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聖女

とりあえず俺はマッスルベアの破壊痕をたどって移動した。

女の子を安全な場所まで送り届けるといっても、なにか手掛かりが必要だからだ。


女の子はガタガタと震えながらも、しっかりと俺の背中にしがみついていた。

危害を加えるつもりはないということは理解してくれたらしい。


女の子が元々いた場所を探してさまよっていると、破壊された檻のようなものがおかれている場所にたどり着いた。

檻は鉄製で、扉の部分がひしゃげてわずかな隙間ができていた。

檻の中から女の子と同じ匂いがする。


(これは?どういうことだ?)


「私、教会で暮らしていたんだけど、真っ黒なローブを着た男の人たちに檻に入れられて、無理やりここに連れてこられて、ぐすっ…」


(まさか正義教団?どうしてこの女の子を狙ったんだ?)


俺は『神眼』を発動して女の子のステータスを確認した。


種族:人間 ♀

名前:セラ

Lv:5

腕力:5

頑強:5

俊敏:28

知能:32

スキル:聖魔法

裏スキル:聖女神の加護


女の子の名前はセラ、そして裏スキルに『聖女神の加護』というのが記されている。

セラは俺と同じく、神の加護を授かった人間だった。

しかし『聖女神の加護』という裏スキルから邪悪な印象は受けない。

なぜ正義教団はセラを排除したいのだろうか。


教会で暮らしていたところ、正義教団に拉致されて、たまたま俺が暮らす森に檻に入れられて置き去りにされたのだ。


正義教団の活動目的がいまいちよくわからない。


しかしこうなってしまってはセラを人間のいる街に連れていくことはできなくなってしまった。

街には正義教団の手のものが潜伏しているだろうし、暗殺の危険は常に伴う。


やむなく俺はセラをフォレストウルフの群れに連れ帰った。


(セラ、今後は人間としてではなくフォレストウルフとして生きるんだ。それしかお前が生き延びる道はない…)


セラは俺がフォレストウルフの群れに連れて行ったことをどう思ったのかわからなかったが、意外とすんなり適応した。

しかし生肉をそのままかじるわけにはいかないので、聖魔法を工夫して火をおこす方法を編み出していた。


人間を群れに加えることについて、フォレストウルフ達は困惑していたが、俺が睨んだら誰も文句を言わなくなった。


老衰により死に場所を求めていた俺だったが、セラを放っておくわけにもいかず、さらに1年ほど群れにとどまった。


そして最終的には歩くことができずに、寿命を迎えて死んだ。


セラは俺に対して必死に聖魔法による回復を試みていたが、寿命を引き延ばすことはできないようであった。


こうして俺は充実した狼生を終えたのであった。


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