検証
さっそく俺を転生させるための手配を進めるエマルトリアだったが、俺はそれに待ったをかけた。
(すまない、転生についてはしばらくまってもらえないだろうか)
(それはなぜでしょうか?)
エマルトリアはきょとんとした顔で俺を見つめた。
ハイネ婆さんと比べると、孫娘のような無垢な反応に俺は驚く。
(実は、前回の転生の時に習得した『夢幻収納』という裏スキルの練習、というか検証がしたいんだ。セラやスカーフェイスを収納していることは説明したと思うが、俺自身このスキルを十分に理解できていないんだ)
(それは大切なことです。どんな検証を考えておられるのでしょうか?)
(俺が最も知りたいことは、『夢幻収納』に保管しているセラの身体の状態だ。就農した段階ではかろうじて生きていたが、その後どうなったかわからない。最悪の場合には…)
俺はその先の言葉を繋げることができなかった。
最悪の場合には、セラは既に生き絶えているかもしれない。
しかし転生で授かった裏スキルには、きっと奇跡的な効果があるはずなんだ。
(ふむ、それでは勇者様、私を『夢幻収納』にて収納してくださいまし。そしてきっかり一時間後に私を外に出してください。このようにすれば、中の空間の様子や時間の流れがどのようになっているかについて確認することができるはずです)
エマルトリアが提案してくれたやり方に賛同した俺は、エルフの女王のフットワークの軽さに苦笑しつつもエマルトリアを『夢幻収納』することにした。
「ハイネ、これから私は勇者様に収納されてしまいますが、心配しないでください。1時間経ったら勇者様にそれとなく伝えてください」
「ん?なんだって?収納?」
側仕えのエルフたちもエマルトリアの突飛な言動に困惑している。
(それでは勇者様、お願いいたします)
エマルトリアはマナポーションのガラス瓶にそっと口付けをした。
触れてさえいれば良いのだからキスする必要はないのだが、余計なことは言わなくていいな。
(よろしく頼みます。『夢幻収納』)
「「「なっ!!」」」
その瞬間、エマルトリアは俺の『夢幻収納』によって消えてしまった。
エマルトリアがいなくなったことに驚愕した側仕えたちが大騒ぎになった。




