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わたしとステータス


 ………ほんとに出てきちゃった。


 冗談だったのに。

 あまりの衝撃に、わたしは口をポカーンと開けて、しばらく呆けた。

 自分でも相当間抜けな顔をしていたと思う。

 今のわたしを見た人は、きっとお腹を抱えて笑い転げるだろう。


 ステータス。

 地球にはなかったもの。


 これでここが地球ではない異世界であることが確認された。


 ステータスがあるということは、この世界のどこかしらではステータスの需要があるということ。

 あるとしたらだけど、身分証明書とかにも用いられる可能性がある。

 「ステータス」と言うだけで自分の正体が証明される。

 こんなに手っ取り早いものはない。

 日本だったら間違いなく何かに使われているだろう。


 とにかく、ステータスは大切だ。

 この世界がまだどんな仕組みかはわからないけれど、ステータス次第で今後の身の振り方も変わってくるかもしれない。

 もう一度確認してみよう。


 「ステータス」


ーーーーー《ステータス》ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 LV.1 シャン    性別:♀ 年齢:6歳   適性:闇、土、雷


 HP:26/29

 MP:74/74

 力 25

 俊敏 24

 器用 48+7

 運 37


【称号】

 「吸血の真祖」「鍛冶屋の娘」 


【固有スキル】

 「吸血」「悪食」「真祖の風格」


【スキル】

 「威圧LV.1」「夜行性LV.1」「毒耐性LV.2」「隠密LV.3」「闇魔法の心得」「土魔法の心得」「雷魔法の心得」「生活魔法」「料理LV.2」「編み物LV.4」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 

 ……わあ。


 半透明のウィンドウが布団の中の空間に開く。

 ……慣れるためには随分と時間かかりそうだ。

 どこから見ればいいのかよくわからないけど、最初からいこう。


 まず、HP。体力だ。

 表現の仕方は違うけれど、大抵どんなRPGゲームにもあった。

 HPが26/29っていうのは、まだ頭を打ったことによるダメージが回復しきっていないから、とことなのかな。


 次はMP。魔力。

 他のものが20台、30台なのに対し、1つだけ70台と、ずば抜けて高い。

 魔法が一般的な世界だ。

 たくさんあって困ることはないだろう。

 

 力、俊敏、器用、運。

 どれも6歳の平凡な少女には、お似合いのの数値だと思える。

 器用が高めなのと、+7が後ろにくっついているのは、スキル「料理」と「編み物」の影響だろう。

 母親のお手伝いをよくやっていたことで伸びたのだろう。



 続いて、称号。

 「鍛冶屋の娘」はわかる。

 実際、そうだもんね。

 

 でも、問題なのはそこじゃない。もう一つのほうだ。

 

 ーーー「吸血の真祖」ってナニ?


 吸血って、あの神話の、もう滅んだ吸血鬼のこと?

 まさかの先祖返り?


 エッ、エッ、エッ?



 わたし、なんかやらかした?


 急いでまた記憶を探ってみるが、何もやらかした覚えは無いし、それっぽいことも何もなかった。

 

 思い当たるのは、わたしが転生したことくらいだ。

 でも多分違うだろう。

 勘みたいなものだけれど、これはシャン自身の体質によるものだと思う。


 エッ?


 真祖?


 ナニソレ?おいしいの?

 

 こんな大層なもん幼女に渡して一体何をしろと?

 だからMPが高かったの?


 というかこれって教会とかに見つかったら、タダで済まされないよね?

 見つかったら確実に討伐対象モノじゃない?

 少なくとも、もう普通の生活は送れなくなる。

 人体実験とか、何かの材料にされる可能性だって十分にある。


 


 ……よくここまで見つからなかったな。

 

 シャン、あんた、すごいよ。


 だから1番上の属性の欄に「闇」属性があったのね。

 さっきはちょっと無視したけど。

 

 


 ……すーーーーーーーー、はーーーーーーーーー。




 深呼吸。


 うん。


 とりあえず。いったんおいとこう。

 そうでもしないと進まない。

 このまま夜が明けてしまう。


 納得はしなてないけどね。


 それにしても、「吸血の真祖」だけじゃわからない情報が多すぎる。

 ステータスって何か調べられないのかな。

 Go○gle大先生のように。


  画面(?)の「吸血の真祖」をタップしてみる。

 すると、ステータスのウィンドウの上に、もう一つ小さいウィンドウが現れた。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「吸血の真祖」 

