やったわ!よっしゃ~!」
「凄~い!やっぱりあなた、冴えてるわ~!」
「あんな金属の棒を見つけるなんて、凄過ぎるわ~!」
僕が先頭で、地下に通じる階段をどんどん下りて行き、萌美と菜摘が、僕のすぐ後ろに付いて下りて行き、他の人が、ぞろぞろと後ろに付いて下りて行く。
更にどんどん下りて行くと、鉄製のドアが見えてきた。ドアの前に着き、僕がドアノブを握り、回してみると、鍵がかかっておらず、ドアが開いた。
僕と萌美と菜摘が、緊張した面持ちで、部屋の中に入ると、とんでもない驚きの光景!何人もの、突然いなくなった村人が、椅子に座りながら過ごしている。他の人も、ぞろぞろと部屋の中に入って来た。僕も萌美も菜摘も、驚きのあまり、暫くの間、言葉が出なかったが、まずは僕が話を切り出した。
「誰が誰やら分からへんけど、あそこにいる人達、突然いなくなった村人っていう感じがするわ。いなくなったカップルは、写真を見たなぁ。あの二人、写真に写ってた人やわ!他の人も、突然いなくなった村人かどうか、萌美と菜摘は分かる?」
「私が見た事ない人もいるけど、吉澤先生は分かるし、お爺さんも、何とか分かるわ。菜摘、あそこにいる男の人、菜摘の彼氏なん?」
「う、うん。あの男の人、私の彼氏やわ!びっくりし過ぎて、声が震えてるし、涙が出そうやわ」
菜摘がゆっくりと歩き、彼氏の目の前に立つ。菜摘が目を潤ませながら、黙っていると、彼氏が菜摘をぎゅ~っと抱き締めてきた。菜摘も彼氏をぎゅ~っと抱き締める。
「菜摘、心配を掛けてしまって、ほんまにごめん!菜摘に連絡を取りたかったけど、スマホを使えへん状態になっていて、連絡できひんかったんや。菜摘、会えてほんまに嬉しいわ!愛してるで!」
「うん!めっちゃ心配したで!私も、会えてめっちゃ嬉しいわ!ただ、言わなあかん事があるの。聞いてくれる?」
「うん。勿論聞くで。どんな話なん?」
「実は、私、好きな人が出来た。勿論、あなたの事も好きやけど、今は、その人の事の方が、好きなんかもしれへん。まだ心の整理がつかへんねん。ごめんね。いろいろ考えたいし、時間を貰えるかな?
「何やねんそれ!俺は、菜摘の事ばっかり考えて過ごしてたんやで!その好きになった男って、誰なんや?」
「実は、そこにいる、謎解きのプロの人やねん」
「お前!菜摘をたぶらかしやがって!菜摘を愛してるんか?」
「たぶらかしてなんていません。ありのままの僕を菜摘に見せてたら、菜摘が僕の事を好きになってくれたんです。でも、僕は、隣にいる萌美と付き合ってます。菜摘の事も、大切には思ってます」
「彼女がいるのに、菜摘がお前を好きになるような行動を取るな!」
「僕はありのままに行動しただけです。それより、僕もあなたに言いたい事があります!あなたは、なんで村役場のトイレで誰かと電話して、そのままいなくなったんですか?行方をくらましてた間、なんで菜摘と連絡を取れへんようにしたんですか?スマホが使えへん状態になってたって、どういう事ですか?意図的に姿を消して、連絡を取れへんようにしたとしか思えません」
「そんな事、どうでもいいやろ!俺は、お前に対して怒り爆発なんや!お前になんか話さんわ!」
「急に狼狽え出しましたね。本性が見えた感じがします。別にいいですよ。あなたへの疑いが増すだけです」
「ふざけんな!俺を何か疑ってんのか!お前、殺すぞ!」
その時、菜摘が、真剣な表情で彼氏に詰め寄った。
「何かやましい事でもあんのか?説明して、疑いを晴らせや!」
「菜摘!俺よりも、あいつの味方をするんか?」
「今の状況やったら、明らかに、あの人の方が、正しい事を言ってるで!私の為にも、ちゃんと説明してや!」
菜摘の強い言葉により、彼氏が俯き、黙ってしまった。僕が部屋の中央に立ち、大きな声で、僕の考えを説明する。
