11話 ボクっ娘、第1職業がSSSランクの魔導士、第2職業がAランクの格闘家、だってさ。
レイ、ラプソディ、ハニ、リガロンの4人は、ポーロ町を救った。
エルフたちは、彼らに感謝し、町長は謝礼として金銭を渡そうとした。
その金銭を受け取らず、レイは答えた。
「破壊された防御壁の修繕費に、使ってください」
ラプソディが、うっとりと言う。
「さすが、レイね。気高い心だわ」
ハニがショックを隠せず呟く。
「ラプソディ様が、人間ごときに骨抜きにされています」
レイたちは王都へと戻った。
だが、すぐに冒険者ギルドに呼び出されることになった。
ポーロ町での一件が、すでに冒険者ギルドの耳に入っていたようだ。
レイたち4人は、冒険者ギルドの本部に向かった。幹部による、事情聴取を受けるために。
このとき、ハニの手元には、すでに偽の身分証があった。ワープ魔法によって、最速で送り届けられたわけだ。
レイは、リガロンのことを、次のように紹介。
リザードマン集団のポーロ町への襲撃を密告してくれた、善意のリザードマン、と。
ルレ村での家畜泥棒の件は、なかったことにした。嘘をついたわけではない。話さなかっただけだ。
冒険者ギルド側も、ポーロ町での襲撃事件が大きすぎて、家畜泥棒のことなど忘れていた。
レイ達は、ポーロ町を救うためとはいえ、冒険者ギルドの指示を待たず、勝手に行動した。それは違反といえる。
だが、一方で冒険者ギルドは、結果を重んじる。
レイ達は、結果を出した。並みの冒険者では出せない結果を。
事情聴取が終わってみれば、レイはEランク戦士に昇格していた。
ポーロ町での実績が認められたためだ。
さすが成果重視の冒険者ギルドだ。
冒険者ギルドのライバルである王国騎士団では、こうはいかないだろう。あそこは規律を異常に重んずる。独断での行動は、懲罰ものだ。
とにかく、レイとしては結果オーライだった。
事情聴取から解放されたところで、受付係のローラのもとへ行く。ラプソディ、ハニ、リガロンも一緒だ。
ローラは満面の笑み。
「レイ君。大活躍だったみたいですね」
「仲間のおかげだよ。紹介しよう、ローラ。獣人でラプソディの友である、ハニ。ポーロ町への襲撃を教えてくれた、リガロン。2人とも、冒険者ギルドへの入団を希望している」
「承知しました。身分証をご提示ください」
ところが、リガロンは身分証を所持していなかった。
そこで、まずは身分証を、役所から発行してもらわねばならない。役所に行かねばならないと知り、リガロンは呻いた。
一方、偽の身分証を取得済みのハニは、問題なく入団。
さっそく精霊玉で、ハニが適している職業を調べる。
とたん、ローラが悲鳴に近い声を上げた。
「第1職業が、SSSランクの魔導士! さらに第2職業は、Aランクの格闘家ですって! ハニさん、あなたは何者なのですか!」
レイは頭を抱えたくなった。さすが、ラプソディの親衛隊員というところか。
ラプソディが不思議そうに言う。
「第2職業って、なに?」
「2番目に適正を持っている職業だ」
「ふうん。あたしも欲しいわ」
レイは、ローラに聞こえないよう、囁き声で言った。
「ラプソディの場合、第1職業も第2職業も関係なく、ぜんぶトップクラスだろ。ややこしくなるから、諦めろ」
「Fランク魔導士で我慢しろ、ということ?」
「そう、我慢」
それからレイは、声量を戻して、ローラに言ってみた。
「ローラ。ハニの適正職業のことだが──ラプソディのときと同じで、また精霊玉のバグではないか?」
ローラは首を横に振る。
「いえ、そんなはずはありません。ラプソディさんの職業を診断したあとで、メンテナンスに出していますから」
「……そうか」
ラプソディの場合、適正職業を診断した結果があり得なさすぎた。よってバグということで、ローラも納得した。
しかし、ハニのSSSランク魔導士というのは、あり得なくはない。
もちろん、どんな職業でも、SSSランクなど数えるほどしかいない。しかも新入りがSSS、というのは、前代未聞ではある。
だが、起こりえないことではないのだ。
かくして、ハニは前代未聞の新人として、冒険者に加わった。
(これは注目の的になってしまうなぁ。あまり目立ちたくはないのだが)
なんといっても、このパーティには、魔族が2人もいるのだから。
後日。
役所で身分証を発行してもらったリガロンが、改めて冒険者ギルドを訪れた。精霊玉によって、リガロンの職業は、Dランク戦士となった。
その夜、ラプソディは気に入らないという口調で、言ったものだ。
「レイが、ようやくEランクというのは、納得がいかないわ。レイの気高き心は、もうそれだけで、SSSランクを超えているわよ」
「ラプソディの、その気持ちだけで、充分だよ」
「もう、レイったら」
寝室のベッドでの、会話である。
※※※※
冒険者の給与は、達成したクエストで変わる。つまり、難易度の高いクエストのほうが、実入りは良い。
そして、難易度の高いクエストを受けるためには、それに見合ったランクが必要となる。
ランクが高くなるほど、高給取りになるのは、そういう事情だ。
また同じクエストでも、少ない人数のパーティで挑めば、その分、一人の取り分は多くなる。
ただし、取り分を多くしようとして、最低限の人数も集めずクエストを行えば、待つのは死のみだ。
パーティの各メンバーのランクについて、ギルド側は規定を設けていない。
Aランクだけで固めても良く、SSSランクからFランクまで揃えても良い。
リーダーは必要だが、リーダーのランクにも指定はない。
ただし、受けられるクエストのレベルは、パーティの総体的な実力によって決まってくる。レイのパーティは、各メンバーのランクだけを見ると、かなり歪だ。
SSSランクが1人・ハニ、Dランクが1人・リガロン、Eランクが1人・レイ、Fランクが1人・ラプソディ。
一般に、高いランクから並べて、SSS~Aランクまでが、トップクラスとされる。B~Dランクまでが中堅。EとFランクは、底辺だ。
そう考えると、レイのパーティは歪でありながらも、ある意味ではバランスが取れているとも言える。
さて、レイたちがパーティを結成してから、6日後。
ラプソディの提案で、このパーティで初めてのクエストを受けることになった。
というわけで、4人の冒険者は、冒険者ギルド本部の前で集合。
同じ家に住むレイとラプソディは、連れだって来た。
王都内に住居を見つけたハニは、そこの家から。
リガロンだけは、王都の外からだ。リザードマンへの偏見は強い。身分証を持っていても、王都内で住居を見つけるのは、難しかった。
ラプソディが期待に満ちた様子で言う。
「難易度が最強のクエストを受けたいわね」