    純血の吸血鬼が滅んだ世に生まれた吸血鬼の真祖。

    世界で一人しか存在しない。

    血を操ることができ、生物の血肉を食らうことで成長する。

    真祖であるため、太陽の光、銀、食べ物等による弱点は無効化される。

    自らの血を与えることにより、配下を作ることが可能。

    ただし、配下に弱点は無効化されない。

    

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ほえー。

 

 真祖だったから、今まで昼間でもアンリと遊べてたんだ。

 アンリの家の食器たちは、ほぼ全部銀で出来ていたし。

 まあ、わたしが触れる事はなかったが。

 もし、わたしが普通の吸血鬼だったら今頃消し炭になっていたのかな。

 

 ……怖っ。

 次から気をつけよう。


 それにしても弱点の無効化は大きい。

 普通の吸血鬼でなくてよかったけれど、ちょっと微妙な気持ちになる。


 でもまだ常に狙われる立場である事は変わらない。

 生き延びるためには、少しでも強くならなければいけない。


 レベル上げ?スキル強化?全部必要だ。

 今もっているスキルたちも、育てたら力になるかもしれない。


 とりあえず、固有スキルの「吸血」「悪食」「真祖の風格」の3つは、この称号の影響でとみていいだろう。


 それぞれタップしてみてみる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「吸血」:生物の血を吸うことで自身の生命力を高め、自身の経験値に変換することができる。

     吸った血は精霊樹にて保存することができ、称号「吸血の真祖」により、血を操ることができる。

    

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「悪食」:ゲテモノを喰らうことで自身の生命力を高め、自身の経験値に変換することができる。

     普通の食事でも経験値は得られるが、ゲテモノであればゲテモノであるほど、手に入る経験値は多くなる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「真祖の風格」:真祖の風格を醸し出す。

        真祖にふさわしい振る舞いに変わる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どうやら「真祖の風格」はOFFになってるみたい。

 ONにしたところで、吸血鬼だとバレる可能性は跳ね上がるので、わたしにとってはいらないスキルだ。


 でも、「吸血」はともかく、「悪食」はかなりいいスキルかもしれない。

 食べるだけで経験値ががっぽがっぽである。

 前のわたしは胃も弱かったため、少食だったが食べること自体は大好きだった。

 

 「威圧LV.1」と「夜行性LV.1」も同じく称号による効果だろう。

 同じくタップ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「威圧LV.1」:相手を見据えることで相手に威圧感を感じさせる。

       相手の動きを制限できる。

       最大10秒。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「夜行性LV.1」:夜の行動において自身のステータスが活性化する。

        「暗視」「睡眠耐性」が付属される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 わたしは威圧なんてやったことはないし、夜にウロウロ歩きまわったこともない。

 だからLV.1なんだと思う。

 でも、どっちも便利そうだ。

 威圧は使うかどうかわからないけれど、相手の要求を止めるだけでその間に逃げることができる。

 夜行性だって、もし捕まったりしたら、夜のうちに逃げ出し安くなるかもしれない。

 いざと言う時の切り札になる。

 いずれ重宝するかもしれない。


 毒耐性。

 絶対役に立つだろうけど、こんな物騒なもの、普通の町娘が持っているようなものではない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「毒耐性LV.2」:毒に対する耐性がだいぶ上がる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 そのまんまだった。

 しかもLV.2だ。

 どこで手に入れたんだろう。

 また少し、記憶を探ってみる。


 うーん。

 

 またアンリだった。

 わたしはアンリのおやつの毒味をさせられていた。

 毒味係のおじさんの歯形付きビススケットはお気に召さなかったらしい。


 おじさんを幼女の毒味係に選ぶのもどうかと思うが、おじさんの代わりになる毒味係が来るまでの一定の期間、わたしが毒を確かめていたのだ。

 その期間に、ちょうど貴族同士のいざこざがあったらしく、アンリのお茶菓子に猛毒が仕込まれていたことがあった。


 わたしは何も知らず、言われるがままお茶菓子をぱくついてしまったのである。


 多分それだ。

 間違いない。

 

 幸い致死量ではなかったので命だけは助かった。

 わたしにはアンリと一緒にいるとよく死にかける呪いでもかかっているのか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「隠密LV.3」:スキル発動時、気配が薄くなり、ほとんどの他人に認識されにくくなる。

