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放逐されたよ(怒)

 私は思わず頭を抱えた。再び頭痛が舞い戻ってきた。どうしても理解出来ない。他人事のように考えてみても──ダメだ。理解が追い付かない。


 『貴女は死にました』だと。これは他の高校生達にも表記されているのか。もしかしたら転生の類で、1回死んじゃっているとかなのか。にしても他の皆はテンション冷めないご様子だけど。こんな表記あったら冷めるよね、萎えるよね。それがないって事は、そういうことなんじゃないだろうか。


「この水晶に手を翳してください」

「は、はい」


 1人慌てている私の所へさっきの男性が近づいてきた。後ろには騎士みたいな格好の男性を侍らしている。その騎士さんが水晶を持っていてて、言われるがまま、ずいと差し出された水晶に手を乗せた。


「ふむ、これは······これは、なんと······!?」


 多分だけど1つ目の【降霊】を見てから2つ目の【流転】を見た反応、だよね。やっぱりあの水晶は他人のステータスを覗くものなんだ。やばいかも。あのテキストをそのまま見られたら、少なくない誤解を生み出すと思う。


 訂正しようとしたけどその人は私から離れ、奥にある玉座みたいな椅子に腰掛けている、この場に居る中で1番偉そうに座しているおじさんの傍に寄った。そして何やら耳打ちしている。


 やばい。絶対やばい。


 冷や汗がダラダラと流れ出る。


「その者は魔族から送られてきた刺客だ!勇者様方の召喚を聞きつけたに違いない!即刻魔の森へと追放せよ!」


 多分王様。腹のでっぷりと出た偉そうなおっさんが叫ぶ。王様は私を指していた。


 言われている意味を理解しようと頭を回す。え、理解出来ないんですけど。私は何を言われたの?


「え、な、何するんですか」


 周囲に控えていた騎士達の内2人が私の傍に近寄り、両腕を拘束してきた。こちとら貧弱な女子大学生ぞ。鉄の鎧を纏う大の大人に抵抗なぞ出来るか。あっという間に捕まり地面に膝をつかされた。


 それから王様が何やら大声で話し、高校生達と会話し、私はそれを他人事のように聞いていた。騎士に掴まれる腕が痛い。


 演説のような大声のお話が終わった。最後に告げられたのは「追放」。罪人扱いかな。罪人扱いなんだろうな。


 スキルの説明で私は死人だと判断され、高校生達から「知らない人」と突き放された。話していた内容を少し聞き取ったけど、どうやら当初の予定は勇者5人の召喚だったらしい。つまり6人目の私は不要というか、予定外というか、異物というか。これ幸いにと排除の動きが進んだ。


 王様やお姫様、側近の人達、高校生達が出ていく。その間私は拘束されて跪かされていた。段々と両腕が痺れてきた。


 その後に無理やり立たされて、お城の大広間から外へ運ばれ、乱雑に引っ張られ、どこへ行くのかと思えば街を囲う壁の門。そしてお外へぽいっ。ゴミを捨てるように捨てられた。最後に突き飛ばされたから思い切り転倒した。擦り傷が痛い。


 殺さないだけ有難く思えと言わんばかりに何も貰えず、私を捨てた騎士2人は門の奥へと消えてった。門番の人も何かを悟ったようだけど、しっしっと手を払うように振ってくる。まるで野良犬を追い払うかの如く。


 絶対にアイツら私がひ弱な人間だって分かってやってる。死人じゃないと理解してる。聞こえてきた魔族とやらじゃないって、刺客なんかじゃないって分かっているはずだ。


 じゃなければ殺すはずだろう。


 危険人物扱いするなら殺すはずだ。だってそれが一番手っ取り早く危険を排除できるのだから。仮に私が本当に刺客だとして、ここで見逃す理由はなんだ。泳がせるとかそんなところか。その可能性は零に近いだろ。泳がせるってなんだよ。意味ねーだろ。多少なりとも情報漏れんだぞ。


 まあつまりだ。殺さないということは、私を刺客だとかそういう風に見ている訳じゃないって事だ。そして若干の負い目を感じているってことだ。流石に自分達の手で殺すのは気が引けたってことだ。誘拐してきた自覚はあるのかな。


 私の【降霊】というスキルを見て、殺したら何か災いでとあると感じたとか。その可能性も無くはないけど、それが出来るのなら恨まれた時点で終わりだろ。私は死んだら呪うぞ、この国。


 いっそ殺してくれた方が楽だったのに。そしたら何も考えなくてよかったのに。諦めがついて死を受け入れられたのに。


 いつの日か報復してやるからなぁ。絶対にだぞ。絶対にな。


 恨み言を胸中で吐き捨てながら、手を着いて立ち上がる。くそ、ずっと掴まれていたから凄く痛い。痣が出来てる。


 門を背に私は歩き始めた。目の前は森だ。鬱蒼とした森。どうやらこの国は外壁に守られた国のようだ。その壁が森との境界となっている。壊れてしまえ。


 例え森だろうがあんな糞共が居る国から離れたい。人を人と思わぬ糞共め。いつか報復してやるぅ。くそぉ。死んだら化けて出てやるからなぁ。


 重たい足を1つ前に進めた。進む先は深い森。


 こうして私の孤独な旅が始まった。

短編で出してた分がここまでですね。少しだけ書き足しました。ここから少しだけ続きます。

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