「皆さん!聞いて下さい!今まで調べた事と、村長とこの人の言葉を聞き、僕の中で、繋がりました。あなた達、皆、グルになって、騙してましたね!自分達で進んで、いなくなったのに、突然いなくなったふりをして、こんな場所に集まって、ほんまに、ふざけんなって感じです。電話の相手は、村長でしょう。村長からの指示通りに動いたんですね。黒幕は村長なんでしょうが、あなた達も同罪ですよ!この風車は、元々村長が管理してたんでしょうし、この地下室も含めて、よく知ってるんでしょうから、皆さんの隠れ場所に、丁度良かったんですね。篠原さんに気付かれないように動くのは、大変やったと思いますが、篠原さんは、安く風車を購入させてもらった村長に恩があって、村長に言われるがまま動いてましたし、いつ風車にいるのか、村長は分かってたんでしょう。で、校長と山川さんと堀沢店長は、村長の右腕みたいな感じで、村長の指示通りに動いて、この地下室に通じる蓋の鍵の管理をして、隠れてる村人に指示を出してたんですね。警察まで巻き込んで、警察が動かへんようにしてたのも、村長でしょう!昨日、風車に来て、僕等を監視してましたよね?村長!僕の考え、見事に当たってるでしょう?」
「そんな訳ないやろ!俺は何も知らへんわ!俺が指示を出して、村人を動かして、警察まで動かへんようにしたなんて、いくら村長でも、そんな権限ある訳ないやろ!証拠も無いくせに、いい加減な事を言うな!」
「そう言うと思ってましたよ。証拠ならありますよ。これを見て下さい!これでも、同じ事を言えますか?」
僕がそう言うと、鞄から何枚かの紙を取り出した。最初の紙には、リゾートを手掛ける会社が、Z村をリゾート開発しようと、Z村の幹部に圧力をかけているという記事が書かれている。その次の紙には、Z村で突然人がいなくなったという恐ろしい事件が起こり、警察が捜査しても見つからず、神隠しなのか?という記事が書かれていて、最後の紙には、この恐ろしい事態を考慮し、リゾート会社が、Z村のリゾート開発から手を引く意向という記事が書かれている。
「村長、あなた、この会社がZ村をリゾート開発するのを阻止する為に、村人と警察に協力してもらい、神隠しというでっち上げを作り出したんですね。他にも恐ろしいと思ってもらえる仕掛けを実行して、恐怖話が盛り上がるのを狙ったんですね。協力してくれた村人や警察は、皆、この会社のZ村のリゾート開発に、猛反対してる人達。方向性が合致し、皆が村長に協力して、村長の言う通りに行動したという事です。ただ、家族には心配を掛けへんように、奥さんや親には、ちゃんと説明してたんでしょう。家に訪問した時、そんなに慌ててませんでしたし。皆さんの狙い通り、リゾート開発は頓挫し、Z村を守る事ができたと、喜んでるんでしょう。でも、皆さんのした事は、人として間違ってます!ここに隠れてる方は、探してもらえるように、現場に証拠を残してました。少しは罪悪感があったんだと思います。でも、皆さんと、この事に関わった警察官は、偽計業務妨害罪と詐欺罪に問われる可能性があります。そんなにZ村をリゾート開発から守りたかったんなら、正々堂々と、リゾート開発を手掛ける会社に対して、正論で立ち向かったら良かったんじゃないですか!」
「そこまで分かってんのか。そうや。お前の考えの通りや。昨日、風車に行った時、お前等を見かけて、隠れてこっそり監視してたんや。確かに、リゾート開発会社の圧力が凄過ぎて、どうにもならへん状況になったわ。そんな時、ふとした事から、神隠しの怪談話を聞いて、この方法を思い付いて、同じ志を持つ村人に、協力してもらったんや。中学校の校長と山川と堀沢は、そこそこの権力があるし、志が強いし、俺の右腕になってもらったんや。お前、この事を公表して、またリゾート開発を再開させるつもりか?頼むから、そんな事をせんといてや!」
「ダメです!見逃せません!そんなにZ村を守りたいんなら、ちゃんと正しいやり方で、リゾート開発会社に立ち向かって、リゾート開発を止めさせて下さい!」
「村長、もう止めて下さい。Z村を守りたいという村長の気持ちは、よく分かりますし、私もZ村を守りたいです。でも、村長達のやり方は、間違ってます」
「そうですよ、村長!ちゃんと正しいやり方で、リゾート開発を止めさせてこそ、これからのZ村の発展に繋がると思います」
更に、その場にいる村人も、次々と、村長に、もう止めるよう、言葉を掛け、村長がすっかり諦めの表情になり、項垂れた。
これでこの事件は解決した。しかし、実はまだ終わっていない。僕が真剣な表情で説明する。
「皆さん、まだ終わってません。ここにいない人が、一人います。花園クリーニングの花園香織さんです。なんで花園香織さんが、ここにいないんでしょう。答えは簡単。花園香織さんは、この事件の協力者ではなく、別の事件に巻き込まれたんです。花園香織さんだけは、村長と電話して指示通りに動いたという事ではありません。誰かに襲われて、連れ去られたんです。現場にあった兎のキャラクターのストラップ、その時に落ちた物やと思います。事は一刻を争います。花園香織さんのお母さん、犯人に心当たりはありませんか?」