       

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 うん。

 これもそのままだった。

 

 そしてこれもアンリ関係だった。

 シャンは、アンリの前ではいつも目立たないよう気配を消して過ごしていた。

 シャンがアンリより目立つと、アンリの機嫌が損われるからである。

 不機嫌になったアンリはいつもシャンにつらく当たるのだ。

 

 それで得たスキルだろう。


 シャンの苦労の片端がうかがえる。


 次は魔法スキルだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「闇魔法の心得」:闇魔法を習得するための心得。

         素質がなければ習得することは難しい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「土魔法の心得」:土魔法を習得するための心得。

         最も習得も簡単である。

         しかし、火力が圧倒的に足りず、工夫が必要である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「雷魔法の心得」:雷魔法を習得するための心得。

         非常に攻撃性が強く、扱いが難しい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 これは、まだわたしがそれぞれの魔法を使えないからどれも「心得」の状態みたいだ。

 闇魔法はともかく、雷魔法まで、扱いづらそうな属性ばかりである。

 土魔法は火力が圧倒的に足らないみたいだ。

 今わたしが思いつくのは、土人形のゴーレムくらい。

 でもどの魔法もコツコツ頑張れば、きっといつか役に立つだろう。


 明日からでも手をつけよう。


 残りは、「生活魔法」、「料理LV.2」、「編み物LV.4」だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「生活魔法」:生活に必要な魔法。

       「樹人」である誰もが使える。

       該当する魔法は、「灯光」「空間収納」「プチファイア」

       「プチアクア」「クリア」の5つ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「料理LV.2」:料理の腕が上達。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「編み物LV.4」:編み物の腕が上達。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 生活魔法はこの世界の誰でも使える、1番一般的な魔法だ。

 どれも威力は少ないけど、便利なものばかりだ。

 私がいつか見た、母親の指先から飛び出した炎も「プチファイア」だとわかる。


 残りの「料理」と「編み物」は、母親の家事や内職を手伝って得たスキルたちだろう。

 

 スキルは、固有スキルと違って、レベルを上げることができる。

 もしも積極的に鍛えていこう。

 HPも今のままでは少なすぎる。

 MPの量も、今ある分だけでは足りなくなるだろう。

 もっと増やそう。


 うん!計画を立てよう!

 

 ビバ!シャンの育成計画!

 

    一つ、全体的ステータスの強化!

    一つ、スキルレベルをあげること!

    一つ、3つすべての魔法を習得すること!

    一つ、わたし自身のレベル上げ!


 わたし自身のレベル上げは、わたしがまだ幼く魔物討伐に連れいってもらえないことから割と後回しだ。

 ステータスをあげて、丈夫で頑丈な体を!

 スキルレベルを上げて、どんどんできることを増やしていく!

 魔法を習得して、自分の身は自分で守れるくらい強くなる!


 よし!頑張るぞ!


 でも、今1番優先する事は、ステータスの一部を隠せるスキルを探すこと。

 いつ見つかっちゃうか分からないからね。

 保険はたくさんかけておきたい。


 かくれんぼとかやったりしたら、手に入っちゃったりして。

 そんな簡単なわけないか。


 できることなら丈夫で頑丈な体を手に入れて、いつか剣を振りたい。

 魔法があると言うことは、きっと剣も手に入るはず。

 異世界定番のロングソードやレイピアもいいけど、やっぱり刀が欲しい。

 豪快に振り回したい。

 はぁ、最高。

 想像するだけでため息が出る。

 ごつごつの柄をこの手で握りしめたい。



 よし!決めた!

 わたしは絶対絶対強くなって、誰にも負けない位強くなって、剣のハーレムを作るぞ‼︎

 せっかく「真祖」にうまれたんだ!

 頑張ればすごく強くなれるはず!

 このチャンスを生かしてやる!


 シャンはボロボロの布団をかぶり直して決意した。


 やらなきゃいけないことでいっぱいだ。

 少しずつ、睡魔に飲み込まれていくのがわかる。

 

 

 なんだか、大して今まで気にならなかった自分自身の汗くささが気になってきた。

 明日はまず、お風呂に入ろう。

 

 わたしシャンに転生してからの1日目は、こうして終わりを告げたのだった。

  

 


 

 

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