勇者召喚に巻き込まれたよ
こんにちは。わたしりんね。大学生。これから学校に行くところだったの。駅に向かってぇ、歩いててぇ。そしたらね、足下に変な光が現れて、前を歩く高校生達を包み込んだの。その光にね、私も入っちゃってて。慌てて逃げようとしたんだけど手遅れでね。目眩がして、目を瞑って、へたりこんで。漸く落ち着いたなと思ったら、なんかぁ、知らない場所に居たの。知らない人達に囲まれてぇ、りんねこわーい。おうちかえるー。
──おっと。衝撃のあまり少しだけ幼体化してしまった。
説明は前述の通りに。自己紹介も以下同文で。私が大学へ登校しようと駅目指して歩いていると、前方を歩く高校生集団(男女比3対2の計5人)に追い付いた。彼等彼女等はくっちゃべりながら歩いているせいか、やたらめったらに遅い。嘗てノロマ、鈍重、亀と揶揄された私にそう言わせるとは、こやつら中々やりおるぜ。
朝と言えどもこの時期はクソ暑い。とにかく暑い。涼し気な空気感はあるんだけど、陽射しに当てられるともう駄目ね。私はさっさと駅のホームの日陰に入って、少しでも体を休ませたかった。さぁ抜かしてやろう、さぁ行こう、通りにくいな、退けやごらぁ、3列はあかんやろ、せめて2列で歩きなさいよ。そう四苦八苦していると、突然、足下がぱーっと光り輝いたではないですか。
慌てて離れようと足を止めたけど間に合わなかった。片足がその光に触れており、頭痛と吐き気と目眩に襲われた。思わず地面に座り込んでしまう。見えないから分からないが、高校生達も同じ状況だったと思われる。
そして気付いたら見知らぬ空間に居たってわけ。ね、現実逃避したくなるでしょ?いや、現実的じゃないからもはやこれ自体が逃避なのかも。あれか。幻覚を見せられている的な。脳が幻覚作っちゃってる的な。夏の暑さにやられたか的な。実際は熱中症で倒れて救急車の中でした的な、若しくは走馬灯的な。
「勇者召喚は成功だ!」
「おお!」
「よくやったぞ!」
「勇者様!良くぞお越しくださいました!」
ワイワイガヤガヤ。聞こえる騒音は幻聴かな。これも脳が作り出したフュージョンじゃないやイリュージョン。雑音が話し声に聞こえることって偶にだけどあるよね。一人暮らししてる私にはあるあるなのです。まあ、ここまで鮮明に聞こえることは無いけどね。
頭痛と吐き気が治まったので、震える右手を動かしてほっぺを抓る。うーん、痛い。痛いなぁ。どうやら夢じゃないみたい。
つまり、まさか、まさかの、まさかりの、ホントのふぉんとにっ。異世界来ちゃったっ。てへっ。ほしまーくっ。