「香織がさらわれたの~!う~ん、そういえば、しょっちゅう店に来て、少しずつクリーニングを頼んで来て、香織にやたらと話し掛ける男性がいたなぁ。その人、いろんな種類の兎がたくさんいる、ラビットファームっていう動物園みたいな所の、代表の方です。その兎のキャラクターのストラップ、ラビットファームで売られてるグッズです。その人が香織を連れ去った可能性が高いです」
「その人が犯人で間違いないでしょう。監禁場所は、ラビットファームの何処かでしょう。このストラップを見た時、違和感を感じてたんです。ストラップには、マジックで「KAORI」と書かれてました。刺繍なら分かりますが、若い女性が、ストラップにマジックで書くなんて、変やと思ったんです。犯人の男が、マジックで書いたんやと思います。今、香織さんがここにいないのを見て、違和感が確信に変わりました。すぐにラビットファームに行きましょう!案内お願いします!萌美、菜摘、一緒に来てくれ!警察も、今度こそ動いてもらいますよ!」
「オッケー!早く行って、花園香織さんを助け出さんとあかんな!」
「うん!分かった。花園香織さんの命が懸かってるし、早く行こう!」
「分かりました。突然村人がいなくなった事件については、警察の恥を晒してしまいましたが、誘拐事件に対しては、解決する為に、全力で取り組ませて頂きます」
「私も行くわ!絶対に香織を取り戻します!」
「よ~し!早速行くで!絶対に香織さんを取り戻す!」
僕と萌美と菜摘と警察官と花園香織の母親が、走りながらラビットファ―ムに向かう。警察官は、走りながら警察署に電話し、応援を要請する。どんどん走り進み、ラビットファームに到着。
ラビットファームに入り、花園香織が監禁されている場所を探す。警察の応援部隊も到着。花園香織を探し回るが、見つからない。更に探し回ると、ふと、草木が山積みになっている所が気になった。僕がその場所に行き、どんどん草木を掻き分けていくと、地下に通じる蓋が現れた。
「皆、ここに、たぶん地下に通じてる蓋があるで!中に入ろう!」
僕が蓋を持ち上げようとしたが、ビクともしない。鍵穴があり、鍵がかかっているのが分かる。周りを見回すと、たまたま見えた兎が、首輪を付けていて、首輪に付いているキラリと輝く物が見えた。
「あの兎の首輪に鍵が付いてる!見つけた!」
僕がその兎から鍵を手に取り、蓋の鍵穴に鍵を差して回すと、ガチャッと鍵が開き、蓋を開けると、地下に通じる階段があった。
皆でどんどん階段を下りると、ドアの前に着き、僕がドアを開けると、小さな部屋に、びっくりする位、可愛い女性と、童顔だがそれなりの年齢と思われる、ラビットファームの代表の男性がいる。
「お母さん!来てくれたんやね!ありがとう!」
「香織!もう大丈夫やで!よく頑張ったね」
続いて、僕が大きな声で、その男性に向かって言う。
「もう止めろ!お前が香織さんを誘拐して監禁してるのは分かってるんや!諦めて、香織さんを母親に返してやれ!」
「くっそ~!動くな!動くと、香織さんをこのナイフで刺すぞ!」
「嫌~!止めて~!助けて~!」
僕が警察をチラッと見ると、なんと、全員、拳銃を持っていなく、動けずに固まっている。
―拳銃を持って来てないんかい!何かいい方法はないかな~。あ、あんな所に兎がいる!―
「警察の皆さん、あそこにいる兎、危険な兎ですよ!」
僕が警察官にそう言うと、たくさんの警察官が一斉に兎を見た。
「止めろ!その兎に手を出すな!」
―今や!この隙を絶対に逃したらあかん!―
僕が全速力で走り、ラビットファームの代表の手を蹴ると、ナイフが遠くに飛んで行き、向こうの方に転がって行った。すかさず、僕がその男を、腕を使って動けなくする。
「もう観念しろ!警察が来てるで!もうお前は終わりや!」
「くっそ~!俺は、香織さんを手に入れたかっただけやのに~!」
「手に入れたかったんなら、こんな犯罪じゃなくて、正々堂々とアタックしたら良かったんや!もう遅いけどな」
僕がラビットファームの代表を、警察官に渡し、警察官がその男に手錠をかけ、連行して行った。僕が花園香織に言葉を掛ける。
「花園香織さん、もう大丈夫ですよ。よく頑張りましたね」
