アポカリプス
俺たちは間も無くして城壁に到着した。
エマルトリアが俺を抱き抱え、ハイネ婆さんは後ろで待機している。
近衛兵20名も同伴だ。
「皆さん、道をあけてください」
「女王陛下、なぜこのようなところに」
前線で戦っているエルフ兵達が慌てて駆け寄ってくる。
『統率』
いつもの天然なエマルトリアからは想像できないキリッとした声で、命令を下す。
「皆さん、道をあけてください」
「「「はっ!!」」」
エルフ兵達は先ほど狼狽えていたのが嘘のように、エマルトリアの言葉に素直に従った。
「それは、スキル?」
「そうです。いちおうこう見えても上に立つものとして、嗜みですわ、ほほほ」
そうして俺たちはアンデット軍団を見下ろすことができる位置に移動した。
眼下には10万のアンデット軍団が蠢いているのが見える。
城壁のすぐ近くに動かないアンデットが倒れている。
どうやら頭部を粉々に粉砕することでアンデットは無力化されるようだ。
「それではさっそく試してみよう。一つ言っておくが、ショボい効果のスキルでも笑わないでくれよ?」
「笑うなどということはありませんわ。それに、何かが起こる予感がします」
「では行くぞ!」
俺は初めてのスキルを発動させる。
『アポカリプス』
スキルを発動させた瞬間、俺の魂からキラキラした物が失われる感覚があり、目の前に円形の不思議な模様の光文字が7つ出現した。
そしてそれぞれの光文字の中心から7本のレーザーが発射され、俺がなんとなく意識を向けていたところに発射された。
レーザーはそれぞれ圧倒的な速度で目標地点に到達し、レーザーに接触したアンデットは一瞬で蒸発した。
ゴォォォォ!!
落雷のような地響きがあたりに反響し、凄まじい爆発を伴って大地を穿った。
もうもうと立ち込める土煙が流れていくと、大量にいたはずのアンデット軍団はごっそりと数を減らし、大地にはレーザーで抉られた痕跡が生々しく刻まれていた。
「こっ、これは…」
エマルトリアも思わず絶句するほどの高威力であった。
裏スキル『アポカリプス』、ここにきて俺は待望の攻撃手段を手に入れたのであった。
「凄い威力だ。まさかこんなにも凄い効果だとは思わなかったな」
俺は消費したMPを確かめるため、ステータスを確認した。
『神眼』
種族:エルフ ♂
名前:ハルト
Lv:78
MP:9,999,000
腕力:1
頑強:1
俊敏:1
知能:78
スキル:
裏スキル:転生神の加護、神眼、夢幻収納、アポカリプス
たった一撃で屠ったアンデットの数が多すぎて、Lvが一気に78まで上がってしまった。
しかしLvを上げる際に知能以外のステータスをいっさい鍛えなかったからか、初期値の1から全く変化していない。
これはLvだけ無闇に上がれば良いという物ではないようだ。
そして消費したMPだが、驚愕の999だ。
しかし俺の膨大なMPを持ってすれば、『アポカリプス』をあと10000回以上放つことができる。
実質的に打ち放題に近い。
『アポカリプス』を打ちまくってアンデット軍の数をどんどん減らしたい。
「エマルトリア、どんどん撃つぞ。アンデットの数が減れば勝機はある」
「は、はい!今度はあちらにお願いします!」
『アポカリプス』
エマルトリアが指差した方向に『アポカリプス』をぶっ放す。
すると先ほどと同じように魔法陣が出現し、7本の破壊レーザーが敵を薙ぎ払う。
強いて言えば魔法陣が出現する時の溜め時間が数秒かかるので、動きの速い相手の場合には避けられてしまう恐れがある。
しかし今の相手はアンデット軍団だ。
動きは非常にのろく、大軍であるために小回りは効かない。
当然、俺の『アポカリプス』は面白いように命中した。
ゴォォォォ!!
『神眼』
種族:エルフ ♂
名前:ハルト
Lv:99
MP:9,998,001
腕力:1
頑強:1
俊敏:1
知能:99
スキル:無属性魔法
裏スキル:転生神の加護、神眼、夢幻収納、アポカリプス
先ほどと同じ程度の数のアンデットを倒したはずだが、Lvは99となっている。
Lv99で打ち止めなのだろう。
エマルトリアやハイネのLvも99だったな。
さらにステータスは知能のみ上昇しているが、99までしか上がっていない。
Lvが上がれば勝手に全ステータスが上がるわけでは無いらしい。
そして通常スキルに無属性魔法というのが追加されており、どんな効果なのか気になる。
「エマルトリア、『無属性魔法』というスキルを習得したぞ。これで俺も魔法が使えるぞ」
「それは素晴らしいことですわ」
「む、何か飛んでくるよ。『木魔法』リーフシェルター」
ハイネが魔法を使い、俺とエマルトリアの周囲に枝葉による防護壁が現れた。
次の瞬間、ドン、という衝撃と熱波が俺を襲った。
「これは残念、今の一撃で屠れるほど簡単ではないようですねぇ」
突如としてシルクハットに黒マントを羽織った美男子が空中に立っていた。
どうやら先ほどの攻撃を放ったのは、この黒マントのようだ。
「あなたは誰かしら?このアンデット軍団を率いる将軍かしら?」
「私の名はジャバザロック。正義教団の4天王と呼ばれています。信託により悪魔の子を討滅するために参上いたしました」
「正義教団の4天王だと!?」
ジャバザロックと名乗った黒マントは、正義教団の4天王だという。
とすると、スカーフェイスも4天王だったのだろう。
『神眼』
種族:ヴァンパイア ♂
名前:ジャバザロック
Lv:99
MP:3578
腕力:755
頑強:686
俊敏:764
知能:799
スキル:吸血、火魔法の極み、魅了、霧化
裏スキル:邪神の加護、屍体隷属術、血糸操術
Lvは99でスカーフェイスと同じく、肉弾戦闘に自信があるのだろう。
ステータスはバランス良く、知能も高く火魔法を極めているようだ。
他にも魅了、霧化、血糸操術などの厄介そうなスキルが複数ある。
正直言ってかなりの強敵だ。
今の俺では歯が立たないだろう。
俺には『アポカリプス』という武器があるが、威力が高すぎて迂闊に味方に向けて放つと大変なことになる。
動きの速い相手に対しては使い所が難しい。
「みんな、こいつはヴァンパイアだ、吸血、火魔法、魅了、霧化、血糸操術を使う。気をつけてくれ!」
「分かりました。ハイネ、勇者様をお願いします」
「わかったよ」
「それでは…」
『統率』
「ハイネは勇者様を守りつつ退却。近衛兵10名はハイネと共に玉座の間に戻り守備を固めなさい。残りの10名は私と共に戦闘です」
「「「はっ!」」」
「エマルトリア、あんたはどうするつもりなんだい?」
ハイネはエマルトリアから俺を受け取ると、心配そうにエマルトリアの様子をうかがう。
「私はこのヴァンパイアを討ち取ります」
「ほほぉ〜う、随分と自信家のご令嬢だ」
「やめろ、エマルトリア!俺も一緒に戦うぞ」
「ハイネ、早く行きなさい。勇者様、どうかご無事で」
「待てー!エマルトリアー!」
俺は赤子のため、もがけどもハイネの腕の中から飛び出すことはできなかった。
エマルトリアはジャバザロックと一騎打ちをするため城壁に残り、俺達が逃げ延びるための時間稼ぎをしてくれた。
俺はハイネの腕の中で、無力を痛感していた。




