セラの復活
俺はフロリアを救いたいが、このまま出産を待っていたら親子共々真っ二つにされてしまう。
そこで俺は、『念話』を使ってフロリアに作戦を持ちかけることとした。
『念話』については以前エマルトリアと会話していたこともあり、意外とすんなり習得することができた。
(フロリア、この声が聞こえるかい?)
(!?だ、誰)
(驚かないで聞いてほしい。俺はキミのお腹の中にいる者だ)
(そんな、もう意識を取り戻したの?)
(どうやらそのようだ。そして、先ほどの会話も全て聞いていた。俺が産まれたら親子共々真っ二つにされて殺されてしまう)
(どうしようもないのよ。兄様は病的な臆病者だから、絶対に私やあなたを生かしてはおかないわ)
(俺もそう思う。そこで提案だ。俺は『夢幻収納』という裏スキル所有していて、触れた人間を収納することができる。収納された者は俺が死んだとしても、収納された状態で生き延びることができる。そして俺が次回に転生した時には外に出すことができる)
(自分自身は収納できないの?)
(どうやらできないらしい。さらに言えば、臍の緒で繋がっている状態ではフロリアのことも収納できないらしい)
(すでに試していたのね)
(そうだ。勝手なことをしてすまなかった)
(いいのよ。私もあなたの肉を強制的にとはいえ食べてしまった。最悪の体験だったけど、申し訳ないことをしたわ)
(それは別にいいんだ。ところで、ネルソンに一泡吹かせる作戦を思いついたんだが、協力してくれないだろうか。まぁ、フロリアに多大な苦痛を与えることになるし、『聖女神の加護』を持っていることが前提となる話なんだけど)
(私が聖女神様から加護を授かっていることも知っているのね)
(ああ、知っている。そしてフロリアに治療してほしい人がいるんだ。ぜひとも協力して欲しい)
(わかったわ。それで何をすればいいの?)
—-
その日の真夜中、俺達は行動を開始した。
まず、『夢幻収納』を発動してセラをベッドのすぐ近くに呼び出した。
セラは音もなく寝室に召喚された。
セラの腹には穴が空いたままだが、すぐにフロリアに治療をしてもらう。
(フロリア、頼む)
(はい)
『聖女神の加護』
みるみるうちにセラの腹に空いた大きな穴が塞がっていく。
「フロリア様?どうかされましたか?」
側仕えの侍女が気配を感じて声をかけてきた。
すぐさまセラはフロリアのベッドの下に潜り込んで、侍女をやり過ごす。
「何でもないわ。なかなか寝付けなくて。」
「そうですね。今日はあんなことがありましたし。ホットミルクでもお持ちしましょうか?」
「そうね、お願いしようかしら」
侍女がマグカップを手にベッドに近づいてきた。
その瞬間、ベッドの下に潜んでいたセラが侍女の背後に回り、ヘッドロックで絞め落とした。
暗殺者並みの手際の良さだ。
(キング!また会えたね!)
(セラ、良かった)
(さぁこれからが大変だぞ。フロリア、覚悟はいいか)
(はい、いつでも構いません)
フロリアは言葉に反して青ざめているし、セラもナイフを握る手が震えている。
(身重の身では逃げることもままなりません。セラさん、あなたにこの身を委ねます。同じ聖女神様の加護を授かったあなたに)
俺が提案した作戦、それはこの場での帝王切開であった。
回復したセラにフロリアの腹から俺を摘出してもらい、『聖女神の加護』で治療する。
そして後に現れるであろうネルソンに殺される前に『夢幻収納』に匿うのだ。
(早くしよう。ネルソンはこの瞬間にも俺たちの動きに気づいているかも知れない)
(はい!行きます!)
(っつ!ちょっと待って!私のことを気絶させてくれないかしら?絶対に我慢できないと思う)
(わかったわ。なるべく痛くしないから)
セラはベッドロックでフロリアを絞め落とすと、握りしめたナイフをフロリアの腹に突き立てた。
気絶しているためかフロリアはピクリとも動かない。
ややあって、俺はセラによってフロリアの腹から取り出され、臍の緒も切断された。
「キング、やっと会えたね」
「セラ、無事で良かった」
と、その時、部屋の外が騒がしくなってきた。
どうやら俺たちの行動に気づかれたらしい。
「侵入者だ!悪魔の子を逃すなぁ!」
「セラ、フロリアの治療を頼む」
「わかった!」
『聖女神の加護』
フロリアの腹の傷はセラの治療によって瞬く間に消え去った。
セラの方が『聖女神の加護』を使いこなしているらしい。
「ねぇ、やっぱり一緒に戦っちゃダメかな?」
「ダメだ、俺の中で大人しくしてろ。安全なところまで逃げられたらまた助けてもらうからさ」
「うん、約束だよっ!」
フロリアの治療が終わると同時に、俺はセラとフロリアを『夢幻収納』で収納した。
その直後、部屋の扉は開け放たれた。
部屋の真ん中に置かれたベッドの上にフロリアの姿はなく、血まみれの赤ん坊が鎮座しているだけだった。
その赤ん坊は、生後間もないというのに首が座っており、鋭い眼光で「敵」を見つめていた。
『アポカリプス』
次の瞬間、7本の極太レーザーが扉に向かって殺到し、駆けつけた兵士たちを焼き殺した。
俺はすかさず2発目を撃つ。
『アポカリプス』
今度は窓の方に向かって光線を放つ。
『神眼』
種族:人間 ♂
名前:
Lv:12
MP:9,998,001
腕力:1
頑強:1
俊敏:1
知能:12
スキル:無属性魔法
裏スキル:転生神の加護、神眼、夢幻収納、アポカリプス、神粘液
(よし、無属性魔法が使えるようになったぞ)
俺は『無属性魔法』を発動して、自分の体を浮遊させた。
先ほど『アポカリプス』であけた穴から外に出る。
『無属性魔法』は透明な手足のようなものだ。
イメージすれば、腕や脚のような魔力が俺の体から伸長し、物を掴んだり自分の体を移動させたりもできる。
ただし、自分の体を浮かせる場合には魔法の手足を伸ばす必要があるため、高度には限界があるようだ。
俺は壁の装飾や出窓の縁を掴んで地面に着地した。
あとは門から脱出を図るだけだ。
しかし、行手を阻む人影があった。
「ここから先へは行かせん」
筋骨隆々の戦士、アグリス・ブレイザーが仁王立ちしていた。