「はい!助けて頂き、ほんまにありがとうございます!」
「香織、生きていて良かった~!」
「お母さん!来てくれてありがと~!」
花園香織と母親が、涙を流しながら、ぎゅ~っと抱き締め合う。その微笑ましい光景を見ながら、僕と萌美と菜摘が話す。
「花園香織さん、無事で良かった。無我夢中やったわ~!」
「うん。ほんまに良かった!あなた、頭がいい上に、強いね~!ほんまに凄過ぎるわ!益々、尊敬するわ~!」
「花園香織さんを助けられて、ほんまに良かったわ~!あなた、何でも出来るんやな~!凄過ぎるわ!さすがやわ!」
「そういや、菜摘、この人の事、好きになったって、彼氏に言ってたけど、どうするつもりなん?」
「ウフフ、私も分からへんわ。一つ言えるのは、今は、私、この人の事が一番好きって事や!萌美、あんたからこの人を奪ってやる~」
「はぁ?何言ってんねん!渡す訳ないやろ!絶対に離さへんで!」
「まぁまぁ、二人共、折角、事件を解決できたんやし、仲良くして!」
「そうや、あなた、花園香織さんを見て、デレデレしてたやろ!」
「そうそう!私も同じ事を考えてたわ!デレデレしてたやろ!」
「え~!そんな事ないで!勘違いやで~!」
三人で笑い合い、つられて、花園香織と母親も笑い出す。皆で地下から出て、ラビットファームを後にし、それぞれの家路についた。僕はその日も、萌美の旅館に泊まり、僕の部屋で萌美と過ごし、唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌を濃密に絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合い、無我夢中でひたすら濃密に愛し合いまくった。
翌日、僕が大阪に戻る前、部屋で萌美と話す。
「萌美、事件を解決できて、ほんまに良かったわ。萌美にも、いっぱい助けられたわ。ほんまにありがとう!大阪に帰るけど、これからもいっぱい会って、いっぱい一緒に過ごそうな!愛してるで!」
「うん!事件を解決してくれて、ほんまにありがと~!あなたに依頼して、ほんまに良かったわ!私も少しは役に立てて、嬉しいわ!実は、私、大阪にある大学に、車で通ってんねん。だから、これからもいっぱい会って、一緒に過ごせるで!愛してるで!」
「あ~、そうなんやな~!びっくりやわ~!これからも、大阪でいっぱい会えるの、めっちゃ嬉しいわ!この旅館にも、また来るで!めっちゃいい旅館やわ!この旅館でも、いっぱい愛し合うで!」
「うん!ありがと~!この旅館でもいっぱい愛し合うの、めっちゃ楽しみやし、嬉しいわ~!」
「うん!ところで、気になってる事を訊くけど、一昨日と昨日、夜遅い時間に、トイレで誰と電話で話してたん?」
「あ!ばれてたんやね。実は、一昨日は、菜摘と話してたんや。あなたとの熱くて幸せな時間の話で盛り上がったで。昨日は、元彼から誘いの電話があって、しつこかったけど、ビシッと言って、断ったわ。あなた、何でもお見通しやな~。言う必要ないと思ってたけど、言った方が良かったな~」
「あはは。そうやな~。電話してたのは分かってたけど、事件の解決に集中したかったから、事件が解決してから聞こうと思ってたんや。最後の謎が解けて、スッキリしたわ~!」
二人でじ~っと見つめ合う。唇と唇を熱く重ね合わせ、舌と舌をグリグリと絡め合い、ぎゅ~っと熱く強く抱き締め合う。
僕が萌美の車に乗り、萌美が車を発進させ、僕の家に向かって車を走らせる。今日は、今にも雨が降って来そうな曇天。でも、僕も萌美も、気分は晴れ渡っている。これからの二人の熱く幸せな時間に、胸を躍らせながら。
その後、菜摘は彼氏と別れ、僕に交際を申し込んできた。僕は、少し悩みながらも、萌美を選んだ。菜摘は泣いていたが、僕と萌美の幸せを願ってくれた。
そして、年月が経ち、僕と萌美は、晴れて結婚した。結婚式には、菜摘も来てくれた。
更に年月が経ち、僕と萌美に、男の子が産まれ、幸せな結婚生活を送っている。
人は、何がきっかけで幸せになれるのか分からない。僕の場合は、依頼者からの依頼に解決する事で、生涯の伴侶を得て、幸せになる事ができた。
最後になりましたが、この物語を最後まで読んで頂いた読者の方々に、感謝申し上げます。本当にありがとうございました。皆様方にも、素晴らしい幸せが訪れますように・・・。




