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インビジブル・ラブネス  作者: a10 ワーディルト
6/32

【 5 】


    【 5 】


 こうして怒れるヒロイン様の講堂破壊行為は終息し、リハーサルは再開された ‥‥‥ が、先輩の機嫌が完全に直ったわけではなかった。


 こうなると、今から特に繰り返して練習する必要があるのは言うまでもなく新しい演出に変更された、暗転式キスシーンだ。 ここでは舞台に立つのは先輩と僕だけだから、それ以外のほぼ全員を、舞台効果の目玉となる全暗転実行係に振り分ける事ができる。 対象となるのは講堂備え付けの照明スイッチ、アンプやビデオカメラ類、体育館部分のシーリングライト、そして数えてみたら十二ヶ所もあった独立電源の非常口灯。


 それらを、一斉に消す。 やってみると結構バラバラだった。

「 何か 『 せーの 』 で動けるみたいにはっきりした、講堂のどこで待機してても分かる合図があった方がいいなあ ‥‥‥ ねえ、主人公く ── ん! 」

 副部長が演台の下から僕に呼び掛けてきた。 本来キスの前に僕と先輩が抱き合うきっかけとなる愛の告白を、今までよりも情熱的に、もっと大きく呼びかけるように、という指示だ。

 キスと一緒に抱き合いシーンもボツになっているから、この部分のセリフはわりと自由な改変で再利用が可能だった。 映画などではささやくように語られる所だけど、この劇では一種の号令としての意味も兼ねて、消灯の合図に使われる事になる。 責任けっこう大きいな。

 息を吸い込んで胸を張る。 出す声を音のボールにして、遠くに投げるようなイメージで ‥‥‥ こう言おう、


『 私の愛は決して ─── 』


 ‥‥‥ う。


 台本の " ト書き " に沿って、僕の正面にヒロインが、いや先輩が、先輩自身として、素のままで立っていた。 腕組みに、仁王立ちで。 やっぱり怒ってるのかなー。


『 ─── 君の心を離れはしない! 』

 怒ってるな怒ってるよあれは。


 心の底から不服そうな、お前の言うことなんて絶対信じねえって感じの眼でにらまれてる。 これは演劇部の全員に降りかかった災難のはずなのに、なんかちょくで向き合ってる僕だけが叱責されてるみたいなんですけど。


 講堂の各所から一つひとつ確認を取った副部長が、消灯タイミング分かりやすくなったよ、本番も今ので行こう、と笑顔でオーケーをくれた。

 それに合わせて、不自然にオーバーなアクションで親指を立てたグーを出してきたのは 「 それはそれとして、ついでにヒロインを説得してやる気をよみがえらせてね! 」 という意味なのだろうか。 多分そうなんだろうな ‥‥‥ 。



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