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わたしと決意

 市民街の入り口からかなり離れた住宅街にシャンの家はあった。

 位置からして市民街の中でもスラムに近い方だと思う。


 入り口の方には街灯がたくさんあった。

 明るく、夜でもやっているお店で人々が賑わっていて、あまり暗いという印象を受けずシャンも安心して帰ることができた。

 しかし家に近づいていくごとに街灯の数は減っていき、家の前についたときには1つもなくなり、あたり一面真っ黒になっていた。

 

 さすがに精神年齢17歳のシャンでも、街灯の1つもない真っ暗な街には耐性はなく、後半からすぐ息切れを起こしてしまうことを忘れて、また走り出してしまった。

 若干精神もシャンの影響で幼くなくなっているのかもしれない。 

 走り始めた最初は息切れで苦しかったけれど怖さで苦しさが薄れたのか、だんだんと走ることに慣れ、無事に玄関の前までたどり着くことができた。


 この向こうにわたし《シャン》の家族がいる。

 そう思うと緊張してドキドキする。


 

 前世でのわたしの家族は両親と弟と妹が1人ずつ。

 わたしを産んだ母親は産後の肥立ちが悪く、わたしの物心つかないうちになくなってしまった。


 それでも弟と妹がいるのは、父が後妻をめとったからである。

 後妻と前妻の娘の組み合わせは昼ドラ展開が予想されるが、母はわたしを本当の娘のように扱い、色々と世話と焼いてくれた。

 父は仕事で忙しく、出張とかで帰って来ない日も多かったが、休日はちゃんと家族の時間を取ったり、わたしが倒れたら真っ先に駆けつけてきてくれた優しい人である。


 子供が親より先に死ぬのは1番の親不孝、と言うけれど、本当だった。

 たくさん尽くしてもらったのに何も返せず逝ってしまい申し訳ない。

 もう会えないことが心苦しいが、わたしが両親にできなかった分を、シャンがするはずだった分と合わせてシャンの家族を大切にしていこうと思った。


 わたしはまだどきどきしてる心臓の音を抑えるために深呼吸をすることにした。


 スーー、ハーー。


 よし、これで大丈夫!


 両目をカッと開き、覚悟を決めて、わたしはドアノブに手をかけーーーーようとしたら、ガチャッドアノブの周り勢いよく扉が開いて、30代くらいの残念美人が飛び出してきた。

 

 「おかえり!もうご飯を食べおわっている時間よ。今日はいつもよりずっと遅いから心配したのよ!」


 くすんだ白い髪の毛を1束にくくって後に流してあり、こめかみの辺りに濃いめの緑色をした葉っぱが、ピン留めみたいにくっついていた。

 優しそうな顔立ちは整っているが、小汚い。

 服も顔もちゃんと洗えばいいのに、もったいない。

 わたしは清潔感が保たれていれば、自分の服装に対しても、他人の服装に対しても、たいしてこだわってこなかった。

 逆に言えば、美形でも小汚なかったらちょっと遠慮したい。

 

 「今日は大丈夫だった?あの貴族様に何かされてない?」


 貴族様というのは、アンリのことだろうか。

 女性はわたしを家にあげ、わたしに怪我がないか確かめるようにわたしをギュッと抱きしめた。

 心配してくれるのは嬉しいが、力が強くて少し苦しい。

 

 頭に流れ込んでくるシャンの記憶が、この女性が自分の母親だと教えてくれた。

 わたしの頬を撫でる母の手は、暖かくて、柔らかく、愛情が感じられた。


 ……継母さん《おかあさん》の手は、武術をたしなんでいるため、マメだらけのごつごつで固かった。


 さっきまでは頑張ろう、と思えていたのに、記憶の中には存在していて、知っているようで知らない母親を、なんとなく受け入れることができくて、伸ばされた手を避けるようにわたしは顔を背けた。


 「特には何もされてないけど、頭を打ったの。まだ痛いからもう休んでいい?」


 この調子じゃも他の家族とギクシャクするかもしれない。主にわたしが。

 せっかくご飯を用意してくれた母親には悪いけれど、今日はベッドにいかせてもらうことにした。


 ×××××××××××××



 「じゃあ、おやすみ。」


 「うん。おやすみなさい。」


 母親はそう言うと、静かに寝室らしいベッドがぎゅうぎゅうに並べられた部屋の扉を閉めた。


 私か目覚めたアンリの物置きより随分と質素な作りの部屋で、ドアの隙間から漏れる光で、無骨ながらも頑丈な柱が確認できた。

 暗くて見えていないだけかもしれないが、調度品と言える調度品は特になく、どれも必要な家具に見えた。

 ベッドの素材も服と同じく目の粗い素材で出来ていて、肌が触れる部分はチクチクして非常に心地が悪かった。


 わたしが布団をかぶってじっとしていると、パタパタと軽い足音が遠ざかっていくのがわかった。

 あの方向だと台所かな。

 まだ仕事が残っているのだろうか。


 あの後、わたしはされるがまま母親に抱っこされて寝室(仮)に運ばれた。


 「…お母さん、ごめんね。」


 騙してしまった罪悪感から、思わずつぶやいてしまった。

 自分でも2人のお母さんのどちらに謝ろうとしていたのかわからない。

 もしかしたらどっちもなのかもしれない。

 どちらにせよ、もう届かない謝罪だ。



 …………えーーい!!!!


 らしくない!らしくないぞ!!


 届かないものは届かない!!!後悔したって何も変えられない!!!


 今大事なのはこれからどうするかだ!!くよくよするのは後でやる!!!


 今やるべきことを考えろ!!!



 ……後々後輩たちに「格言」として語り継がれた先鋒の言葉を思い出し、自分で自分を奮い立たせる。

 

 そうだ。今は後悔なんてしてる場合じゃない。

 過去は変えられないとしても、これからの未来は変えられる。

 まず、シャンの記憶を整理しなくては。

 

 わたし自身のこと、家族のこと。

 それにみんなの頭に生えていた葉っぱ(?)のことも。

 特に気になる。


  寝室に着くまでに通ったリビングには、日本の照明には劣るものの確かに明かりがついていたのを、わたしは見逃さなかった。

 この世界にも電気に似たエネルギーがあるのかもしれない。


 そうなれば地球での知識も何か生かせるかもしれない。


 そう思いながらわたしはシャンの記憶をゆっくり反芻し始めた。

 

 

 

 


 



 

 

 ここから後は長くなりそうなので一旦切りました。


 シャンの剣道部での設定は、3年生のマネージャーで、チームあるいは個人の作戦係兼サポート係。一部の後輩には参謀と呼ばれていました。絶対怒らせてはいけない人(怒るとぶっ倒れるから)でした。大将とは幼い頃からの顔見知りでしたが、高校になってから親友になりました。先鋒も同じくです。


 あと、シャンの高校は女子高でした。



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