第4話 最下層
そうして………かれこれ半日は下っただろうか?ようやく、俺たちは底についた。初めてあの威圧を食らったときとは比にならない程の張り詰めた空気が漂っていた。
「常人なら、指の一本に足るまで動けなくなるだろうけど………君はまだ余裕ありそうだね?」
「余裕なんてものはないよ………なぁ、本当に俺がやらなきゃダメか?」
「君しかいないんだよ。あれをここに押し止めることができるのは。」
まぁ失敗するにしろ、そもそもやらないにしろ世界が終わるならそう大差は無いだろう。少しでも可能性があるならそれに賭ける。至極真っ当な意見だ。
「さて………やって来たよ。」
恐怖感が心を支配していくのが解る。と、言うかクロはどうしてこれのなかで普通に動けているのだろう?
「………どうして、クロは動けるんだ?」
「会えば解るよ。ダンジョンマスター?」
「は、はあ………。」
クロにつれられ、禍々しい光の射す方へと歩く。炎のように揺らめくその光。おおよそ召喚されて2日目で来るような所でないのは解る。そうして、ようやく俺はそれと対面したのだ。
「なっ………。」
眼中にいたのは、まさしく黒騎士。鎖で身体中を巻かれ、身動きがとれないようであるがその状況下でさえ勝てる気がしないのは何故だろう。
「イア!連れてきたよ!」
「は!?」
え?今………何て言った?何?その友達感覚。本当に友達?いやいやそんなわけ。
「クロか………と言うことは横にいるのが。」
待てや。え?そんな「もう言語さえ忘れました」みたいなオーラ放っておきながら話せるの?
「そう、2代目のダンジョンマスター。」
「………そうか。貴様、名は何と言う?」
えぇ………それ重要?今から俺封印するんだよ?
「え、えと、明人………です。」
「アキトだな………先代はかなり貧弱だったが貴様はどうなのやら。」
待って………先代ってそんな貧弱だったの!?死後もこれを封印しといて貧弱だったの!?
「貴様は、死なないだろうな?」
「いや、俺も一応人間なんですけど………。」
「黙れ!仮にも我が伴侶となる男!私より強くなくてどうするのだ!?」
どうしろと言うのだ!?待ってや。いやいや、そんなお話聞いてないですけど?何?伴侶って?え?縛り付けるって………え?
「まぁ、そう言うことだよアキト。先代は力そのものは本当に能力頼りだった。でも、心から守りたい一心でイアをここに幽閉したんだ。」
「いや、先代はそうでも俺はぽっと出なんですけど?」
「そこは私にも解らない。さて………力を示しておいでよ。」
「いやいや、せめてこう………戦い方とか魔法の使い方とかさ?」
「そうだね………簡単に言えばイメージだよ。相性がよければ少なくとも死にはしない。」
いやいや、死ぬ危険性あるじゃないですか?そもそも今俺病み上がりだし?戦闘経験ゼロ+デバフつきでどうしろと!?
「話は終わったか?では………いくぞ………。」
そう言うと、鎖が引きちぎられていく。500年もの間、彼女を縛り付けていたその鎖が………重厚な音が聞こえる。
「なに、我も動くのは500年ぶりだ。少し、鈍っている。」
そう言う問題じゃないと思うんですけど?鎖に隠されて見えていなかった部分も段々と露出していく………そうして、最後の一本がバチンと言う音と共に弾けた………。
「始めよう………。」
た、大切なのはイメージ………嗚呼もう上等だよ!!どうせ俺がやらなきゃ世界が終わるんだろ!?なんだよ王様!5年も時間ねぇじゃねぇか!?