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プロローグ

 

 三浦みうら ゆい、17歳。


 わたしは身体が弱かった。


 一生寝たきり、だとか、ひとりで歩けないとか、そこまで重症じゃあないけれど、重いものを持ったり、走ったりとかは出来なかった。

 

 生活がギリギリできる位の虚弱体質だった。


 もちろん体育はいつも見学。

 クラスみんなでやる鬼ごっこに混じってみたら倒れたこともあった。

 決まってマラソン大会の時期になると「走らなくてもいいなんて羨ましい」なんて運動が苦手な子から言われたけれど、わたしからしたら遅くても走れる方がよっぽど羨ましかった。


 そんなわたしは、立派な体育会系スポーツ脳女子に成長した!


 

 ちょっとさかのぼってみよう。

 わたしの家は剣道の道場を代々経営していた。

 けれど、虚弱なわたしには縁がないものだと思ってたいして気にせず過ごしていた。

 親族も

 そんな中でたまたま体調が良く連れてきてもらったいとこの試合。

 わたしは運命に出会った。

 


 会場に入った瞬間に、熱気。

 その熱気に触れた瞬間、わたしも熱気の波に飲み込まれた。


 ……力強く、早く繰り出される打ち込み!

 荒々しく見えつつも、相手の次の手を予測した打突!

 美しく流れる足捌き!

 目線と剣先のみでのやりとり!

 素足での踏み込み。と、その音!

 


 たった四分で選手の将来が左右される。


 選手の誰もが栄光を掴み取るため、勝者になるため、その四分の一分一秒に己の魂をかけ、最後の最後まで戦っている。

 

 使う剣が竹刀だって関係ない。

 そこには、本物の戦い《いのちのやりとり》があった。


 何より、誰もが堂々としていて輝いていた。




 ……最高かよ。


 それからわたしはすぐ行動した。

 いとこたちの過去の試合のビデオを一つの動きも見逃すことなく分析し、いとこたちの得意不得意や体格まで分析、さらに有名な先生や、強豪選手の試合と比較して膨大なデータをつくり上げた。


 そしてそのデータをいとこたちに提供した。


 最初はお前にわかるかよ、とかバカにされたけどまぁ気にせずデータをぽいぽい渡し続けたら、いとこの一人の試合の勝率が跳ね上がった。

 その一人から二人に広まって、さらに広まって、うちのいとこの勝率はびょんと上がっていった。



 ーー時は流れ高校入学。

 その日のうちに剣道部へGO!


 晴れてわたしはマネージャーになった!

 わたしは知らなかったけど、この高校は全国制覇を目指していた。


 わたしはいとこたちにやったように、同じく過去のビデオを洗いざらい見返して、データを作り上げ、提供した。


 結果はすぐに出た。

 みんなの勝率が爆上がり!

 それだけでなく、剣道にありがちな変な癖も矯正された。


 相変わらずわたしは体が弱くて、練習に参加することは絶対にできなかったけれど、何とか練習試合や大会についていけるぐらいにはなっていた。


 この時わたしの剣道愛は絶頂期。


 この愛は剣道から竹刀、竹刀から刀、刀からファンタジーに出てくるような剣へとどんどん広がり、いつしか剣という剣を愛するおなごに進化していた!

 そして部員全員に「変態」「異常」とまで言わせるスポーツ脳女子になっていた。

 

 でもまぁ許せる。気にならない。わたしはおおざっぱだった。


ーーまたまた時は流れ三年生の関東大会。

 やっとのことで勝ち上がった1日目。その時は唐突にやってきた。


 ここ数年間感じることのなかった息苦しさと、胸の痛みに襲われたのだ。

 倒れたわたしは救急車で運ばれた。


 意識が薄れてスポーツ漫画でよくあるやつできるやん、とかうわの空でポーーっと考えてた。


 いつしか胸の痛みは全身の痛みに変わり、息をするのもやっとになった。

 よりにもよってこんな日に。


 幼少期から私に付きまとってきた痛みは、特に過去で1番かと思うほど今回はひどかった。

 わたしは死を覚悟した。


 でもまだ、結果を見れてない。

 だから、まだ死ねない。

 死ねないんだ!


 飛んでいきそうな意識を必死に手繰り寄せて、わたしは踏ん張り続けた。

 わたしの思いを汲んでくれて、お医者さんが中継を見ることを許可してくれた。

 

 結果はーー優勝。

 同級生の大将が引き分けに持ち込んで、代表戦で一本取ったのだ。


 その一瞬で、わたしの一生は報われた気がした。

 そのまま全身の力が抜けて、わたしは意識を失った。


 もし、生まれ変われるならーーわたしも剣で戦いたい。




 三浦 結、17歳。わたしは、死んだ。

 

 


 

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