14、宝石
2回目の討伐作戦からさらに2週間後、3回目の作戦が行われた。
帰還後、テオにお願いして戦利品のゴーレムの宝石を見せてもらっていた。
「これ」
テオは今回手に入れた宝石が入った袋を差し出す。
「ありがとう。お借りします」
袋を開けて宝石を手に取る。
宝石は細長いひし形をしており、上下の先端は鋭利だ。
大きさは手のひら位か。
色は全体的に白っぽいが、角度によっては何色にも見える。
黒い布で覆って宝石を観察する。
光が無い状態でもうっすらと発光していることがわかる。
もしかしたら何かの魔力がこもった石なのかもしれない。
「この宝石はあちこちに流通しているみたいだけど、それでも何も被害はないんだよね?」
「今のところ被害は確認されていない」
「そっか。なんだか不思議な力は感じられるんだけど、よく分からないや」
「もっと調べるならそのまま持っててもいいよ」
「そんなことできないよ。これを売ってお母さんの薬を買うんでしょ?」
「そうだけど⋯⋯」
「じゃあ一つだけ借りててもいい?」
「もちろん」
「ありがとう」
私は受け取った宝石を引き出しにしまおうとした。
その時引き出しにしまってあった歴史の教科書に目が留まる。
「そういえばこの本に書いてあったんだけど、ゴーレムが現れる前はあの辺りは湖だったとされているんだよね。大昔の気候変動で雨が減って湖が枯れた。そしてさらに時間が経ってからゴーレムが湧くようになったと⋯⋯」
かなり大きく環境が変わったようだ。
「そう言われている。ゴーレムが初めて見つかった時期と同じ頃から灰病が出始めた。火山が活発になる時期にゴーレムが大量発生することから関連性が高いとされて、約百年前に戦士団が発足してゴーレムの討伐が始まった」
テオが教えてくれる。
またあの火山が湖に沈めばゴーレムを湖底に沈めて無力化できるのかもしれない。
あの辺りを沈めるのにいったいどれだけの雨水がいるんだろう⋯⋯
数十年?数百年でも難しいかもしれない⋯⋯
「色々と方法を考えてみるよ。ありがとう」
「うん。でも無理しないで。最近疲れてそうだから」
「確かに、最近ちょっと忙しかったからね。ほどほどにしとくよ」
——パタン。
私は栞を挟んで教科書を閉じる。
「リファ、それ⋯⋯俺の」
テオは私が以前に拾って栞代わりにしている羽根を指さす。
「あぁ、これは思い出の品と言うか⋯⋯」
テオの方を見るとさっきよりもずっと近い位置に顔があった。
「ねぇリファ。なんでこんなことしたの?」
テオは立ち上がり私に近づきながら言う。
「あまりにもきれいだったから、勝手にごめんなさい!」
もしこれが自分の髪の毛だったらと想像する。
確かに勝手に拾って栞代わりにされるのは、かなり気味が悪い。
「これがどういう意味かわかってやってるの?」
テオに迫られた私はとっさに椅子から立ち上がり距離をとるが、テオはずんずん迫ってくる。
「嫌だったよね、本当にごめんなさい! 返すから!」
壁際に追い詰められて、手に持った羽根をテオに差し出す。
「嫌なんじゃない。リファはこれの意味がわかってない!」
テオはなぜか顔を真っ赤にしながら、羽根をもつ私の手を上から握りながら言う。
「もう、リファは本当に勝手だよ。無自覚に人を振り回すんだから」
テオから羽根を突き返される。
「俺のは持っててもいいけど、他の人のはだめだから。その羽根も誰にも見せないで」
そう言うとテオは足早に私の部屋を出ていってしまった。
「⋯⋯なんだったの?」
その答えにはすぐにたどり着くことができた。
その日の夜、読むのを後回しにしていた国語の教科書を隅々まで読んだ。
すると、片思いの相手の羽根を拾って両想いになれるおまじないをする描写、交際前の男女が羽根を交換し合うことで互いの想いを通わせる描写など羽根にまつわる物語がたくさん出てきた。
自分がやったことの意味とテオの反応を思い出して冷や汗と火照りが止まらなくなったのだった。




