5度目の転生
次に目覚めた俺は、暗くて温かい場所にいた。
この感覚を俺はよく知っていた。
俺は今、胎児に転生している。
しかし前回死んだ時はネルソンに斬り殺されたため、赤ん坊だったはずだ。
赤ん坊から胎児にダイレクトで転生するのは初めてのことなので、状況がうまく飲み込めない。
仕方がないので俺は自分のステータスを確認することにした。
種族:人間 ♂
名前:
Lv:1
MP:9,999,999
腕力:1
頑強:1
俊敏:1
知能:1
スキル:
裏スキル:転生神の加護、神眼、夢幻収納、アポカリプス、(神粘液)
(新しい裏スキルは『神粘液』か…粘液に関するスキルか、何らかの役に立つだろうか。しかし神スキルなのできっと役にたつことだろう)
身動きが取れないため、俺は『神眼』を発動して周囲の状況を確認することにした。
まずベットに横たわっている女性は俺の母親だろう。金髪の美人だ。
しかし両手両足はベッドの支柱にキツく結ばれており自由に身動きできないようになっている。
そして感情が欠落しているように、不気味なほど無表情だ。
まるで作り物の人形のように、無表情の妊婦がベッドに拘束されている。
そしてさらに周囲を観察すると、妊婦の身の回りの世話をしているらしい使用人が複数いる。
加えて1人異質な存在感を放つ男が、ベッドの真向かいに座っていた。
その男は両刃の大きな斧を床に突き立てて、微動だにしない。
斧は無骨な光を放っており、使い込まれているが良く手入れされている。
(なんだこの男は、なぜ斧を持っているんだ)
すると、使用人の1人が血走った眼で叫びはじめた。
「フロリア様の拘束を解いてください、アグリス将軍。一国の王女にこの仕打ち、あんまりだ!」
「うるさいぞ、最高指導者様のご指示だ。次に無駄口を叩いたら貴様を殺す」
「どうぞ私を殺してください!フロリア様はエルフの赤子の肉を食べさせられた時から、心が壊れてしまったのですよ!」
「2度目はないぞ」
その瞬間、両刃の斧が使用人の手首をはね飛ばした。
部屋は血で満たされ、阿鼻叫喚の地獄となった。
(エルフの赤子の肉を食べさせられた?)
俺は先ほどのアグリス将軍の言葉に疑問を抱いた。
(もしかして、フロリアは俺の前世肉を食べさせられて俺を宿したということか。そしてその後誕生するであろう俺は、即座に斬り殺されるということか)
ネルソンの考えが俺には理解できない。
やつは俺を邪魔だと思っているらしいが、なぜこんなに残酷な処置を下す必要があるのか。
ネルソンは俺が奴を上回る実力を身につけて襲われることを警戒しているようだ。
どうして俺がそんな事をする前提で考えているんだ。
そうでなければ多くの人々が苦しまなくて済んだはずなのに。
さらに言えば、どうしてそんなクズに俺は抹殺されようとしているのだろうか。
許し難い。
斧を持った将軍は満足したのか椅子に座り直した。
俺は激しい怒りを感じた。
何だこれは、とんだ茶番のようでもあるし、残虐な行為でもある。
俺は俺の母親となる人を少なからず大切に思っているし、母子ともども斬り殺すようにと厳命された将軍に対して怒りを覚えた。
黒幕であるネルソンが授かったのは『正義神の加護』だ。
正義神とやらはどういうつもりなのか。
正義教団と邪神の関係性はどうなっているのか。
正義神とやらはネルソンの蛮行を黙認しているということだろうか。
そしてこのような行いが神の認める正義だとでもいうのであろうか。
俺はわからないことだらけだったのもあり、むしゃくしゃして母親を『夢幻収納』でかくまってしまおうと思った。
すると、なぜかスキルは発動しない。
臍の緒で母親と繋がっている限りは、スキルは発動しないのだろうか。
まもなく俺は誕生する。
俺は誕生した瞬間に将軍に両断され、5度目の転生ライフはこれといった収穫もなく終わっていくのであろう。
当然、母フロリアも同時に死ぬだろう。




