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◆◆これからのこと


トントントンと廊下をあるく澪の足音。着実に近づく危険。しかも靴が一つ多いという疑問点にすぐに気づいてしまった為に姪菜を隠すという手段は失われている。


「ちょっといるなら、返事して・・・くれて、も」


突如、ネジ巻きが終わった人形のように固まる澪。その瞳に映るのは苦笑いを浮かべる俺と、その腕に抱きついている姪菜の姿。っていうかなに抱きついてんだコラ。言い訳の幅が更に狭くなったじゃねえか。


確かに、昔はいつもひっついて俺と姪菜は遊んでいた。だが時が過ぎて考えも体も変わる。故に俺の腕を挟むこの風船が思考を邪魔して考えを纏めさせてくれない。


「これって、どういうことなのかな?」


口元をピクピクさせて、マジキレ三秒前みたいな雰囲気を醸し出す澪に俺は口を開き言った。


「いやこっちが聞きたい・・・みたいな?」


放たれる学生鞄。激突しチカチカと閃光が瞬く。なるほど、これが彗星か。軽く現実逃避をしたのち俺はゆっくりと身を起こす。その間俺の身を案じたのか姪菜がガクガクと俺の頭を揺さぶり一歩一歩確実に死に近づけさけていた。お前絶対幼児化した振りして俺のこと殺しにきただろ。


「俺の瞳に映ったのは彗星だったけど鼻から滴り落ちている鼻血は水性、みたいな?」

「なんにも上手くない」


完全にあきれ果てたのか暴力をふるわず深いため息をつく澪。いや、わりかし自信あったんだが今の個人的に。


「誰もいない隙に女の子連れ込むのは勝手だけどさあ、そういうのは部屋でやってよ」

「連れ込んでねえよ。文字通り突撃してきたんだよそれにそういうのって何だよ。そういうのって。ちゃんとした日本語使わないと分からないよキミィ」

「だってけーたが開けてくれなかったから! それに今はお医者さんごっこの最中だったんだから再開しよーよ」


撤回。時にはボヤけたニュアンスで伝えてくれるのもありがたいね。素直が一番とか言ってたやつ誰だ。目の前にこい。ぶっ飛ばしてやる。


「お医者さんごっこぉ!?」


くわっと目を力強く開けて俺を驚愕の表情で見る澪にすかさず弁解する。


「ちげぇよ! こいつちょっと頭がおかしくなったからお医者さんに行こうって話になっただけだ」

「頭がおかしいのは兄ちゃんだろ」


冷ややかな視線を送る澪に正論を言われ言葉を発っせなくなってしまう。なるほど間違って逮捕されてしまった冤罪者の気持ちが今痛く分かったわ。


「細かいことはもういいや。それにしても私が驚いたのは兄ちゃんと平津さんが仲良くなってたこと。お互い、もうただの他人だとばかり思ってたんだけど」


興味深げに俺達二人の様子を観察する澪。なにかあらぬ誤解が未確認で現在進行形になっている気がするが今はなにを言っても裏目に出てしまう気がする。


ただ、その澪の意見には今日初めて同意できるような気がする。確かに俺も姪菜との関係は終わったと思っていた。物事にはある日突然終わりがくるんだなぁと軽く考えていたけれど。


いつしか姪菜と話さなくなり不仲になってしまったのだろうか。大人になるっていうのは汚くなるということなのだろう。いつまでも真っ直ぐではいられない。当人たちが真っ当でいようとしても周りにねじ曲げられ変わってしまう。変えられてしまう。


『いつも一緒にいるけどもしかして付き合ってるの?』


そんな軽い一言で終わってしまった関係。強固だと永遠に続くのだと思っていたのに。


「そうだな、俺もそれは思っていた」

「そんなわけない。勝手に終わらせないでよ」


隣で俺の腕を掴む力が更に強まった。今回は気分が高揚はしなかった。その手が、体が小刻みに震えていたからだ。もはや掴むというよりしがみつくと言い替えた方が正しい。


まるでその腕を離したら終わってしまうのだ。と危惧しているように、腕に、関係にしがみついていた。


「さっきから終わり終わりって意味分かんないよ。私とけーたはずーと一緒だよ」


汚れを知らないその瞳から逃げるように俺は横を向く。まるで酷く自分が汚れているような気がしたから。


さすがに澪も姪菜の様子に不信感を持ったのか怪訝な表情で姪菜をみやる。俺は仕方ないと呟き、姪菜の手を握ると、立ち上がりソファへと導いた。体の震えは止まっていた。


「いきなり混乱するのは分かる。ただ事情を聞いてくれ。澪、多分事態は思ったよりも深刻なんだよ」

「分かったけど、キメ顔する前に鼻血そろそろ拭いてよ。凄くダサいんだけど」


全く、最後の最後でやらかすのは俺らしいと言えば物凄く俺らしい。


◇◇◇


「頭がぶつかったせいで幼児化?」

「信じてくれとは言わない。ただ思い当たるのがそれしかないんだ」


階段での衝突。そこでなにかがキッカケとなって精神が後退してしまったのかもしれない。


「うーん。でも平津さんの様子的に嘘ではなさそうだよねー。でもそういうことってありえるのかな?」


顎に手をおき、思案顔をする澪。信用するしない以前にまずは、相手と親身になって考えるのは澪の長所だ。それのおかげかこいつは友達が多い。羨ましい限りだ。


「さあな。でも他には何も思い当たる節がないからな」

「・・・そう言えば、記憶とかはどうなってるの?平津さんの会話的に昔の仲良かった記憶が保持してるみたいだけど、少し前の記憶はなくなってるっぽいよ」

「そういえばそうだな。おい姪菜。高校での俺の親友の数は?」

「一人!」

「やっぱり最近の記憶は全て消えてるな。今の答えは俺の小学生時代の親友だし」


自信満々に証明終了した俺は得意気に澪に言いはなつ。しかし、澪は頭痛を覚えたのか手のひらを額に当てていた。


「兄ちゃん悲しすぎるよ。しかも一人って姪菜さんのことでしょ? 実質ゼロじゃん」

「ああ、零だがなにか?」

「かっこよく変えてもダサいことに代わりはないからね?」


友達の人数イコール偉さっていう風潮あるよな学園って。烏合の衆っていう言葉を教えてやりたい。むしろ俺は一人でも生きていける人間こそが真に強いのだと力説したい。


「兄ちゃんの悲観話はいいとして、それって不味くない?」

「は? お前も友達の数イコール偉さか?」

「そっちじゃなくて、平津さんのこと。最近の記憶がゴッソリ消えてるんでしょ? それってつまり今までの学園生活が送れないって事じゃないの?」


心臓が跳ねた。どうやら事態は俺が想像していたより、ヤバいのかもしれない。


「しかも今って平津さん独り暮らしでしょ? 兄ちゃんどうするの?」


それもそうだ。ある意味幼女の姪菜を独りにするのはどう考えても良策じゃない。ならば考えるべきことはただ一つ。


「ここに泊めるしかないってことだ」

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