表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

第9話 嘘つき

 その一言には衝撃を覚えた。皆口々にこう言う。「そんな足音は聴いてない。」と。確かに、意識してないならあり得る。だが、ここまで全員揃って聴いていないと言いきっているのだ。ハッキリ言ってあり得ない。1人くらい気がついているはずだ。だが………これが現実だ。誰も知らない。誰も見てない。犯人は………砂島しか知らない。当の本人は姿を消した。正直、生きているかどうかも解らない。


 結局………犯人は見つからず有耶無耶になった。各自解散となったが、嫌な雰囲気だけが漂っていた。そうして俺はまた薄暗い天井を眺める。


「駄目だ。寝よう。」


 何を考えているのか。教え子が行方不明と言うのに、何もせずただふて寝に走る。だが、考えたところで何もできやしないのだ。犯人はいずれボロが出るだろう。砂島はきっと………生きているだろう。期待をするしか無いのだ。


 意識も落ちかけた頃、ノックが響いた。


「あー。誰だ?」


「私です。お話があって………。」


 聞こえてきたのは新井(あらい) 美愛(みあ)の声だった。疲れきっていた俺は眼鏡も取らず、其方へと向かうのだった。


―――――――――――――――

――――――――――

―――――


 朝、その広間はやけに騒がしかった。喧騒にやられ、僕もそちらへと向かう。

 目を疑った。いや、信じたくなど無い。昨日の今日でこんなこと………凄惨と言う言葉が正に似合っている。本当に………本当に酷い。広間の奥に飾られた天に向かい手を伸ばす聖女のレリーフ。そこに見せつけるように磔られた2人の死体………1人は僕達のクラスの担任。そしてもう1人………新井 美愛であった。2人とも胸部にナイフを突き立てられていた。両足は縛られ、先生の左手、そして新井さんの右手は杭でレリーフに打ち付けられていた。

 惨たらしいの一言に尽きる。そして………次第に吐き気が襲いかかる。あれだけの喧騒がやけに遠くに聞こえ、視界がぐらつく。思考などままならず、僕は………そのまま意識を失った。



「………すけ………りょう…け!…亮介(りょうすけ)!!」


 僕の名前を叫ぶ声。あぁ、颯人(はやと)だな。意識がしっかりとして来る。僕は………どれほど眠って居たのだろうか?


「亮介!!」


「あぁ………起きてる。」


「良かった………!」


「ごめんね。心配かけた。それよりも、今どういう状況?」


「………最悪だよ。誰が何のためにこんなことをしたのか解ったもんじゃない。向こう側も、いよいよ俺達を疑いにかかってる。」


「そう………だよね。」


「先生が………生きてたらな。」


 先生に与えられた魔法………惑わずの魔法。それは特定の条件下で何者にも騙されず、欺かれなくなる魔法であった。先生なら………きっと真実にたどり着けたんじゃ無いだろうか?残された僕たち………3()7()人はどうすればいいのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