ハルト
いよいよ俺の転生の日、誕生日が近づいてきた。
今回俺はエルフとして転生する。
エルフの人たちから希望者を募ったところ、100名を超える応募があったようだ。
最終的には盛大なくじ引き大会が開催され、1組の夫婦が選定された。
エルフの母の名はセルヤ、夫の名はエルト。苗字は無いらしい。
「セルヤ、頑張れ!」
2時間もの奮闘の末、ようやく俺はこの世に誕生した。
「はぁ、はぁ、勇者様、いえ、この子の名はハルト、私たちの子よ」
俺は転生ライフで初めて名前を授かった。
名はハルト、嬉しい。
そしてステータスはこんな感じだ。
種族:エルフ ♂
名前:ハルト
Lv:1
MP:9,999,999
腕力:1
頑強:1
俊敏:1
知能:1
スキル:
裏スキル:転生神の加護、神眼、夢幻収納、アポカリプス
前回人間に転生した時と同じように、初期ステータスは1で固定のようだ。
MPは相変わらず圧倒的な数値となっており、エルフの里で最も数値の高いエマルトリアと比較しても遥かに俺のMPの方が多い。
問題は今回獲得した裏スキル『アポカリプス』だが、スキル名だけ見てもどんな効果なのか想像がつかない。
なんとなく大災害を連想させるような気がするので、破壊的な効果を持っているかも知れない。
と、その時エルフの伝令兵が駆け込んできた。
「伝令!アンデットの軍団が里に接近しております。数、およそ10万!」
「急いで戻ります。勇者様、いえ、ハルト様もこちらへ。玉座の間が最も籠城に適していますので」
俺の出産にはエマルトリアも立ち会っていた。
ここは城の一室だが、より籠城に適している玉座の間にみんなで移動する。
「こうして会話するのは初めてだね、エマルトリア」
俺は毛布に包まれて、エマルトリアに抱っこされている。
「こうしてハルト様をこの腕に抱くことができて嬉しく思いますわ」
「まさかあのマナポーションに勇者様の魂が宿っていたとはねぇ。長く生きていると驚くようなことが起こるわ」
ハイネ婆さんも後からついてくる。
俺とエマルトリアを囲むようにエルフの近衛兵が20人ほど待機しており、移動中も厳重に警護されていた。
「しかしアンデットの軍団10万か、そんな大軍をどうやってここまで移送したんだろうね」
「それは分かりませんが、襲撃のタイミングから見て正義教団の軍団とみて間違い無さそうですわ。こんな大軍を派遣できるほどの軍事力を持っていたなんて…」
エルフの里の兵力は弓兵4500魔法兵4500の約9000名、弓兵は城壁の上から接近するアンデット軍団を射殺していった。
魔法兵もそれぞれ得意な魔法を駆使してアンデット軍団を撃退する。
戦いは一昼夜続き、いまだに城壁は健在である。
しかし疲れを知らないアンデット軍団に対して、エルフ兵達は疲労困憊している。
予備の兵力も投入して交代で休憩をとっているが、矢はだんだんと減っていき、魔法兵達もマナを使い果たす者が続出した。
アンデットも順調に数を減らしているものの、動かなくなったアンデットが城壁の周囲に積み重なっており、いずれ屍の山を乗り越えて城壁内部にアンデットの侵入を許してしまうと厄介だ。
俺はこのままではジリ貧だと思い、エマルトリアにある作戦を提案した。
「エマルトリア、俺に考えがある。俺を城壁に連れて行ってくれ」
「ダメですわ、ハルト様を差し出すなんて。そんな真似をするくらいなら、私が城壁の外に打って出る方がマシです」
エマルトリアの勇ましい言葉に慌てる近衛兵達であった。
この人ならやりかねないと思われているのかも知れない。
「いや、違う。俺は自殺するつもりじゃ無いぞ。実は今回の転生で獲得した新しい裏スキルを試してみたいんだ」
「まぁ、それは一体どんな効果のスキルなのでしょうか?」
「それがよくわからないんだが、スキル名は『アポカリプス』というんだ。なんとなく大災害を連想させるスキル名だから、もしかすると状況を打破することが出来るかも知れない」
「それでも…」
「連れて行っておやりよ。それに私たちが囲んで護っていれば不測の事態も起きないだろう」
「確かにそうですが」
「頼むエマルトリア、エルフのみんなの役に立ちたいんだ」
「分かりました、ハルト様を城壁までお連れします」
エマルトリアは感極まったようで、眼に涙を滲ませていた。




