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聖樹

マナ総量だけはぶっちぎりで地上最高だということが判明した俺ではあったが、通常スキルは転生では持ち越せないため、転生直後に魔法無双するのは難しそうであった。

あるとすれば、次回以降の転生でなんらかの魔法を使うことができる裏スキルを獲得することであるが、良いスキルを獲得できるかどうかについては運要素が強い。


(そういえば、セラさんを回復するに当たっては心当たりがありますわ。勇者様は『聖女神の加護』という裏スキルをご存知ですか?)


(『聖女神の加護』、それなら知っている。セラが保有していたからね)


(なんと、そうだったのですね。非常に珍しいスキルではありますが、他にも『聖女神の加護』を持っている人は存在するはずです)


(『聖女神の加護』を持っている人物を探し出して、セラを治療してもらうってことか!それはかなり現実的だと思う)


『聖女神の加護』持ちにセラを治療してもらうのは、良い方法だ。

俺はあの奇跡的な効果を何回も見ているため、間違いなく治療可能だと確信した。

しかし問題は『聖女神の加護』持ちの人物をどのように探し出すかだ。


(『聖女神の加護』を持つ者を探し出す方法に心当たりがあります。聖樹様に導きをいただくのです)


(聖樹様?)


(はい、我らエルフの里の中核を成す大いなる存在、それが聖樹様です。聖樹様は根を通して大地と繋がっており、地上にいるすべての人々を見守っておられるのです)


(ぜひともお願いしたい)


(かしこまりました)


エマルトリアは嬉しそうに返事をした。


(面倒をかけて申し訳ない)


(面倒なんてことはありません!むしろ光栄に思います)


エマルトリアは鼻息を荒くして俺を抱えた。


「どこへ行くつもりだい?」


「聖樹様のところへ向かいます。」


「聖樹様のところか、私は長旅で疲れたから先に休ませてもらうよ」


「誰か、ハイネに部屋を案内してあげて」


ハイネが側仕えエルフたちに先導されていった。


—-


エマルトリアは俺を抱えたまま、玉座の間の奥にある廊下を歩いて行った。

廊下には不思議な植物の根が繁茂しており、ぼんやりとした光を放っていた。

しばらくすると、今度は長い階段を登っていく。

階段の壁にはやはり植物の根が繁茂しており、登っていくごとにだんだんと根は太くなって行った。


そして階段を登りきり木製のドアを開けた時、俺の目には壁と見間違うほどの巨大な幹と、遥か上空に亭々と葉を繁らせた大枝が見えた。


(こ、これが…)


(そう、聖樹様です。しばしお待ちください、聖樹様に降りてきていただきますので)


エマルトリアはそういうと、目を閉じてスキルを発動させた。


『聖樹降霊術』


次の瞬間、エマルトリアの髪の色が亜麻色から明るい水色に変化した。

そして、通路で見た植物の根が放っていたような光を浴びた。


(初めまして、勇者よ。お初にお目にかかる)


(は、初めまして、聖樹様)


(畏まらずともよい。立場の上下などに拘らず、普通にしておくれ)


(わかりました)


聖樹様はエマルトリアに憑依しているらしい。

『聖樹降霊術』はこのための裏スキルだったのだ。


(それで、何が聞きたいのかは大体わかっておる。『聖女神の加護』を持つ者は正義教団本部、旧ムガール王国王都にいる)


またしても正義教団か、つくづく俺の運命にかかわってくる奴らだ。

セラを助けるためにも、やはり俺は正義教団と決着をつけなければならないらしい。

俺の死か、奴らの壊滅か、二つに一つしか道はない。

しかも正義教団は俺が初めて転生したムガール王国に本拠地を置いているらしい。許せん。


(教えてください聖樹様、正義教団は一体なぜ俺を執拗に狙うのでしょうか)


(ふむ)


聖樹様はしばらく考え、そしてこういった。


(奴らの狙いは勇者、いや、『転生神の加護』を持つ者を、人族もしくは人亜族に7回目の転生をさせることじゃろう)


(7回目の転生をさせることが目的?なぜでしょうか)


(ふむ、それはの、人間の魂が正六面体であり、7つ以上の裏スキルを獲得した瞬間に魂が崩壊するからじゃ)


衝撃的な事実が発覚した。

魂の存在をついさっき知ったばかりの俺だったが、それが正六面体という形だったこともはじめて知った。


聖樹様は続けてこういった。


(勇者は現在何個の裏スキルを獲得したのかの?)


俺が現在保有している裏スキルは『転生神の加護』『神眼』

『夢幻収納』の3つだ。聖樹様にそれを伝える。


(なるほど。勇者が獲得したその3つの裏スキルは、それぞれ魂の一面に一つずつ刻まれておる。人間の場合は刻み込まれる裏スキルの数が最大で6個まで。それを超える数の裏スキルが魂に刻まれると、魂は崩壊してしまうのじゃ。ま、7つもの裏スキルを持つ者はこの世に存在しないのじゃがの)


(なるほど、俺は『転生神の加護』の効果によって、人間に転生するたびに裏スキルを一つ獲得することができる。その効果によって、俺の転生回数には限界があるということですか)


(その通りじゃ)


俺は7回目の転生でこの世に誕生した瞬間に、魂が崩壊して消滅してしまうのか。

そして正義教団は俺に一刻も早く7回目の転生を迎えさせようとしているらしい。


(正義教団は邪神信仰者です。奴らは俺を抹殺して、邪神による世界征服を企んでいるのではないでしょうか)


俺は気になっていたことを聖樹様に尋ねた。


(その可能性はあり得るじゃろう。奴らが行動を起こすのは勇者が人間に転生した時と、レアな裏スキルを持った者が誕生した時じゃ。レアな裏スキル持ちに対しては教団に入るように勧誘し、逆らうと始末しているようじゃ)


かつてセラも『聖女神の加護』を持っていることを理由に攫われ、鉄の檻に入れられて森に捨てられたことがある。

きっとセラは正義教団に入るように勧誘され、断ったのだろう。

そして過去三回の転生では、必ず俺の誕生直後に襲撃があった。


(おそらく、正義教団の幹部に、他人の裏スキルを察知する能力を持つ者がいるはずじゃ)


聖樹様も俺と同じことを考えていたらしい。


(それでは、俺がエルフとしてこの地で転生するのは危険ではないでしょうか。罪のないエルフたちを戦いに巻き込んでしまうことになる)


(ふぉっふぉっふぉ、勇者は優しいのじゃな。しかし心配はいらん。奴らの狙いがわかっている以上、勇者は堅牢な城にいた方が良い。それに、わしやエルフ達は勇者の助けとなるようにという教えに従うつもりじゃ。エマルトリアもそう申しておったじゃろう?)


(それは確かにそうですが…)


(それにエルフはお主が考えている以上に強い。エマルトリアのステータスを見たであろう)


(はい、ものすごいMPと知能の数値でした)


(それに、わしを降ろした状態で戦うこともでき、その場合にはさらに能力が向上する。他にも腕利きのエルフ達は大勢いるぞ)


(それでは…)


(うむ、安心して転生するが良い。エルフの里は勇者様の転生を全力でサポートするのじゃ)


聖樹様の力強い言葉を聞いた俺は、4回目の転生ライフをエルフとして迎えることを決めたのであった。



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