第6話 我の伴侶
我は………その男に敗北した。今まで軽々と振り回していたその剣が重くてしかたがない。この鎧だってそうだ。おかげで体を動かすこともできない。その男………アキト曰く、我の力のコントロールを握ったとそう言っていた。
「………人に敗けるのはこれで二度目だな。」
「それは………俺の先代ですか?」
「いいや、違う。お前の先代と出会うよりも前の話だ。」
「それより前………ですか。」
そこでアキトは何も話さなくなってしまった。ここまで気まずい空気になられても困るのだがな………。
「あぁ、アキト?もう少しだけでも力を渡しちゃくれないだろうか?これじゃ動けない。」
「あ?あぁ、ごめんなさい。」
その言葉と共に、少し体が動くようになる。だが………動きづらいことに変わりはない。どれ、久方ぶりに………。
「クロ。手伝ってくれ。1人じゃ脱げん。」
「はいはい。」
「え?脱げるの?それ?」
「貴様も妙なことを聞くんだな。脱げなきゃどうやって着たと言う話だろう?」
「ご、ごもっともで………。」
クロの手伝いのもと、重厚で忌々しい鎧を脱いでいく。もとはただの甲冑………我の魔力に飲まれて禍々しい姿へと変貌している………自分で見てもなかなかに悪趣味だな。
いや………重っ苦しい鎧も脱いだ。この姿になるのもなかなか久しい。そうして、ゆっくりとその者の元へと歩み寄る。
「さて、アキトよ。」
後ろを向いているアキトにそう声をかけた。そうして振り向いたアキトは懐かしい反応を示す。
「は、はい!?」
返ってきたのは何時か聞いたような素っ頓狂な声だった。
「なんだ、緊張しているのか?」
「そ、そりゃあ………まさかこんな綺麗な人とは思わなかったから………。」
何もかも………お前と似ているよ。
「なんだ、我を口説いているつもりか?さっきまで貴様を殺そうとした吸血鬼だぞ?」
「そりゃあそうですけど………。」
「まあ構わんさ。どうせ、今後は我と共にあるのだからな?」
そう言って、アキトを抱き締める。600年ぶりの人の温もりか………忘れられぬものだな。
「ちょちょっ………そ、そもそもなんで俺が!?」
暴れるアキトだったがしっかりと抱き締める。何もかも似ているよ………シンヤ………。
「悪いか?恋に溺れるような吸血鬼で?」
「え?」
「いいや、なんでもない。」
人に狂わされ、人に救われ………我もなかなかハッキリしない存在だな。
似ていたからでも、我より実力があったからでもなんでもない………ただ我と言うのは弱いと言うだけの話なのだよ。アキト。
お前は………我が死なせぬ。