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かみさまの正体

「ちょっとまってください!かみさま手伝うって、どういうことですか!?」


 ある日の昼下がり。「東の地」の真ん中にある小さな村。そこのかみさまをまつる祠の目の前、わたしは目の前に座る銀髪の青年につかみかかっていた。肩をゆするわたしはうさぎの(あやかし)の麗火。そして肩をゆすられながら困り笑顔をうかべる青年が、ここのかみさま、月華さま。


「ま、まぁ落ち着きや。とりあえず手ぇ離し?」


 前後にゆれながら笑う月華さまの声ではっと我に返る。


「あっ・・・も、申し訳ありません!ご無礼を・・・」


 指摘されてから自分が村を守るかみさまにとんでもないことをしたことに気づく。あわてて手を離した。

_とても、顔が近かったことにも気づく。はずかしい。


「ええよ別に。気にするようなこととちゃうし。俺がちゃんと説明せんかったのもいかんし」


 真っ白い手をひらひらさせてあっけらかんと笑う月華さま。彼のそんなおおらかさにはいつも助けられているし、見ていてこころが楽になる。

 あっけらかんとした少し高い声は、そのままの声音で続ける。わたしからしてみれば衝撃の事実となるとんでもないはなしを。


「まずめっちゃ大事なこと言うで?俺ほんまは神様じゃないんよ」


「・・・はい?」


 今日二回目の「はい?」だ。当たり前だ。月華さまがかみさまじゃなかったら、じゃあ一体なんだって言うんだろう。月華さまはわたしが生まれたときからかみさま。うん。まちがいない。


「かみさまはかみさまですよ?」


「だからちゃうんやって。俺は昔から東の地に住んどって、周りよりちょっと強いってだけの妖なんや。それが後からきた人間が神様やなんやと祀り上げよって・・・なんか悪い気分でもなかったけん、神様のフリを続けて五百年。今更ただの妖やなんて言われへんし、まぁ困ってるわけよ」


 一息に話した月華さまが顔を上げたとき、わたしはきっと人生最高にまぬけな顔をしていたことだろう。そしてわたしは月華さまの、


「ちなみに俺の他の神様連中みんなそうやから」


 という次なる一言でさらなる衝撃を受けることに。


 「東の地」には山をはさんで六つずつ南北に別れた十二の村があって、その一つ一つに「かみさま」がいる。一つは数百年前になくなっちゃったらしいから、今あるのは十一個。ちなみにこの村は北側にある。


 その十二人が、全員普通の妖って・・・


「・・・やばいですね」


 我ながら語彙力がない。欠除してる。でもそれしか言いようがない。


「やばいやろ?で、力が強い言うてもただの妖やからな、流石に限界があるんよ。俺が使えるんは光と幻だけやし。雨降らすとか無理なんや。前に雨降らせたんは別のやつ」


 なんでそんなに軽く言っちゃうの?それ、わたしが月華さまに憧れだした出来事なのに。なんだか、わたしの中で「かみさま像」がくずれた音がした。


「・・・幻滅したやろ」


「・・・」


 なに言っていいかわからなくて、無言でうつむいて地面をながめることしかできなかった。

 まぁ、がっかりしなかったって言えば嘘になる。ずっと信じてきたかみさまは、ほんとうはかみさまなんかじゃなかった。わたしと同じただの妖。


「そうよなぁ。当たり前よなぁ。でも、俺の側にいる奴には知っといて貰わんとあかんねん」


「・・・ん?」


 今までのもやもやが、その言葉で混乱に塗りかえされる。

 そばにいるって何?え?どういうこと?わたしが、月華さまのそばに?待ってなになになに?


「ん?ってなんやし。家にいると蒼炎の言うこと聞かんといけんのんやろ?ならうち来ればええやん」


 はい?何をさらっと!?つまりそれって、それって、


「ど、同棲・・・?」


「えらい難しい言い方するなぁ。まぁそういうことや。何も二人暮しとかとはちゃうくて、他の奴らもおるけどな。そこは安心し?」


 どこに安心要素があったの?いや、もう、それは願ったり叶ったりだけど!だめだ顔が熱い。やばい。心臓がうるさい。おどろきと喜びと混乱がいりまじって吐きそう。


 _あぁ。別に、月華さまがかみさまじゃないことなんて問題じゃなかったんだ。わたしは、月華さまを慕っている。かみさまでも、そうじゃなくても、わたしは彼が好きだから。


「じゃあ、そういうことでええな?」


「はい!よろしくお願いします!」


 思いっきり返事をしたわたしの顔を見て、琥珀色の目が満足げに弧をえがいた。これから毎日この顔見れるのか。ますますいじめられるな、わたし。


「それじゃあ麗火ちゃん。早速初仕事や」


「なんでしょう!?なんでもやります!」


 もう何でもできる気がする。今なら空中で三回転ぐらいできる。もう怖いものなんて_


「蒼炎からうちに来る許可もらってき?」


「・・・えぇ?」


 嘘言った。父さまは怖い。でも、月華さまのためならがんばれる、かもしれない・・・



 








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ちょっとした登場人物紹介


麗火れいか

うさぎの妖。十二歳。薄茶色のボブカットに同じ色のうさ耳と尻尾、深緑色の目。

歌が得意で、歌に癒やしの力を乗せる事ができる。音楽全般の才能がある。

優しいけど気弱、自己主張はあまり得意じゃない。天然。ちょっとずれてる。

時々突拍子もない行動にでる。自己肯定感がない。村の女の子たちからいじめられてる。

父のことは尊敬しているけど苦手。

月華に淡い恋心を抱いている。


月華げっか

きつねの妖。神様のフリをして生きてきた。千才超えてるらしい。

腰まである銀髪に同じ色の狐耳と尻尾。琥珀色の目。基本は糸目で細めている。いけめん。

愛用の扇を広げて扇ぐことで幻を作り出す。扇を鉄扇に変えることもできる。

飄々としたお調子者。調子にのって取り返しのつかないことになることも。

基本優しいけど、歯向かう者や敵には容赦ない。麗火のことを気にかけている。

家族はいない。部下と一緒に暮らしている。

 

ようやく二話投稿です。ペースクソ遅です。忙しいの高校生。

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