レメェンの木
俺は死の間際、人間の街に近い場所に行き、酸っぱい果実のなる果樹の根元に埋葬してほしいという遺言を残していた。
セラとフォレストウルフ達は俺の死後しばらく悲しんだあと、遺言を実行した。
この酸っぱい果実は黄色くてラグビーボールを小さくしたような形だ。
レモンに非常によく似ているが、この世界でどう呼ばれているのかは知らない。
妊婦は酸っぱい果物を求めることがあるため、果実を食べてもらえば胎児に転生できるだろうと考えたからだ。
俺は人間に転生するために、果樹に転生することとした。
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しばらくして意識が戻った。
しかしまたしても身動きが取れない。
(これは、果樹?)
俺は果樹になっていた。
とりあえず作戦は成功したようだ。
あとは俺の枝についている果実を誰かが採取して食べてもらうのを待つのみ。
すると、どこからともなくギコギコという音が聞こえてきた。
(ん?なんの音だ?)
俺が下を見ると、老人が鋸を手にして俺の幹を切断しようとしていた。
(おい、爺さん!やめろ、切るんじゃない)
「ふぃ~、こんなところに手ごろな『レメェンの木』があるとは、幸運じゃ。やはり杖にするのは『レメェンの木』が最上だからのぉ~」
どうやら爺さんは俺を杖にするために切り倒したようである。
切り倒されたことによって俺は意識を失い、その後の展開を運に任せた。
「ん~、実もいくつか成っておるのぅ。もったいないから市場にでも持っていって売るかのぉ~」
図らずも俺の作戦は成功したのであった。




