神眼覚醒
俺を抱えたハイネ婆さんは防御魔法を発動しながら、走り出した。
護衛兵達の警備のおかげで安全に移動できる。
しかしどうしてもエマルトリアの様子が気になった俺は、どうにかして状況を把握する必要がないものか思案した。
(そうだ、『神眼』!これは俺が見たいと願ったものを見せてくれる神スキルだ。これを使えばエマルトリアの様子がわかるがしれないぞ)
さっそく俺は『神眼』を発動した。すると脳内にエマルトリア達の映像が浮かび上がった。
(成功だ!)
俺の目論見通り、『神眼』によってエマルトリア達のを遠視することに成功した。
しかし『神眼』では見ることしかできないため、音は聞こえない。
それでもおおよその状況は把握することができた。
エマルトリアはどうやら聖樹降霊術を使用しているらしい。
髪の色が水色に変わっている。
またエマルトリアの周囲には謎の発光体が複数浮かんでおり、それらがジャバザロックに向かって飛んで行ったり、攻撃を防いだりしている。
もしかすると精霊魔法かもしれない。
そしてエルフ兵達の体も薄く発光しており、絶妙な連携でジャバザロックに的確にダメージを与えている。
エマルトリアの『統率』スキルは的確に指示を伝達する効果があるようで、エルフ兵達の動きはまるで一糸乱れぬ舞踏を見ているかのようだ。
ジャバザロックも何らかのスキルを使用して対抗していたが、エマルトリア達が優勢だ。
しばらくしてこのままでは勝てないと判断したジャバザロックは、『邪神の加護』を発動したようだ。
ジャバザロックの身体がみるみるうちに膨らんで、完全なる化け物に変身していく。
すると今度はエマルトリア達が押され始めた。
エルフ兵達のステータスがジャバザロックにあまりにも劣っているため、こちらの攻撃が全く通らなくなってしまった。
そして1人のエルフ兵達がジャバザロックの攻撃をまともに喰らってしまって戦闘不能になると、いよいよエマルトリア達が劣勢となった。
「ハイネ婆さん、マズいぞ。このままじゃエマルトリア達が負ける」
「なんだって!加勢に行きたい所だけど、あんたを玉座の間に連れて行くのが先だよ」
「いや、このままで大丈夫だ。何とかなると思う。魔法を使う」
「ん?何をするつもりだい?」
「実は『神眼』スキルで遠視ができることに気がついたんだ。もしかすると魔法を遠隔で飛ばすこともできるかもしれない」
俺は『神眼』と並行して『無属性魔法』を発動した。
初めて使うスキルだったが、『アポカリプス』の使用で何となくコツを掴んでいたので、魔法は問題なく発動した。
『無属性魔法』はどうやら、俺がイメージした形のマナの塊を動かすことができるようだ。
俺は大きな掌をイメージして、邪生物となったジャバザロックを掴み上げた。
ジャバザロックが苦しそうにもがいているが、抜け出すことはできないようだ。
『無属性魔法』で動きを封じた俺は、『アポカリプス』を発動させる。
水平方向に打つと味方に被害を与えそうだったので、ジャバザロックの真上から地面に向かって放つ。
すると7本のレーザーがイメージ通りにジャバザロックに殺到し、あたりは爆発によって巻き込まれた土砂や砂埃によって埋め尽くされた。
天が引き裂かれるような轟音は、相当に離れている俺たちの場所からも聞こえるほどであった。
もうもうとした砂埃が晴れると、そこには陥没した地面と、瀕死のジャバザロックの姿があった。
エマルトリア達はあまりの出来事に唖然としている。
「よし、成功した。ジャバザロックはすでに虫の息だ」
「やれやれ、勇者様は本当に規格外だね」
ハイネ婆さんは呆れ顔で俺を見ているが、危機が去ったと知って安心しているようであった。
「とりあえずこのまま玉座の間まで急ぐよ。あそこにいれば間違いなく安全だからね」
俺たち一行は玉座の間まで到着した。
木製の分厚い扉を兵士が開ける。
「しかし妙だね。普通なら使用人たちがで迎えてくれるはずなのに」
それを聞いた俺はいいようの無い胸騒ぎを覚えた。
「やぁ、待ちくたびれたよ」
玉座の間で俺たちを待ち構えていたのはエルフの使用人ではなく、見たことのない金髪の男だった。
「やぁ、初めましてだね。キミは日本人?で合ってるかな?」
金髪の男は馴れ馴れしく俺に言った。
「なっ!お前は何者だ」
金髪の男は冷たい目をして俺の問いかけに答えた。
「何者って、キミと同じだよ。元日本人さ」




